香りで彩るインテリア。空薫(そらだき)で楽しむ冬の香り ─ マンションライフの楽しみ方

風が冷たくなって冬の気配を感じるようになると、恋しくなってくるのが温かいもの。食べ物や飲み物だけでなく、お部屋のしつらえも温もりを感じるものがしっくりくるようになります。温度を感じる暖色系の雑貨や電球色の間接照明など、見た目にも暖かなインテリアは冬の定番。
今年はそこに香りを足してみませんか。

以前、夏を涼しく過ごすアイデアを紹介した際にも触れましたが、「香りが心身に与える影響はある」とする研究があるほど、香りは人の心理に深く関わっているものです。リラックスしたりリフレッシュしたりという直接的な効果だけでなく、いい香りのするお部屋には良い印象を持つというような効果も。
素敵なインテリア空間を見た時に「雰囲気がいい」と表現することがありますが、この「雰囲気」とは、その空間の光・音・匂い・気配などを総体として捉えたもの。まさに香りはインテリアの一部。お部屋の雰囲気作りのために重要な要素のひとつなのです。

そんな五感を刺激するような、”ワンランク上”の冬のインテリアに取り込むべき香りアイテムは、ズバリ「お香」。なぜなら、ひんやり冷たく乾いた空気を感じる季節には、少し重くて濃厚な、そして有機的な温もりを感じる香りがピッタリだから。冬のインテリアとも相性抜群です。
マンションライフを楽しむためのシリーズコラム、今回は季節を身近に感じる香りの使い方を紹介します。

マンションなら、煙が出ない「空薫」がオススメ

空薫のイメージ「お香」と言われて一般的に想像するのは、火をつけてくゆらせるスティックやコーンタイプのもの。煙が出るものはお部屋の壁紙が汚れそうだからちょっと…と敬遠する人もいるかもしれませんね。特に寒い季節はお部屋を閉め切っている事が多いので、気密性の高いマンションでは、より煙が気になることもあるでしょう。
でもお香にはくゆらせずに楽しめるものもあります。「練香(ねりこう)」や「印香(いんこう)」がそれ。粉末状の香木やスパイスを調合して固めたものを、熱した灰の上などで間接的に加熱して香らせるので煙が出ないのです。

このように、間接的に加熱して香らせる方法を「空薫(そらだき)」といいます。空薫と聞いて、王朝文学の2大作品『枕草子』や『源氏物語』にも出てきた「そらだきもの」を思い浮かべた方、ご明察です。そらだきもの=空薫き物とは、まさに空薫に用いるお香(練香)のこと。つまり空薫は当時の一般的な香の焚き方であり、それに使われる練香は当時から姿を変えていない、というわけです。
そう考えると、なんだか雅やかな気分になりませんか?

空薫はお香に直接火をつけて燃やさないので、香料の香りをストレートに楽しめるのが特長。その馥郁としたまろやかな香りは、いちど体験すると、くゆらすタイプのお香には戻れないと思うほどです。
また香りの持続時間が長く、かつ広範囲に広がりやすいので、ルームフレグランスとして使いやすいという利点もありますよ。

空薫を自宅でやってみる

そんな歴史の深いお香の焚き方「空薫」。自宅でやるのは難しいのでは?と思われるかもしれません。たしかにスティックやコーン型に比べると、必要なアイテムは少し多め。でも準備さえしてしまえば、手順として難しいことはありませんので、トライしてみましょう。

空薫は火(炭)を使います。火災ややけどには十分注意してください。
また最中は灰や香炉が非常に熱くなります。熱に弱いものや可燃物の近くでは行わない、後片付けは十分に冷めてから行うことを徹底してください。

用意するものは5つのアイテム

5つのアイテム香炉(こうろ)

お部屋のイメージにしっくりくるものがなければ、陶器製のマグカップなどでも代用OK!ただし焚いている間はかなり熱くなるので、置き方や置く場所には注意が必要です。

香炉灰(こうろばい)

香炉に入れて使用します。空薫用のものを使用してください。

香炭(こうたん)

空薫用のものを使用してください。お焼香用の炭などには、炭そのものの匂いがきついものがあるので、お香のような繊細な香りを楽しむ用途には不向きです。
また炭のサイズには様々ありますが、使用する香炉のサイズに合わせて選ぶと良いでしょう。分からない場合は小さめのものを選ぶのがオススメ。火力が足りない場合は複数個を使うことで対応できます。

