5月の和名「皐月」は、早苗を植える時期「早苗月(さなえづき)」を略したもの。
「早苗」とは稲の苗で、苗代(なわしろ)から田に移し植えるくらいの大きさのものを指します。皐月の”皐”には「神に捧げる稲」という意味があることから、この字が当てられたと言われています。
気温もぐんぐん上がり、暦の上では「初夏」——夏を迎える、新緑爽やかな5月のくらしの歳時記を紹介します。
5月のこよみ
5月1日「八十八夜」(雑節)
立春から起算して88日目。
唱歌「茶摘み」で「♪夏も近づく八十八夜」と歌われるように、徐々に気温が上がり、春から夏に移り変わる節目の日です。
この日を目安に住まいの夏支度をはじめます。
5月4日「春土用明け」(雑節)
雑節のひとつ「土用」は、土公神(どくじん)という土を司る神様が支配する期間のこと。立春・立夏・立秋・立冬の前の約18日間を指し、期間中は土を動かす作業(土いじり、地鎮祭、井戸掘りなど)を忌むことになっています。
2024年の春土用は4月16日に始まり、立夏の前日である5月4日に明けます。
5月5日「立夏」(二十四節気)
暦の上で夏が始まる日。
新緑の季節の本格的なスタートです。
蛙の声が聞こえてくるようになるのもこのころですが、本格的夏なの暑さが始まるのはまだすこし先。
日差しが強く気温が高くなる日もありますが、基本的には過ごしやすい気温と低い湿度で、爽やかな日が続きます。
5月20日「小満」(二十四節気)
「陽気がよくなり、草木などの生物が次第に生長して生い茂る」時期のこと。秋播きの麦の穂がつき、初夏の風物詩である梅が実をつけはじめます。
梅の実は6月初旬ごろに収穫の時期を迎え、梅干しや梅シロップ・梅酒などの保存食を拵える「梅仕事」が始まります(梅仕事のお話は、6月の歳時記で詳しくお伝えします)。
5月の年中行事とイベント
5月5日「端午の節句」
端午は五節句(伝統的な年中行事をおこなう節目となる日)のひとつ。古く奈良時代から伝わる風習です。
元は魔除けのために葵や菖蒲を飾るものでしたが、江戸時代頃に「菖蒲」と「尚武(武道を重んじること)」が結びつき、男の子の節句になりました。
鯉のぼりを飾るのは、鯉が清流ではない池や沼でも生きていける生命力の強い魚であること、また「登竜門」の故事(竜門の滝を登り切った鯉は竜になる)になぞらえて、子供の成長と立身出世を願うためです。
5月12日「母の日」(5月第2日曜日)
日ごろの母の苦労を労り、感謝の気持ちを表す日です。
この「母の日」に該当する日は世界各国に存在しますが、その由来も日付もバラバラ。 日本における母の日は、アメリカから伝わったものです。
1907年、南北戦争中に活躍した社会活動家である母親の追悼のために、娘が教会でカーネーションを配ったのが始まり。これをきっかけに母親に感謝するムーブメントが全米に広まり、1914年に米国議会が祝日に定めました。
日本に伝わったのは1913年、大正時代のこと。しかし全国的な行事になったのは、もう少しあとの時代のようです。
5月の自然を表す「ことば」
翠雨(5月初旬ごろ)
新緑の時期に、青葉に降る雨のこと。
「翠」は草木の緑のことを指すので、「緑雨」と呼ぶこともあります。
日ごとに緑が深くなる若葉が初夏の雨に濡れ、瑞々しさを増す様を表した美しい呼び名です。
薄暑(5月上旬から中旬ごろ)
5月上旬から中旬にかけての、少し暑さを感じ始める時期のこと。
「夏」と言い切ってしまうほど日射しは強くないものの、歩いているとうっすら汗ばみ、日影や吹いてくる風を心地よく感じるようなころ合い。夏の季語にもなっています。
風薫る(5月上旬ごろ)
漢語の「薫風(くんぷう)」の訓読みで、若葉を吹き渡る爽やかな風のこと。
夏の季語として、数多の俳句に詠まれています。
爽やかに吹き抜ける風を「薫風」と呼びますが、この風が強くなってくると「青嵐(あおあらし/せいらん)」に変わります。初夏の青葉を揺すって吹く、少し強い風です。
走り梅雨(5月下旬から6月上旬ごろ)
梅雨に入る前の時期に、数日間ほど天気がぐずつくこと。
「走り」とは「先駆け」の意味。梅雨入りするには少し早い5月下旬から6月上旬、本格的な梅雨に先駆けて、梅雨を思わせるような雨天が続く様子を表しています。
「迎え梅雨」「梅雨の走り」と呼ばれることもあります。
卯の花くたし(5月下旬から6月上旬ごろ)
走り梅雨の別名。5月下旬から6月上旬ごろの、しとしとと降る雨のことです。
ちょうどこの時期に咲く「卯の花(ウツギ)」を散らし、腐らせてしまいそうに思えることから生まれた言葉。
初夏の暮らしの楽しみ方
5月5日の立夏を迎える今月は、暦の上で夏が始まります。
爽やかな初夏の暮らしを楽しみましょう。
夏を涼しく過ごす部屋のしつらえ「夏座敷」
雑節の八十八夜は、住まいを夏のしつらえに変えはじめる目安の時期です。
それに倣って、昔から暮らしの中で取り入れられてきた「夏座敷」を意識したインテリアに変えてみませんか?
