「公的年金だけでは、老後の生活は安定しない」と指摘されて久しい昨今、老後に備えて「お金を貯めたい」「家計の無駄を減らしたい」など、漠然と考えていませんか。老後資金を捻出するためには、具体的な目標設定と、それに合わせた家計の見直しが必要です。
今回は、ファイナンシャルプランナーとして活動する筆者が、かぎられた資金の中で無理なく老後の資金を捻出するための、家計の見直し方法について解説します。
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人生の三大支出をうまく乗り越えることが、老後資金を作り出す第一歩
家計を見直す前に知っておきたいのは、将来の「必要資金」です。具体的な目標があると優先順位を付けることができるため、家計の見直しがスムーズに行えます。必要資金として考えられるのは、車の買い換えや旅行などのレジャー費、家電の買い換え費用などさまざまです。
中でも「教育費」「住宅費」「老後費」は人生の三大支出といわれ、最も大きな支出です。まずはこの三大支出の金額の目安を統計情報から確認して、それぞれを捻出する手段を考えてみましょう。大きな金額ではイメージしにくいため、月額に換算するとリアルに考えることができますよ。
人生の三大支出[1]教育費
文部科学省「子供の学習費調査(2016年度)」によると、幼稚園から高校それぞれの1年間における学習費(授業料や習い事代などを含む)の目安は、以下の通りです。
区分 | 公立 | 月額の目安 | 私立 | 月額の目安 |
---|---|---|---|---|
幼稚園 | 約23万4,000円 | 約1万9,500円 | 約48万2,000円 | 約4万200円 |
小学校 | 約32万2,000円 | 約2万6,800円 | 約152万8,000円 | 約12万7,300円 |
中学校 | 約47万9,000円 | 約3万9,900円 | 約132万7,000円 | 約11万600円 |
高校 | 約45万1,000円 | 約3万7,600円 | 約104万円 | 約8万6,700円 |
※参照元:文部科学省ウェブサイト「平成28年度子供の学習費調査」
2010年4月から公立高校の授業料負担は実質0円となっています。2014年4月からは私立高校に通う場合でも所得に応じて年間11万8,800円~29万7,000円が就学支援金として支給されており、2020年4月からは就学支援金の上限額が引き上げられるので、私立高校に通う場合でも授業料は無償化となる予定です(ただし、世帯での所得が高いと支援金を受給できません)。
また、高校の費用だけでなく、幼稚園・保育園などに通う3歳~5歳までの利用料が2019年10月から無償となりますが、幼稚園の場合は支給額の上限あったり、利用料以外の通園送迎費や行事費などば別途負担しなければなりません。
大学進学の際は、条件を満たせば行政や公共団体からの「給付型奨学金(返済不要)」も利用することもでき、子育て世代には嬉しい制度が多くありますね。しかし、授業料や利用料以外の習い事代、塾代など、子供の年齢と家計から出て行くお金は比例して増えていく傾向です。
大学の費用は、独立行政法人日本学生支援機構の「平成28年度学生生活調査結果」によると2016年1年間で約188万円(月々16万円)でした。この金額を月々の家計費からの捻出するのは厳しいことが予測できるため、子どもの大学入学(18歳)までに「教育用貯蓄」をしておきましょう。
貯蓄金額は、年間の大学費用1~2年分である、200~400万円が一人当たりの目安です。貯蓄を始めるときの子どもの年齢にもよりますが、月に2万円程度を家計から捻出できれば目標金額を貯める事ができます。
人生の三大支出[2]住宅費
住宅金融支援機構の「2018年度フラット35利用者調査」によると、収入に占める総返済負担率(1ヵ月当たりの返済額÷世帯月収)は、30%未満となっている世帯が約9割(統計では、住宅ローンの返済額のみで諸経費は含まず)です。
支出の4分の1以上を占める住宅費は家計を考えるうえでも重要なポイントとなります。また住宅購入の場合は、住宅ローンの返済額以外に、固定資産税や修繕費用の備えが必要です。
マンションにお住まいの場合は、管理費などの諸経費も必要となるため、それらを合計した金額を住宅費と考えておきましょう。住宅購入を検討する場合、住宅ローンを利用する人は多い傾向です。例えば固定金利1.2%、返済期間35年、元利均等返済で住宅ローンを組んだ場合、借入金額が3,000万円なら約8万7,510円、借入金額が4,000万円なら約11万6,680円が毎月の返済額となります。
諸経費を考え、毎月の住宅ローンの返済額は世帯月収の30%以内に収まるような計画を立てましょう。25%以内に収めるとゆとりが生まれます。
人生の三大支出[3]老後費
老後の生活は、もらえる年金の金額や支出金額によって変わります。老後にもらえる年金額の概算は、毎年誕月に届く「ねんきん定期便」で確認することができますが、ひとまず統計で考えてみましょう。総務省統計局「家計調査~家計収支編~2018年」によると、65歳以上の2人以上の世帯では可処分所得(手取り収入)約19万4,723円に対して、消費支出が約23万7,831円、月々の赤字は4万3,108円、25年間の赤字累計は、1,293万2,400円です。
