スーパームーンだ、ナントカムーンだ、流星群だと、何かとTwitterで話題になる天文ニュース。今まであまり興味がなかったけど、タイムラインに何度も流れてくるうちに、なんとなく夜空を見上げることが増えてきた…
そんな人、多いのではないかと思います。
でも同時に「話題になってたから見てみたかったのに、見つけられなかった!」とか「いつ、どこを見ればいいのかよく分からない」という人も多いのでは?
今回はそんな人のために、自宅で手軽に天文イベントを楽しむコツを紹介します。
楽しめるかどうかは、事前の準備にかかっている
窓やバルコニーから見える方角を知る
実はこれ、もっとも大事なことです。
なぜなら、天体は時間や季節、方角によって見えるものが違うから。天文ニュースでも「○時ごろ、南東の空に〜」などと解説されますよね。
思い込みでアサッテな方角を見て「見えない…」と落胆することがないように、自分の部屋の窓やバルコニーはどっちを向いているのかを確認しましょう。スマートフォンのコンパスアプリを使うと簡単に調べられますよ。
天文イベントの日時を把握する
次に大事なのが、見たい天文イベントが何日の何時に見られるかを把握しておくこと。
特に月食や流星群などの大きなイベントは何日も前から、しかも何度もニュースが流れてくるので、記事タイトルを流し見しているだけでは日時が把握しづらく、見ごろを逃してしまうこともあります。
天文・星座アプリを用意する
「いやいや。決まったものを見るだけだし、そこまでは必要ないでしょ(笑)」って思う人、多いと思います。でも絶対にあった方が良い。断言します。
それは、夜空を見慣れていない人がいきなり見ようとしたとき、思っていたよりも多く見える星や広い空に戸惑って、どこを見れば良いのか分からなくなることが多いからです。
「今、目の前にある光がナニモノなのか」が分かると、お目当ての天文イベントを発見しやすくなりますよ。スマートフォンを空にかざすと星座盤が連動して動くので、実際よりも高い/低いところを探していた…というような失敗も防げます。
天文イベントをプッシュ通知でお知らせしてくれるアプリもあるので、見逃すこともなくなりますね。
また天文イベント以外でも、夕方の空に異常に明るく光るものを見つけて「UFOを見てしまった…」とひとり戦慄いたときにサッとアプリをかざせば、それが実は金星だったり木星だったりするのが分かる(科学館や天文台で、実際に多くある質問なのだそう)ので便利ですよ。
【対象別】天文イベントを見逃さない・見損じないためのチェックポイント
月の場合
スーパームーンだ月食だと、何かと話題になる月。どんなに街明かりが眩しい場所でも見えるので、探すのに苦労するということはまずありません。
しかし地域によって月の出・入り時間が微妙に異なるので、見るときは天体アプリか、国立天文台のこよみの計算ページで確認しましょう。
スーパームーン、○○ムーン
どちらも満月のことを指しているので、宵から深夜にかけてが見ごろです。
スーパームーンは、月と地球が最接近したタイミングの前後で満月になったとき、いつもより月が大きく見える現象のこと(※定義は諸説あります)。「普段の満月と比べて○パーセント大きく見える」というアオリ文句が必ずくっついてきますが、実際には「言われてみれば、いつもより明るく見える…かも…???」程度です。
あまり過大な期待を抱いて見るとガッカリするので、きれいな月を見よう、くらいの軽い気持ちで眺めてくださいね。
○○ムーンの「○○」にはピンクやストロベリー、ウルフなどの名前が入ります。Twitterでは「今月の満月はストロベリームーン」などとキャッチーな紹介の仕方をされがちなので、見かけたことがある人も多いでしょう。
これはアメリカの先住民が、季節を把握するために付けた月の呼び名です。単に「その月の満月のことを何という名前で呼んでいるか」だけの話で、実際に色が違って見えるわけではないので注意してくださいね。
細い月と地球照
新月のあと、月齢3くらいまでの細い月や地球照を見るには、日没後の南西から西(季節により異なる)の空を探しましょう。繊細に輝く細い月に、条件が良ければ地球照も見られるかもしれません。
地球照とは、太陽の光を地球が反射し、その照り返しが月の欠けている(夜になっている)部分を照らしている現象のことです。欠けた部分が肉眼ではっきり見えるのは、なかなか感動しますよ。
見られるチャンスが多いのは空気の澄んだ冬ですが、季節を問わず見ることができます。ただし月の入りの高度が低い秋は難しいかもしれません。
