不動産の広告で見かける駅やスーパー等まで「徒歩10分」の表示。実際にどれくらい離れているの?と疑問に思ったことがある人は多いと思います。
実はこの数字、不動産の表示に関するルールに基づいて距離から算出しただけに過ぎず、実際に歩いて移動するのに必要な分数は違うんです。もちろん、歩く人や、歩いている状況によっても違いが出てくる数字です。
そこでこの記事では「徒歩10分」という表示の根拠と実際の距離感、様々なケースを想定した「徒歩10分」について解説します。
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「徒歩10分」はどうやって決める?
80mを1分で歩く想定。だから「徒歩10分」の距離は約721m~約800m
「不動産の表示に関する公正競争規約」では、道路距離80mを歩くのに1分かかるものとして算出すると定められています。
駅やスーパーなどの施設までの距離を80mで割り、さらに端数がでた場合は切り上げて表示するので、「徒歩10分」の実際の距離は約721m〜約800mの間ということになります。ちなみに約801mの場合は徒歩11分と表示されます。
徒歩による所要時間は、道路距離80メートルにつき1分間を要するものとして算出した数値を表示すること。この場合において、1分未満の端数が生じたときは、1分として算出すること。
出典:不動産の表示に関する公正競争規約施行規則(PDF)(不動産公正取引協議会連合会)
距離の測り方は「物件のエントランスから各施設の出入り口まで」
徒歩分数を算出するための距離は、物件のエントランスから各施設の出入り口までを基準として測ります。
なお「駅まで徒歩10分」という表記の場合、駅舎の出入り口(複数ある場合は、広告に記載された出入り口)に到着するまでが10分で、改札口に到着するまでの時間は「徒歩10分」に含まれていません。
団地(一団の宅地又は建物をいう。以下同じ。)と駅その他の施設との間の道路距離又は所要時間は、取引する区画のうちそれぞれの施設ごとにその施設から最も近い区画(マンション及びアパートにあっては、その施設から最も近い建物の出入口)を起点として算出した数値とともに、その施設から最も遠い区画(マンション及びアパートにあっては、その施設から最も遠い建物の出入口)を起点として算出した数値も表示すること。
出典:不動産の公正競争規約集(PDF)(不動産公正取引協議会連合会)
2022年9月のルール改正で、計測の起点と着点が従来の「敷地から敷地の最も近い場所」から「物件のエントランスから施設の出入り口まで」に変更となりました。
それに伴い、例えば大型のマンションなど物件に複数のエントランスが存在する場合や、新築分譲戸建ての住宅街で敷地内に複数の住宅がある場合には、その施設出入り口にもっとも近いエントランスからの距離と、もっとも遠いエントランスからの距離(およびそこから算出した徒歩分数)の両方が広告に記載されるように変更となっています。
道路状況や信号・踏切の待ち時間は考慮されていない
また計算に用いるのは施設間の距離だけで、途中にある信号や踏切待ちの時間、坂道や歩道橋といった道路状況等は考慮されていません。単純に「その距離を(どんな状況であれノンストップで)80m/分で歩いた場合に何分かかるか」という数字なので、徒歩10分よりも早く着くことも、遅く着くこともあります。
なお所要時間のズレが生じる原因として、以下のような要素が挙げられます。
- 歩くスピードの個人差
- 階段やエレベーターの使用時間・待ち時間
- 積雪や雨・強風等、歩行を妨げる気象
- 信号や踏切の待ち時間
- 歩道橋
- 坂道
- 通勤ラッシュ時の人混み
徒歩10分=約721m〜約800mを実際に移動するとどんな感じ?様々なパターンから検証
「徒歩10分の距離は、800m弱程度」とだけ聞くと「歩けなくはなさそうだな」と思いますよね。でも算出の方法を知ると、本当に歩けるのか、目的地まで近いのかは、歩く人や条件・状況によって変わってくるとお分かりいただけたはず。
そこで、実際に徒歩10分=約721m〜約800mの距離を毎日移動している人に話を聞きました!
