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【2022年6月スタート】ペットのマイクロチップ装着義務化を解説

家族の一員であるペット。そんな大切なペットの迷子や災害対策として、マイクロチップの装着が世界的に広まっています。
日本でも、2022年6月1日から犬猫のマイクロチップ装着が義務化されることになりました。

チップの存在は知っていても、「義務」となるとしっかり理解しておきたいですよね。
この記事では、今回の法整備の背景や内容、マイクロチップがどんなものなのか、既にペットと暮らしている人はどんな対応が必要かなど、気になるポイントを解説します。


ペットのマイクロチップ装着義務化、どうして?いつから?対象は??

一般に動物愛護管理法・動物愛護法などと呼ばれる「動物の愛護及び管理に関する法律」では、動物の虐待と不適切飼育の防止を目的に、時代の様式に沿ってさまざまな立場に向けた改正を重ねています。
なかでも2022年から施行される「売買される犬と猫のマイクロチップの装着の義務化」は、ペットを飼う一般の人に関係する大切な改正です。
施行直後に混乱のないよう、まずは内容を追っていきましょう。

装着義務化の背景

売買される犬と猫のマイクロチップ装着の義務化は、突然決まったわけではありません。

議論が始まったのは1995年

日本でマイクロチップ導入の議論が始まったのは1995年。阪神淡路大震災で多くのペットが迷子になったことがきっかけです。
また、実は2012年の動物愛護管理法改正時に内容に盛り込まれていました。しかし当時の日本では環境や考え方が整っておらず、即時の義務づけは難しいと判断され、5年を目処に検討を重ねることになりました。

公布されたのは2019年

2019年に動物取扱業のさらなる適正化、および動物の不適切な取扱いへの対応の強化を主軸に置いた改正法が施行されます。その中で「3年後にマイクロチップの装着・登録義務化する」等のマイクロチップ関連の事項全般が公布されました。

このような流れの結果、ついに3年後の今年、装着の義務化が始まるというわけです。

対象となるのは「犬猫等販売業者」と「マイクロチップを装着した犬猫を迎えた飼い主

今回の義務化で対象となるのは、「犬猫等販売業者」と「マイクロチップを装着した犬猫を迎えた飼い主」です。

犬猫等販売業者

ペットショップやブリーダーなどの犬猫等販売業者は、法の公布から3年以内に、販売する犬と猫すべてにマイクロチップを装着し、個体情報(性別・品種・毛色など)や販売者の情報などを登録することが義務づけされます。

マイクロチップを装着した犬猫を迎えた飼い主

一般の人が気をつけておかないといけないのは、「マイクロチップを装着した犬猫を迎えた飼い主」に該当した場合。
マイクロチップが装着されている犬や猫を飼うことになったら、データベースに新たな飼い主の情報を登録(変更登録)することが義務になります。なお登録する情報は、氏名、住所および電話番号・メールアドレスなど。

また2022年6月以降にペットショップやブリーダーから犬や猫を買ったり、既に装着している犬や猫を譲り受けたりする予定の人は、30日以内の登録変更手続きが必須になることを覚えておきましょう。

さらに引っ越しや携帯電話の買い替えなど、ペット所有者の住所や電話番号が変わったときには、速やかに変更届けを出す必要があります。

義務化によって飼い主の負担軽減も

今回の制度で手間と負担が増えたように感じられるかもしれません。
しかし装着が義務になることで、マイクロチップ装着そのもののメリットが増えるほか、事務的な面でも飼い主、特にワンちゃんを飼う方にはありがたい、犬の自治体にへの登録のワンストップサービスが開始されます。

それは、犬を飼う時は狂犬病予防法に基づく犬の登録が必須になりますが、マイクロチップの登録情報が自治体と共有されることで、この手間を省くことができるというものです。詳細は次項でご紹介します。


ペット用マイクロチップってどんなもの?装着のメリットは?

