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マンション勉強記Vol.6
特集

結婚3年目の主婦がつづるマンション勉強記~Vol.6マーケティング編~

結婚3年目の主婦がつづるマンション勉強記Vol.6では、マンションの「マーケティングに携わる人たち」にスポットをあててお届けします。各都市の市場需給バランスを調査し、お客様の住まいに関するニーズを検証する「エリアマーケティング戦略」。

お客様が住みたいと思うマンションの「立地」、「価格」、「仕様」などを決めるための核となるマーケットの情報収集や分析はどのようにして行われているのでしょうか。
普段はなかなか知ることができないマーケティング室の取り組みを取材しました。

※記事の内容は2020年3月取材時点の情報です。
 エリアや企画時期、商品企画などによって、取り組み内容が異なる場合があります。

エリアマーケティング戦略

穴吹興産株式会社
笠井 利一

今回の登場社員

マーケティング室

 

マンション営業を経て現在のマーケティング室に配属された笠井さん。

今後もより細やかな市場分析を行いお客様のニーズをキャッチしながら、時代の変化に対応していきたいと語る。


お客様のニーズを掴むマンションの「エリアマーケティング戦略」とは?

不動産の【マーケティング】の仕事とは?
マンションの販売動向やお客様が求めているニーズ、各都市の需給バランスを分析・調査し、各セクションにフィードバックします。マンションの「立地」、「価格」、「間取り」や「商品の仕様」などを決定するうえでは、客観的な視点でこれまでのデータにもとづく情報の分析、現在の市場傾向の見極めと今後のマーケット予測が不可欠です。

うえだ マンション勉強記Vol.5では、マンションの建設用地を取得する際の情報として、あなぶき興産のマーケティング室が作成する需給バランスデータを参考にされていると伺いました。
今回は、マンションのエリアマーケティング戦略について一から勉強できればと思っています!

笠井 おまかせください。
ところでうえださん、マンションの「エリアマーケティング戦略」ということですが、一言で聞くとなんだか難しそうな分野だな…と思いませんでしたか?

うえだ はい。ぶっちゃけ、私には未知の世界だなあ…と思っていました。笑

笠井 うえださんはこれまでのマンション勉強記を通してアルファシリーズマンションのモデルルーム見学をはじめ、マンションの設備やコンセプトなど各セクションの担当者から話を聞かれたとのことですが、どうですか?
少しでも「マンションって素敵だな」、「住んでみたいな」と感じることはありましたか?

うえだ そうですね。マンションビギナーの私が今まで知らなかったマンションの魅力や細部までこだわりを持って造られているポイントについて知ることで、「あ、マンションにはこんな良さがあるのだな、いいな」と感じることも増えてきました。
実際に、自分の生活に置き換えて将来の「マイホーム」についても考えてみることでイメージが広がったように思います。

笠井 まさに、うえださんが「いいな」と感じたイメージは、マンションの購入を検討されているお客様が抱かれている「ニーズ」にも似た要素をもっています。
今回勉強していただくマーケティング室のセクションでは、お客様がマンションに求めているニーズはもちろん、各都市の市場を調査・分析し、質の高いマンションを提供するための検証を行っているのですよ。

うえだ なるほど!マーケティング室では、お客様のニーズに寄り添った調査を行われているのですね。
マーケティング調査はどのようにして行われているのか、詳しく教えてください!

笠井 それでは、まずマーケティング調査に必要な6つのポイントについてひも解いていきましょう。


あなぶき興産のマーケティング調査6つのポイント

1.需給バランスデータ

需給バランスデータ

需給バランスデータは、あなぶき興産のマーケティング室が独自に開発している調査データです。展開されている地域ごとに過去数年間の間にどのくらいの分譲マンションが供給されているか、年間に発生する需要量からその土地が持つ力を数値で比較できるようになっています。

開発担当は、この需給バランスデータに記されている情報を参考にしながら、マンションの建設用地取得のための空地調査を行っています。

2.市場調査

市場調査

同業他社となる不動産会社様へマーケティング室の担当者が直接足を運び、情報収集を行います。また、自社のモデルルームにも定期的に足を運び、開発担当が仕入れた土地がお客様のニーズと合っているかどうかの検証や今後のニーズ予測なども行います。

お客様の「好き・嫌い」の傾向や人気が高い学校区やエリアの情報など言葉で表される情報は、「定性情報」と呼ばれます。これらの情報は、直接足を運んで話を聞かなければ得られないことも多く、インターネット上では調べられないお客様が求められているニーズや声を収集するために実施しています。


