晩夏を迎えて、朝晩には虫の音が聴こえてきたり、少しひんやりした空気の気配を感じるようになってきました。まもなくやってくる秋の風物詩といえば、お月見。秋から冬にかけては、美しい月を眺める条件が整った時期であると言われていますが、実はマンションのバルコニーから月見をするのにも最適なシーズン。
ただ部屋に住まうのではなく、マンションならではの暮らしを楽しむための「マンションライフの楽しみ方」シリーズコラム。今回は、マンションのバルコニーからこそ月を楽しむべきその理由と、楽しみ方を紹介します。
「バルコニーでお月見」のススメ
今や定番化したベランピングやガーデニングで積極的に楽しむ人がいる一方で、洗濯物や布団を干すためだけに使っているというパターンが意外と多い、マンションのバルコニー。あるいは、エアコンの室外機を設置するだけのスペースになっているいることも。
でもバルコニーは、戸建住宅よりも外の存在が遠くなりがちなマンションにおいて、四季の移ろいを実感させてくれる媒体としての役割を持っています。いわば外界と室内をつなぐ「扉」のようなもの。より豊かなマンションライフを送るためには、ぜひとも活用したい設備です。
その手始めにオススメなのが「お月見」。
特別に用意をするものがなく、ただバルコニーに出るだけで気軽に始められるので、バルコニー活用初心者にはピッタリ。また月は全天中で太陽の次に明るい天体であることから、空に出てさえいれば誰にでも見つけられます。
もちろん、それだけがオススメの理由ではありません。
月は毎日変化するもの。満ち欠けという見た目はもちろん、地平線から昇る時間や沈む時間、その方角まで、日ごと・季節ごとに変わります。それはつまり、月日の経過を表すもの。だからただ眺めて綺麗というだけでなく、細い眉月から満ちてゆく月に時間の経過を感じたり、以前見たのと同じかたちの月を空に発見して、あの日の出来ごとや気持ちに思いを馳せたり。そんな風に忙しく漫然と流されがちな毎日の中で「今」を意識させ、メリハリをもたらしてくれます。それに、ほんの短い時間であっても「空を見上げる」「自然を愛でる」というブレイクタイムを作ることは、癒やしにだってなりますよ。
秋はバルコニーからの月見に最適な季節
秋はお月見のシーズンと言われます。これには「中秋の名月」といった情緒的・行事的な意味合いのほかに、科学的な根拠がふたつあります。少し難しい話になりますが、頑張って付いてきてくださいね(笑)
ひとつは、秋になると空気中のチリや水蒸気量が減って、視界がクリアになるから。
春や夏のように水蒸気量が多い=湿度が高いと、空気中の水分に光が乱反射し、大気がぼやけてしまいます。この季節に遠くの景色が霞んで見えづらい経験、皆さんにもありますよね?それが秋になって湿度が低くなると解消されるので、澄み渡った夜空になるというわけです。同様に空気中のチリも光が乱反射するので、霞となり、遠景が見づらい要因になります。こちらは、秋になって増える降雨で洗い流されて解消します。
もうひとつは、秋は月の高さがちょうど良いから。
月の軌道は季節によって変わり、冬は高いところを、夏は低いところを通ります。低いと地表付近の灯りやチリに邪魔をされてキレイに見えません。それに大気に光が吸収されるので少し暗くなってしまいます。冬のようにほぼ天頂を通り抜けるような軌道の場合、たしかにくっきり明るく輝くキレイな月ではあるのですが、今度は高すぎて逆に見づらくなります。
そんなわけで中間の軌道を通る春と秋が、ほど良い高さで観月しやすいんですね。
マンションのバルコニーから見る場合でも、低すぎると近隣の建物に隠れてしまうし、逆に高すぎても上階のバルコニーが影になって見えなくなります。そういう意味でも秋の月は「ちょうど良い」のです。
マンションのバルコニーからこそ月を観るべき3つの理由
そんな秋のお月見。あえて「マンションのバルコニー」でやる意味って何なんでしょう?意外かもしれない「マンションならでは」のメリットを紹介します。
1.とにかく手軽
掃出し窓1枚を隔てて、室内と行き来できるシームレスさが何よりのメリットです。ちょっと飲み物を取りに行く、肌寒いから羽織るものを取りに戻る。そんな時に戸建住宅と違って、フラットで短い動線で動けるのは手軽ですね。
それに夜暗くなってから、足元が見づらい場所を歩かなくて良いので安全です。
2.虫対策が不要
屋外にいると気になるのが虫刺され。もっとも身近な害虫である蚊は、吸血活動が活発になる外気温が26度~31度程度。したがって気温の高い時期が長くなった昨今では、秋といえども油断できません。地域によっては11月下旬ごろまで対策が必要な場合も。
しかし蚊を始めとする小さな虫は、マンションの中層階程度の高さ以上には飛べないと言われています。もちろん例外はあって、人にくっついてエレベーターで上がってくる・上昇気流に乗って飛んでくる・壁伝いに上がってくることはあります。しかし地面に近い、例えば庭で過ごすことに比べれば、マンションのバルコニーにおける虫対策はかなり軽装備で済みそうです。
3.街灯りの影響を受けにくい
現代の夜は街の灯りで明るく、時に眩しさを感じるほど。
月は全天中で太陽の次に明るい天体とはいえ、よりキレイに観るためにはそれらの光が邪魔になります。特にまだ細い眉月の頃は、その繊細な姿を楽しみたいのに、街灯や車のヘッドライトの光が気になってしまうことも。だからといって実際に灯りを消して回るわけにはいかないですよね。そんな時は手のひらで光源を遮って、直接視界に入らないようにするのが星空観測のテクニック。
