ネット銀行は、対面の店舗を持たず※、インターネット上での取引を主とする銀行です。店舗を持たないことで運用コストが抑えられているため、店舗型の銀行に比べて住宅ローンを組むときの金利が低いのが特徴です。
※対面の拠点を持つネット銀行もありますが、手続きは主にインターネット上で行います。
しかし、住宅ローンでは大きな金額を借りることになるので、対面での相談ができないオンラインでの手続きに「何となく心配…」と感じる方も多いのではないでしょうか。
そのようにお悩みの方のために、この記事ではネット銀行で住宅ローンを組むことのメリットやデメリット、またネット銀行と店舗型銀行との手続きの違いと注意点などについて解説します。
ネット銀行でも安心して住宅ローンを組むために、ぜひ最後までお読みください。
1. ネット銀行で住宅ローンを組む3つのメリット
ネット銀行で住宅ローンを組むメリットは下記の3つです。
- 店舗型の銀行と比べ金利が低い
- 店舗に出向く必要がない
- 保証料・繰り上げ返済手数料がかからない
この章では、これらのメリットを詳しく説明いたします。
[1]店舗型の銀行と比べ金利が低い
ネット銀行における住宅ローンの大きなメリットは低金利です。店舗型の銀行と比較すると、借り入れ金利が低い傾向にあります。これは、ネット銀行では店舗の維持費がかからないことや、窓口で対面での相談することがないため、スタッフの人件費を抑えられることが主な理由となります。コストを抑えた分、住宅ローン金利を低くすることができるのです。
住宅ローンは基本的に借入額が大きく、返済期間も長期にわたります。わずかな金利の差であっても、総支払利息が何十万円や何百万円といった単位で変わってくるので、金利が低いことは大きなメリットとなります。
【4,000万円借入・35年払いの例(変動金利・全期間変動無しの場合)】
銀行 | ネット銀行A | 店舗型銀行A | 店舗型銀行B |
---|---|---|---|
金利 | 0.397% | 0.525% | 0.675% |
月々支払額 | 102,023円 | 104,276円 | 106,957円 |
支払総額 | 42,849,941円 | 43,796,208円 | 44,922,070円 |
利息分 | 2,849,941円 | 3,796,208円 | 4,922,070円 |
ネット銀行Aとの 総支払差額 | – | +946,267円 | +2,072,129円 |
ネット銀行Aを基準に総額を見てみましょう。金利が0.128%上がれば、支払いの終了時に+946,267円、0.278%上がれば+2,072,129円もの差が発生します。
このように、月々のお支払いは僅かな差でも、35年間お支払いを続けると大きな差となります。
[2]店舗に出向く必要がない
ネット銀行の場合、住宅ローンの事前審査から契約までの手続きが楽です。PCやスマートフォンにて、インターネットを介し、住宅ローンの申込・契約ができます。本審査以降になると、住民票の写しや本人確認書類、物件資料などを郵送する必要はありますが、ネット上でのやりとりは24時間いつでもできるため、銀行窓口の営業時間内に手続きするために仕事を休まなければならない、ということもありません。また、対象の地域が全国なのもメリットです。
「仕事で忙しい」「気軽に行ける距離に銀行がなく、何度も足を運ぶのは大変」という人も、ネット銀行は利用しやすいでしょう。
[3]保証料・繰り上げ返済手数料がかからない
多くのネット銀行が保証料と繰り上げ返済手数料を無料としています。
店舗型銀行では、保証料を金利上乗せや一括支払い(※1)にしたり、繰り上げ返済手数料も有料(※2)としていることもあります。金利を上乗せしたり、繰り上げ返済も一部繰り上げを何度も行っていたりすると、思いのほか費用がかさむことになります。
※1:0.2%の金利上乗せや、借入額の1%~2%の一括払いになることが多いようです。
※2:一部繰り上げ返済手数料に22,000円、全額繰り上げ返済手数料として44,000円 など
<用語解説>
- 保証料
- 住宅ローンの債務者が何らかの理由で金融機関に住宅ローンを返済できなくなった際、保証会社に代わりに返済してもらうため、保証会社と保証契約を結ぶ費用です。