火箸(ひばし)

香炉灰を混ぜる・火の付いた香炭をつかむ・練香をつまむなど、あらゆることに使用します。
サイズの小さめなお香用のものが便利ですが、一般的な火箸でも十分です。

練香(ねりこう)

空薫に用いるのは「練香」です。または「印香」でも可。

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すべてのアイテムはお香の専門店、またはお香を扱っている仏壇仏具店で購入することができます。近くに扱っている店舗がない場合は、オンラインストアで購入することも可能ですよ。

お香を焚く

STEP1│香炉に香炉灰を入れ、火箸でかき混ぜる

STEP1:灰をかき混ぜる

香炉の8分目くらいまで灰を入れて、火箸で軽くかき混ぜましょう。
かき混ぜるのは灰を柔らかくし、空気を含ませるため。こうすることで炭の火が消えにくく、灰が温まりやすくなります。

STEP2│香炭に火を付けて香炉灰の上に置く

STEP2:香炭に火を付けて香炉灰の上に置くライターなどで炭に火を付け、灰の上において熾るまで5分ほど待ちます。
待つのは少し面倒に思えるかもしれませんが、すぐに次のステップにうつると、火が消えやすくなってしまいます。慌てずじっくり待ちましょう。

STEP3│香炉灰を温める

STEP3:香炉灰を温める半分ほど熾った炭を灰に浅く埋めて、灰を温めます。
火の付いた方を上にして半分ほど埋めるか、表面にうっすら灰をかける程度に。奥深く埋めてしまうと火が消えることがあるので、あくまでも「浅く」です。
また、灰を温め切らないまま練香を置いても香りは立ちません。前ステップに引き続き、じっくり待つことが肝心です。

STEP4│練香をのせる

STEP4:香をのせる灰が温まったら、ここでようやく練香の出番です。
炭から少し離れた灰の上に練香をのせましょう。置いてしばらく経つと、むっくりと香りが立ち上りはじめます。のせる個数は、お部屋の広さ・香りの強さに合わせて増減してくださいね。

炭から遠くても香り立ちが弱くなりますが、逆に近付けすぎるのもNGです。もし練香が焦げたり煙が出るようなら、温度が高すぎる=炭に近すぎるということなので、少し離れた位置に移動させましょう。

焚き終わったら

一般的な香炭の燃焼時間は、大きさにもよりますが30分~60分程度。香炭が燃え尽きたら「焚き終わり」です。でも練香は60分ほどは香る(状態によります)ものなので、まだ香りが残っているようなら次回に使いまわすことも可能です。香りがなくなったり、使いまわさない場合は、炭の上に乗せて燃やしてしまえますよ。

燃やさない場合は、よく冷ましてから捨てます。ここで気をつけておきたいのが、炭火のように表面は何ともなく見えても内部はかなり高温になっているという点。万全を期すのであれば、よく冷ましたあと水に浸してから捨てましょう。

香炉灰は、都度捨てずに使いまわしても大丈夫です。
ただしお香の香りがついてしまうので、違う香りを聞く時に気になったり、汚れが気になったら取り替えましょう。捨てる時はよく冷ましてから、お住いの自治体の分別に従って処分してください。

もっと簡単に焚くには

実は筆者はSTEP2と3の、炭を熾して灰を温める手順に風情を感じています。
たしかに手間はかかるのですが、香りを聞くためだけに準備をする時間と、熾った炭の懐かしくも慕わしい微かな匂いが、少し特別なことをしているように思えて楽しいからです。
とはいえ、もっと簡単に、そして手軽に楽しみたいと思うこともありますよね?
そんな時のために、香炉灰も香炭も使わない、簡単に楽しめる方法を2つ紹介します。

1│電気式の香炉をつかう

炭ではなく電気で温めるタイプの香炉です。
香炉灰も香炭も不要で、電気によって温められる香皿の上に練香をのせて使用します。温度調整ができるのでお香を焦がす心配もありません。それに、うっかり灰をこぼすこともないので、周囲が汚れにくいのも良いですね。
いかにも和風テイストから、ぱっと見は香炉に見えないものまで、デザインはいくつかあるので、お好みのものを探してみてください。オンラインストアで購入する場合は、「電気香炉」または「電子香炉」で検索すると良いでしょう。

