人の暮らしに欠かせない、衣食住。その「食」の意識を広く育くむ目的で進められている「食育」は、今や小学生でも知っている言葉となりました。
食習慣は家庭の影響が色濃く出るため、食育に関する取り組みも家族での関わりがとても大切だと言われています。けれど、具体的にどんなことをしたらいいのでしょう?
今回は食育と体験をテーマに、食育のポイントと、気軽に始められる食育体験実践方法、そして親子で作るストレスフリーな簡単レシピをつかった料理体験をご紹介します。
「食育」ってなぜするの?食育体験によって得られるメリット
「風邪をひいたときに食べたお粥、沁みる……」「美味しいものを食べて気分がリフレッシュ!」「旅先で食べたあの料理、美味しかったなぁ」――思い出に残る味と出来事が結びついている方も多いのではないでしょうか?
生きる上での基本ともいえる食は、身体だけでなく心の健やかさにもつながっています。
政府を中心に推進されている「食育」とは、様々な体験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践する人を育てること。では、食育体験をすることで、どんなことが期待できるのでしょうか?実は大きく3つの利点があります。
安全でバランスの良い食事で健康を守る
医食同源とも言うように、日常の食事は心身を健康に保つことにも直結しています。高血圧、脂質異常症、心筋梗塞、糖尿病といった生活習慣病の予防や改善には、適度な運動とバランスの良い食事が欠かせません。
食育によって得た知識は、バランスの良い食事の実践につながります。
また体に摂り込む食材は、安全なものがいいことなのは明らか。食材がつくられる背景にも目を向けることで、栄養素だけでなく、どんな食材を選びたいか、広い選択肢を得ることができます。
共食でコミュニケーション力をUP
食育体験は、お料理だけではありません。一緒に食事を摂ること――共食も、食育体験のひとつ。
昨今は核家族化、共働き世帯の増加などで、家族が団欒 することなく、一人一人がばらばらの時間に食事を摂る場面が増えています。
共食をすることは、ストレスの軽減、健康な食生活、規則正しい食生活、生活リズムの安定化につながるといわれています。
それだけでなく、毎日の食事中の会話は、コミュニケーションのトレーニングにも。親睦会や懇親会といった場に食事が伴うように、食はコミュニケーションの潤滑油。特に学校や外食などでは黙食が推奨されている今、家庭での食卓を囲む機会は貴重な好機です。
幅広い知識に触れて興味関心を増やす
ひとつの料理が出来上がるまでには、さまざまなバックグラウンドがあります。食育体験では、そういった食材の生産・運搬・調理器具の生産・調理法……などの「食にまつわる物事」「関わっている物事」を知ることができます。
体験を通して得られる「なぜ?」「なるほど!」という疑問や驚きは、興味関心を広め、考える力の向上や教養を深めることにも強く関係しています。
思考が柔軟な幼いころから食育をコンスタントに続けていくことによって、子どもの「好き」を増やして可能性を広げることにも。さらに楽しい体験なら記憶として強く定着するので、良い循環が期待できます。
家族でできる食育体験5つの方法
そうしたメリットを得るためには、具体的にどんなことをすべきなのでしょうか。
食育を啓発するイベントにお出かけすることもひとつの方法ではありますが、生活に直結することなので、もっと身近にできたらいいですよね。もっと気軽に実行できるオススメの方法を5つご紹介します。
食品に触れる
食の知識のベースとなるのは何といっても食材。
食材を知るには、その食材がどんなものであるのか、触れる機会が大切です。
たとえば、食材の買い出しでスーパーや専門店へ一緒に行き、見た目や手にした感触で最適な食材を選ぶ行為も食育体験になります。また観光農場での収穫体験や酪農体験、果物狩りはまさにうってつけ。レジャーとして楽しいだけでなく、指先で触れて、すぐに味覚と直結できるうえ、生育環境も見ることができるので、一石二鳥です。
自分が食べる料理にどんな食材が使われるのかがわかると、知識をつける窓口が広がっていきます。
食品がどんなものであるか、食材に実際に触れて質感を感じたり、匂いを嗅いでみたり、もちろん食べてみたり。食べるのも、生で食べられるものなら、調理前と調理後を食べ比べてみるのも◎。
五感をもって食品に触れることを心がけてみましょう。
自分の食器を用意する
意外なところでは、自分の食器を用意するのも食育体験のひとつ。
自分専用のお茶碗や箸を用意するのは、食器を一律で揃える海外からすると珍しい習慣です。家族それぞれの食器で食事をすることは、家族という集合体の意識形成に大きく関係しています。
食事をする席も、多くのご家庭で誰がどこに座るか決まっているのではないでしょうか。食事の支度をする際に、お父さんの席にはお父さんの箸、お母さんの席にはお母さんの箸……といった感じで、セッティングをしますよね。こうした、揺るぎのない自分の食器、自分の場所で食事をすることは、いわば心の安全地帯。食事が安息の機会になることで、食への向き合い方も好意的に変わってきます。
また、好みに合わせて食器を選ぶ楽しみ、使う楽しみで、食への関心もさらに高めることができます。
調理をする
調理方法を知ることは、食の理解への一番の近道。
食材の特性や栄養素を知り、どう美味しく身体に取り入れるのか、調理という実践をもって肌身で知見を積むことができます。
また親子で調理を行うことを習慣化すると、親と子、それぞれの心的ストレスが軽減されるうえ、子どもの情緒が安定して問題行動が減るといううれしい研究結果もあります。自ら生きる力を身につけることにもなるため、積極的に継続したい体験です。
市場や工場見学へ行く
家庭に食べ物が届くまでの背景を知ることも、食にまつわる知識につながります。
生鮮食品を扱う市場・食品工場の工場見学は、食品が運ばれたりできあがったりといった工程だけでなく、そこで働く人たちの仕事内容も目にすることができるので、より深い見識を深められます。
興味のあるメーカーの工場見学を探してみるのもいいですが、農林水産省のサイトで探すのも手。全国の工場見学・市場見学一覧が紹介されているので便利です。
体験型の見学を催している工場もあり、親子で楽しめる体験になりそう!
