近年、政府の強力な後押しにより、「ZEH」「ZEH-M」基準の住宅やマンションが普及しています。住宅のチラシなどで、これらの表記を見かけたことのある方は多いのではないでしょうか。
ZEH・ZEH-Mは、カーボンニュートラルの実現に向けて一定の環境性能を満たす住宅・マンションです。2030年以降は、すべての新築物件に適応されることになります。現在は義務化に向けた過渡期であり、徐々に認知度を高めている段階です。
※ZEHは戸建やマンションの住戸を指し、ZEH-Mはマンションの住棟(建物)を指します。
そこで、本記事ではZEHマンションについて詳しく解説します。ZEHマンションのメリットは、優れた環境性能により住みやすい家になることです。住まい選びの際にも、ぜひ参考にしてください。
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ZEHマンションとは?
ZEH(ゼッチ)は「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称で、「省エネ」「創エネ」によりエネルギー収支を「ゼロ以下」にした住宅を指します。はじめに、ZEHに関する以下のキーワードについて確認しましょう。
- 省エネ:「省エネルギー」の略称、高断熱の外皮や高効率機器によりエネルギーを効率よく使用すること。
- 創エネ:「創エネルギー」の略称、太陽光発電などによりエネルギーを創出すること。
- 断熱:断熱材などによって住宅の外から内、内から外への熱の移動を遮断すること。
- 一次消費エネルギー:冷暖房・換気・給湯・照明といった建築設備機器の消費エネルギーの合計値。テレビなどの家電類の消費エネルギーは含まない。
ZEHは省エネ・断熱性能によってエネルギー消費を抑え、創エネによって創り出したエネルギーで一次消費エネルギーをまかなうことで、エネルギー収支をゼロ以下にします。まずは、この基本的な考え方を念頭に置いておいてください。
ZEBとの違い
ZEHとともに、「ZEB」という言葉が表記されていることがあります。ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略称です。ZEHは対象を住宅に限定していますが、ZEBはビルや工場、学校などの非住宅の建築物を対象にしています。基本的な考え方は同様なので、「省エネ・創エネによってエネルギー収支をゼロ以下にしている建築物」という認識で大きく捉えておきましょう。
ZEHが普及している背景
近年は、一般向けのマンション広告でも「ZEH」「ZEH-M(ゼッチ・マンション)」が謳われるようになりました。このようにZEHの考え方が広く普及している背景には、政府のカーボンニュートラルに向けた取り組みがあります。
アメリカやフランスでは、2007年頃から住宅のZEH化が公表されていました。一方、日本では2014年に閣議決定された「エネルギー基本計画」によって戸建て住宅から「ZEH」が導入され、2018年に集合住宅でも「ZEH-M」が新しくつくられました。
2021年10月に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」では、「2030年度以降新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」としています。そのため、今後の新築住宅では「ZEH」「ZEH-M」が基本になるでしょう。
このような政府の動きを受け、住宅メーカーはもちろんのこと、一般消費者のなかでも住まいの省エネに対する関心が高まっているようです。特別優遇金利などのコスト面でのメリットもあるため、住宅購入を機に環境やエネルギーに興味を持つ方が多いのかもしれません。
ZEHマンションの4タイプ
マンションの場合、住棟(建物)全体を評価する「ZEH-M」基準と、それぞれの住戸を評価する「ZEH」基準があります。住棟全体を評価するZEH-Mには4つのタイプがあり、それぞれの仕様は以下のとおりです。
住棟(建物)での評価 | ||||
---|---|---|---|---|
タイプ | 断熱性能※1 | 省エネ率※2 | 同基準を目指すべき階層 | |
再エネ除く | 再エネを含む | |||
ZEH-M | 強化外皮基準※3 | 20% | 100%以上 | 1~3階建 |
Nearly ZEH-M | 強化外皮基準 | 20% | 75%以上、100%未満 | 1~3階建 |
ZEH-M Ready | 強化外皮基準 | 20% | 50%以上、75%未満 | 4~5階建 |
ZEH-M Oriented | 強化外皮基準 | 20% | 再エネの導入不要 | 6階建以上 |