- 繰り上げ返済
- 毎月の返済とは別に、借入額の一部または全額を返済することを言います。繰上返済の場合は、返済分が全て元金に充てられますので、支払う利息を軽減することができます。その結果、返済年数や返済額が少なくなります。
2. ネット銀行で住宅ローンを組む3つのデメリット
ネット銀行で住宅ローンを組むデメリットは下記の3つです。
- 審査が厳しく、時間がかかる場合がある
- 手数料が割高な場合がある
- 対面での相談・手続きができないことが多い
この章では、それぞれのデメリットを詳しく説明します。
[1]審査が厳しく、時間がかかる場合がある
ネット銀行では保証会社の保証をつけずに融資することが多いことなどから、ネット銀行での住宅ローンは、店舗型の住宅ローンと比べ、審査が厳しいことが多いようです。
審査が厳しくなることの影響については、この後7章で詳しく解説します。
また、ネット銀行の審査は店舗型の銀行よりも時間がかかることが多いです。基本的に郵送やメール、FAXでのやり取りで手続きを進行するので、不備があったときに郵送書類の往復で時間が過ぎてしまうからです。
[2]手数料が割高な場合がある
保証料が無料でも、例えば事務手数料が「借入額の2.2%」などと設定されていて、合計のコストは店舗型の銀行と変わらないケースもあります※。ネット銀行と店舗型銀行を比較する時は、保証料だけ・手数料だけの項目で比較するのではなく、借り入れるときの諸費用がトータルでいくらかかるのかで判断しましょう。
※店舗型の銀行でも、手数料が高くなる場合もあります。
住宅ローンの手数料と諸費用について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
[3]対面での相談・手続きができないことが多い
ネット銀行は、店舗や窓口がないために「気軽に相談ができない」「手続きを自分で全て行う」ことがデメリットに挙げられることがあります。また、知りたいことや、困ったことが出てきたときに、ネット銀行のwebサイトで調べるのは時間がかかったり、ピンポイントな答えが記載されていなかったりすることもあります。
ネット銀行でも、銀行によっては、店舗やオンラインで対面相談ができるところもありますので、不安な方は、困ったときに対面相談できるかどうかもネット銀行選びの基準に盛り込んでおくといいでしょう。
3. 店舗型の銀行との住宅ローン条件比較
ここでは、ネット銀行・店舗型銀行の住宅ローン商品を具体的に比較して解説します。
一般的なネット銀行と、店舗型銀行でよくある設定を2種類比較してみましょう。
他と比較して優位な項目を黄色に色付けしています。
ネット銀行A | 店舗型銀行A | 店舗型銀行B | |
---|---|---|---|
金利 | 0.397% | 0.525% | 0.675% |
来店 | 不要 | 必要 | 必要 |
一般団体信用生命保険 | 無料 | 無料 | 無料 |
がん保証 | 50%→無料 100%→0.2%上乗せ | 0.2%上乗せ | 三大疾病に含む |
疾病保証 | 全疾病無料 | 八大疾病0.2%上乗せ | 三大疾病0.1%上乗せ 九大疾病0.3%上乗せ |
保証料※1 | 無し | 206,110円 | (162,040円~204,890円)+30,000円 |
事務手数料 | 借入額×2.2% | 33,000円 | 33,000円 |
繰り上げ返済手数料 | 無料(変動金利の場合) | 一部:16,500円 全額:22,000円 | 一部:無料 全額:11,000円 |
審査 | 比較的厳しい | 一般的 | 比較的甘い |
店頭相談 | 不可(TELのみ) | 可能 | 可能 |
※1:保証料は借入期間35年で借入額1,000万円あたりの計算
この表から、以下のようなことがわかります。
- 金利や団信の保証内容はネット銀行Aが優位
- 保証料・事務手数料の合計額はほぼ同額(優位無し)
- 審査や店頭相談については店舗型が優位
審査が承認されて、相談も電話でよければ、ネット銀行Aが総合的に見て良いでしょう。
<用語解説>
- 一般団体信用生命保険(一般団信)
- 住宅ローン利用者が死亡または、高度障害になった場合に住宅ローン残高相当が保険金として支払われる、団信の基本となるものです。
