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大規模修繕
マンションライフ

マンション住まいなら知っておくべき!大規模修繕工事を徹底解説

分譲マンションに居住するなかで、一定期間ごとに実施される「大規模修繕工事」。
その名の通り、マンションの共用部分全体を点検し、劣化部分や破損部分を修繕することです。
自分自身はもちろん、他にも多くの住民が居住するマンションなので、定期的に修繕工事を行って、建物の資産価値を維持しておきたいですよね。

この大規模修繕工事は、建物の状態把握、点検、工事内容の決定など様々なプロセスを経て実施されます。
今回の記事では、みなさまが「こんな準備が必要なんて、初めて知った!」と慌ててしまうのを防ぐため、大規模修繕工事の全容と、お住まいのマンションが大規模修繕工事を行うときに住民が気をつけておきたいことを詳しく解説していきます。

これからマンション購入を考える方や、すでにマンションに居住中の方の参考になれば幸いです。


1.マンションの大規模修繕の目的と流れ

マンションにおいて、共用部分の修繕や各設備のメンテナンス工事は、

  1. 日常的に行う小規模な工事
  2. 定期的に計画を立てて行う工事

この2つに分けられ、「大規模修繕」は②にあたります。
しっかりとした計画を立てて工事を行うため、工事をする箇所は非常にたくさんありますが、具体的にいくつか例を挙げると、「鉄部や外壁の塗装工事」、「屋上の防水工事」、「給排水管の工事」などが該当します。

マンションの住民で構成された管理組合が、「長期修繕計画」(下記でもう少し詳しくご説明します)を作成し、修繕積立金(3章にてご紹介します)を使って実施するもので、準備から工事完了まで長期間を要し、工事費用も高額になるのが特徴です。

大規模修繕工事箇所

一般的には「長期修繕計画」という建物竣工時~30年後までの「修繕における計画書」に基づいて工事が行われることが多いです。「長期修繕計画書」には、建物竣工時から何年経過したら、どの設備に、いくらぐらいの費用をかけて修繕しましょうという計画が記載されています。
ただし、建物の劣化具合等は確実に予測できないこともあるため、計画書通りに修繕が進むという訳でもありません。長期修繕計画は工事時期の目安と考えておきましょう。

1-1 大規模修繕は、「劣化部分の回復」と「資産価値の継続」が目的

近年の分譲マンションは、鉄筋コンクリート造が大半かと思います。鉄骨や木造と比較すると、丈夫で長持ちしそうなイメージがあるかと思いますが、年数の経過による建物の「劣化」は進んでいきます。

  • 鉄部の錆び
  • 外壁の汚れやタイルの剝がれ
  • 給排水管の劣化による漏水

などの状態が年数が経つにつれて進んでいくと、マンション居住者が快適に過ごせなくなるだけでなく、深刻なトラブルに発展することもあります。そして結果的に「マンションの資産価値の低下」に繋がってしまいます。
大規模修繕の第一の目的は、劣化したマンションの躯体や各設備の状態を、適切な時期に適切な方法で修繕し、初期の状態に戻すこと。そして、マンションの資産価値を回復させること。なのです。

ここで、上述した「劣化」とは、どのような箇所がどうなっている状態かがより具体的にわかるよう画像でご紹介していきます。「劣化」は大きく3種類に分かれます。

  1. 物理的劣化
    物理的劣化外壁タイルやコンクリート部分は年数経過により、ひび割れや防水機能の低下などが進行します。
    物理的劣化とは、「建物の傷み」を指します。
     
  2. 機能的劣化
    機能的劣化自動車や家電のモデルチェンジと同様に、「建物の造り」や建築手法も時代により変化していきます。
    機能的劣化とは、上記変化により「遅れをとっている機能・性能」を指します。
     
  3. 社会的劣化
    社会的劣化2.の機能的劣化と似ていますが、この写真のような共用部分にある噴水施設やオブジェなども時代により社会的要求は変化します。
    社会的劣化は、上記変化による「現状の社会ニーズに対応できていない仕様やデザイン」を指します。