※1:全住戸で達成すべき基準
※2:共用部を含む住棟全体で達成すべき基準
※3:地域ごとに定められた外皮(屋根・外壁・床・窓など)の断熱性能
「ZEH-M」「Nearly ZEH-M」「ZEH-M Ready」「ZEH-M Oriented」の順に、省エネ率の基準が緩くなっていくのが特徴です。再エネは「再生可能エネルギー」の略称であり、太陽光発電などによって創出するエネルギーを指します。マンションの階層が多いほど、延床面積が増えて太陽光発電でまかなえる電力の割合が小さくなってしまうため、再エネの基準が小さく設定されています。
ZEHマンションの設備や仕様
ここでは、ZEHマンションで採用されることが多い設備・仕様をご紹介します。なかにはエネルギー面のメリットだけでなく住みやすさに繋がるものもあるので、マンション選びの際は参考にしてください。
共用部分に採用される設備
マンションの共用部分に採用される設備・仕様は以下のようなものです。
太陽光パネル
多くの建築物で、創エネの役割を担っているのが太陽光パネルです。電力会社に電気の買い取りが義務付けられたことを機に、戸建て住宅で注目を集めました。ZEH-Mの普及に伴って、マンションでも採用が増えることでしょう。普段の消費エネルギーをまかなってくれるだけでなく、後述の蓄電システムと合わせて停電時の電力として使えるケースがあります。
蓄電システム
蓄電システムは、太陽光発電などで創出した電力をためておくものです。太陽光パネルに蓄電機能はないので、夜間も発電した電力を使うためには蓄電システムが必要になります。停電時には太陽光発電を補う電力としても機能し、非常用エレベーターなどに使われます。
住戸に採用される設備
それぞれの住戸に採用される設備・仕様は以下のようなものです。
高効率給湯機(エコジョーズ、エコキュート等)
エコジョーズやエコキュートに代表される高効率給湯器は、排気ガスの熱を再利用することで、給湯におけるガスの使用量を抑える省エネ設備です。家庭におけるエネルギー消費量の約3割が給湯エネルギーであり、高効率給湯器を導入することで光熱費の削減を期待できます。
節水型水栓
節水型水栓は、水の消費を抑えられるように設計された水栓です。以下のように、商品によってさまざまな工夫が取り入れられています。
- タッチレス水栓:手をかざすだけで水を出したり止めたりでき、水の使用量を抑えられる。
- 定量止水式水栓:設定した水量に達すると自動的に止まる。バスタブなどに使用される。
- サーモスタレット混合水栓:急激に温度変化しない水栓。風呂などで捨て水を減らせる。
高断熱仕様、Low-E複層ガラス
ZEHマンションの大きな特徴のひとつが、強化外皮基準を満たす断熱仕様です。そのため、特に熱の出入りが激しい窓では、「Low-E複層ガラス」という高機能ガラスの採用が増えています。
Low-E複層ガラスは、熱の放射を下げる特殊な金属膜「Low-E膜」と中空層によって断熱・遮熱性能を向上させたガラスです。これを採用することで、以下のような効果を期待できます。
- 快適な室温:高断熱仕様により熱が中に侵入しにくく、外に漏れにくい
- 結露の防止:室内側のガラスが冷えにくいためシングルガラスに比べると結露しにくい
- 冷暖房費の削減:効率的な空調により節電できる
高効率エアコン
ZEH補助金を受けるためには、各メーカーが販売しているZEH対応モデルの高効率エアコンを選択しましょう。ZEH補助金の申請を住宅メーカーが行う場合、ZEH基準を満たすためにエアコンの性能を指定されたり、購入予定のエアコンを聞かれたりする可能性があります。
LED照明
LED照明は、高い省エネ性能と長い寿命で、環境に優しいとされている照明です。発売当初は価格の高さが目立ちましたが、普及に伴って価格が下がり購入しやすくなりました。電気代を節約できるだけでなく、照明を交換する手間が少なくなることもメリットです。
エネルギー計測装置(HEMS・MEMS)
エネルギー計測装置は、電気・ガス・熱源・水などのエネルギーを系統ごとに計測し、使用状況を可視化するシステムです。それぞれの住戸を管理するシステムとしてHEMS、マンション全体を管理するシステムとしてMEMS(MEMSはマンションの共用設備)があります。HEMSを導入すると、日々のエネルギー消費量が一目瞭然になります。電気の消し忘れなどの無駄使いも可視化され、省エネ対策や節約の意識づけに繋がるでしょう。
ZEHマンションの特徴
最後に、ZEHマンションの特徴を見てみましょう。
室温を快適に保ちやすい
前述のとおり、ZEHマンションには地域区分に応じた断熱性能基準が定められています。外の暖気・冷気が室内に侵入しにくく、室内の空調による熱が外部に逃げにくくなるため、快適な室温を保ちやすくなります。
