突然、遠方への転勤辞令……。
そんな時、今のマンションをどうされますか?
対応方法は2つ。1つは【売却】、もう1つは【賃貸】。
どちらにするのか?は非常に重要な決断ですよね。
売却することと、賃貸に出すことでは実際におこなう作業や手続きが全く異なります。
賃貸に出した場合、契約から賃借人が退去されるまでが一つの契約手続きとなりますので、売却手続きと比べて長期間の不動産取引となることが特徴です。
期間の長い取引だからこそ、注意が必要なこともあります。
そこで今回、賃貸中のマンション売買を主な業務としている筆者が、賃貸に出す場合の要点と注意点を皆様に分かりやすく解説させていただきます。
ぜひ、皆様の参考にしてください。
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1.賃貸に出す場合の流れ
賃貸に出す場合の主な流れは以下のようになります。
不動産会社に賃料査定依頼
↓
不動産会社の選定
↓
不動産会社に賃貸募集を依頼
↓
入居者決定
↓
賃料収入
2.賃貸査定を依頼する前の重要なポイント!
賃貸査定を依頼する前に、どのような契約を締結するのか?ということを事前に決めておく必要があります。
賃貸に出すといってもその契約の種類は大きく分けて3つあります。
- 一般賃貸借契約
- 一般賃貸借契約+管理委託契約
- サブリース契約
賃貸募集を依頼する不動産会社によっては全ての契約形態に対応しているところもあれば、対応できる形態が限られる不動産会社もあります。特に3サブリース契約については、それを専門にしているサブリース会社があります。
各会社それぞれに特徴があります。事前に決めておくことで適した不動産会社を選定することができます。
3.3つの契約形態について
3-1 一般賃貸借契約
借りられる方(賃借人)と貸される方(賃貸人)との間で結ぶ賃貸借契約です。
不動産会社はあくまでも賃貸人と賃借人との間で賃貸借契約を締結するまでの手続きをおこない、以降は賃貸人と賃借人とのやりとりとなります。
- 家賃がそのまま賃貸人の収入になります。
- 入居者が見つからない場合は賃料収入がない。
- 賃借人から修繕の依頼があった場合、賃貸人が修理業者の手配等をご自身でおこなう必要があります。
例【エアコンが壊れた】⇒【賃借人から賃貸人に連絡】⇒【賃貸人が修理業者を手配】 - 退去手続き等全ての手続きを賃貸人がおこなうため、手間がかかる。
3-2 一般賃貸借契約+管理委託契約
管理委託会社が、賃貸人に代わり、修繕の手配や家賃の回収業務をおこないます。
契約内容によって異なりますが、ここでは、一般的な例を記載させていただきます。
- 賃貸人は無駄な手間を省くことができる。
例【エアコンが壊れた】⇒【賃借人から管理委託会社に連絡】⇒【管理委託会社が修理業者を手配】⇒【賃貸人に修理費用を請求】 - 家賃が滞納となった場合、督促なども不動産会社にて行ってもらえる。
- 入居者が見つからない場合は賃料収入がない。
- 委託管理費が別途必要。…家賃の3%~10%程度
- 契約の内容によっては委託管理の解約がすぐにできなかったり(3ヶ月前予告等)、解約費用が発生したりすることもある。
3-3 サブリース契約
サブリース会社に貸し、そのサブリース会社が再度、別の方に賃貸する(転貸借)契約になります。
- サブリース会社に貸しているため、入居者がいなくても定期的な収入を得ることができる。
- 賃料が安い(相場の60%~80%程度)。
- 契約内容によっては解約がすぐに出来ない、解約費用が発生する。
- 実際の入居者がどのような方か分からない。
4.選択のポイント
この3つの契約種類の中で、筆者の経験上最も多く選ばれているのが【一般賃貸借契約+管理委託契約】です。
その理由は、「煩わしさがなく、ある程度の賃料収入を期待できるから」ということです。
ただし、注意点があります。
それは、どこまでの管理を委託するのか?ということです。管理委託の業務には以下のようなものがあります。
- 修繕対応
- 賃料回収
- 滞納督促
- 退去立会い
- 敷金精算
委託する内容によって管理委託費が異なることもあるのです。
収入と支出をきちんと把握したうえで、どこまで委託するのかを決めましょう。
また、その他2つの契約にはそれぞれにもメリット・デメリットがあります。
一般的にはこんな特徴だと考えていいでしょう。
ご自身はどれが一番合っているのか、十分に検討してみてください。
5.賃貸査定について
契約の種類をどれにするのか決まれば、不動産会社に査定依頼をしましょう。
決める内容はこの3点です。
- 賃料
- 敷金
- 礼金
賃料設定を間違えると、入居者が決まらず、長い間空室になってしまうリスクがあります。
長い間空室になってしまえば、その間、管理費や修繕積立金を支払う必要があり、更に住宅ローンを利用されている方にとってはそのローンの返済も必要になります。
したがって、適正な価格を設定することが大事です。そのためには、不動産会社に周辺の賃貸状況を確認してもらい、賃料相場を把握しましょう。
6.賃貸借契約締結について
不動産会社に依頼して賃貸借契約を締結する場合には不動産会社に仲介手数料の支払が必要となります。
法定仲介手数料は上限が定められており、賃料の1ヶ月分となります。
7.賃貸に出す時の大切な手続きは3つ!