※現在見学を休止していたり、事前予約制を採用していたりする施設もあります。事前にお問い合わせください。
道の駅や食の博物館へ行く
食の知識には、文化的側面も色濃く関係しています。
農産物や特産品を知ることができる場所として、道の駅は格好の場所!地元に根差した農産物や食品を目で見て、触れて、香って、味わうことができるので、最適な食育体験ができます。
また2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことを受けて、食文化を扱う博物館なども増えています。文化庁のサイト「食文化ミュージアム」で食文化を扱う博物館を紹介しているので、近くの施設を探してみましょう。
道の駅や食の博物館への訪問は、知的好奇心を刺激し、食を中心に文化や歴史的な知識を深めることができるでしょう。
お料理で楽しく食育体験 親子で作れる簡単ごはん5選
先にもお伝えした「調理」は、家庭の中で取り組める食育体験の最たるものです。
ただ、親子で調理というと、慣れない料理を前に集中が切れがちな子どもに手を焼くことも……。せっかくの料理体験、楽しく行うために料理の熟練度に合わせた、親子で作れる簡単美味しいレシピをご紹介します。ぜひ褒めてあげながら、楽しく作ってみてください。
お手製インスタント味噌汁 味噌玉
包丁不用、粘土遊び感覚で作れる味噌玉は、お椀にお湯を注ぐだけでできるお手製インスタント味噌汁。冷凍保存できるので、忙しいときにサッと食卓に出せる優れものです。
好きな具材で、お好みの味噌玉を作ってみましょう!
材料(4個分)
- 味噌……80g
- 顆粒だし……小さじ1/2
- お好きな乾物(乾燥わかめ、海苔、切干大根、おぼろ昆布、麩、など)……適量
作り方
- 小さめなボウルに味噌と顆粒だしを入れてよく混ぜ、四等分し、手で丸める。
- ラップを敷き、好きな乾物をのせて、1を1つ置き、茶巾絞りの要領で包む。
- ワイヤー入りのカラータイや、マスキングテープで絞り口を止める。
ポイント
頂く際には、熱湯を150cc加えてください。
味噌玉は保存用バッグに入れて、冷凍庫で1ヵ月ほど保存が利きます。
既存の記事ではお味噌の仕込み方をご紹介しています。手前味噌で作れば、さらに楽しく作れそうですね!
不揃いが美味しい 叩ききゅうり
ポリ袋に入れることで、調理中の飛び散りや後片付けが楽チンの副菜です。
叩いたきゅうりは繊維が壊れて味が染み込みやすく、短時間で出来上がるのもうれしい点。きゅうりの大量消費にもオススメの一品です。
材料
- きゅうり……3本
- 塩……小さじ1
- ポン酢……大さじ2
- ごま油……大さじ1
- コショウ……(お好みで)少々
作り方
- きゅうりは洗ってヘタと花の跡を切り落とし、ポリ袋に塩と一緒に入れる。口を軽く縛って台に置き、両手でゴロゴロと転がし板ずりをする。
- 1を麺棒やすりこぎで、割れ目ができるぐらいの強さで叩く。
- 2をザルに開けて置き、水気を出す。
- ボウルに、ポン酢、ごま油、コショウを入れてよく混ぜる。
- ザルを上下に振って水気を落とし、4と和える。
ポイント
そのまま食卓に出すこともできますが、冷蔵庫で20分ほど冷やすと、味がなじんでさらに美味しくなります。
ピーラーで作る 根菜つけだれそうめん
子どもでも使いやすい調理器具・ピーラーを使って調理に参加してもらいましょう!