大規模修繕工事では、このような「劣化」に対し修繕工事を行うことで、建物全体の機能や価値の回復を図るのです。

1-2 マンションの大規模修繕工事完了までの流れ

その名の通り「大規模」な工事ということもあり、修繕工事が始まるまでには様々な過程を踏んでいく必要があります。ここではマンションの修繕工事完了までの流れをご説明していきます。

  1. 大規模修繕工事に向けての体制づくり
  2. 建物の現状を理解する
  3. マンション住民への周知
  4. 修繕工事の内容決定・概算金額の計画
  5. 施工会社の選定
  6. 住民への工事前周知と対応の準備
  7. 大規模修繕工事の着工
  8. 大規模修繕工事の完了

多くの過程をクリアしていきながら最終的に工事着工、そして完了へと繋がっていくのです。
それでは、[1]~[8]番までの項目を簡単にご説明していきます。

[1]大規模修繕工事に向けての体制づくり

これまでご説明したように、大規模修繕の目的は「不具合の改善」や「設備のグレードアップ」が主な目的です。この目的を再度明確にすること、そしてその為の体制を整えていくことが大事です。
そのためまずは修繕の必要性や目的、体制づくりから検討を始めます。

[2]建物の現状を把握する

大規模修繕工事を行う上では建物の傷み具合などをしっかりと把握する必要があります。
マンションの現状を調査することはもちろん、建物に関する資料に目を通し、事前の確認をするとともに、マンション住民の意向などを把握することも大切です。

[3]マンション住民への周知

建物の状況について住民全員の共通理解が必要です。
ここでは建物診断結果やアンケート調査結果などを周知します。

[4]大規模修繕工事の内容決定・概算金額の計画

上記[2]・[3]の結果から、大規模修繕工事にかかる概算費用を算出します。
修繕積立金の積み立て状況などを考慮して、工事の時期、内容及び費用に関する計画を検討します。

[5]施工会社の選定

ここでは実際の工事をしてくれる会社を最終決定します。
まずは施工会社のリストアップから始まり、見積もり金額の比較や工事内容の比較、そして住民で組織された管理組合での決議に基づき、請負契約に至ります。

[6]住民への工事前周知と対応の準備

大規模修繕工事の期間中は生活に不便が生じます。またマンションの近隣にも迷惑がかかることもあるため、細かな対応策を検討しておく必要があります。
また、共用部分の修繕であっても、居住者の協力を得なければ工事できない箇所も多々あるため、工事中に生じる状況を想定し、住民に十分な情報を事前に知らせておくことが大事です。

[7]大規模修繕工事の着工

多くの準備を行い、いよいよ工事がスタートします。住民や施工会社、管理組合などが協力し合い、工事を進めていきます。
適切な情報交換を行うとともに、関係者全員がコミュニケーションをとることで工事が進んでいきます。

[8]大規模修繕工事の完了

工事が完了したら管理組合として工事が終了したことを確認し、その旨を住民全員に通知していきます。
工事完了報告会などを開き、経過報告や今後の対策などを共有することが望ましいといわれています。

1-3 修繕工事の内容と、実施時期の目安

ここでは、具体的にいつ、どの箇所について修繕を行っていくのかをご紹介します。お住まいのマンションによって、建物の劣化具合や、各設備におけるメンテナンス時期が変わってくることが予想されるため、下記は一例としてご覧ください。
上述しました「長期修繕計画」では、12年周期で大規模修繕を行う計画となることが多いですが、最近の実績では12年~15年程度で実施されているマンションが増えてきています。

長期修繕計画の例


2.住民の皆様必見! マンションの大規模修繕期間に気をつけるべきこととは

1章では大規模修繕工事とは何か、またどのような箇所について工事を行っていくかなどの概要をご紹介しました。2章では、大規模修繕の工事期間中、「住民の皆様が注意しなければいけないこと」に焦点を当てて、準備や対策ができるようご紹介していきたいと思います。

~大規模修繕工事中はここに気をつけよう!~

●準備編

バルコニーの片付けについて

大規模修繕工事では、各家庭のバルコニー内の修繕も行います。「別に自分でするからしなくていいのに。」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、法律上厳密に言うと「共用部分」に位置づけられるバルコニーも修繕工事の範囲内なのです。

