突然ですが「北向きのお部屋」について、どんなイメージを持っていますか?
日当たり悪くて暗そう・冬場は寒そう・換気が悪くてジメジメしてそう……など、マイナスのイメージが多いのではないかと思います。
ところが近年、あえて住戸を北向きにつくったマンションが増えてきています。イメージの良くない北向きなのに、一体なぜ?と思いますよね。
そう。一般的な戸建住宅と違って、マンションで北向きの住戸を作ることには、実はデメリットを凌駕するだけのメリットがあるからなのです。古くからの「住宅は絶対に南向き」という思い込みををいったん横に置いて、北向きマンションのメリットとデメリット、また選び方について考えてみましょう。
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・生活スタイルから考えるお部屋の向き
・家事動線のよい間取りの選び方
「南向き信仰」は日本人特有のもの!?
日本人は欧米人に比べ、住まいを選ぶときに日当たりを重視すると言われます。
理由は日本特有の気候のせい。
湿度が高く、特に夏場の高温多湿の環境ではカビが発生しやすいため、南向きで日当たりが良く、また暖かな風のよく通る住まいを構えることが古くから根付いてきました。それは今でも日当たりの良さにこだわる人の多さに繋がっていて「南向き信仰」と言われるほどです。
「南向きの住まいがベスト」は本当か?
南向きが敬遠される地域もある
さて、その南向きの住まい、本当にいちばん良いものなのでしょうか?
たとえばヨーロッパでは、南向きのお部屋は「家具が日に焼ける」と敬遠されるので、価格が安く設定されるそう。日本でもフローリング床が窓からの日差しで傷んだりしますよね。うっかり日焼けさせてしまって悔しい思いをした方も多いのではないかと思います。
また、都市部でヒートアイランド現象による問題が顕在化してきた近年では、「明るいと思って南向きを選んだけど、思ったよりも夏に暑くて過ごしにくい」とデメリットを感じるケースが出てきています。
南向きだからといって1日中、日が差し込むわけではない
そもそも太陽は、夏場なら朝4時から夜の7時過ぎ、冬場でも朝7時から夕方の5時頃までずっと空に出ています。またご存知の通り、東から昇り南を通って西に沈むので、時間を選ばなければ東・西・南の3面に日が当たっていることになります。
もちろん、地上での太陽の影響は南中している時がいちばん強いので、南向きが最も太陽のエネルギーを享受できるのですが、南向きだけが日当たりが良いというわけでもなく、また南向きだから日中ずっと日が当たっているわけではないのです。
それに太陽の高度の高い時間帯は上階のバルコニーが「庇」になって、部屋の中は日影になってしまうことも。
土地の形状や周囲の建物の状況によっても日当たりや風通しは変わりますので、例えばマンションならば南側に同じような高さの建物があると、期待するほど日当たりも風通しも良くなく、快適ではなかったということもありえます。
このことからも「南向きだからベスト」と一概に言えるわけではなさそうです。
セカンドベスト「東向き」と「 西向き」
南向きに次いでイメージが良いとされるのは東向きの住まいです。朝日が真っ先に差し込む東向きの住まいは、朝の目覚めも良くなりそうですね。
ただし東向きは午後になると日が当たらなくなります。そのため、洗濯物は早朝から干しておかないと乾かない……なんていうことも。もし東向きの住まいを選ぶのなら、ご自身の生活のリズムも考えておく必要がありそうです。
東向きとは逆に午後から日が差す西向きは、西日が差すことで夏の暑さが長く続くイメージのせいで敬遠されがちです。しかし実際には、西日の差し込みによって室内の温度が上昇するわけではないのです。アルファジャーナルに西日でお部屋が暑くなる仕組みと対策方法が詳しく解説されている記事があるので、ぜひご一読を。西向きのお部屋に対する認識が変わりますよ。
イメージの良くない「北向き」
もっともイメージが良くないのが、北向きではないでしょうか。日当たりが悪くて昼間でも部屋が暗そう・換気が悪くてジメジメしそう・冬は北風が吹いてきて寒そう等々、マイナスのイメージを抱く人が多い方角の住まいだと思います。
果たして本当にその通りでしょうか。
マンションの高層階なら明るさは確保できる
確かに密集した住宅街の戸建住宅やアパートの1階などでは、北向きは日が入りにくいので薄暗く、風通しも悪いのでジメジメとした環境になることが考えられます。しかしマンションの高層階であれば話は別 。周囲に遮るものがなく、北向き以外にも窓のある住戸なら、明るさも風通しも確保できるのです。