夏座敷は、湿度の高い日本の夏を過ごすために考えられたしつらえのこと。襖や障子を開け放して風通しを良くし、室内や調度品を夏向けのものに取り替えます。
現代の住まいにおいて、まったく同じことを再現するのはかなり難しいですが、エッセンスを取り入れることはできます。
例えば部屋の見た目をスッキリ整えたり、風の通り道を作って涼しさを感じられるようにしてみたり。ラグやクッションカバーの色や素材を、夏向きのものに変えるのも良さそうです。
さらに庭やバルコニーからの照り返し対策も必要ですね。
新茶の美味しい季節、はじまる
新茶とは、その年に生えてきたばかりの新芽を摘み取って作ったお茶のことです。
秋に収穫が終わった後、長い冬の間にじっくり養分を蓄えて出てきた新芽は風味が豊なだけでなく、苦み成分であるカテキンが少なく、旨み成分のテアニンが豊富。そんな新芽からできる新茶は、古来から不老長寿や無病息災の縁起物とされてきました。
新茶の香りをたたせるなら、少し高温のお湯
新茶の香りを愉しむなら、一般的な煎茶を淹れる時よりも高めの湯温、約70〜80度程度のお湯が適しています。
急須に茶葉を入れる
使用する茶葉は1人前あたり2グラム程度。
1人分だけ淹れるときは+2グラムして、計4グラムで淹れた方が美味しいです。
適温のお湯を注ぐ
お湯は沸騰したものを湯呑み茶碗などに一度移し、充分に温度を下げてから急須に入れます。
30秒〜1分ほど蒸らしたら、数回急須を回して(この動作で茶葉が開きます)から茶碗に注ぎましょう。
上手な注ぎ方
複数人分を淹れる時は、濃さが均一になるように、少しずつ均等に注ぎ分けます。
最後の1滴まで注ぎ切るのがポイント。こうすることで2煎目のお茶も美味しくいただけます。
ちなみに2煎目以降は、茶葉が開いているので蒸らしの時間は必要ありません。
甘みと旨みを愉しむなら水出し
新茶特有の甘みや旨みを堪能したいなら、迷わず水出しがおすすめです。
甘みや旨み成分であるテアニンは、水温に関係なく抽出される一方で、苦み成分であるカテキンは高温でしか抽出されません。低温でじっくり淹れることによって渋さや苦みを抑え、甘み・旨みの強い味わいのお茶が愉しめるというわけです。
ポットやボトルに茶葉を入れる
目安は水1リットルに対して10グラム程度です。
冷水を注ぐ
手で触って冷たいと思う程度の冷水を注ぎ入れます。夏場などの水温が上がりやすい時期は、注ぐ前に水温の確認を。
茶葉全体が水に触れるように軽く揺すってから、冷蔵庫に入れて3時間〜6時間程度抽出します(様子を見ながら調整してください)。
急ぎの時は、多量の茶葉で急速抽出!
急いでいるときは、水100ミリリットルに対して茶葉を10グラム程度使うと3分ほどで抽出できます。
また、水の代わりに氷水を使えば、深い緑の水色が美しいお茶に。この場合の抽出時間は、少し長めの5分ほど。
今月のアンケート
みんなの暮らし聞いてみました! \こんなとき、どうしてる?/
わざわざ聞かない。聞けないけど、ずっと気になっている日常生活のアレコレ…「そういえば、みんなどうしてる?」をリサーチしてお届けします!
今月のお題は「趣味」
春になり、何かと活動的になる季節。「新しく何か始めたい!」と考えている人もいるのではないでしょうか?
今回は、趣味やハマっているものについてお聞きします。ぜひご回答ください!
回答期限:2024年5月16日(木)
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先月の「飲料水」の集計結果をみる
皆さんが日常的に飲んでいる「水」についてお聞きしました。
ご自宅での飲料水は何を使っていますか?
何を基準に選んでいますか?
意外と知らない「他の人の飲料水」事情、ぜひチェックしてみてください!
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次回の「くらしの歳時記」は6月・水無月編。お楽しみに!
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