少子高齢化が進む日本では、平均寿命が男女ともに80歳を上回り、世界でも上位の超高齢社会にもなっています。
高齢者の人口が多くなることで、日本では老人ホームなどの福祉施設の需要が高まってきています。
高齢の親族を持つ方の中には、別世帯で暮らしており万が一のときが心配だけれど、今はまだ介護の必要もなくて頼れる施設がないとお悩みになっている方も多いのではないでしょうか?
実は、そのお悩みは、必須サービスとして生活相談や安否確認を行ってもらえる「サービス付き高齢者向け住宅」に入居することで解決することができます。
そこで今回は、「サービス付き高齢者向け住宅」ではどのようなサービスが提供され、どのような生活を送ることができるのかを「有料老人ホーム」と比較しながら詳しく解説しました。
ぜひ、最後までお読みいただき、今後の選択肢にしていただけますと幸いです。
1 「サービス付き高齢者向け住宅」とは
「サービス付き高齢者向け住宅」は、2011年に国土交通省・厚生労働省が所管する「高齢者の居住の安定確保に関する法律(高齢者住まい法)」の改正により創設された登録制度による、高齢者のための賃貸住宅です。
では、「高齢者のための分譲住宅はないのか?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。高齢者向け分譲マンションというものは確かに存在しますが、「サービス付き高齢者向け住宅」とは性質が異なります。
「サービス付き高齢者向け住宅」は、先述の「高齢者住まい法」という法律に基づき、バリアフリーなどの設備基準や一定のサービスが義務付けられており、都道府県や政令市・中核市への届出や登録が必要ですが、高齢者向け分譲マンションには設備基準が定められておらず届出の義務もありません。
また、最大の違いは「サービス付き高齢者向け住宅」の契約が賃貸借契約とされるのに対し、高齢者向け分譲マンションは所有権方式により資産となる点です。
では、「サービス付き高齢者向け住宅」とは、具体的にはどのような住宅なのでしょうか。項目にわけてご説明いたします。
1-1 必要なサービスを自分で選べる賃貸住宅
「サービス付き高齢者向け住宅」は、高齢者が安心して暮らせる賃貸住宅を指しますが、名前の通り入居者にサービスを提供することが必須の住宅です。
入居対象者は、「60歳以上の者」・「要介護または要支援認定を受けている60歳未満の者」のいずれかに該当する者で、配偶者や条件を満たす親族、特別な理由が認められた者が同居できます。
サービスとしては、少なくとも見守りサービスの「安否確認サービス」と「生活相談サービス」が義務付けられております。
その他、食事や家事・介護など日常生活のサポートをするサービスが提供されている場合がありますが、どういったサービスが利用可能かどうかは高齢者住宅によって異なるので、事前に確認しましょう。
いずれにしても、入居者が受けるサービスを選択でき、自由度の高い生活ができるのが「サービス付き高齢者向け住宅」の特徴です。
1-2 高齢者向け住宅で受けられるサービス
先述のように「高齢者住まい法」の改正によりサービス付き高齢者向け住宅では、「安否確認サービス」と「生活相談サービス」が標準サービスとして義務付けられました。それは改正前の「高齢者住まい法」において、高齢者向け賃貸住宅で医療・介護事業者連携が不十分であったり、サービス部分でのルールがなく行政の指導監督が不十分であったりと課題があったからです。
では、それぞれのサービスがどのようなものなのか、見ていきましょう。
[1] (標準)安否確認サービス
安否確認サービスは、施設スタッフが定期的に居室を訪問・確認するサービスです。施設によっては、スタッフがいない夜の時間帯は、常設の緊急通報システムを利用したり、センサーによって、長時間人の動きがないと通知がされるシステムを利用したり、様々な対応をしているようです。
入居している方本人、また離れて暮らす家族が安心して過ごすことができるサービスですね。
[2] (標準)生活相談サービス
毎日の生活で起こる気になることや不安なこと・困っていることなどを相談できる、入居している方本人がリラックスして毎日の生活を送るためのサービスです。
相談する相手は、スタッフのほかにケアの専門家に対して相談を行う施設もあります。ここでのケアの専門家としては、社会福祉士や介護支援専門員(ケアマネージャー)、看護師、精神保健福祉士等の有資格者などがあげられます。相談相手が有資格者の場合は、生活の中の様々な相談に対応できて、より心強いですね。
[3] (オプション)食事や家事・介護などの生活支援サービス