それではバルコニー内の修繕工事を行う上で、住民が事前に準備しておくことを確認してみましょう。

  1. 窓の網戸は各自で取り外し、室内にて保管しましょう。
    バルコニー工事では、窓サッシ廻りの塗装工事や防水工事、水洗いなどを実施します。網戸が取り付けられたままだと工事の邪魔になってしまい、実施できなくなる場合があるのです。それに加え、万が一作業員や工具類が網戸に接触してしまうと、傷んだり、破れたりする恐れもでてきますので、事前に取り外しておき、お部屋の中で一時的に保管しておくようにしましょう。
    網戸の取り外しがどうしても自分ではできない場合や、取り外し方法がわからない場合は無理なさらず、工事担当者までお問い合わせされることをオススメします。
     
  2. バルコニー内のすべての荷物の片付けが必要です。
    バルコニー内に物置、植木鉢、プランター類、床置きの物干し台などの物を残したままにしてしまうと、修繕工事作業がスムーズにできなくなります。その為一時的に室内で保管するか、この機会に処分されることをオススメします。
    業者さんにもよりますが、一定期間敷地内にゴミコンテナが設置されるケースもありますので、そちらを使うと余計な手間がかからず、楽かもしれませんね。

    また、鉢植えや、プランター類は室内での保管が基本ですが、管理組合の意向によっては共用部分のスペースに一時的に保管するケースもあるそうです。

バルコニーの準備については、こちらの記事で詳しく解説されています。合わせてご覧ください。
もっとわくわくマンションライフ「マンション大規模修繕工事におけるバルコニーの準備とは」(外部サイトを開きます)

敷地内駐車場位置の移動について

大規模修繕工事期間中の敷地内駐車場は、区画の場所によっては一定期間移動しなければならないケースもでてきます。特に注意が必要なのは、建物自体のすぐ近く(外壁ラインのすぐ下)の駐車区画を利用している方々です。大規模修繕工事中、建物の外周部には工事用に足場が設置されるため、駐車できないのが理由です。

この駐車場移動に関しては、上述したバルコニーの片付けなどの準備とは違い、一般的にはマンションの管理会社や施工業者に協力してもらい、マンション周辺の月極駐車場などを探してもらうケースが多いようです。
一時的ではありますが、普段の駐車区画と異なる場所への駐車になりますので、この点も注意しておきましょう。

●対策編

洗濯物が干せない日は、共用の乾燥機を利用

上述したように、工事期間中はバルコニーの使用が制限されますので洗濯物などが干せない日も多くでてきます。その際の対策についてご紹介します。

参考に、バルコニー修繕工事中の様子を見てみましょう。

天井や壁、雨どい等の再塗装工事と床の防水工事を行う上で、窓廻りにビニールの養生を行う必要があります。その為、洗濯物を干すことはもちろん、バルコニーへの出入りができなくなるのです。

洗濯物に関しては、いつ干せないのかが分からなければ対策はできません。その点はエントランスに置かれている工事用のお知らせ掲示板を確認しましょう。マンションによって告知方法は違うかもしれませんが、毎日夕方には、翌日のバルコニー利用の可否について掲示板にて告知されることが多いです。

そして、洗濯物が干せないというお困りごと対策のために実施されるのが、「共用部分への乾燥機設置」です。この対策は物件により異なるのですが、乾燥機を設置するケースは比較的多いそうです。
この乾燥機は住民みなさまで使用することになるので、使用時間帯、乾燥済みの放置洗濯物の仮置きボックス、防犯カメラの設置など管理組合にて事前にルールを決めておくとよりスムーズに運用できますね!
もちろん、ご自宅の浴室に浴室乾燥が装備されている場合はそちらもぜひお使いいただくことをオススメします。

共用部の乾燥機の使用ルールについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
もっとわくわくマンションライフ「マンション大規模修繕|事前に決めておきたい乾燥機のルール」(外部サイトを開きます)

足場設置による防犯面は補助ロックで対策を

工事期間中の足場設置に伴い、第三者が足場をよじ登ってバルコニーに侵入する可能性もゼロではありません。そのため、防犯対策もしっかり講じておく必要がありますが、この対策には様々な方法が用意されています。
一般的なのは、「窓サッシ用の補助ロックの無償貸し出し」です。バルコニー側の窓に設置しておけば、仮にバルコニーに侵入されても窓は開きません。
その他にも「人感センサー付防犯ライト」や、「足場内センサビーム設置の機械警備方式」などの方法がありますので、工事説明会の際に、防犯対策についてもしっかり確認しておきましょう。


3.大規模修繕の費用となる「修繕積立金」を解説!