うえだ 市場調査先は、競合となる不動産会社様ということですが、いわゆる「ライバル」ですよね…快く情報は提供してもらえるのでしょうか。

笠井 当社のように市場調査を定期的に行っている不動産会社は非常に珍しく、あなぶき興産のエリアマーケティング戦略の一つの特徴でもあるといえます。
うえださんがおっしゃるように、競合の不動産会社様にとって私たちの訪問は、「スパイが来た」と思われて仕方ありませんね(笑)
しかし、お互いの会社がより良いマンションを造り、お客様に質の高い住まいを提供していくために有益だと感じる情報は、私たちも提供するようにしています。お互いにとっての情報交換の場というスタンスですね。

うえだ 収集された情報の整合性は、どのように確認されているのでしょうか。

笠井 複数の不動産会社様を訪問し、各社から得た情報をもとに、それぞれの情報の整合性を確認しています。さらに市場調査を行う前には、これまでに収集されたデータをもとにある程度の予想を立てています。
情報収集した内容が予想から大きく外れてしまったときには、整合性があるかどうか、マーケットの環境が大きく変化してきてはいないかという点も踏まえて注意深くヒアリングを行います。

うえだ なるほど。そこまでの労力をかけられて市場調査を行う重要性は何なのでしょうか。

笠井 市場調査を行い、たくさんのお客様のニーズを把握することは、お客様が「住みたい」と思うマンションを造るうえで欠かせない過程です。マンションの価格や敷地内に設けるべき駐車場の台数、モデルルームに来場されるお客様の層など、最新の市場調査を十分に行います。
これらの調査が不足しているまま建設用地を取得し、マンションを造ることが出来たとしても、お客様のニーズにお応え出来る品質とは言い難く、満足のいく住まいを提供することは出来ないと私たちは考えています。

3.国勢調査

国勢調査

国勢調査は、「日本に住む全ての人及び世帯」を対象として実施される最も重要な国の統計調査です。住居の種類や就業状況など複数の項目の調査が行われますが、あなぶき興産のマーケティング室では、これらのマクロ指標(例えばその都市の全域のデータ)に対して、その土地の構成にどのような特徴があるのかをデータとして重視しています。

家族構成や民営賃貸住宅の割合、住居年数等の数値など国勢調査の統計をもとに分析を行います。

4.来場者アンケート

来場者アンケート

モデルルームでお客様にご記入いただく「来場者アンケート」も、マーケティング調査において貴重な参考データです。特に、プレオープンのタイミングでご来場くださるお客様は、新しいマンションに対する関心も強く、前向きにご検討いただいている方の割合としても高い傾向があります。

プレオープンのタイミングで挙がるお客様からのご意見を元に、マンションの販売計画やコンセプトの見直しを行い、また今後のマンション計画の参考に各セクションへフィードバックを行います。
マンションが完売した後にも再度アンケート調査は実施され、最終的なお客様の声を精査し、報告書にまとめます。

5.追跡調査

追跡調査

ご入居いただいたお客様のご了承を得てアルファマンションの企画商品を使われてみた感想を調査しています。
例えば、パパルーム・ママルームは当社がお部屋のコンセプトや使い方をあらかじめご提案させていただくスタイルですが、お客様からも「空間の使い方が事前に決まっていて提案があると、暮らし方のイメージがしやすい」とのご意見もいただいています。

反対に、当社が想定していた使い方とは異なる使い方をされていた場合にも、使い方に関するヒアリングを行い、社内会議で共有し次の商品の企画のブラッシュアップに繋げています。

6.ブランド調査

ブランド調査

ブランド調査では、同業他社が展開しているマンションのブランド名も含めてマンションの認知度を調査します。主にWEBを使ったリサーチを地域ごとに実施し、統計結果を社内で共有しています。

アンケートには、「(マンションのブランド名)を知っていますか」、「親近感が湧きますか」などの質問項目が設定されており、ブランド浸透率やイメージに関する調査結果をもとに、今後のアルファシリーズマンションのイメージ強化とブランド力アップの戦略を考えます。

7.買い時感調査

買い時感調査

あなぶき興産が運営する住まい選びや暮らしに役立つ情報を提供する「アルファあなぶきStyle」の会員様に向けてWEB調査を行っています。お客様が感じている景況感や住宅の買い時感の動向についての情報を収集します。


エリアマーケティングに特化したセクションを持つ強みと役割

マーケティングの役割

うえだ お客様の声を受け止め、ニーズに寄り添ったマンションを提供するためのステップとして、マーケティング調査は、最も大切な最初のステージのように感じました。

笠井 マンションのマーケティングにおいて大切な柱になるものは、「1.需給バランス」、「2.商品」、「3.価格」です。
商品と価格は、マンションを提供する私たちがある程度の決定権をもっていますが、需給バランスやお客様が求めるニーズについては、私たちがコントロールできるものではありません。お客様に「待ってました!」と喜んでいただけるマンションを造るためにも、需給バランスをはじめ、お客様のニーズをしっかりと受け止め理解しておくことは、非常に大切なポイントです。

