マンションをご契約いただいたお客様から「マンション購入後に住宅ローン控除を受けながらでも、ふるさと納税を利用できますか?」という質問をいただくことがあります。
まず、結論からお伝えすると『住宅ローン控除』と『ふるさと納税(寄付金控除)』は、併用可能です。ただし併用する場合には、いくつか気を付けるべき点があります。
この記事では、住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合の注意点や、ふるさと納税の自己負担額を最小の2,000円に収められる寄附上限額についてわかりやすく解説していきます。
住まい購入に関わる税制・ローンの知識を深めたい方へ
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1. 住宅ローン控除とふるさと納税(寄附金控除)は併用できる
住宅ローン控除を利用しながらでも、ふるさと納税による寄附金控除を併用することは可能です。ただし、併用する際には注意点があります。
併用の注意点:申告方法によって控除額が減る可能性がある
住宅ローン控除とふるさと納税を併用する場合、申告方法によっては控除額が減り、自己負担額が増える可能性がある点に注意が必要です。
具体的には、このように自己負担額が2,000円で済む、ふるさと納税の上限額が変わります。
※併用の有無にかかわらず、ふるさと納税の最低自己負担額は2,000円です。
控除の申告には2つの方法があります。
- 住宅ローン控除については『年末調整』を、ふるさと納税については『ワンストップ特例制度』を利用してそれぞれ申告する方法
- 住宅ローン控除もふるさと納税も『確定申告』を利用して一緒に申告する方法
申告方法をどちらで行うかで、控除することができる最大額が異なります。2章では、2つの申告方法と控除上限額が異なる理由をご紹介します。
2. 確定申告とワンストップ特例制度の違い
ふるさと納税を行って控除を受けるには、『ワンストップ特例制度』を利用するか、『確定申告』を行うかの2つの方法があります。
この2つの制度では以下の項目で違いが出てきます。
- 利用できる人
- 申請の方法
- 申請の期限
- 寄附できる自治体の数
- 控除の仕組み など
それぞれの申告方法による違いを解説します。
2-1.確定申告
自営業者や給与以外にも収入があるなど、ふるさと納税に関係なく確定申告をする必要がある人は、確定申告による申告となります。
また、確定申告の必要がない会社員の場合でも、寄付をする自治体が5つを超える場合は確定申告になります。
確定申告による申告では、寄付をする自治体数に限定がないというメリットがあります。
一方、確定申告では所得税と住民税の両方から控除されるため、住宅ローン控除と併用する場合には上限額全額の控除を受けられない可能性があります。
確定申告での控除の計算方法
確定申告を行った場合は次の順番で所得税と住民税から控除されます。
[1] 所得税からふるさと納税分の一部を控除
↓
[2] 控除後の所得税から住宅ローン控除分を控除
↓
[3] 住民税から、[2]で控除しきれなかった住宅ローン控除分を控除(上限あり97,500円)
↓
[4] 控除後の住民税から、[1]ふるさと納税分の残りを控除
ポイントとなるのが、[3]の『住民税から住宅ローン控除分を控除』には上限金額(前年分の所得税の課税総所得金額の5%、最大97,500円)があるということです。
[3]の時点で住宅ローン控除の控除額が上限額(97,500円)より多く残っている場合、その上回った分は税金の控除に充てることができません。
※上記の上限金額は令和4年の場合です。居住年が平成26年から令和3年12月31日までに入居した人で、かつ消費税8%または10%で契約した人、または令和4年中の入居者のうち特例の延長等に該当する場合には、上限金額は前年分の所得税の課税総所得金額の7%、最大136,500円となります。
このように、ふるさと納税と住宅ローン控除の併用の場合、確定申告による申告をすると、それぞれの控除上限額を利用しきれずに捨ててしまうことになる可能性があります。
2-2.ワンストップ特例制度
確定申告をしなくてもふるさと納税の寄付金控除を受けることができるのが、ワンストップ特例制度です。
利用条件
この制度を利用するには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- 寄付をする自治体が5自治体以内
※1つの自治体に複数回寄付する場合も、1自治体とカウント - 元々確定申告をする必要のない、給与所得者等であること※他の控除等を年末調整で申告している必要があります
