分譲マンションに居住する上で、定期的に開催される「総会」。
この総会は、マンション生活における住民の最高意思決定機関と言われています。管理費や修繕積立金といったお金に関することや、規約(住む上でのルール)の見直しなど、検討事項は本当に様々です。
今回の記事では、総会でどんなことを検討しているのか、そしてどのような流れで行われるのかを、実際あった総会の事例を基に詳しくご紹介いたします!
マンションの総会を控えている方や、これからマンションを購入される方の参考になれば幸いです。
1.マンションにおける「総会」とは
1-1.「総会」は管理組合の最高意思決定機関
分譲マンションでは、年に1度決算月の2~3ヶ月後に「総会」が開催されます。この「総会」は、区分所有法という法律に基づき、年1回の開催が義務付けられています。
冒頭でも紹介しましたが、総会では、マンションに住む上でのルール(規約)の見直し、組合収支や点検報告などの報告と承認、さらにはマンションの状況に応じた修繕工事の実施などが決議されます。「マンションに住む上で大事なことは、みんなで意見を出し合って決めていきましょう。」ということですね。
また、総会の参加者は管理組合員(区分所有者)です。そのため、マンションに住む住民と思っていただいて良いかと思います。
※区分所有者と入居者が異なる場合(例えば、賃貸に出している場合の賃借人など)は総会には参加できません。ご注意下さい。
参考までに、マンションのルールを定める法律である『区分所有法第3条』には、
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。
と、規定されておりこの団体が「管理組合」なのです。
マンションは一戸建てとは違い「共同住宅」であり、多くの所有者の共有物なので、この総会でしか決定できないことがたくさんあります。
1-2.「総会」の成立要件
ここでは年1回の開催が義務づけられた総会の、成立要件についてご紹介していきます。
まず始めに総会は、議決権総数の半数以上を有する組合員が出席して(定足数が満たされて)はじめて成立します。
つまり、必要な定足数及び出席組合員の議決権を確認し、議決権総数の半数以上を有する組合員が出席することを要します。定足数に満たない場合は総会を開催できず、後日改めて召集、開催という流れになってしまいます。
※「定足数」とは、標準管理規約(※下記1)上、そもそも総会が成立するために必要な要件ですが、この定足数は「半数以上」であり、過半数ではありません。
例えば、総戸数100戸(議決権総数100)のマンションの総会である場合、定足数は50となり、50人(50世帯)以上の区分所有者の参加があれば、総会は開催されます!
(※1) マンション標準管理規約とは
分譲マンションなどの区分所有建物における管理規約について、一定のガイドラインを示すために国土交通省が作成したモデルであり、各マンションの管理規約の制定、変更する際の参考として利用されるものです。
1-3 総会開催における準備
それでは、「総会」が開催されるまでの事前準備についてご紹介します。
実際に総会の準備を行うのは管理組合の役員や管理会社がメインとなりますが、参考までにご紹介しますね。物件やマンションを管理する管理会社によって多少の違いがありますが、ご了承ください。
【召集通知書(議案書)の作成】
まずは管理組合員の召集から行いますが、この召集は管理組合の役員である理事長が行います。
総会の招集について、区分所有法では、「総会を開く日の少なくとも2週間前までに、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない」と規定しており、この期間は規約で伸ばしたり縮めたりすることができるとされています。
また、総会に参加する管理組合員に召集をかける上では、このような「招集通知」といわれる書類の作成が必要です。
「招集通知」に記載しなければならないことは下記の3点です。
- 総会の日時
- 開催する場所
- 開催の目的 (管理規約の第何条に基づいて総会を開催するのか)
総会の日時や開催場所、そして議案内容などを事前に通知・掲示することにより、
- 参加者の総会参加に向けた日程調整がしやすくなる
- 総会の議案事項と議案する目的を事前に知り、内容を考えてもらえる
この2点に繋がりますね。
※総会の開催における管理組合役員の役割についてはこちらの記事で詳しくご紹介しておりますので、ぜひ参考にご覧ください。
【出席表・委任状・議決権行使書の作成】
上記召集通知書と併せて、管理組合の理事長は「出席表・委任状・議決権行使書」の作成も行います。この書類も召集通知書と同様に事前に配布し、総会開催前までに回収します。
上記見本の通り、「出席表・委任状・議決権行使書」では以下の記入を行います。
- 出欠
総会への出欠を記入。
- 委任
やむをえず総会を欠席する場合、決議を代理人に委ねることが可能です。
総会には絶対に参加しなければならないと思うかもしれませんが、実はそうではありません。「私が委任した●●さんに判断はお任せします」といったイメージです。
- 議決権行使書
2.でご説明した委任とよく似ていますが、議決権行使書を利用すれば総会に参加することなく、自身がもつ議決権を行使できます。
総会での検討議案について賛成または反対という主張ができるのです。
3.の議決権行使書の効力を有効なものにするために、区分所有法では、「総会ではあらかじめ通知した事項についてのみ決議することができる」と定められています。そのため、総会当日に別案件を提案することはできません。こちらも覚えておいていただければと思います。
【召集通知書・出席表、委任状、議決権行使書の配布・掲示】
召集通知書や出席表などの作成が完了したら、次は管理組合員(マンションの住民)などへの告知が必要です。
一般的には、マンション敷地内にある掲示板などへの貼り出しと各住戸への配布を行うことが多いです。しかし、管理規約に特段の定めがなければ、マンション内への掲示だけでもよいとされています。
また、所有者がマンション以外の場所に住んでいる場合などで、住居の変更届けが提出されている場合はその住所へ郵送となりますので、マンションに住んでいなくても総会開催の通知を受け取ることが可能です。
