住宅ローンは毎月一定額を返済する以外に、ボーナス時には増額して返済する「ボーナス払い」という支払い方法があります。住宅を購入予定の人ならチラシで目にしたり、また実際にボーナス払いを併用した支払いシミュレーションをした人がいらっしゃるのではないでしょうか。
ボーナス払いを併用する上での最大のメリットは毎月の支払額が抑えられることです。しかし一方で「総支払額が増える」「ボーナス支給がなくなると支払いがきつくなる」といったデメリットも存在します。
今回の記事では、住宅ローンの返済にボーナス払いを併用すると、どんな風に支払い方が変わるのか、またボーナス払いを併用する際の注意点について解説します。
ボーナス払いとは
毎月の支払いに加えて、ボーナス時に増額して返済する方法のことです。
つまり住宅ローンとして借りたお金を、毎月返済分とボーナス時返済分に分けて、それぞれ支払っていくのです。
支払い回数の考え方は、35年でローンを組んだ場合なら以下のようになります。
毎月返済→12か月×35年=計420回
ボーナス時返済→年2回×35年=計70回(支払月は希望月を選択可能)
目次
ボーナス払いを併用すると、支払い方はこんな風に変わる
月々の支払い額を抑えることができる
毎月の支払いを抑えたい人にとって、ボーナス払いはおすすめの方法です。なぜなら月々の支払を抑える方法は、基本的には頭金を増やして借入額を減らす以外に方法がないからです(購入物件、借入金利等は同条件とする)。
実際にどれくらい違うのかを、住宅ローンの借入金3,000万円、返済期間35年(フラット35/金利1.28%)で以下のような支払いを選択した場合を見てみましょう。
毎月の返済額 | ボーナス時返済額 | ||
---|---|---|---|
毎月払いのみ | 88,656円 | ーーー | |
毎月+ボーナス払い併用 | 62,059円 | 159,918円 | ボーナス時合計 221,977円 |
ボーナス払いを併用した場合、毎月払いのみの場合と比べると、月に26,597円支払いが抑えられることになります。このように毎月の支払額を抑えることができるのであれば、借入額を増やして検討の幅を広げることも可能となりますね。
ローン返済期間を短くすることができる
借入額・金利が同じ条件として考えた場合、ボーナス払いの併用をすると、併用しない方法より返済期間を短くすることができます。なぜならボーナス時の返済分を増やすことで住宅ローン借入残高の減りが早くなり、期間を短縮できるからです。
(例)フラット35借入金3,000万円、金利1.28%の場合
ボーナス払い併用時(毎月返済分2,400万円・ボーナス時返済分600万円)
毎月の返済額 | ボーナス時返済額 | 利息 | |
---|---|---|---|
毎月払いのみ (35年) | 88,656円 (420回) | ーーー | 約723万円 |
毎月+ボーナス払い併用 (27年) | 87,648円 (324回) | 131,766円 (54回) | 約551万円 |
毎月の返済がほぼ同じ金額でも、ボーナス払いとして約13.1万円支払うことで、返済期間を約8年も短縮することができます。また返済期間が短くなることで、住宅ローンの利息も約170万円ほど低く抑えられます。
金融機関によっては金利や保証料などが安くなるケースがあるため、上手にボーナス払いを併用すると良いかもしれません。
「繰り上げ返済」で返済期間を短縮する方法もあります
返済期間を短縮するもうひとつの方法として、返済途中にまとまった資金を充当し返済期間を短縮する「繰り上げ返済」という方法があります。通常の支払いは毎月払いにして、ある程度まとまった金額が貯金できたら、都度まとめて返済をするのです。
繰り上げ返済をするには、基本的には手数料が必要ですが、近年では手数料が不要な金融機関も増えています。事前に確認しておきましょう。
ボーナス払いを選択する際の注意点
ボーナス支給額に変動がある場合は、リスクが高い
ボーナス時にまとまった額を返済をするため、ボーナス支給額に余裕がないと返済できないリスクがあります。
ボーナスの支給額はお勤めの会社の業績等に左右され、支給額が多い年もあれば少ない年もあると思います。もしボーナス支給が少ない、または支給がない年があれば、まとまった貯金を切り崩して支払わなければなりません。そのようなリスクも踏まえ、余裕をもってボーナス返済の金額を設定しましょう。
逆に言えば、月々の支払いとは別に、ボーナス時期にまとまった額を支払いできるのであれば、ボーナス支給がない人でもボーナス払い併用を選択することが可能ということです。
ボーナス払いは定年退職後も続く
ボーナス払いは会社を定年退職した後も続きます。したがって、ボーナス払いの時期にまとまった額の収入がなくなることも考慮に入れて、支払計画をたてる必要があります。
例えば40歳のときに35年での返済を検討した場合、60歳で定年退職するまでの20年はボーナス払いに余裕があったとしても、退職後の15年はボーナス支給がないので支払いにリスクが生じる可能性があります。雇用継続したとしても、ボーナス支給がなかったり、支給額が大幅に減ってしまうことも考えられます。その時に残り15年分のローンの残債を繰り上げて返済ができるのかどうかも含めて、事前に資金シミュレーション等で充分確認しておきましょう。
総支払額がやや高くなる
毎月払いのみの返済と比べると、ボーナス払い併用の方が利息分少し多くなり、総支払額が増えます。それは毎月順調に元金が減っていく毎月払いに比べると、ボーナス返済分だけ元金の減りが遅くなるからです。
前章で「ボーナス払いを併用すると、利息や費用が安くなる」と説明しましたが、これはあくまで返済期間を短縮した場合のみです。
(例)フラット35借入金3000万円、金利1.28%、返済期間35年の場合
ボーナス払い併用時(毎月返済分2,100万円・ボーナス時返済分900万円)
毎月の返済額 | ボーナス時返済額 | 利息 | |
---|---|---|---|
毎月払いのみ | 88,656円 | ーーー | 約723万円 |
毎月+ボーナス払い併用 | 62,059円 | 159,918円 | 約725万円 |
上のケースでは毎月払いのみとボーナス併用払いでは、利息差が約2万円になります。
借入額やボーナス返済割合に応じて利息の差は変わってくるため、しっかりシミュレーションをしておきましょう。
ボーナス払いについてのQ&A
ボーナス払いを検討する上で、よくある質問を挙げてみました。
ボーナス払いには上限がありますか?
借入額の50%までと設定している金融機関が多いです。
「ボーナスに余裕があるから、支払いのほとんどをボーナス払いにしたい」という人は事前にボーナス払いに充てられる割合を確認しておきましょう。
ちなみに、フラット35は借入額の40%までです。
返済途中で毎月払いだけに変更はできますか?
返済途中での変更は可能ですが、再度審査が必要になります。
1.毎月払い→ボーナス払い併用
2.ボーナス払い併用→毎月払いのみ
どちらのケースともに変更可能な金融機関が多いですが、変更の手数料が発生する場合もあるようです。なおフラット35の場合は、手数料なしで変更できます。
ボーナス支払い分だけを繰り上げ返済したいけど、できますか?
繰り上げ返済をボーナス払い分のみに充当することは可能です。手数料も、通常の繰り上げ返済手数料と変わりません。
ボーナス払いを併用すると金利は高くなりますか?
ボーナス払い併用でも、毎月払いの金利と同じです。
まとめ
住宅ローンのボーナス払い併用というと、マイナスイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし上手く活用すれば月々の返済額を抑える、返済期間を短くできる等のメリットを享受することができます。ご自身のライフプランや資金シミュレーションの結果をよく考慮して、ボーナス払いを利用する・しないを検討してみてください。