- 寄付をした年の翌年1月10日までに、ワンストップ特例申請書を寄付先自治体に提出することが必要。寄付毎にワンストップ特例申請の手続きをする必要があります。
ワンストップ特例制度での控除方法
ワンストップ特例制度を利用した場合、ふるさと納税分については所得税からは控除されず、全額住民税から控除されるようになります。
順番としては、こちらの順で控除されます。
[2]所得税から住宅ローン控除
↓
[3]住民税から住宅ローン控除
↓
[4]住民税からふるさと納税分を控除
下の【図1】のように、住宅ローン控除額が所得税より小さい場合の控除の順番は[2][4]のみとなります。
一方で下の【図2】のように、住宅ローン控除額が所得税より大きい場合の控除の順番は[2][3][4]となります。
2-3 確定申告をする必要がない給与所得者等は手続きが簡単なワンストップ特例制度がおすすめ
ワンストップ特例制度が利用できる人は、この制度を利用するのがおすすめです。
おすすめする理由は、この2点です。
- 住民税から全額控除される
- 確定申告書を作成する手間がなく、簡単な申請書と本人確認書類を送付するのみで申請手続きが完了する
ワンストップ特例制度では、ふるさと納税による税控除は住民税からのみ行われます。ふるさと納税による控除は、住宅ローン控除のような住民税から控除できる上限金額というものが設けられていません。そのため住宅ローン控除とふるさと納税、どちらの控除上限額も利用することが可能となります。
ワンストップ特例制度では、5自治体までという制限がありますが、筆者はデメリットにはならないと考えています。というのも、同じ自治体に複数回寄附するときは、1自治体への寄附としてカウントされるので、応援したい自治体には回数を気にすることなく何度でも寄附できるからです。
3. 住宅ローン控除開始1年目は、ワンストップ特例制度は利用できない
住宅ローン控除の適用を受ける1年目は、必ず確定申告を行わなければいけないため、ワンストップ特例制度を利用することができません。
もちろん、ワンストップ特例制度が使えないだけで、ふるさと納税と併用することは可能です。
住宅ローン控除初年度は確定申告で「住宅ローン控除」と「寄付金控除(ふるさと納税)」の申告を行います。
2年目からは年末調整を利用して住宅ローン控除の申請を行いますので、ワンストップ特例制度を利用できるようになります。
4. 医療費控除やiDeCoの利用者も、ふるさと納税と併用できる
4-1 医療費控除を受ける人
医療費控除を受ける場合は確定申告が必要です。つまりこのケースも住宅ローン控除開始1年目と同じように『確定申告をする必要がない給与所得者等』という条件を満たさないので、ワンストップ特例制度を利用することはできず、確定申告にて寄附金控除の申告をすることになります。
ちなみに、ワンストップ特例制度を利用予定で手続きをしていた人が、医療費控除の利用などで確定申告が必要になった場合、確定申告を行うとワンストップ特例制度の申込み自体が無効となります。寄付先の自治体などに特例制度の利用取り下げの連絡などをする必要はありません。
なお、医療費控除の利用により所得税や住民税を軽減できますが、一方でふるさと納税の控除上限額も減ることとなります。これは、ふるさと納税の控除上限額の計算の基となる住民税が減額されることによるものです。
4-2 iDeCoの利用者
iDeCo(小規模企業共済等掛金控除)は確定申告だけでなく、年末調整でも申告ができます。そのため、年末調整で申告していれば、ワンストップ特例制度を利用できます。
なお、iDeCoを利用している人も【4-1】医療費控除を受ける人と同様の理由により、ふるさと納税の年間控除上限額が減ることになります。
5. 家族構成・年収別のふるさと納税年間控除上限額を調べる方法
年間控除上限額は、年収や家族構成等個々人の条件により異なり、計算も煩雑なため一覧表を参考にしてみてください。
総務省のふるさと納税ポータルサイトには、『給与所得者の自己負担額2,000円を除いた全額が控除される目安の一覧表』や『給与収入と家族構成、寄附金額を入力して、寄附金控除額を計算するエクセルのシート(「関連資料」ページより)』が用意されていますので、利用してみてください。
→ふるさと納税ポータルサイト(総務省)
6. まとめ:動画で解説
住宅ローン控除は家計の税負担を軽減し、ふるさと納税は地域の活性化や振興に役立てられたうえに、返礼品などを貰うことのできる制度です。
制度を理解して活用していきましょう。
↓記事の内容を動画で分かりやすく解説しています↓
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