【総会の開催】
上記でご説明しました準備、または各書類の回収を行ったら、いよいよ総会の開催となります。総会にて検討される議題や、総会の流れなどはこのあとの2章、3章にて詳しくご紹介していきます。
1-4.総会の種類 (通常総会と臨時総会)
1章の最後では、総会の種類についてご説明致します。
総会には、「通常総会」と「臨時総会」の2種類があります。これまでご説明してきた総会は「通常総会」の内容です。
簡単に2つの総会の違いをご紹介すると…
- 【通常総会】
- 毎年1回定期的に開催され、ここでは管理組合の決算報告や活動報告、予算についての審議や役員の選任などについて決議が行われます。
- 【臨時総会】
- 文字通り、臨時に開催される総会です。突発的な設備の補修が発生する場合や、管理会社の変更、大規模修繕工事内容の内容検討など年に1度の通常総会だけでは判断できない場合、臨時総会を開くことができます。
2.総会で話し合う内容がわかる! 各議案の内容を解説
1章では総会の成立要件や、開催されるまでの過程についてご紹介してきました。2章では、総会で検討される議案の中身についてさらに詳しく見ていきましょう。
2-1.総会で話し合われる議案内容をご紹介!
一般的な話し合いの議案内容をご紹介していきます。
全ての議案がマンションにお住まいの方に関係する重要な内容になりますので、総会の際には下記の内容をチェックするようにしましょう。
[1]事業報告及び決算報告
事業報告では、今期管理組合でどのような活動を行ってきたか、マンション維持のための点検等を予定通り実施しているかを確認し、決算報告では管理組合のお金は予算計画に基づいてきちんと運用されているのかを確認します。
[2]次期事業計画及び予算決定
今期実施した事業計画を基に次期の事業計画を決定し、その予算も決定します。次期はどのような物にお金を使い、どのようにマンションが変わっていくのかを想定し、確認するようにしましょう。
[3]大規模修繕工事実施
マンションに住んでいる方からの関心も最も高いとされるのが大規模修繕工事。どの位の支出を行って、マンションのどの部分が修繕されるのか、また修繕だけでなく利便性向上のための工事等が含まれているかなどもしっかり確認しましょう。
[4]管理規約や使用細則の制定・改定
マンションに住む上でのルールである「管理規約や使用細則」の制定や改定はマンションでの生活に大きな影響を与えます。ペット飼育の可否や喫煙の制限など場合によっては居住者間でのトラブルに発展するものもあるかもしれませんので、現在からの変更点をしっかり確認しましょう。
[5]利便性や防犯性の向上
社会情勢を鑑みてマンションに新たな設備を増やす話し合いも多数行われています。
利便性向上でいえば、「宅配ボックス」の設置を検討する管理組合も多いようです。
防犯性向上でいえば防犯カメラの設置なども挙げられますね。いずれも生活に関わる内容になりますので、費用対効果も考慮したうえで確認していきましょう。
[6]管理費・修繕積立金改定
消費増税などの理由により避けては通れないのが管理費、修繕積立金の改定です。なぜ値上がりするのか、値上げ後の金額はいくらになるのか、妥当性はどうかなどを確認しましょう。
[5]滞納者への法的措置
管理費等の支払いを滞納している組合員がいると、きちんと払っている人からすれば不公平ですよね。再三の督促をしたにもかかわらず支払を滞納する場合には法的措置をとる必要があります。最終的には強制競売等を行うことになりますので、管理組合主体で検討審議しましょう。
2-2.決議事項一覧と議決権
それでは、上記を踏まえて決議事項、決議要件について一覧表で確認しましょう。
2-1でご紹介した以外の決議事項もございますので、ぜひチェックしてみてください。
区分 | 決議要件 | 決議事項 | |
---|---|---|---|
普通決議 | 出席議決権の過半数 | 1 | 収支決算および事業報告 |
2 | 収支予算および事業計画 | ||
3 | 管理費等および専用使用料の額ならびに賦課徴収の方法 | ||
4 | 役員の選任・解任など | ||
5 | 管理費・修繕積立金等の改定 | ||
6 | 敷地および共用部分の変更(形状等の著しい変更以外) | ||
7 | 建物の2分の1以下が滅失した場合の復旧 | ||
8 | 共用部分等の特別管理のための資金借入など | ||
9 | その他、管理組合の業務に関する重要事項など | ||
特別決議 | 組合員総数および 議決権の4分の3以上 | 1 | 敷地および共用部分等の変更(大規模修繕工事など) |
2 | 管理規約・使用細則の変更 | ||
3 | 建物の2分の1を超える部分が滅失した場合の復旧 | ||
4 | 義務違反者に対する訴えの提起 | ||
5 | その他、総会において特別決議とした事項 | ||
組合員総数および 議決権の5分の4以上 | 1 | 建物の建て替えについて |
この表で最初にチェックいただきたいのは、「決議区分」です。
総会での決議は2種類あり、内容によって「普通決議」と「特別決議」に区分されます。
- 【普通決議】
- 出席議決権の過半数以上の賛成により決します。
- 【特別決議】
- 組合員総数および議決権総数の4分の3以上の賛成で決します。
「建物の建て替え」などに関しては組合員総数および議決権総数の5分の4以上の賛成で決定します。
決議内容によって決議要件が変わるということは、しっかりと把握しておきましょう。
管理規約の変更や、建物の建て替えなど、生活に与える影響が大きいものに関しては、「出席者の過半数ではなく、さらに多くの賛成が必要になる」といったイメージです。
3.【実際の総会が理解できる!】総会の開始~終了までの流れを一挙ご紹介
3章では、分譲マンションで実際にあった総会の一連の流れを一挙ご紹介いたします。
総会の開始から終了までの流れや、どのような議題について検討しているのかがわかるかと思いますのでぜひご覧ください。
※個人情報等の配慮により、架空のマンション名・仮名等にしています。
まずはじめに、総会の日時や場所、進行の流れからチェックしていきましょう!