- ガン保証
- 住宅ローン利用者が死亡または、高度障害に加えてがんと診断された場合に、その時点の住宅ローン残高相当、または〇〇%が保険金として支払われる団信です。
- 疾病保証
- 特定の病気になり、諸条件を満たすと、その時点の住宅ローン残高相当が保険金として支払われる団信です。※銀行により「諸条件」は異なります。
4. ネット銀行の住宅ローンを利用してほしい人~マンション営業担当からのアドバイス
ここまで、ネット銀行の住宅ローンの特徴を、店舗型銀行の場合と比較しながら解説してきました。
支払額を安く抑えられたり、窓口の営業時間に縛られないといったメリットがある反面、対面で説明してもらうなどのサポートを受けにくく、手続きに不備があったときに時間を取られがちになるというデメリットがあります。
それでは、ネット銀行の住宅ローンは、どんな人が使うべきなのでしょうか。
マンション営業担当の筆者の経験からお答えすると、オンラインの手続きに慣れている方で、下記のうち1つでも当てはまる項目があるなら、ネット銀行での住宅ローンをおすすめします。
- とにかく支払額を安くしたい
- メインバンクがすでにネット銀行
- 対応時間内に窓口に行くのが難しい
[1]とにかく支払額を安くしたい人
少しでも住宅ローンの支払い総額を抑えたいと考えているなら、店舗型の銀行より金利が低い傾向があるネット銀行はピッタリです。
1章の金利による比較例で見ても、35年間お支払いを続けると約100万~200万円、支払い総額が変わってきます。
[2]メインバンクがすでにネット銀行の人
ネット銀行のほとんどは、どこからでも入出金・振込が可能な半面、手数料無料の手続き回数が決められていることが多く(預金額や利用回数によって変動します)、メインバンクで住宅ローンを組むことによって、その手数料無料の回数が増えることが多いです。その他にもメインバンクとしていることで特典があるという銀行もありますので、すでにメインバンクがネット銀行の方は、まずそのようなメリットがあるかどうか確認してみましょう。
また、すでにネット銀行をメインバンクといて利用されている方は、住宅ローン手続きをオンラインで進めるのも問題にならないでしょう。
[3]対応時間内に窓口に行くのが難しい人
いつ、どこからでも申し込み・手続きが可能なネット銀行の住宅ローンは、忙しくてなかなか銀行に行けない方に向いています。もちろん、ローン申込後の融資実行後の繰り上げ返済や情報変更等もオンラインで可能です。
5. ネット銀行の住宅ローン比較~3つのポイントから考える選択方法
ネット銀行の中でも、どの銀行を選ぶかで、ローン金利はもちろん、団体信用生命保険の保証内容や特典(特徴)の内容は違ってきます。様々な比較要素がありますが、ネット銀行の住宅ローンは下記の3つのポイントで比較するのがおすすめです。
- 『金利』
- 『団体信用生命保険の充実』
- 『住宅ローン申し込みによる特典』
これらの要素のうち、何を1番重視するのかを考えながら、下の表をご覧ください。
ネット銀行A | ネット銀行B | ネット銀行C | |
---|---|---|---|
[1]金利 | 0.397% | 0.42% | 0.38% |
[2]団信の充実 ※無料で付けられる範囲の比較 | ガン50%保証 全疾病保証 | 一般団信 | ガン50%保証 |
[3]住宅ローン申し込みによる特典 | ATM手数料無料回数UP | 系列店での買い物5%OFF | +金利で団信充実 |
上記の比較情報からは、このような判断ができます。
- 『[1]金利』を重視するなら、「ネット銀行C」を選ぶ
- 『[2]団体信用生命保険の充実』(金利が上がってでも)を重視するなら「ネット銀行A」を選ぶ
- 『[3]住宅ローン申し込みによる特典』(よく買い物で使用する系列)を重視するなら「ネット銀行B」を選ぶ
これらの3つのポイントのうち、全てを好条件に備えた住宅ローン商品はなかなか実現が難しいです。例えば金利条件の良いネット銀行Cでも、全疾病保証を付けようと0.2%上乗せすると合計金利は0.58%になり、保険が充実したネット銀行Aを選んだ方がお得という結論になります。