この赤字累計額を用意することが、家計の見直しの目的となります。40歳から老後資金を貯め始めた場合、毎月5万円(年間60万円)の貯蓄ができると良いですね。
ただし、この統計の支出では、住居費が約1万4,879円のため、65歳以降も住宅ローンの支払いがあってそれ以上の住居費を見込まなければならない場合は生活費はさらに不足することになるでしょう。例えば、毎月の住宅ローン返済額が10万円の場合、65歳~70歳までの支払い累計は600万円となります。65歳以降は、年金以外の収入を確保するか、現役世代に貯めておくかの対策が必要です。
老後には、マンションの場合は管理費や修繕積立金も住宅ローンが終わっても払い続ける必要がありますし、修繕費も必要になってきます。また、住まい以外にも介護費用や医療費も発生する可能性があります。そのため住宅ローンはできる限り年齢の若いうちに支払いを始め、繰り上げ返済を利用するなどして早めに完済できる計画をしておきましょう。
家計の見直しをする前に、貯蓄目標や今から出来る対策を考えよう
ここまでは三大支出の目安を確認してきました。月々の費用に換算すると、毎月の家計と見比べて実感しやすい数字になったと思います。
また、この三大支出はそれぞれ一度にまとまった金額が必要となるものばかりではありません。日頃の節約で捻出した費用をそのまま支出に充てることができるということも、実感できたのではないでしょうか。
この章でご紹介した下記のポイントを押さえて、次章より毎月の家計を見直していきましょう。
- 教育費は子供の成長とともに増えることを認識する
- 大学費用は月々の家計から捻出するのは難しいので、子供の大学入学までに「教育用貯蓄」を
- 住宅ローンの返済額は、世帯月収の30%以内に抑えるのが理想的
- 老後の生活費を安定させるために、住宅ローンは繰り上げ返済などを利用して早めの完済を
- もらえる年金額を確認して、不足分(老後資金の貯蓄額)をチェック
なお、この章でご紹介した費用は統計を基にした数値です。
実際に家計を見直す際には、一般論に惑わされず自分の生活に合った金額で考えていきましょう。
家計の見直し3ステップ
必要資金がイメージできたら、「現状の支出をどれくらい下げたいか」について目標を決めることが賢明です。1日300円の節約で1ヵ月1万円程度のお金が浮いてきます。小さなところも漏らさず、日々の家計から「無駄」を見つけましょう。
1) まずは固定費を見直して無理のない節約を
まずは通信費や保険料などの「固定費」の契約を見直すのがおすすめです。食費などの日々の支出を削るよりも楽に支出を見直せます。
無駄なオプションを解約したり、同じ内容で安く契約できる会社を探したり、時にはその道のプロに尋ねてみるのも良いでしょう。
また先述した「住宅ローンの繰り上げ返済」では、利息を節約することができます。例えば借入金額3,000万円、借入期間35年、金利1.2%(元利均等返済)の住宅ローンを組んでいた場合の毎月の返済額は約8万7千円です。5年後に300万円の繰り上げ返済をした場合(繰り上げ返済手数料は含まない)、返済期間短縮型の繰り上げ返済では、期間を3年11ヶ月短縮することができ、家計の固定費(住宅ローン)を早めに減らすことができます(軽減できる合計利息は119万4,936円)。
住宅ローンの繰り上げ返済の節約効果は、こちらの記事で詳しく解説しています。合わせて参考にしてください。
「固定費」は一度見直すと我慢や無理をしなくても毎月お金が浮き、浮いた分を貯蓄に回すことができます。
2) 固定費以外の支出は生活の見直しが肝心
固定費以外の日々の買い物での無駄は、家に同じような物があるにもかかわらず重ねて買ってしまうことです。服や靴、キッチングッズなど買った後で「しまった!」と感じる人もいるのではないでしょうか。普段から家の整理整頓をしておき、自分の持ち物を把握しておきましょう。
その他、買い物での失敗しがちなのはセールやポイントに釣られて買いすぎてしまうことです。購入後、冷静に考えると必要性の高くない物を購入していたり、ポイントを計算してみるとそんなにお得ではなかったりということも少なくありません。一つ一つの消費行動を振り返り、家族で目標を共有してチェックし合うと、さまざま見直し点が見えてきます。
3) タイミングに合わせてお金の「貯め方」も見直しを
家計を見直しした後は、浮いたお金を積立貯蓄口座などで「強制的に」貯めていきましょう。
ただし、住宅購入後や教育費が増えるときなどにはお金が貯められないこともあります。そんなときは積立を一旦解除しましょう。
「貯める」「使う」というタイミングにメリハリを付けることが、ストレスが溜まらない家計見直しのポイントです。
まとめ
ファイナンシャルプランナーの視点から、目標を定めた家計の見直し法をご紹介しました。
人生の大きな支出を具体的にイメージして、毎月の家計から必要資金を捻出できるよう、支出の見直しを行う。この原則を守れば、漠然とした節約生活を脱却し、必要なところではお金を使うことができる、生活の質を落とさない節約ができるはずです。
老後資金を作り出すための、目的のある家計の見直しをはじめましょう!
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