月食
地域によって欠け方が違ったり(部分月食の場合)食の最大の時間が違ったりするので、事前に天文台や科学館、天文系サイトで時間を調べておきましょう。
月食は、地球が太陽と月の間に入ることによって月に地球の影がかかり、月が欠けて見える現象です。一部が影に隠れると「部分月食」、全ての部分が影に隠れると「皆既月食」です。
惑星(水星・金星・火星・木星・土星)の場合
惑星とは、地球のように太陽(恒星)の周りを公転している星のこと。肉眼で見ることができるのは、水星・金星・火星・木星・土星の5つです。地球との距離が近く非常に明るく見えるので、街明かりのある都市部でも見やすい星々です。
惑星は星座の星々のように「この季節のこの時間、特定の方角に決まって見える」というものではありません。天文系サイトや国立天文台の今日のほしぞらページ、天文アプリで時間や方角を調べておきましょう。
肉眼で見える惑星の中でも、特に金星と火星は地球との角度や距離で明るさが変わりますが、最も明るい時は探さなくても夜空で真っ先に目に入るほどの輝きになります。金星ならまさに今(※2020年5月現在)、火星は2018年夏に地球に大接近した時に、驚くほど明るく見えていました。
流星群の場合
確実に見るためには、極大(流星群の活動が最も活発になる日)の前後、放射点(流星が放射状に飛び出してくるように見える天球上の点)が空高く昇る時間帯を選びましょう。これは毎回変わるので、Webサイトやアプリで事前に確認しておきます。
望遠鏡や双眼鏡といったツールは必要ありません。肉眼で見ることができます。また「空全体を広く見渡せる場所で探しましょう」とよく言われますが、窓やベランダから眺めているだけでもそれなりに見ることはできます。
ただし流星の明るさは繊細なので、当日が満月だったり街明かりで空が明るかったりすると、目視できる数は激減します。
「流れ星を見る」というロマンティックなイメージも相まって、大人気の天文イベントの流星群。ニュースなどで「1時間あたり○個の流星が流れます」などと言われますが、あれは条件の良い場所(暗く、ひらけた場所)で空全体を見渡した場合の話で、現実は星が降るほどに流れるわけではないのでご注意を。
ISS(国際宇宙ステーション)とスターリンク衛星の場合
ISS(国際宇宙ステーション)
ISSは地上約400kmを周回する人工衛星。約90分で地球を1周しますが、条件が揃えば日の出前・日没後の2時間ほどの間に地上から肉眼で見ることができます。
見え方を予想しているサイト(例:JAXA「きぼう」を見よう)や、衛星をトラッキングして表示するスマートフォンアプリで、時間や方角、仰角(地平線からの角度)を事前にチェックしておきましょう。Twitterでは見えるタイミングをお知らせしてくれるアカウントがあるので、フォローしておくのも手です。
オススメはスマートフォンアプリを使うこと。
任意の場所を登録しておけば通知してくれたり、空にかざすとAR機能で実際の見え方をシミュレーションしてくれるので、見逃したり他の天体と間違うことがなくなりますよ。
あとは時間になったら予想された方角の空を見上げるだけ。
すーっと滑るように動く明るい光が見えたら、それがISSです。もしその光が点滅していたら、残念ながらISSではなく飛行機。もう一度アプリを見ながら探し直してみてください。
ISS直上通過パス(3月19日)。
移動していく国際宇宙ステーション(8倍速)。中国地方の真上を通過するパスでした。さすがに明るいです。マイナス3等級。 pic.twitter.com/wl2MDv4xPH— 三島和久・アニリン・レモンパスタ部 (@C6H5NH2) March 20, 2020
スターリンク衛星
最近話題なのがスターリンク衛星。アメリカの民間企業が打ち上げた人工衛星です。1回の打ち上げで10数機ほどが投入されるので、打ち上げ直後からしばらくは隊列をなして空を駈けぬけていく様子を見ることができます。
見るためには、直近に打ち上げがあったこと、日の出前・日没後に見える場所を通過していることなど、ISSを見るより難易度もレア度も高め。見え方を予測しているサイトやスマートフォンのアプリを駆使して、頑張って見つけてみましょう。
その様子から銀河鉄道のようと言われたり、スターリンクトレインと呼ばれたりしますが、知らずに見たらUFOかとビックリしてしまいそうですね。
【UFO!?】並んだ月と金星のそばを連なって飛んでいく物体!これはもしや・・・!