そもそもマイクロチップはどんなものなのでしょう?存在自体は知っていても、漠然とした印象で具体的にどこにどんなものを入れるのか、どんな情報が入るのか、ピンとこない方も多いと思います。
飼い主として知っておきたい、マイクロチップについてご説明します。

マイクロチップは「生体適合ガラス製の極小カプセル」

ペット用のマイクロチップの正体は、概ね次のようなものです。

  • 動物の体内に入っても安全性が高い生体適合ガラスやポリマーで覆われている
  • 直径2mm×長さ12mm、あるいは直径1.2mm×長さ8mmの円筒型の極小カプセル
  • その中にコイル状のIC(小型集積回路)が入っている

これを動物の背中皮下にインジェクターと呼ばれる、注射器状の挿入器を使って装着します。

ICには15桁の個体識別番号が記録されていて、専用の読み取り機(リーダー)を使ってその番号を読み取る仕組み。ICは電池不要で寿命は約30年。データの上書きができないため、一度装着すれば生涯にわたって個体を識別できる確実な方法とされています。

情報の登録先は、環境大臣が指定した指定登録機関

この個体識別番号は、環境大臣が指定した指定登録機関に登録されます。
管理される情報は

  • 種別(犬か猫か)、品種、性別、毛色、生年月日、といった動物の情報
  • 住所、氏名、電話番号、電子メールなどの所有者の情報
  • いつ、どこの施設で、どの医師がといったマイクロチップの装着時の情報

など、実に53もの項目にわたります。中には、その子のママ犬、ママ猫のマイクロチップの識別番号という項目もあるんですよ。

【2022年6月2日追記】
2022年6月1日より環境省の特設サイト、およびコールセンターが開設されました。

登録に必要な費用

登録に必要な費用は、オンライン申請で300円、紙申請で1,000円。
また、引っ越しや携帯電話の買い替えなど、ペット所有者の住所や電話番号が変わった場合の変更登録は無料です。

ペットにマイクロチップを装着する3つのメリット

こうした1匹のペットに関するさまざまな情報が管理されるマイクロチップ。これを装着することで、大きくわけて3つのメリットを受けることができます。

ペットが飼い主の元に帰りやすくなる

もっとも大きなメリットが、迷子や盗難、災害などで行方不明になったときに、登録情報から飼い主に連絡が付きやすい点です。

2016年の熊本地震の際にも放浪状態になったペットが多数いました。保護された犬の中でマイクロチップを装着していたのが7匹、そのうち6匹が飼い主の元に帰ることができたという環境省の報告(PDF)があります。鑑札やネームタグは取れてしまう可能性がありますが、マイクロチップはその心配はありません。

殺処分を減らせる

残念ながら、保健所などでは、飼い主がわからないためにペットが殺処分されてしまうケースがあります。また悪質なブリーダーやペットショップなどによる成犬・成猫の破棄も、昨今では大きな問題に。
マイクロチップ装着の義務化によって適切に管理されれば、悲しい事態を避けることができると期待されています。

ワンストップサービスによる登録手続きの簡略化

犬を飼う時には、お住まいの市区町村に飼い犬の登録をし、犬鑑札を首輪に付けておくことが法律(狂犬病予防法)で義務付けられています。
マイクロチップの装着義務化に伴って、この登録のワンストップサービスが運用される予定です。

マイクロチップを装着した犬を飼う際に登録した飼い主の情報を、マイクロチップ登録機関が自治体に納めることで、飼い主の市区町村への届け出が不要になるというもの。さらに、装着されたマイクロチップが鑑札とみなされます。
鑑札が首輪から外れてしまったりして紛失した場合、再交付の手続きが必要となりますが、その手間や心配もなくなります。

※ワンストップサービスは、ワンストップサービスに参加している市区町村のみ実施されます。詳しくは各自治体にお問い合わせください。


すでにペットを飼っている人は?