日本では室内においても、夏場の熱中症や冬場の低体温症・ヒートショックといったリスクが報告されています。しかし、住戸の断熱性能が高ければ、快適な室内環境でリスクを下げることが可能です。
結露が起こりにくい
結露は室内の暖かい空気が、外気で冷えた窓ガラスなどに触れることで急激に冷やされて液体化する現象です。Low-E複層ガラスのような断熱・遮熱性能に優れた複層ガラスであれば、室内側のガラスが外気によって冷えにくく、比較的結露が発生しにくい傾向があります。
しかし、結露の大きな原因のひとつは、室内外の湿度の差です。Low-E複層ガラスなどの高機能ガラスでも、リスクがなくなるわけではありません。結露が気になる場合は、湿度の差を小さくするために通気性を確保しましょう。
光熱費を抑えられる
ZEHマンションには先にご紹介したような、電気・ガス・熱源・水の消費エネルギーを抑えるさまざまな設備・仕様が取り入れられています。政府がZEHを推進する目的はカーボンニュートラルの実現ですが、一般消費者がZEHマンションに住む大きな理由のひとつは、光熱費の削減が期待できることでしょう。
夏の猛暑や電気代の高騰により、家庭における光熱費の負担が増えています。ランニングコストを抑えられるZEHマンションは、多くの家庭にとって魅力的な選択肢といえるでしょう。
災害時でも電気が使える
太陽光パネルと蓄電システムを備えたZEHマンションでは、停電時に発電した電力を使えるケースがあります。このような非常用電源は、非常用エレベーターや消防設備に使われるのが一般的です。非常時に停電が発生しても、安全に避難できる可能性が高まります。
住宅ローンを特別優遇金利で利用できる場合がある
多くの金融機関が、ZEHを購入する際の住宅ローンに対して特別優遇金利を設定しています。対象となる金利の種類(固定・変動)や下げ幅は金融機関によってさまざまなので、住宅ローンを組む場合は金融機関を幅広く調べてみるとお得に購入できるかもしれません。
住宅ローン控除の最大控除額が上がる
住宅ローン控除とは、ローンを借りて住宅を取得したときに、年末のローン残高の0.7%相当額が所得・住民税から一定期間控除される制度です。住宅の環境性能や入居時期によって、対象となるローン残高の限度額が定められています。
ZEHマンションの場合、現在の制度では借入限度額が新築では3,500万円(子育て・若者夫婦世帯は4,500万円)、既存住宅では3,000万円へ引き上げられています。一方で、省エネ基準などの環境性能を満たしていない新築住宅は、住宅ローン控除を受けられなくなることに留意しておきましょう。
また、マンションの場合は、住棟と住戸でいずれの基準も満たしている必要があることにも注意が必要です。検討しているマンションが基準を満たしているかどうかは、不動産会社の営業担当者に確認してみましょう。
エネルギーに興味を持つようになる
前節でご紹介したエネルギー計測装置(HEMS・MEMS)を導入すると、暮らしにおけるエネルギー消費量がいつでも可視化されます。節約のための省エネ対策がエネルギー消費量の数値として現れるので、エネルギーに興味を持つきっかけになることでしょう。一般消費者の省エネに対する意識は高まっているため、個人としても環境を強く意識して暮らす時代になるかもしれません。
マンションの資産価値が保ちやすい
ZEHマンションは、設計時から断熱・省エネ・創エネといった環境性能にこだわってつくられています。特に、外皮性能などはリフォームで基準に適応させることが難しく、ZEHマンションならではの魅力といえるでしょう。
また、ZEHマンションは住みやすさや光熱費の削減といったメリットを持っています。そのため、将来にわたって資産価値が保たれると推測されています。
中古マンションには基準を満たすものが少ない
2025年以降はZEH基準の住宅が増えると予想されていますが、これまでの家づくりでは強く意識されていませんでした。現状は中古マンションでZEH基準の住宅を探すのは難しいため、ZEHに住みたい場合はこれから新築されるマンションを中心に探してみるとよいでしょう。
まとめ
ZEHは、カーボンニュートラルの実現に向けて環境に配慮する取り組みです。建築において環境と快適性には強い繋がりがあり、結果的に住みやすい家が実現します。あなぶき興産では、2025年以降着工のすべての新築マンションをZEH基準にすることを目指しています。ZEHマンションにご興味のある方は、お気軽にお問合わせください。
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