忘れてはいけない大切な手続きが3つあります。
- 管理組合に届出
- 住宅ローンを組んでいる場合は金融機関に報告手続き
- 賃料収入があれば確定申告
詳しく見ていきましょう。
7-1 管理組合に届出
賃貸に出した場合、そのマンションの管理組合により、このような書類を提出する必要があります。
- 住所変更届
- 誓約書 など
忘れてしまいがちなのが「住所変更届」ですが、住所変更を提出しないと、管理費、修繕積立金の請求書が届かなかったり、総会案内や総会報告などが届かなくなります。いくらマンションに住んでいないと言っても、マンション所有している以上、マンションの管理状況を常に把握することは大切なことです。
7-2 住宅ローンを組んでいる場合は金融機関に報告手続き
住宅ローンの考え方ですが、基本的には「その住宅に自ら居住すること」が原則となります。
しかし、貸しに出すということはこの原則からは反することになり、どちらかと言えば住宅ローンではなく、アパートローンなどの考え方の領域になります。
しかし、金融機関によっては、賃貸に出した後でもそのまま住宅ローンを継続できることもあります。
ただし、この報告手続きを怠ってしまえば、「全額一括返済」を求められる可能性もあります。
賃貸に出される場合には必ず金融機関へ事前報告しましょう。
7-3 賃料収入があれば確定申告
賃貸に出したあと、忘れてはいけない最も重要な作業が確定申告。
マンションを賃貸に出すことで得られる収入は不動産所得になり、所得税が課せられます。そのため、不動産所得のあった翌年に確定申告をする必要があります。
計算方法はこのようになります。
【総収入金額】-【必要経費】=【不動産所得の金額】
<【必要経費】の例>
- 固定資産税、都市計画税
- 火災保険等損害保険料
- 管理費、修繕積立金
- 住宅ローンがある場合にはその利息分
- 減価償却費 など
※必要経費は不動産収入を得るために直接必要な費用のことで貸付資産に係るものに限られます。
8.賃貸に出した場合の失敗事例とその対策
8-1 賃料を滞納されてしまった……
毎月の賃料で住宅ローンの返済を予定していたのに、賃借人から賃料が滞納され、毎月の家計が厳しくなってしまった、というケースです。
賃貸借契約を締結する場合、賃料滞納のリスクを補う為に契約条件として以下の2つの方法があります。
- 賃借人の方に保証会社へ加入していただく
- 連帯保証人をつけてもらう
その中でも私のお薦めは保証会社加入です。
連帯保証人をつけていただいた場合にはその連帯保証人に滞納分を請求することも出来ますが、その手続き等は煩雑で時間と手間がかかります。
保証会社に加入いただいた場合、手続きが少なく、より短期間で滞納家賃の回収をおこなうことができます。
8-2 賃貸借契約を自由に解約できない
転勤のため今のマンションを賃貸に出していたところ、また転勤で帰ってくることになったのだが、今の賃貸借契約を解約することができずに、結果、別の家を探さざるをえなかった、というケースです。
貸しに出したマンションを自分たちが再び住みたいので解約したいといった場合でも賃借人の方が拒絶すれば解約することはできません。さらに、更新時期となった時点で、賃貸人から、「もうこれ以上更新しません」と拒絶することもできません。
これは「借地借家法」という法律により決められており、賃貸人から契約を解除する為には「正当事由」が必要になります。
この「正当事由」に該当するのは、危険度の高い「建物の倒壊の恐れ」などになり、賃貸人が必要だからといったような内容でなければ、認められません。
賃貸の期間を定めた「定期借家契約」という契約をおこなうことができます。
契約期間が定められており、契約期間満了後は更新を行わず契約を終了させることができるのが特徴です。
ただし、この契約には注意が必要です。
契約期間が定められていることにより、入居者が決まりにくいという問題点があります。
9.まとめ
マンションを賃貸に出すということには、メリットとデメリットが存在します。
賃貸に出すことにより毎月賃料収入を得ることで、所得を増やせる可能性(メリット)もありますが、その反面、賃借人がつかなければ赤字となってしまうリスク(デメリット)もあるのです。
マンションが不要となった場合には「貸す」「売る」という選択肢がありますが、その時の不動産相場を把握することで、どちらの選択をすれば良いかの判断ができるのではないかと私は考えます。
今のような不動産相場が高い時には売却するというのも一つの方法です。一方、リーマンショック後のような不動産相場が低い場合には賃貸に出すという選択肢も良いのではないかと思います。
不動産相場を把握することでよりリスクの少ない選択ができるのではないでしょうか。
マンションを「貸す」のか「売る」のか。
選択を迫られたときには、今回の記事の内容を参考に、そのときに合わせた判断をしてください。
「売る」ことを決めたときには、こちらの記事も参考にしていただければ幸いです。
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