なので、住宅ローンを組むにあたって、3つのポイントのうち何を重視するのかを予め決めてから比較すると良いでしょう。
ただ、銀行によって審査の重視するポイントは変わってきますので、実際の審査には複数の候補(希望順位)を出して臨んでください。
6. 店舗型銀行とのローン手続きの違い
ネット銀行と店舗型銀行では、住宅ローン手続きに若干の違いがあります。
必要書類などの準備物の違いは基本的にはありませんが、ネット銀行では、店舗型銀行では店舗にてやり取りしていたことが、郵送やインターネットでのアップロードという手続きに変更されます。例えばローンの申込書も、インターネット申し込みの場合はフォームへの入力がそのまま申込書になり、そこへの捺印も不要となったりします。
『仮審査』→『本審査』→『金銭消費賃借契約』の住宅ローンの流れのうち、仮審査までは申し込みフォームへの入力だけで進められることがほとんどですが、本審査以降になると、郵送での手続きが発生します※。例えば、「住民票」や「住民税決定通知書」は原本での郵送が必要となってくることが多いです。
※一部、郵送不要の銀行もあります。
詳しくはご希望の金融機関に確認しましょう。
書類を郵送しての手続きは、もし間違いがおきれば再郵送に手間と時間がかかってしまう点に注意して、早め早めに手続きを進めるよう心がけましょう。
7. ネット銀行の住宅ローンの注意点:審査が厳しいことが多く、借入可能額が低くなる傾向がある
最後に、ネット銀行の住宅ローンを利用するときの注意点について説明します。
デメリットの章でも触れているように、ネット銀行は金利が低く特典が充実している半面、厳しく審査されることが多いです。
少し掘り下げると、「審査金利」が高く、「返済負担率」が低く設定されているため、同じ条件でも、店舗型の銀行に比べて借入可能額が低くなる場合が多いということです。
下記の表で、ネット銀行と店舗型銀行の比較をご覧ください。
ネット銀行A | 店舗型銀行C | |
---|---|---|
審査金利 | 2.57% | 1.2% |
返済負担率 | 35% | 40% |
借入可能額(年収500万円の場合) | 約4,030万円 | 約5,710万円 |
※借入可能額は35年払いでの計算です。
※上記は審査ポイントの一例ですので、これだけで借入可能額を判断されるわけではありません。総合的に判断されます。
<用語解説>
- 審査金利
- 住宅ローンの審査の際に利用される金利のことで、住宅ローンを利用する際に実際に適用される金利(適用金利)よりも高く設定されています。
- 返済負担率
- 年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合。その割合を超えると承認は難しくなります。
他にも審査ポイントはたくさんあるのですが、こちらの「審査金利」と「返済負担率」の2つのみで計算すると、借入可能額は上記の表のようになります。同じ年収でも約1,700万円の借入可能額の差が発生することとなります。
こういった傾向から、ネット銀行では希望額を借入できず、購入を断念しかかっていたけれど、店舗型銀行に相談してみると借入できたといったケースもあります。
ネット銀行では審査が厳しい傾向があることに留意して、希望の借入ができなかったときはネット銀行以外にも視野を広げて検討してみることをおすすめします。
8. まとめ
ネット銀行の住宅ローンを、店舗型銀行と比較しながら解説しました。
- ネット銀行のメリット
- 低金利で、保証料・繰り上げ返済手数料がかからない事が多く、店舗に出向く必要もない。
- ネット銀行のデメリット
- 店舗での相談ができず、取扱手数料も高い傾向で、ローン審査が厳しく時間がかかる場合もある。
支払い方にもよりますが、基本的にはネット銀行の方が総支払額が安くなります。そのため、どうしても店頭で相談や手続きをしたい方以外はネット銀行を選択した方がメリットが大きいと筆者は考えます。
どちらを選ぶか迷っている方も、まずはネット・店舗型両方の形式の銀行を複数選んで事前審査を行い、『承認』になった銀行の中から本審査を申し込む銀行を考えてみてはいかがでしょうか。
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