これは、スターリンク衛星の列です。海外の企業が打ち上げている人工衛星で、数十機をまとめて打ち上げるため打ち上げ直後にはこのように列になって空を動く様子が見られます。(4/27 20:10撮影2倍速) pic.twitter.com/KV71493yfU— 仙台市天文台広報担当 (@SAO1300) April 29, 2020
光害だ、天体観測の邪魔だと否定的な意見も多いスターリンク衛星ですが、夜空を大量の光が駈けぬけていく様子は一見の価値ありです。
【+αのお楽しみ】写真に撮ってシェアしてみる
せっかくなら写真に撮って、楽しさや興奮をフォロワーの人たちと共有したいですよね。
今回は誰でも持っているスマートフォンを使って写真を撮る方法を紹介します。
星空撮影向けのカメラアプリを使う
いきなり身も蓋もないことを言ってしまうのですが、「カメラのことはよく分からないけど、とにかく撮りたい」という人は、あれこれ頑張ろうとせずに星空撮影向けに特化したカメラアプリを使うのが確実で近道です。
難しい設定をしなくても、ISSの光跡やスタートレイル(長時間露光して星の光跡が見える)写真を撮るための設定がプリセットされているので、選択するだけで手軽にカッコイイ写真を撮ることができます。
作例がこちら。
アプリのISSモードをつかって、国際宇宙ステーションが通り過ぎていく様子を撮影したものです(明るさ・色調などは撮影後に調整しています)。
ただし撮影中にスマートフォンが動いてしまうとブレてしまうので、固定しておくための三脚は絶対に必要です。またシャッターをタップした時にブレてしまうのを防ぐために、シャッターリモコンを使ったり、iPhoneなら付属のイヤホンをレリーズ代わりにする(+を押すとシャッターが切れる)のもオススメです。
惑星なら普通のカメラアプリでOK
惑星なら、スマートフォン純正のカメラアプリで撮影でOK。最近のスマートフォンカメラはとても性能が良いので、サッと取り出して手持ちでシャッターを押しても、それなりの写真が撮れてしまうのです。
作例がこちら。
右から惑星の木星・土星、少し離れて火星が写っています。火星の左下にうっすら見えているのは、やぎ座δ星で3等星の明るさの星。
月はちょっと難しい
もっとも撮りたいと思う人が多いであろう月は、少し手間をかける必要があります。
まずはスマートフォン純正のカメラアプリで撮影したものがこちら。
目で見ているよりも小さく写る、ただの丸い光の点になってしまうなど、「なんか思ってたのと違う…」の典型的な写真です。
「月がある風景」の写真としては悪くないのですが、デジタル一眼レフカメラの望遠レンズで撮ったような、クレーターの模様が見える月をスマートフォンでも撮ってみたいと思いますよね
そんな時はISOやシャッタースピードを手動で設定できるカメラアプリを使います。
人間の目で見ている以上に、カメラにとって月は明るい被写体なので、意図的に暗く写るように設定するわけです。ISO感度は最低値に、シャッタースピードは1/250くらいからチャレンジ(撮影後に確認しながら微調整してください)。
上手くいけば、こんな感じの写真がスマートフォンでも撮ることができますよ(明るさ・色調は多少補正しています)。
Twitterではアップロードする際に位置情報を含むExif情報が削除されますが、それ以外のSNSや写真投稿サイトではこの限りではありませんので、シェアする前に位置情報を削除するなど、適切に管理しましょう。
位置情報以外では、自宅が特定されるものが写り込んでいないかに注意しましょう。
これでもう「楽しみにしてたのに見れなかった…」がなくなる!
最後にもういちどおさらいしましょう。
天文イベントを確実に見るには、事前の準備にすべてがかかっています。
- 自宅から見える方角を確認する
- 天文イベントの日時を確認する
- 天文アプリをスマートフォンにインストールしておく
特に2の、いつ・どこで見られるのかを確認するのはとても重要です。今は様々なWebサイトや、Twitterの天文系アカウントが情報を発信してくれていて、とても調べやすい環境ですから、面倒がらずにチェックしましょうね。
楽しく夜空を見上げて、フォロワーたちと盛り上がろう!
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