そもそも室内の明るさを確保する光には「直接光」と「間接光」の2種類があります。
南向きのお部屋では直射日光を取り込む「直接光」ですが(東向き・西向きのお部屋も時間によっては直接光で明るくなります)、北向きでは、陽の光が周囲の物に反射することによる「間接光」で明るさを確保するので、マンションの高層階のように周囲に影になるようなものがなければ、十分な明るさが得られるのです。
開口部が複数あれば風もよく通る
また北以外の3面のいずれかに窓が確保されていれば、風も通ります。特に北向きのマンションでは、採光に考慮して間口を広くとられているものが多い傾向にあるので、風通しの良さと同時に開放感があるのも魅力。今は24時間換気システムも備わっていますので、北向き=風通しが悪い・ジメジメしていてカビやすい、というマイナスのイメージはもはや過去のものと言っても良いくらいです。
ここで「風通しが良いということは、冬になると北風が吹いて寒いのでは?」と思われるかもしれません。でもマンションは、最上階や角住戸・1階住戸でなければ上下左右を他の住戸に囲まれているので、戸建住宅に比べて冬でも暖かいという特長があります。またほとんどのマンションでは高断熱仕様だったり、複層ガラスが採用されていたりするので、外気温に大きく室温を左右されることもほぼありません。
北向きマンションはここに注目して選べ!メリット&デメリット
以上のことからマンションの高層階であれば、北向きの住まい特有のデメリットは回避できることがお分かりいただけたかと思います。しかしマンションの高層階であれば、どんな北向きの住戸でもOKかといえば、そうでもありません。
ここでは快適に住まうことのできる北向きの住戸について、メリットとデメリットの面からもう少し詳しく考えていくことにしましょう。
メリット
価格が安い
最も大きなメリットは、やはり価格が安いことでしょう。
南向きはもちろん、他の方角を向いた住戸よりも価格設定が低く設定されていることが多いです。
ただし、北向きの方が眺めが良い・海があって視界が開けているなどの理由で北向き住戸が設けられている場合は、他の住戸と同程度か、あるいは高くなっていることがあります。特に都市部の高層マンションでは眺望が重視される傾向にあるので、北向き住戸の方が価格が高く設定されているケースが多くみられます。
眺望が良い
北向き住戸から外を眺める場合は順光となるので、逆光の南向きに比べてより景色が綺麗に見えるというメリットがあります。また他の建物の南面が見えるので、他の方角に比べて夜景が綺麗に見えるということもあるようですよ。
夏の暑さが緩和される
夏場は他の方角の住戸に比べて室内の温度が上昇しづらい傾向にあります。
明るさが1日を通して一定している
間接光で明るさを確保しているので、特定の時間帯だけ光が強くなったり、影や光源の位置が時間によって変わったりということがなく、1日を通して安定したほど良い明るさが得られます。
家具やクロスが日焼けしない
直射日光がささないので、家具やクロスの日焼けによる劣化がありません。
他にも棚に並べた本の背表紙だけが日焼けしたり、フローリング床が傷んだりと、日当たりの良い部屋でありがちな心配とは無縁になります。
デメリット
直射日光が入らない
朝スッキリ目覚めるためには朝日を浴びると良いと言われるように、日光には生活のリズムを整える役割があります。その点を重視する人にとっては直射日光の入らない住まいはデメリットでしょう。ただし真北を向いた住戸でなければ、季節によっては朝や夕方に日が差し込むこともあります。
また間接光でお部屋の中は明るいのですが、冬は直射日光による室温の上昇は期待できないので暖房が必須です。逆に夏は他の方角に比べて涼しく過ごせます。
バルコニーでのガーデニングに向かない
ふんだんに日光を浴びて育つ植物の生育には向きません。ただし、半日向や日陰での栽培に向く観葉植物などがあるので、種類を選べばまったくできないというわけでもありません。
布団や洗濯物が干しづらい
布団乾燥機や衣類乾燥機、部屋干しで十分という方には問題ないのですが、お日様の光でフワフワ♡な状態がお好みの方には向きません。
資産価値が低くなる
都市部にある物件で、眺望が良いという付加価値が付いている場合は別ですが、売りに出したり賃貸に出す時に相場よりも安くなることが考えられます。
北向きマンションを選ぶ際のチェックポイント
