人生の中で極めて大きな買い物といえば、「住宅購入」。
その住宅購入に向けて貯蓄をしている人も多いと思います。または、親や祖父母から「家を買うんだったら…」と資金贈与の話をされた人もいらっしゃるかもしれません。
マンションを一括購入しようとする際に「住宅ローン控除とかの制度があるけど、現金でマンション購入したほうがホントにお得なの?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか?
住宅ローンを組んでも、金利は低金利が続いていますし、ローン控除により税金の還付を受けることができます。現金で一括購入をするか、住宅ローンを組むか、どちらがお得なのか悩む人もいらっしゃるでしょう。
現金一括購入した場合の最大のメリットは、無駄な経費を抑えられることです。
住宅ローン購入をする場合、融資銀行に支払う手数料、保証会社に支払う保証料、抵当権設定費用など住宅ローンを借入する為、多くの支出が必要になりますが、現金一括購入の場合はこれらの経費がかかりません。
デメリットは、住宅ローン控除や団体信用生命保険などは、利用できないということです。
また一括購入するための多額の資金を貯蓄で準備する場合は貯蓄に時間がかかるため、子どもの進学など自分たちが必要と思っているタイミングで購入できない可能性もあります。
この記事ではマンションを現金一括購入する場合の利点と注意点をご紹介していきたいと思います。
一括購入と住宅ローン、どちらが良いのかは、人によって異なります。
この記事を読んでいただいた後に、マンションを現金一括購入する事がご自分に向いているのかどうか判断できるようになっていると嬉しく思います。
目次
1.現金一括購入の利点
1-1.利息や経費の支払いを抑えることができる
現金購入の場合は、当然の事ですが利息を支払わない分、余計な支払いがありません。
近年は、住宅ローン超低金利時代だと言われていますが、借入金額が大きく返済期間も長期となるケースが多く、支払う利息は大きいものとなります。
【支払い利息例】
借入金額:3,000万円、金利:1.0%(全期間固定)、返済期間:35年でシミュレーション
借入金額 | 30,000,000円 |
毎月の返済額 | 84,685円 |
返済総額 | 35,567,700円 |
支払い利息 | 5,567,700円 |
約550万円の利息分の支払いが発生します。
また住宅ローンを利用しないことで、金融機関に支払う融資手数料・保証会社に支払うローン保証料・抵当権設定登記の登録免許税などのローン経費も不要となり、購入時に必要となる諸経費(諸費用)を抑えることができます。
【住宅ローン借入に関わる諸費用の例】
借入金額:3000万円、返済期間:35年、民間銀行ローン、保証料一括払い型、
令和4年3月末までに入居の条件でシミュレーション
抵当権設定登記の登録免許税 | 3万円 ※別途、司法書士手数料がかかる |
印紙代(ローン借入時の契約書貼付) | 2万円 |
ローン保証料 | 約63万円 |
融資手数料 | 5.5万円 |
合計すると約70万円を超える経費が発生します。
※金額や諸費用の内容は、借り入れする金融機関、借入内容、対象となるマンショ等によって異なりますので、ご注意ください
1-2.住宅取得の資金贈与は税制が優遇される
親や祖父母から資金援助で現金一括購入を検討される方も多いと思います。そこで、住宅取得等資金の贈与を受ける場合の税制度についてご紹介致します。
一般的に親兄弟を含め、人から財産をもらう場合は贈与税がかかります。
ただし、1年間にもらった財産の合計額が110万円(基礎控除)以内であれば贈与税はかかりません(暦年課税)。
加えて、住宅の購入資金を親や祖父母からもらう場合は、消費税10%の物件で令和3年12月末までに入居するなどの一定の要件を満たせば、「最大1,500万円」まで贈与税が非課税になります(住宅取得等資金の非課税制度)。
※非課税となる贈与の限度額は、令和4年1月1日以降引き下げが見込まれています。
つまり、取得する住宅や贈与を受ける人などの条件を満たし、「消費税10%」の物件購入した場合、最大1,500万円に110万円の基礎控除を足した1,610万円まで贈与税が発生しないことになります(一定基準を満たす住宅の場合)。
また、住宅取得の資金贈与では「相続時精算課税制度」も利用できます。
これは、父母または祖父母からの贈与について、相続時までの贈与額を相続財産に加算し、納めた贈与税を相続税で精算する制度です。相続時精算課税制度を選ぶと、それ以降同じ贈与者から受けた贈与については暦年課税の基礎控除(110万円)は使えなくなりますが、累計の贈与税が2,500万円までかからない特別控除額が利用できます。
この制度は前述の「住宅取得等資金贈与の非課税制度」とは併用可能になります。
