一軒家を検討する人からすると、分譲マンションの管理費や修繕積立金は「もったいない!」という意見もあります。
ただし、管理費(日常的管理)は便利・安心サービスを何十世帯もある共同住宅だからこそ成り立つ話で、一軒家など個別で取り入れるには個人負担額が大きくなりすぎて一般家庭で採用するには難しいように思えます。
一方の修繕積立金(長期的管理)においては、一軒家も将来のリフォームのために本来必要なのですが、計画的に積み立てを行っている世帯はほとんどいないため、いざリフォームをするとなると何百万円もの突然の出費となります。
もしそのときに自己資金が貯まっておらず、かつ住宅ローンも残っているということになれば、リフォームローンとして上乗せされることになりますからローンの残債が膨らむという事態が起きてしまいます。
分譲マンションの購入にあたって、入居後毎月支払っていかなければならないものが3つあります。
それは、
- 住宅ローン
- 管理費
- 修繕積立金
です。
住宅ローンは既にご存知の方もいらっしゃると思いますが(住宅ローンに関する参考記事はこちらから)、ここで注目したいのは「管理費 」と「修繕積立金 」です。
目次
1.そもそもマンションの管理費は何のために使われるの?
管理費はマンションの共用部分(エントランスホール、駐車場、エレベーターなど)の管理に使用される費用のことを指します。
管理費と聞くと、共用部分の電気代をイメージしがちですが、これら以外にも管理人さんやコンシェルジュなどの人件費、共用部分の火災・地震保険料、エレベーターのメンテナンス費用、植栽の水やり代、そして清掃業務費などが挙げられます。
また、昨今の分譲マンションは警備会社と提携しているところが多く、お部屋にある非常ボタンを押せばすぐに警備会社がかけつけてくれるセキュリティシステムが常設されておりますが、この警備料金も管理費の中に組み込まれています。
これらはマンション全体で一括契約することにより、充実した管理・セキュリティサービスを割安で受けられるという仕組みになっています。
2.マンションの管理には大きく分けて「日常的管理」と「長期的管理」がある
「日常的管理」
毎日快適に過ごす為に必要な共用部分の清掃業務、管理人さんによる清掃・巡回業務、家族を守ってくれるセキュリティシステムなどが一例です。
これらのサービスを受けるための費用が「管理費」ということになります。
(マンションの代表的なセキュリティシステム図)
「長期的管理」
建物劣化診断を含む長期修繕計画に基づいた小・中・大規模修繕のことを指します。
(※写真は株式会社リフォームアナブキの公式HPより引用)
情報・通信設備や消防・防災用設備の取替および修繕や、給排水などの配管設備の維持管理、また外壁・床・屋上などの防水施工や外壁タイルなどの補修と多種にわたり定期的に修繕・取替えを行っていきます。
これを行っていくための費用が「修繕積立金」です。
仮に管理費・修繕積立金が0円のマンションがあるとするならば、どんなマンションなのでしょうか。
- オートロックシステムがなく、不審者など建物に誰でも自由に出入りが出来るため、家族の身をいつも心配しながら生活をしないといけない。
- 管理人さんや監視カメラのような見張りがいないため、郵便ポストには毎日たくさんの勧誘チラシが入ったり、玄関ドアの前まで訪問販売などが来たりとうっとうしい。
- 共用部分にゴミや砂ぼこりなどが日を追うごとに増えていき、不潔な住まいに。
- マンションの共用灯は点いておらず、夜や朝方は暗く、薄気味悪い建物に。
- エレベーターは備わっておらず、階段をつかって上り下りを強いられる。
- 建物に不具合が見つかった場合に、多額の修繕費用が世帯別に必要となり、修繕をしないという選択肢を取り続ければいずれは外観もボロボロになる。
- 給水・排水管も傷み日常生活にも支障をきたすような事態に陥ってしまう。
3.注意!マンションの管理費が安ければ良いというものではない
管理費や修繕積立金、駐車場代などのランニング費用が安いと一見良い物件かなと思いがちですが、これには販売業者が施したカラクリがありますので知っておくと良いでしょう。
3-1.管理形態のレベルを下げて管理費を安くする
管理費が他社マンションより安い場合において、まず違いが出てくるのが管理人さんの勤務形態です。例えば管理人さんの常駐時間が平日の毎日9時から17時までのところに比べ、管理費が安いところは9時から12時までであったり、それでいて週に2回程度の出勤であることもあります。つまりは管理費を安く見せかけるために管理形態のレベルを低く設定しているということです。
管理人さんはマンションに入居してから一番近い存在でもありますし、一般的に「マンションは“管理を買う”」とも言われているように、管理形態において事前にマンション販売業者に確認するようにしましょう。
3-2.駐車場代を0円にしてランニング費用を安く見せかける
また、駐車場0円を謳っているマンションも要注意です。駐車場0円のマンションは、実はその分が管理費に上乗せされているケースが大半です。
例えば、管理費が14,000円、駐車場代6,000円にすべきところを、管理費20,000円、駐車場代0円にしています。販売する上では“駐車場0円!”というのは広告上において謳い文句になるので良いのですが、車を所有していない入居者の方からすると、車に乗らないのに管理費として支払うわけですから、不公平さを感じる方が多いようです。駐車場代は管理費に充当される項目となりますので、管理費を上げれば駐車場代が安くなる、逆に管理費を下げれば駐車場代が高くなるような仕組みになっています。
複数のマンションを比較するときは、[管理費+駐車場代]の合計額で判断するようにしましょう。
〔これはどうなの!?管理費・修繕積立金Q&A〕
Q.管理費は金額が変動することはあるのか?
A. 修繕積立金とは異なり、管理費が上がっていくことはあまり考えにくいですが、消費増税や人件費の上昇、そして電気料金の著しい上昇が続いた場合などは、管理費が改定される可能性はゼロとは言い切れません。
また、管理人さんの勤務時間をこれまで9時から17時勤務だったのを複数人で24時間体制にしたり、共用部分にスポーツジムや温泉施設、シアタールームなど併設しているマンションなどでこれらの運営時間を変えるなどして管理やサービス体制を今まで以上に強化、充実させると、管理費は当然に変わる可能性はあります。
Q.修繕積立金は金額が変動することはあるのか?
A. 当初に30年間の修繕計画案が作成されていますが、想定通りに経年劣化するとも限りませんので、5年前後で定期的に見直しをしていくことが多いようです。
実際かかるであろう費用〔想定〕に合わせて修繕積立金総額〔貯金〕にゆとりを持たせる計画になっているため、修繕する項目が多くなる年数に比例して徐々に修繕積立金も上がっていくことが一般的です。
中古マンションはすでに修繕積立金が見直しされた金額になっているので、築年数が古いものは新築マンションと比べて高い金額となっています。中古マンションで本体価格が安くても、支払額にしてみると新築のほうが意外に安いなんてこともあり得ますので、よく確認するようにしましょう。
(※国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」より引用)
≪まとめ≫
分譲マンションにおいて住宅ローンの支払い以外で必要な「修繕積立金 」「管理費 」「駐車場代 」。
管理形態のレベルを下げることで管理費を安く設定していたり、管理費と駐車場代の割合をアンバランスに設定してどちらかを安く見せる、といった場合があるので、分譲マンション検討する際はこれらを踏まえて事前によく確認するようにしましょう。