装着は「努力義務」

今回スタートする制度では、すでに犬猫を飼っている人や譲り受ける人、保護団体などは義務の対象ではありません。しかし努力義務として装着が推奨されており、今後は自治体による指導や助言も行われるようです。

マイクロチップを装着した犬猫を飼うことが一般化するため、そう遠くない未来でマイクロチップの装着自体がスタンダードになることも想像に難くありません。ペットと飼い主双方の安心のためにも、着ける選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょう?

2022年6月1日以前に民間の事業者が個別に実施しているマイクロチップ情報登録制度とは異なるので、注意が必要です。

装着は動物病院へ

装着は医療行為に当たるため動物病院で行います。品種によりますが犬は生後2週齢、猫は生後4週齢から装着可能とされています。
皮下に挿入するため、注射同様針を刺す際に多少の痛みは伴いますが、怖がって暴れてしまうような場合には麻酔をかけたうえで処置するこもできるようです(詳細は動物病院に相談してみましょう)。

装着後、獣医師から「マイクロチップ装着証明書」が発行されますので、大切に保管してください。この証明書は飼い主情報をデータベースに登録する際に必要になります。

費用は施術費+登録手数料

気になる費用は、施術費と登録手数料のふたつ。

施術費

施術費は施術内容や病院ごとに異なりますが、一般的には数千円~1万円程度が相場のようです。事前に動物病院に問い合わせましょう。

登録手数料

装着後、環境大臣が指定した指定登録機関に飼い主の情報を登録することになりますが、このときに登録手数料が発生します。
制度スタート後の2022年6月以降に装着する場合は、登録・変更登録1回ごとに、オンライン申請で300円、紙申請で1,000円が必要です。

2022年6月よりも前に装着する場合

気を付けておきたいのは、2022年6月以前に装着する場合です。
6月までは個別に運営している民間事業者に登録することになるので、そこへの登録費用がかかります。団体により異なりますが、大まかに1,000円~1,400円です。

その後、6月になって制度がスタートしたら、環境省管轄のデータベースに登録情報を移行します。
移行するためのサイトを公益社団法人日本獣医師会が公開していますので、手順をよく読んで手続きしましょう。2022年5月31日まで移行登録料は無料です。

飼い主の個人情報の変更は無料

引っ越しや携帯電話の買い替えなど、ペット所有者の住所や電話番号が変わったときには、速やかに変更届けを出しましょう。
所有者の個人情報の変更も、オンラインまたは紙での届け出になります。手数料はかかりません。

自治体によってはマイクロチップ装着の助成も

ペットは大切な家族。ひいては地域の一員です。
マイクロチップ装着の推進の一環として、一部自治体や地方獣医師会では、動物病院での施術費の負担や補助金といった、犬猫のマイクロチップ装着に関する助成を行っているところもあります。負担が減ると、装着へのハードルも下がりますよね。
助成の有無や内容に関して、お住まいの動物愛護センターや保健センターなどに問い合わせてみてください。

既にマイクロチップを装着している場合

既にマイクロチップを装着し、個別に運営されている民間事業者に情報を登録している場合は、環境省管轄のデータベースに登録情報を移行する手続きを行います。手続きは公益社団法人日本獣医師会が公開している移行サイトから行えます。
ただし、国際標準化機構(ISO)の規格に適合していないマイクロチップを装着している場合は登録できません。

【2022年6月2日追記】
2022年6月1日より環境省の特設サイト、およびコールセンターが開設されました。


まとめ

不測の事態で愛犬や愛猫とはぐれてしまうのは、とてもつらいこと。ペットにとっても飼い主にとっても、マイクロチップの装着は安心材料のひとつになるはずです。
義務化の内容を正しく知って、ペットとの暮らしをさらに心地よいものにしていきたいですね。

また制度の概要と詳細は、環境省のマイクロチップ制度に関するページ公益社団法人日本獣医師会のサイトをご確認ください。

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