野菜不足になりがちなそうめんのつけだれに根菜を加えることで、栄養のバランスをカバー。
ひらひらのリボンのような見た目が、さらに楽しい食卓を演出します。
材料(3人分)
- そうめん……3~4束
- 大根……縦15cm×幅1.5cm
- にんじん……縦15cm×幅1.5cm
- キュウリ……15cm
- めんつゆ……300cc(希釈のものは薄めた状態で)
作り方
- 大根・にんじんは皮をむき、きゅうりはヘタを落としてから、それぞれピーラーで薄くスライスする。スライスしきれなくなったら、包丁で薄く切る。
- 小鍋にめんつゆを入れて火にかけ、ふつふつと沸いたら大根とニンジンを入れる。
- 10秒ほど茹でしたら、火を止め、きゅうりを入れる。
- そうめんを茹でて、冷水で締める。
- 3と4をそれぞれ盛り付ける。
ポイント
ピーラーをする際、野菜の起点に竹串を刺して持ち手をつくり、まな板の上でむくと、野菜を持つ手に刃をひっかける心配がなく安定して作業ができます。
そうめんの美味しい茹で方は、以前の記事で紹介しています。のど越しのいいそうめんをぜひ合わせてみてくださいね。
包丁に挑戦! ポテトサラダ
調理のレベルアップのためには、包丁の使い方も身につけておきたいところ。
子ども用の包丁は、「刃物は危ない」と教えるためにも、ガードなどが付いていない刃がついた包丁がおすすめです。切れ味がいいほうが力を加えずに切れていいですよ。
材料(3人分)
- じゃがいも……中3個
- たまねぎ……中1/4個
- スライスハム……3枚
- にんじん……中1/4個
- きゅうり……1/2本
- マヨネーズ……大さじ2
- 塩、コショウ……適量
作り方
- 鍋にじゃがいもと、じゃがいもがかぶる程度の水を入れ火にかける。沸騰したら15分茹でる。
- たまねぎを薄くスライスし、皿に広げておく。ハムは食べやすいサイズに刻む。
- にんじんは皮をむいて薄い拍子木切り。きゅうりはヘタを落として小口切りで切り、ひとつまみの塩で塩もみする。
- じゃがいもが茹ったら皮をむいてボウルに入れ、フォークなどで刻み、軽く塩コショウをする。
- 4が冷めたら、2・水気を切った3・マヨネーズを入れて混ぜ、塩コショウで味を整える。
ポイント
たまねぎは水にさらさず常温で放置することで、辛味成分が飛び、栄養を逃さず摂取できます。
じゃがいもがアツアツの状態でマヨネーズを混ぜると分離してしまうので、必ず荒熱が取れてから混ぜるようにしましょう。
切って裂いてまぜて 甘口棒棒鶏
さまざまな難易度を組み合わせることで、年齢差のあるきょうだいとの分業作業ができるレシピです。鶏肉を茹でる作業は先に済ませておくと、工程がスムーズにいきます。
ピーナツバターの隠し味に驚きがあるはず!
材料(3人分)
- 鶏むね肉……1枚
- 長ネギ(青い部分)……1本分
- しょうが……1かけ
- 酒……50cc
- 塩……小さじ1
- 湯……300cc
- トマト……1個
- きゅうり……1本
- 長ネギ(白い部分)……1/2本分
- すりごま……大さじ3
- ピーナツバター……大さじ1
- めんつゆ……大さじ1
- ラー油……お好みで
作り方
- 炊飯器に、鶏むね肉・長ネギの青い部分・しょうが・酒・塩・湯を入れ、保温にして1時間置く。
- トマトは縦半分に切ったのちにスライス、きゅうりは太めの千切り、長ネギの白い部分は粗いみじん切りにする。
- 鶏むね肉が茹ったら皿に取り出し、食べやすい大きさに手で裂く。
- すりごま・ピーナツバターを練り、めんつゆを少しずつ加える。1のゆで汁を大さじ2程度加えたら、長ネギの白い部分を加える。
- 皿にきゅうり・トマト・鶏むね肉を盛り、4とラー油をかける。
ポイント
鶏むね肉は裂いたほうがソースがよく絡んで美味しくなります。また塩麹や玉ねぎ麴に一晩漬け込むと、さらにしっとり柔らかく仕上がりますよ。
玉ねぎ麹の作り方はこちらの記事で紹介しています。
まとめ
生きることの中心にあるともいえる食。感覚によって身につく食にまつわる知識は、生涯にわたっての知恵として積み重なっていきます。
食育で大切なのは、継続した体験です。「食育の日」に定められている毎月19日には、食に関するアクションを習慣化してみるといいかもしれません。心にも、身体にも、より良い栄養になるよう、さまざまな食の体験を通じて、豊かな暮らしを育んでいきたいですね。
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