うえだ マーケティングの3つの柱、とても勉強になります。
マーケティング調査をされるうえで、大切にされていることについてもお聞かせください。

笠井 お客様の視点を大切にすることももちろんですが、「企業として目指していくマンション販売の視点」から少し退いて物事を客観的に分析し、軌道修正していくことも、私たちマーケティング室の役割であり、大切なことだと考えています。
時には、嫌われる立ち位置になっても、社会や会社によって最終的に有益なものを作るために、耳の痛いことも提言していくのが、マーケティング室の仕事だと思っています。

うえだ いち消費者の私としても、きちんとそこに住む人たちのことを理解されたうえで造られたマンションに住みたいと感じます。
同業他社にも、このようなエリアマーケティングに特化した部署は設置されているのでしょうか。

笠井 エリアマーケティング戦略に特化した部署があることは、同業他社の中でも例が少なく、非常に珍しいと言われています。
マーケティング室として独立した背景には、分譲マンションを展開していくなかで必要な情報を客観的に分析し、意見をフィードバックできるどこの事業部にも属さない独立した部署が欲しいという当社経営陣の意向もこめられていました。あなぶき興産としての強みでもあるのではと考えています。


「今」のマンションの市場傾向とお客様のニーズを知ろう!

お客様のニーズ

うえだ マンションに対するお客様の「今」のニーズは変化してきているのでしょうか。

笠井 20年ぐらい前ですと、お客様が支持するマンションの仕様やグレードにも差がありました。
ですが今は、お客様がマンションに求める設備や仕様そのものに大きな差が出るということは少なくなってきています。

うえだ そうなのですね。例えば、マンションをマイホームに選ぶにあたってお客様はどのような点を重視されてきているなと感じられますか?

笠井 マンションをご購入いただいた後の暮らしを考えられたうえで、そこに必要な間数や収納をご自身でセレクトされるお客様が増えてきている印象です。
「間数はたくさん増やしたい!」や「キッチンのグレードをアップさせたい!」といったニーズよりも、「自分たちの暮らしの身の丈にあった住まいづくり」を重要視される傾向にシフトしてきているように感じますね。

うえだ 「マンションでの暮らし方」にも多様性が求められてきているなかで、アルファシリーズマンションのように複数のブランドを展開されていることは、お客様自身の住まいの「価値観」を明確にする決め手にも繋がっているのではと思いました。

笠井 お客様がマンションの購入を決められるうえで大切な基準になるのは、「安い」、「高い」を判断する「価格」だけが全てではありません。
マンションの「価値」そのものが固まっていないと、お客様にとって「このマンションだから欲しい!」と心に響く商品を提供することはできないと私たちは考えています。

うえだ マンションの「価値」とは、例えばどのようなものでしょうか。

笠井 マンションに住むなら「駐車場は絶対に必要」と考えるお客様、「とにかく周辺環境の利便性が大事」と考えるお客様、「グレードの高い仕様や設備が整った部屋に住みたい」と考えるお客様など、住まいに対する価値観も様々です。
購入するお客様の立場に立ってそのニーズを調査し、立地や市場が持つ特性も踏まえたうえで戦略を考えることが、マーケティングにおいては重要な要素になります。


あなぶき興産のマーケティング担当がめざす今後の展望とは?

うえだ あなぶき興産のマーケティング担当として今後の展望についてお聞かせください。

笠井 時代の変化や人口の減少に伴い、お客様が欲しいと感じるマンションのニーズも年々変化しています。今後チャレンジしていきたいと考えているのは、今需要が高まっている「コンパクトマンション」や分譲マンションのノウハウを活かし、マンション以外のシェアも伸ばしていくことです。
高齢化社会に対応できるシニア住宅(あなぶき興産では、サービス付き高齢者向け住宅(アルファリビング高松百間町)や住宅型有料老人ホーム(アルファリビング高松紺屋町)等も展開しています。)などその土地が持つ特徴を活かしながら、マーケティング室として幅広い視野を持ち、これまで以上にお客様に満足していただけるサービスを提供していきたいと思います。


取材後記

お客様のニーズに寄り添い、第三者の視点で細やかな市場調査を行うマーケティング室。
あなぶき興産が取り組むエリアマーケティング戦略は、筆者が想像していた以上に綿密で奥深く、収集されたたくさんの調査データをもとに構成されていました。
お客様の立場に立ち、客観的な検証を行う独立したセクションがあることは、あなぶき興産としての大きな強みであり、お客様が「ここだから住みたい」と感じるマンションの「価値」を創りだすことにも繋がっているのではないでしょうか。

次回マンション勉強記Vol.7からは、いよいよマンションを購入した後のプロセスに携わるセクションが登場!マンションの契約から入居までのサポートを行う【引き渡し】にスポットをあててお届けします。

※記事の内容は2020年3月取材時点の情報です。

8つのプロセス

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