《○○マンション管理組合 第○期 通常総会》
- 開催日時:2019年○月○○日 17:30~18:30
- 開催場所:○○公民館
- 出席状況
組合員総数 44名 有効出席数 36戸 (内、委任状6戸・議決権行使書10戸)
議決権総数 44個 有効議決権数 36個 (内、委任状6戸・議決権行使書10戸)
I.開会の挨拶と総会の成立宣言
i)開会の挨拶(理事長より)
「本日はお忙しい中お集まり頂き、誠にありがとうございます。
これより、○○マンション管理組合第○期通常総会を始めさせていただきます。
尚、本総会の議長については、当管理組合理事長である私、Aが務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。」
ii)総会の成立宣言(管理会社担当者より)
「それではまず初めに、本総会の成立確認を行います。
総会の成立要件は、当管理組合の議決権総数「44」の半数以上となる「22(定足数)」以上の出席が必要となっております。
本日出席者が20件、委任状出席が6件、議決権行使書出席が10件、合計で36件となり、本総会の定足数を満たしておりますので、本総会は適法に成立することを宣言致します。」
iii)議事録署名人の選任(管理会社担当者より)
「続きまして議事録署名人の選任に移らせていただきます。
本総会議事録署名人は、議長A様と出席組合員2名のBさん、Cさんにお願いしたいと存じますので、よろしくお願い致します。」
II.議案審議
[議長 A様]
それでは事前に配布しております「通常総会議案書」の内容に沿って議事を進行して参ります。
【第1号議案】第○期事業活動報告及び収支決算報告について
[議長 A様]それでは第1号議案の説明を管理会社よりお願いします。
[管理会社]……(説明)。第1号議案のご説明は以上となります。
[議長 A様]それでは質疑応答に移りたいと思います。本議案について何かご質問があれば、挙手の上、部屋番号・氏名を述べてご発言ください。
※「質問」⇒「議長」若しくは「管理組合役員」より回答
質疑応答が終わったら
[議長 A様]それでは本議案の採決に移らせていただきます。第1号議案を承認される方、挙手をお願いします。
- 過半数以上の賛成がある場合
⇒挙手が過半数以上(出席議決権数の過半数)のようですので、本議案は承認されました。
- 過半数に満たない場合
⇒挙手が過半数を超えておりませんので、本議案は否決となりました。
以上で、第1号議案の審議を終了します。続いて第2号議案の審議に入ります。以降、すべての議案について、同様の進行となります。
~参考 この総会で決議されたその他の議案~
【第2号議案】 次期管理組合の役員選任について
【第3号議案】 管理規約民泊禁止条文追加について
【第4号議案】 給水ポンプ分解整備について
【第5号議案】 個人情報保護法改正に伴う防犯カメラ運用細則の制定について
【第6号議案】 管理会社(管理委託契約)の更新について
【第7号議案】 次期事業計画及び収支予算案について
4.まとめ
今回の記事では、マンションの総会についてご紹介しました。
総会はマンションへの入居後定期的に開催され、生活していく上でも大変重要な内容が話し合われる機会です。ご紹介した議案内容は、数ある議案の中でもほんの一部ですが、どんな内容なのかを少しでもイメージしていただければ幸いです。
ご自身が入居しているマンションをさらに住みやすく、快適なマンションにしていくためにも、積極的に総会に参加し、住民の意見を発信していきたいですね。
また、入居者だけでは解決が難しい内容でも、管理会社がサポート入ることで、解決に向け進むということもよくあります。入居者だけでなく、関係する人たちが一致団結してより良い生活を作っていきましょう。
総会を行う「管理組合」については、こちらの記事で詳しく解説しています。
合わせて読んで、住みやすいマンション作りに日頃から取り組んでいきましょう。
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