2│茶香炉をつかう

茶葉を熱して香りを楽しむ茶香炉。これを空薫に使うことも可能です。
方法は、茶葉を載せるお皿に練香をのせるだけ。あとはいつもどおり、ロウソクに火をつけて香りを楽しんでください。もし、練香がお皿にくっつくのが気になるようなら、見た目は少々悪くなりますが、小さく切ったアルミホイルを下に敷くと良いですよ。

練香ってどんなお香?扱い方とオススメの香り

香料+炭+蜂蜜=練香

練香の作成過程前段で少し触れたように、練香は粉末状の香木やスパイスを調合して固めたもの。平安時代ごろには製法が確立していたとされる、とても古くからあるお香です。
沈香や丁子・白檀などの基本となる香料に、香りを安定・長持ちさせるための「貝香(巻き貝のふたを粉末状にしたもの)」と、火の熱を伝えるための「炭粉(粉末状の炭)」を加えてよく混ぜ、さらに蜂蜜を加えて練り上げます。それを丸薬状に丸めて、半年~1年ほど寝かせたら完成です。

なおお香の専門店などでは、練香作成のセミナーを開催しているところもあります(画像は筆者がセミナーに参加した際のもの)。香を作るだけでなくの焚き方や歴史なども知ることができるので、少しお香に慣れてきたら参加してみるのもオススメです。またセミナーによっては、基本の調合に自分の好みをプラスした、オリジナルの香りを作れるところもあったりするようですよ。

使用期限と保管方法

練香前述のように、練香は水を一切使用していないのでカビにくく、使用期限もありません。
保管は乾燥しないように密閉した上で、常温の環境に。急激な温度変化による結露の水分がカビの原因になることがあるので、冷蔵庫に入れるのはNGです。
しっとり湿り気のある状態でつかうものですが、もし保管しているうちに乾燥してしまったら、使う分だけをごく少量のぬるま湯に漬けておくと香りが復活しますよ。万一カビてしまった場合は、カビの部分を除去すれば利用OKです。

同じレシピでも、つくる人によって香りが違う

平安時代に完成した「六種の薫物(むくさのたきもの)」。これは梅花(ばいか)・荷葉(かよう)・侍従(じじゅう)・菊花(きくか)・落葉(らくよう)・黒方(くろぼう)という、春夏秋冬を表現した6種類の香のレシピの総称です。
それぞれに完成されたレシピではあるのですが、実際に作る際は人によって少しずつ配合を変えていたようです。この少しの差が個性となり、絶妙な配合ができる人は”センスの良い人”として賞賛されたわけですね。

これは現代においても同じで、作っている店によって受ける印象がまったく違います。例えば同じ「黒方」の香りであっても、かたや古典的で重厚、かたや華やかで現代的…と、真逆の印象の香りであることも。
もしお気に入りの香りを見つけたら、次は微妙な配合の違いを楽んでみてはいかがでしょうか。

入門編にオススメは、白檀がメインになった香り

香りは好みによるところが大きいので、万人にオススメできる香りを挙げるのは難しいものです。しかし、あえて挙げるとすれば「梅が香(うめがか)」という、白檀の酸味を梅の香りに見立てた香りでしょうか。
六種の薫物と同様、平安時代から伝わるこの香りはクセがなく、初春の陽の光を思わせるようなふんわりとした甘やかさがあります。晩秋から冬にかけて使うには少し季節外れではありますが、どんな香りを選んで良いか分からないという方にオススメできる香りだと思います。

また練香には、梅が香や六種の薫物以外にも様々な調合があります。甘さを抑えてスッキリ感を出したもの、甘さの中に香木特有の苦味を効かせたものなどは、白檀の甘さが得意ではない人にもピッタリ。インテリアのテイストに合わせて選んでみても楽しいですね。

さいごに

まろやかで濃厚な香りの練香は、茶席では「炉の季節」と呼ばれる11月から4月にかけて用いられる「冬の香り」。まさに、この季節に漂わせるための香りです。
また、練香の材料となる沈香や白檀といった香木には鎮静効果があるとされるので、暖かな室内でゆったり過ごしたいときに最適。
そんな練香を活用して、今年の冬を楽しんでくださいね!

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