新築分譲マンションの中には、高圧一括受電サービスを導入している物件が増えてきました。導入する最大のメリットは電気代の削減ですが、なぜ電気代が安くなるのか、その理由はご存知でしょうか?
高圧一括受電サービスを扱う電気事業会社に在籍していた経験のある筆者が、サービスの仕組みと、入居前のチェックポイントについて解説します。
目次
マンションの高圧一括受電サービスの仕組み
マンション全体で単一の電力契約(高圧)を結ぶ
高圧一括受電サービスとは、マンション1棟分の電気を高圧でまとめ買いし、敷地内に設置した受変電設備(キュービクル・電気室)で低圧に変圧して各住戸に供給するサービスです。
一般的には、管理組合がマンション全体の電力契約(高圧)を結ぶことになります。

高圧一括受電で電気代が安くなる仕組み
そもそも電気の契約は、受電電圧によって個人の住宅や小規模な店舗などが対象の低圧と、工場やビル・学校が対象の高圧(さらに大規模工場向けの特別高圧)に分けられます。
発電所で作られた電気は超高電圧で送り出され、その後、いくつもの変電所を経て降圧されながら送電されます。
低圧受電は多数の変電所を経由したあと、最終的に電柱に設置された変圧器で100ボルトまたは200ボルトに加工して家庭に配電されますが、高圧受電はそれよりも通過する変電所が少なく降圧する手間がかからないことから、低圧の契約に比べて料金が割安に設定されているというわけです。
マンションにおいては、各住戸(専有部)が個人住宅向けの低圧受電契約を個別に結ぶ方式が一般的でしたが、住戸(専有部)全体とエレベーターや給水設備などの共用部を合わせたマンション全体で高圧受電の一括契約を結ぶことで、単価の安い電力を調達できるようになります。
高圧一括受電サービスのあるマンションに入居する前のチェックポイント
ここからは、高圧一括受電サービスを導入しているマンションに入居する前にチェックしておきたいポイントについて解説します。
契約の年数
高圧一括受電サービスの契約年数は、一般的に10年〜15年。期間満了後は、契約を継続することができます。
しかし万が一途中で解約することになった場合は、解約金が発生したり、電気事業者が所有する受変電設備(キュービクルや電気室)の撤去費用が発生したりするなど、高額になる可能性があります。詳しくは管理組合にご確認ください。

また高圧一括受電サービスの契約期間中は、入居者が個別で電力会社を選ぶことができないことも頭に入れておきましょう。
電力の割引率
割引率は契約する電気事業者や対象地域で変わりますし、同一マンション内でも専有部と共有部で異なる場合もあります。
また、マンションの総戸数によっても変わることがあります。
例えば同じ電気事業者でも、総戸数20戸のマンションより80戸のマンションの方が割引率が高くなる場合があります。その理由は、総戸数が多いマンションの方が、専有部(各住戸)での電力消費量が多いのはもちろん、エレベーターや消火設備など共用部の設備の設置数が多くなり、マンション全体の電力消費量が大きくなるためです。
契約先の電気事業者名や割引率は、マンションの管理規約集で確認するか、またはマンションの販売スタッフに問い合わせましょう。
定期点検の際は停電があることを心得る
高圧一括受電サービスを導入しているマンションでは、原則として年に1回、停電を伴う法定点検が実施されます。
電気設備の動作確認や漏電していないかを点検するために、マンション全体の電気を約60〜90分程度停止させるので、点検中はエアコンや洗濯機、冷蔵庫等の家電が使えなくなるのはもちろん、エレベーターや給水設備も止まります。
ただし多くの電気事業者は冷房を使用する時期を避けて点検を行いますし、作業日は事前に管理組合を通して告知されるので、日常生活に大きな支障が出ないように備えておくことができます。
まとめ
マンションという集合住宅だからこそ可能な高圧一括受電は、電気料金が高騰する昨今だからこそ割引が魅力に思えるサービスです。ご検討中のマンションで導入されているか、いまいちど確認してみてはいかがでしょうか。