例えば消費税10%の住宅の購入等の場合、4,000万円までは贈与税が発生しないこととなります。
ただし「相続時精算課税制度」は、相続発生時の相続税にも関係する制度です。贈与者の財産の内容によっては、相続税納税の可能性がありますので、よく確認しておきましょう。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
購入したいマイホームの分譲価格とそれぞれの税制を考慮しつつ、自分に合った制度を選んでいくのが一番のポイントになるでしょう。
2.現金一括購入の注意点
2-1.住宅ローン控除は受けられない
現金購入した場合には住宅ローンを組んだ場合に受けられる「住宅ローン控除」が受けられません。
住宅ローン控除制度は、住宅ローンを利用する場合に、取得者の金利負担軽減を図るための制度です。
毎年末の住宅ローン残高に応じて所得税が控除されますまた、所得税から控除しきれない場合には、住民税からも一部減税されます。
住宅ローンの借入をしていない場合には、当然この制度は利用できません。
2-2.資金を手元に残す必要がある
マンションを一括購入するために、貯蓄を使い切ってしまうのは危険です。購入後の支出も考え、余裕を持った資金を手元に残しておく必要があります。
例えば、車を所有している人であれば将来的の買い替えに備え、貯蓄を残しておく方がよいでしょう。住宅ローンに比べて車のローンは金利が高く、返済期間も短いため、月々の返済額が大きくなり、家計を圧迫する可能性もあります。
また、賃貸と違いマンション購入後は、住居に不具合があると自己負担で修繕しないといけません。
一括購入にはさまざまなメリットがありますが、想定外の事態にもローンを組まずに対応できるよう、一括購入だけにこだわらず資金計画を考えるようにしましょう。
2-3.購入のタイミングを逃さない
マンションの一括購入に向けて、貯蓄をしている人も多いと思います。その場合に注意したいのが、一括購入をすることだけに重きをおいて、自分に有利な購入条件を逃すことがないようにということです。
住宅購入では、1章でご紹介した住宅取得資金の非課税制度や不動産登記の軽減措置など、さまざまな優遇制度が設けられています。しかし、これらの制度は期間限定であることが多く、購入する時期によっては適用とならない可能性があります。
また「貯蓄をしている間に気に入っていた物件がなくなってしまった」、「マンション価格が上昇して、なかなか一括購入できる資金が準備できない」といったこともあります。
現金一括購入する事だけに重きを置いて住宅の検討自体を先送りにしていると、自分たちの購入のタイミングを逃してしまう可能性があります。
税制や家族のライフプラン、周辺のマンション販売情報を総合的に見ながら、ご自身の「買い時」を逃さないようにしましょう。
3.番外編 私のおススメ!!
余分な利息は払いたくないが、現金を全て使いたくない。そんなよくばりな方にもおススメの購入方法があります。
銀行によっては、住宅ローン借入金額を預金する事で、住宅ローン金利が実質ゼロになる商品があります(預金連動型ローン)。
例えば、住宅ローンを3,000万円借り入れする場合、本人名義で、3,000万円普通預金すれば、毎月変動金利での支払いが発生しますが、金利分が口座にキャッシュバックされます。返戻する借入金利息の金額は、ご本人の対象口座で計算した普通預金口座の毎日の最終残高を合計した平均金額に、基準利率から普通預金利率を控除したものを乗じて、借入金利息返戻の対象となる日数分について計算します。
また、定期預金ではなく、普通預金ですので、自分のタイミングで、引き出しが可能になります。
手元にお金を残し、住宅ローン控除による節税を可能にし、団体信用生命保険にも加入でき、万が一の時には、団体信用生命保険で残債ゼロになり、手元に預金分の資産も残ります。
しかし、住宅ローンを組む事に代わりはないので、住宅ローン手数料・保証料・抵当権設定費用は発生しますのでその点は注意が必要です。
また、金融機関によって商品内容が異なりますので、各金融機関への確認も必要です。
こちらを適用したい場合は、もろもろ諸経費がどれだけかかるか、住宅ローン控除で10年間どれだけ還付を受けられるかなどを計算する事でどれだけメリットがあるかを確認する事が重要になってきますので、慎重に購入方法を選んでいきましょう。
まとめ
購入をする場合、1円でも多く払いたくない方には、現金購入をおすすめします。しかし各家庭によって、家庭環境・資産状況が違いますので住宅購入する場合は、十分な下調べをした上で自分が満足できる購入方法をみつける事が大切です。
今は、買い手にメリットのある税制、金融機関の商品もたくさんあるので、マイホーム購入の夢を後押ししてくれる要素はたくさんあります。
こちらの記事を読んで、少しでもみなさまの住宅購入の参考になれば幸いです。