家事サービスや食事の提供サービスなど、その他の生活支援サービスについては、入居者が必要に応じて外部の事業所を選択し個別で契約するケースと、施設スタッフから直接サービスが受けられるケースがあります。施設によって受けられるサービス内容が異なるので、入居前に事業者に確認しておくのが良いでしょう。
2 「有料老人ホーム」とは
「有料老人ホーム」は、老人福祉法に基づき、老人の福祉を図るため、その心身の健康保持及び生活の安定のために必要な措置として設けられている制度です。「食事の提供」「介護の提供」「洗濯・掃除等の家事の供与」「健康管理」のうち、いずれかのサービスを提供している住まいのことで、設置の際は都道府県知事等への届出が義務付けられています。
「サービス付き高齢者向け住宅」との差別化を図ることもふまえて、2015年には「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」が改定されています。
さて、有料老人ホームは大きく3つの種類に分類され、「介護付き」「住宅型」「健康型」が存在しており、ライフスタイルにあった施設を選択できます。
有料老人ホームの種類 | 介護付き | 住宅型 | 健康型 | |
---|---|---|---|---|
対象者 | 自立 | △ | ○ | ○ |
要支援 | ○ | ○ | × | |
要介護 | ○ | ○ | × | |
サービス | 家事や食事 | ○ | ○ | ○ |
介護 | ○ ※1 | ○ ※2 | × | |
レクリエーション | ○ | ○ | ○ | |
入居一時金 | 0~1億円以上 | 0~数千万円程度 | ||
月額費用 | 約10~40万円 | 約10~40万円+介護サービス費用 | 約10~40万円 | |
入居期限 | なし | 要介護時は退去の必要あり |
※1:介護が必要になったときは、ホームが提供する介護サービス「特定施設入居者生活介護」を利用可
※2:介護が必要になったときは入居者自身の選択で、地域の訪問介護等の介護サービスを利用可
サービス付き高齢者向け住宅が、主に介護を必要としない自立した高齢者がサービスを受けて居住する施設なのに対して、有料老人ホームは種類ごとに要介護認定が必要であるなど、種類によって受け入れている方の条件が異なるのが特徴です。
しかし、「サービス付き高齢者向け住宅」と「有料老人ホーム」が全く異なる施設かというと、そうではありません。サービス付き高齢者向け住宅において必須である「見守りサービス」以外に、有料老人ホームの要件になっている「食事の提供」「介護の提供」「洗濯・掃除等の家事の供与」「健康管理」のいずれかのサービスを提供していれば、そのサービス付き高齢者向け住宅は、有料老人ホームにも該当するのです。
3 「サービス付き高齢者向け住宅」と「有料老人ホーム」の比較一覧
では、「有料老人ホーム」にも種類があることが分かった上で、それぞれと「サービス付き高齢者向け住宅」の特徴を比較すると下記の表の通りです。
サービス付き高齢者向け住宅 | 有料老人ホーム | |||
---|---|---|---|---|
介護付き | 住宅型 | 健康型 | ||
主に自立している高齢者が様々なサービスを受けて生活する施設 | 概要 | 主に介護を必要とする高齢者が介護や生活支援を受けて生活する施設 | 自立~介護を必要とする高齢者が介護や生活支援を受けて生活する施設 | 自立している高齢者が食事や様々な生活支援を受けて生活する施設 |
○60歳以上の者 ○要介護または要支援認定を受けている60歳未満の者 | 対象者 | ○60歳以上の者 ○自立レベル ○要支援1~要介護5 | ○65歳以上の者 ○自立レベル ○要支援1~要介護5 | ○自立レベル |
敷金(0~家賃の数ヶ月分) | 入居時の資金 | 0~1億円以上 | 0~数千万円程度 | |
約10~30万円程度 | 月額費用 ※3 | 約10~40万円 | 約10~40万円+介護サービス費用 | 約10~40万円 |
○安否確認・生活相談 | 主なサービス | ○介護サービス(食事・排泄・入浴など) ○食事サービス ○リハビリ ○健康管理 ○レクリエーション など | ○身体介護 ○食事 ○健康管理 以上より1つ以上提供 | ○食事・生活支援 |
原則25㎡以上の個室 | 居室の広さ | 13㎡以上の個室 | ||
建物賃貸借契約 | 契約形態 | 終身利用権方式 |
※3:施設により異なります。
4 「サービス付き高齢者向け住宅」を選ぶ理由
有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅のポイントがわかったところで、「サービス付き高齢者向け住宅」を選ぶ理由は何でしょうか?