以上を踏まえて、北向きマンションを選ぶ際のチェックポイントをまとめました。
眺望が良い
わざわざ北向きの住まいを選ぶのですから、何かしらのメリットが必要ですよね。
マンションの場合は、それが眺望です。順光で美しく見える風景を心ゆくまで眺められるのは、マンション上層階に住む醍醐味です。
近隣に影となる高い建物がない
間接光を取り込むことによって採光を確保するため、近隣に影となる高い建物がないのは必須事項です。 建物が断熱仕様になっている鉄筋コンクリート造でも断熱施工が不十分な建物では底冷えするし、結露やカビの原因にもなります。分譲マンションであればまず気にする必要はない項目ですが、北向き住戸を選ぶ際にはチェックしたいところです。
複層ガラスが採用されている
断熱性に優れた複層ガラスは北向き住戸にはマストアイテム。外気の影響を受けにくいので、結露を防いだり、お部屋の暖房効率が上がったりします。
階数
1階はどうしても下からの冷気があります。また周囲の遮蔽物を避けてお部屋の明るさを確保するためにも、ある程度の高さは必要になります。
通風のための開口部が北向き以外の方角にも設けられている
風通しの良さはどの方角においても必要ですが、特に北向き住戸には最重要項目です。開口部が1カ所だけではお部屋の中に風の通り道ができませんから、最低でも2カ所あることを確認してください。
24時間換気システムが装備されている
たとえ荒天が続いて窓が開けられなくても、24時間常に換気されていれば、カビの発生に気を揉むことも少なくなりますよ。
「北向きマンション」はこんな人にオススメ!
ここまで読み進めてきた人には「北向きのマンションは、一般的にイメージされるほど悪いものではない」とお分かりいただけたと思いますが、それでも決して万人向けの住まいではありません。
でもたとえば、こんなライフスタイルの人にならオススメできますよ。
夏の暑さに弱い人
直射日光による室温の上昇がないので、夏はかなり過ごしやすくなります。
冬の寒さは我慢できるけど夏の暑さにはとにかく弱い、という方にとっては過ごしやすい住まいですね。
自宅で仕事をする人
間接光で明るさを確保することによって、1日中光量が変わらず、一定した明るさを保つことができるので、自宅で仕事をする人にとっては落ち着ける環境と言えるでしょう。
白樺派を代表する作家・志賀直哉は若いころ、北向きの書斎を好んでいたそうですよ。奈良市高畑町に今も残る彼自身が設計した自邸(志賀直哉旧居)の書斎は、机の前にピクチャーウィンドウを設けており、手元だけ明るく、それ以外は落ち着いた光量の空間になっています。
カラーコーディネーター、絵を描く人
正しく色を判断するには、どんな光の下でその色を見るのかという「光の質」がとても大切です。一般的には「北向きの窓から入る太陽光」が色を見るときの標準光と言われており、このことから北向きの部屋はアトリエに向いているとされます。
同様の理由で、お化粧をするときは明るい北向きの部屋でするのが良い、とも言われていますね。
番外編:星空観察の入門編にも
一般的に星を観察するときは、南の空を見上げます。明るく、有名な星が多いからですね。季節ごとに見える星座が変化する楽しみもあるし、惑星や月も見やすい方角です。
しかし敢えて、ここでは北の空を星空観察の入門編としてオススメしたいと思います。なぜなら、北の空に見える星は季節を通してほぼ同じなため、星座を見分ける訓練をするにはうってつけなのです。
北の空には動かない星として有名な「北極星」があり、その周りを星が反時計回りに動いています。北斗七星(おおぐま座の一部)とカシオペア座が代表的ですね。季節によって出現する位置は変化しますが(例えば春の北斗七星は北の天頂付近に見えますが、冬には北東の空に移動します)日本の北緯35度程度であれば全体は沈まず、ほぼひと晩中空に出ています。
ともに2等星がメインの星座なので、明るい都市部の空では見つけづらいのですが、北の空は月明かりの影響を受けにくく観察にはうってつけなので、是非トライしてみてくださいね。
部屋の方角は「生活スタイル」と「条件」で決める
北向きマンションを買うか否か。
その答えは「自身や一緒に住む人の生活スタイルと、そのマンションの条件次第」ということになりそうです。
また、日当たりは地形や立地、周囲の環境にも影響を受けますので、方角を聞いただけで決めつけずに、まずは現地をご自身の目で実際に確認されることをオススメします。
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