3-1.「修繕積立金」が大規模修繕の費用

マンション購入を検討する際に、住民(所有者)にかかるランニングコストである「修繕積立金」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。この「修繕積立金」こそが、将来的に発生する大規模修繕工事に要する費用となるのです。
この修繕積立金は、その名前の通り長期間に渡り、計画的に積み立てていきます。そして、修繕工事を実施する際は、住民みなさまが毎月コツコツと積み立ててきたこの費用を使うのです。
これまでご説明してきた修繕工事について、その内容、時期、費用等を一定期間ごとに見直していくとともに、修繕積立金の額も改定していくことが一般的かと思います。

例えば、入居当初は毎月5,000円程度に設定されていた修繕積立金も、10年後には毎月10,000円、20年後ともなると毎月20,000円というように、建物の劣化状態などによって、計画的に増額していくことも、分譲マンションではよくある話かと思います。
物件によってこの修繕積立金の額や、見直し方は違うかと思いますが、これからマンション購入を検討される方や、すでに居住中の方は、この内容を把握しているほうがいいでしょう。

修繕積立金については、こちらの記事で詳しく解説しています。
合わせてご覧ください。

分譲マンションの管理費と修繕積立金をかんたん解説
分譲マンション特有の費用である「管理費」「修繕積立金」。使用用途から金額の決まり方、将来的な増額の可能性まで、分譲マンション所有者であれば知っておきたい基礎知識を解説します。

3-2.突発的な費用!「一時徴収金」に注意!

3-1とは別に気をつけておきたいことは、一般に「一時徴収金」と呼ばれるお金についてです。
管理組合の収支状況や、修繕工事内容に伴う工事費用によっては大規模修繕時に住民からお金を徴収することもあります(積み立てられた修繕積立金では工事費用が賄えないから住民皆様から少しずつお金を集めます。というイメージです)。
この場合、一般的には単純に総戸数で按分するわけではなく、各住戸の平米数や持分割合に応じて按分されることが多いようです。
このような費用が突発的に発生することを防ぐために、修繕積立金額は計画的な見直しが必要です。

これは筆者の個人的な意見ですが、大規模修繕時は、積み立てられた修繕積立金と、修繕工事内容(工事費用)を関係者全員が確認しながら積立金で賄える修繕工事内容にしていくことが得策かと思います。


4.写真で解説!大規模修繕の必要性とその効果

この章では、各共用部分の修繕工事について、修繕前と修繕後の状況を写真にてご紹介していきます。
修繕工事をせず、放っておくとどうなるのかという簡単な解説もご説明しますので、ぜひ参考にしてください。

屋上防水

屋上の防水シートは屋上床のコンクリート上に張られており、雨水の浸入防ぐ効果があります。
防水シート劣化による「穴あき」や剥離はシート裏への浸水の危険があり、住戸内への漏水の危険もあります。そのため定期的な補修が必要となります。

屋上防水

バルコニー・共用階段

バルコニーや共用階段のコンクリートひび割れも経年劣化に伴い悪化していきます。放っておくと、漏水や、亀裂が悪化しますので定期的に修繕を行います。

バルコニー・共用施設

外壁工事

外壁部分の塗装部分も劣化の進行によって、雨だれ跡や、コンクリートの爆裂を引き起こす可能性もでてきます。入居者のみなさまの安全を第一に考え、定期的に修繕を行います。

外壁工事


5.まとめ

今回はマンションの大規模修繕工事についてご紹介しました。
自分たちが住むマンションが、数十年先どのような状態になっているかを想像することは難しいですが、適切な時期に適切な方法で修繕していくことが非常に重要です。そしてマンションの資産価値を常にいい状態で保ち続けられるよう関係者全員が一体となって協力することも大事です。

また、工事を行うのは業者さんですが、工事期間中の準備や対策の中には、入居者の皆さまに行っていただくこともたくさんあります。工事が始まってからバタバタと慌てることのないよう、準備や対策についてもこの記事が参考になれば幸いです。

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