いつもの靴なら問題ないけど、履き慣れていない靴の時は体力も時間も必要(20代女性の場合)
(20代女性)
通勤で毎日、駅まで10分歩いています。
駅までは平坦な道なので問題ないですが、いつもより高い(5cm)ヒール靴を履いた日は(履き慣れていないこともあって)ちょっとキツいと感じることもあります。駅に着くまでの時間も、いつもの10分よりは長くなります。
ふだんは3cm程度のローヒール靴を履いているというこの方は、平坦な道ということもあり、徒歩10分の距離を問題なく歩いているそうです。しかし履き慣れていない靴の日は、いつもより歩くのに時間がかかるのだとか。
同じ「徒歩10分」の距離でも、靴によって時間的にも体感的にも歩きやすさは変わるようです。
雨の日に歩くのは億劫に感じる(30代男性の場合)
(30代男性)
通勤のために、駅まで10分歩いています。
雨の日は傘をさしますが、土砂降りの日は行くのが嫌だなとは感じますね……通勤の時は革靴を履くので、靴が濡れるのも気になります。雨降りに加えて風が吹いている日は、足元を拭くためのタオルや替えの靴下を持っていきます。
最近は、駅でレインシューズを履いている人を見かけることが増えたので、自分も買おうかと考えています。
日ごろは問題がなくても、荒天時に足元が濡れて気になる・歩くのが億劫と感じることもあるようです。歩きにくさに加えて、タオルや替えの靴下など、晴れの日に比べて荷物が増えるのも、億劫に感じる要素なのだとか。
買い物で荷物が増えると、歩くのはかなり大変(30代女性の場合)
(30代女性)
家から徒歩10分のスーパーに買い出しに行くことが多いです。
牛乳や洗剤、お米など、だいたい総量で4kgを超えたあたりから、10分の距離を歩くのは大変になります。子供を連れているときは、さらに大変です。
お茶やミネラルウォーターなどのかさばって重いものは、週末に車で買い出しに行くことにしています。
普段は歩くのに問題がない距離でも、荷物が多かったり小さな子供を連れてたりなど、条件が変わると大変に感じるようになります。
この方は、重くてかさばるものを車で買い出しに行くほか、ネットスーパーで購入することも検討しているそうです。
大人なら10分程度でも、子どもの足だと10分以上かかる(小学1年生の子供をもつ母親の場合)
(小学1年の子を持つ母親)
子供が通う小学校までは、大人が歩くと10分程度の距離ですが、子供の足だと20分ほどかかります。
帰りはゆっくり歩いても問題ないですが、朝は遅刻防止のために寄り道しないよう言い聞かせています。特に初めて登校する日の朝は、朝礼の40分前に出発させました。
最近は通学に慣れてきたので、20分前に出発するようになっています。
子供の体格や体力によっては、大人と同じ速度で歩けないのでさらに時間がかかります。特に通学路の場合は、前もって歩いて時間を計っておく、時間に余裕を持って出発するなどの対策が必要そうですね。
自転車なら6分程度。でも坂道なのでキツい(20代男性の場合)
(20代男性)
通勤に使う駅まで徒歩10分の距離。最初の頃は自転車で6分程度かけて行っていましたが、途中に坂道があるのでキツかったです。
今は、外に出る仕事ではないこともあり、運動のために歩いて駅まで向かっています。個人的には、自転車よりも歩いて坂を上る方が楽だと感じています。
同じ徒歩10分の距離でも、途中にアップダウンがあると時間もかかりますし、体力的にも負担が大きくなります。また自転車移動の場合は、駐輪場所の確保も必要です。さらに駅の場合は、自転車置き場からホームまでが遠いこともあるので、その分の時間を考慮しなければなりません。
「徒歩10分」というと、つい駅からの距離ばかりを考えがちですが、ほどよい距離にあると便利な施設は駅だけではありません。家族構成やライフスタイルによっても多少変わりますが、例えばスーパー・コンビニ・学校・保育園・公園・病院などが挙げられます。
荷物が増えると大変とはいえ、日常の買い物を頻繁にする人にとってはスーパーが近い方が便利ですし、自炊をしない人にとって徒歩10分圏内のコンビニはライフラインに近いものがあるでしょう。
住まいを決めるときには、周辺環境とライフスタイルの両方をしっかり確認しておくことが、住み始めてから感じる不便さを回避するポイントになります。
駅から徒歩10分のマンションは「買い」なのか
賃貸・中古・分譲に関わらずマンションの場合、特に都市部においては、駅からの距離は立地において非常に重要な要素となります。徒歩10分という距離の場合はどうなのでしょうか。メリットとデメリットを紹介します。
選べる物件の数が多い(メリット)
利便性や資産性を重視して駅から徒歩10分以内の物件を選ぶ方は多く、その需要を満たすように物件数も多いです。
比較対象が多いので、豊富な候補の中から自分に合った間取りや築年数、価格のマンションを選ぶことができます。
住みやすい住環境であることが多い(メリット)
駅から徒歩5分以内の駅近物件の場合、周辺が繁華街であることが多く、利便の良さがある反面騒がしい住環境です。しかし駅から徒歩10分ほど離れると(駅にもよりますが)ほどほどに住宅地が増えてきて、便利でありながらも、駅前に比べれば静かな住環境になる可能性が高くなります。
購入価格・家賃が高い傾向にある(デメリット)
利便の良さと住環境の良さを兼ね備え、需要の高い物件であるため、駅徒歩5分以内のような駅近物件ほどではないにせよ、価格や家賃が高くなる傾向にあります。
価格が折り合わない場合は、10分以内にこだわらず15分圏内まで広げる、広さや築年数を妥協するなど、条件を変えて探してみることをおすすめします。
周辺環境の変化リスクがある(デメリット)
住環境が良いエリアなので、用途地域(計画的な市街地を形成するために、住居・商業・工業等大枠としての土地利用を定めるもの)によっては、居住し始めたあとから大型の商業ビルや高層マンションが建つ可能性があります。
これによって眺望や風通し・日当たりが悪くなったり、周辺が混雑しやすくなるといった影響を受けることもあります。
まとめ
不動産の広告で表示される徒歩分数は、道路距離80mを歩くのに1分かかるものとして算出されている数字です。単純に距離を80mで割り、さらに端数がでた場合は切り上げたものなので、道路状況や歩く人、その時の条件や気象などは考慮されていません。
「徒歩10分」という数字だけで近い・遠いを判断せずに、周辺の環境やライフスタイルをよく考慮して住まいを選ぶことをおすすめいたします。
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