でもマンションの中層階以上なら、そんなことをしなくても街灯りの影響を最小限にできる場合があります。街灯よりもバルコニーが高ければ、光が視界に入ってくることはありません。なにより車のヘッドライトの光が不用意に目に飛び込んでくることがないのは大きなメリットです。
月×マンションバルコニーの楽しみ方
バルコニーを居心地の良い空間に仕立てる
床面にウッドパネルや人工芝を敷き詰めたり、ガーデンファニチャーを置いたり。バルコニーのインテリアにこだわれば、さらに居心地UP!分譲マンションのバルコニーなら、充分な奥行きがあり、居室とも段差なくフラットにつながっているので、第2のリビングルームのように使えます。
テーブルと椅子があれば、食事やお酒とともに月見を楽しめます。キャンドルを灯して、ほのかに揺れる明かりの下で夜空を楽しむ、なんてロマンティックで素敵ではないですか。
ここで注意したいのが、マンションのバルコニーは「共用部分」であるということ。
物を置くのはかまいませんが、「すぐに元の状態に戻せる」ようにしておくことが大前提です。また、緊急避難の妨げになるような物の設置は厳禁です。
禁止事項や細則はマンションごとに違いますが、大まかな考え方についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、まずは一読をオススメします。
日ごとに変わる。月のかたちを意識してみる
ただぼうっと眺めるだけでもキレイな月。でも日ごとに変わる姿を少し意識してみると、さらに空を見上げる楽しみが増えるんです。
「半月」陰影のある立体的な月
満月はとても美しいのですが、真正面から光が当たっている状態のため、どうしてものっぺりとした見た目に。
でも満月以外の月には斜めから光が当たるので、クレーターの凹凸が際立ち、立体的に見えます。オススメは半月の頃。昇りはじめのまだ明るい時分なら、肉眼でもよく見えることがありますよ。
「地球照」宇宙空間で地球が放つ光に思いを馳せる
地球照(ちきゅうしょう)とは、月の欠けた部分が、地球の光に照らされてうっすら見える現象のこと。「地球の光」といっても、もちろん地球は自分で光を放っていませんから、照らしているのは地球が太陽から受けた光の反射です。
地球は大気や水があることから光の反射率がとても高く、月から見える満月ならぬ「満地球」は、地球から見た満月の約70倍も明るいんだとか。このように、宇宙空間でどれほど明るく地球が輝いているのか、月を通して間接的に思いを馳せることのできる現象でもあるわけです。
地球照は月の輪郭が小さい三日月前後が見ごろです。空気が澄んでいるほどよく見えるので、秋に眺めるにはピッタリ。もちろん、肉眼で楽しむことができます。
「赤い月」低い空にかかる大きな満月
まだ昇りはじめの、低い空にかかる月を見たとき、妙に赤かったり濃い黄色だったことはないでしょうか。これは朝日や夕日が赤く見えるのと同じ原理。大気中を光が進む時、波長の短い青色の光は散乱し、波長の長い赤色の光だけが届くために起こる現象です。
同時にこの赤い月は、いつもより大きく見えることがあります。これは月の近くにあるビルや山など、大きさを比較できる対象物によって起こる目の錯覚(諸説あります)。
そんないつもと違う、少し神秘的な月を眺めるのも楽しいですよ。
暦計算室/今日のほしぞら(http://eco.mtk.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/skymap.cgi)
オススメ観月グッズ
プラスワンアイテムで、さらにお月見を楽しく盛り上げましょう。
スマートフォン/タブレットの星座盤アプリ
スターウォッチングには必須アイテムの星座盤。月を見るだけなら必要ないのでは?と思うかもしれません。昔ながらの紙製のものなら、その通り。
でも、スマートフォンやタブレット上で動く星座盤アプリなら話は別。月の出や月の入り時間、どの方角からどんな月が昇ってくるのかが手元で(アプリによってはARでより分かりやすく)確認できるので、とても便利なのです。従来の紙の星座盤には描かれていない金星や木星などの惑星データも表示されるので、月の側で見つけた明るい星の名前だって分かりますよ。
夜空を見上げるのに少し慣れてきたら、ぜひ使ってみたいアイテムです。
双眼鏡
肉眼で見上げれば充分にキレイな月。
でも双眼鏡を通すと、クレーターがくっきりと浮かび上がって、いつもと違った月の姿を観ることができます。特にオススメなのが、地球照。かけた部分の模様がハッキリ見える感動はなかなかのものですよ。
こんな風にクレーターをみるだけなら、倍率は8倍程度のもので充分。むしろ本格的な双眼鏡は重くて扱いづらいことがあるので、お手頃な入門モデルをオススメします。
さいごに
もっとも身近な天体である月。夜空に浮かんでいるのが当たり前すぎて、意識して眺めてみようと思うことは少ないかもしれません。でも忙しい毎日の中で少し手を止めて、空を眺める余裕を持つことは人生をより豊かにします。それに新たな発見だってあるかも。
そんな風に夜空を見上げることに慣れたら、マンションのバルコニーからでも星を辿って星座を見つけたり、月食のような天体イベントを楽しんだりできるようになりますよ。
素敵なマンションライフを!
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