2016年から始まった電力自由化。
当時は「電気代見直し!」「電気代がお得!」など、「自由化によって電気料金が安くなる」ことをうたった広告をよく見かけたのではないでしょうか。
しかし、2021年2月には「電気代が大幅値上げ」のニュースが流れました。
電気をたくさん使用すれば電気代が高くなるのはわかりますが、電力自由化で安くなったはずの電気料金がなぜニュースになるほど大幅に値上げすることになったのでしょうか?
その原因は「電力供給の仕組み」と「料金プランの仕組み」にあります。
今回は、電気代の大幅値上げの問題を、この電力供給の仕組みと料金プランの仕組みをもとに解説しています。
電気代が決まる仕組みを知れば、電気料金のプランの違いも理解しやすくなります。電力会社の乗り換えや電気料金のプラン変更を検討している方も、ぜひこの記事を参考にしてください。
1.電力供給の3つの分野「発電」「送電」「小売」
電力の供給は大きく分けると3つの分野があります。
- 発電・・・電気を作る
- 送電・・・作った電気を電線で送る
- 小売・・・電気を販売する
自由化になるまでは、この3つの分野を1つの地域電力会社が担っていました。しかし自由化により「3.小売」事業は登録制で自由に取り扱いできるようになり、各社が販売を始めました。
ちなみに2021年2月現在、登録されている小売電気事業者は約700社あります。なかには地域電力会社同様に自社で発電設備(仕組み)を所有する会社もありますが、多くは(1)発電された電気→(3)小売電気事業者が購入→(2)送電事業者の送電で複数の会社を経て各家庭に電力供給をしています。
2.発電された電気が余ると「日本卸売電力取引所(JEPX)」で売買される
続いて、(1)発電された電気を(3)小売電気事業者が購入するまでの流れを見てみましょう。
余った電気は貯めておくことはできない
まず前提ですが、現在の技術では、発電によって作られた大量の電気を貯めておくことができません。電気エネルギーは常に高速で動いているため、そのままの状態では貯めておくことができないのです。
これが少量の電気であれば、電気エネルギーを違うエネルギーに変え、必要な時に電気エネルギーとして利用することは可能です。例えば蓄電池がそうです。蓄電池は電気エネルギーを化学エネルギーに変えて貯めておくものです。
しかし発電所で作られた大量の電気は貯めておけないため、発電すればすぐに使用するしかありません。そのため発電所は天候や気温などから必要とされる電気を予測し、実際に使用されている量に合わせて電気を作ります。
余った電気の価格は変動している
発電された電気の全てがすぐに使用されれば良いのですが、余ってしまうこともあります。そこでその余った電気を有効的に利用するため、2016年電力自由化にあわせて、この余った電気を売ることができる仕組みがつくられました。
この余った電気を売買できる取引所を「日本卸売電力取引所(JEPX)」と言います。小売電気事業者の多くはこの「日本卸売電力取引所」で電力を購入し、各家庭に供給しています。日本卸売電力取引所で余った安い電気を購入し、契約者に販売することで利益を生む仕組みとなっているのです。
当然ながら電気が必要という需要が高ければ価格は高くなり、逆に需要が低ければ安くなります。取引されている電気量と価格はウェブサイトでも確認できます。
日本卸売電力取引所(JEPX)ウェブサイト
3.小売電気事業者の料金プランは「変動型」と「固定型」の2種類
次は(3)小売電気事業者が各ご家庭に電気を供給するときの、料金プランの仕組みです。
各ご家庭で小売電気事業者が供給している電気を契約した場合、電気の料金プランは2種類です。
- 市場連動型(変動型)
- 市場連動型以外(固定型)
(1)市場連動型は「日本卸売電力取引所(JEPX)」の価格に連動して電気代が決まります。(2)市場連動型以外の多くは電気の単価が固定されており、使用した量により電気代が決まります。
今までは「日本卸売電力取引所(JEPX)」の価格は安定して低く推移してきていました。そのため(1)市場連動型は価格上昇リスクはあるものの、(2)市場連動型以外より電気料金は安い、逆に(2)市場連動型以外は価格上昇リスクはないものの(1)市場連動型よりは電気料金が高い、という料金プランの説明がされていました。
その考え方が崩れたのが、2021年冬の電気代高騰の問題です。
4.2021年冬の電気代高騰問題の経緯
2020年12月~2021年1月にかけて日本を襲った大寒波。高速道路の立往生など問題になったこともまだ記憶にあるのではないでしょうか。
その寒波の影響により、電力消費量は一気に増加しました。さらに火力発電に必要な資源である液化天然ガス(LNG)も資源不足により価格が高騰。これらの事象が重なり、電力供給が逼迫した状況になってしまいました。
その結果、日本卸売電力取引所(JEPX)の卸売価格が急激に高騰してしまいました。市場連動型の電気料金を契約しているご家庭では、電気料金が今までの数倍~10倍近くまでの値上がりとなってしまうことに。それが各メディアに「電気代高騰問題」として取り上げられたというのがこの価格高騰問題の経緯です。
この高騰問題はその後、経済産業省から対応要請が発表されます(経済産業省「卸電力市場価格の急激な高騰に対する対応について」)。
そして、小売電気事業者は値上がり分を負担する、あるいは支払いを分割払いに変更する、などの対応に追われることとなりました。
この問題の影響は「市場連動型」料金プランだけにとどまりません。
市場連動型以外の契約の場合、仕入れ値は変動しているにも関わらず各家庭の電気料金単価は固定単価のため、「小売電気事業者が仕入れた電気代 > 販売価格」となり、小売電気事業者は供給すればするほど大幅な赤字となってしまいました。もしも小売電気事業者が倒産してしまった場合は、電気事業法により地域電力会社の供給を受けられるようになります。しかしその場合、今まで通りの安い電気料金プランではなくなってしまいます。
いずれにせよ、今回の電気料金の引き上げは、電気の自由化によって引き起こった問題といえます。
5.まとめ
筆者も今回この記事を執筆するまでは、TVやお店で見た「〇〇電気に変更すればでお得!」広告のイメージから、漠然と「乗り換えると安くなるんだ!」という印象しかありませんでした。しかし、詳しく調べてみると、思ってもないリスクがあること、そして、そのリスクが現実に起こってしまうことへの怖さを感じました。
「ただ電気の契約を変更するだけ」と軽く考えず、何事もきちんと調べ、理解した上で契約することが重要です。
みなさんも、電力会社の乗り換えや電気料金プランを変更は、電力供給の仕組みとリスクをしっかり把握して検討しましょう。
<電力会社・電気料金プラン検討のポイント>
電気をどの会社と契約するのか?
- 供給の流れのどこまでを担当している会社なのか
- 電気の仕入れ値の変動リスクにどれくらい対応できる会社なのか
料金プランは市場連動型かそれ以外か?
- 市場連動型なら料金変動のリスクを想定しておく
最後に、あなぶきグループの電力会社「日本電力」の料金プランについて説明します。
日本電力が高圧電力を購入し、各マンション内に設置した設備にて家庭用電力、低圧に変圧し供給する仕組みです。基本的には発電事業者から購入し、皆様に供給しております。電気料金は市場連動型ではなく、単価固定型になっております。
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