メリット・デメリットあわせてご紹介します。
4-1 メリット
高齢者であることを理由に入居を断られることがない
サービス付き高齢者向け住宅は、「高齢者住まい法」によって居住の安定が確保されていることが強みです。
年齢を重ね、何かしらの事情で現在の住まいを出たいとは思っていても、一般的な賃貸住宅では年齢を理由に賃貸契約を断られるケースがあります。サービス付き高齢者向け住宅は、仕事や年収・年齢にかかわらず高齢者の方でも受け入れられるので、新たな住まいを考えている高齢者の方におすすめです。
介護認定を受けていなくても入居できる
60歳以上であれば、介護認定を受けていなくても入居することができます。また、夫婦や特別な事情で入居が認められた家族も同居ができます。
今はまだ本格的な介護は必要ないけれど、何かあった時のために人目のあるところで安心して暮らしたいという方におすすめです。
必要なサービスを選択して受けられる
比較的、自立した日常生活をおくる方が多く入居しているサービス付き高齢者向け住宅では、介護サービスは不要となりますし、もちろん月額料金にも介護費は含まれていません。
サービス付き高齢者向け住宅では、自身が必要なサービスだけを選択できるので不要な費用を支払わずに済むのです。
自立した生活を送ることができ、有料老人ホームなどで毎月の月額料金内に不要と思うサービスがあると感じる方におすすめです。
有料老人ホームなどと比べて入居時の初期費用を抑えることができる
賃貸契約が基本なので、契約時に必要な初期費用のうち、敷金などは返還を受けられる場合があります。
また、有料老人ホームでは初期費用として必要な、入居一時金も必要ありませんので、より気軽に入居できるといえます。
サービスを受けられる住まいに住みたいけれど、まとまった一時金を用意するのが難しいなと感じる方におすすめです。
自由度が高く、人の目がある安心感の中で自立した生活が送れる
サービス付き高齢者住宅は、共同生活とはいえ賃貸住宅なので、入居者のプライバシーが守られやすいようなつくりとなっています。また、外出が自由に行えるなど、有料老人ホームよりも施設のような感覚なく過ごすことができます。
お風呂やキッチンも部屋についており、自宅にいるような感覚で暮らすことができるので、「施設に入って生活が制限されるのが嫌」などと気になっている方におすすめです。
4-2 デメリット
介護度が高まると移動が必要となる場合もある
入居時は健康でも、年齢を重ねるうちに介護が必要となる場合もあります。内容は施設によって異なりますが、サービス付き高齢者向け住宅で受けられるサービスでは対応できない介護度になった際は、有料老人ホームなどの介護施設に移動する必要が出てくる場合もあります。
入居を考えている施設が、介護事業者とどれだけ連携をとっているのか、24時間体制で救急時の対応ができるのかなど、どこまで対応できるのかを事前に確認しておきましょう。
一般住宅に比べて費用が高い
一般的な賃貸住宅では家賃と共益費などが必要となりますが、サービス付き高齢者向け住宅では、同程度の立地や広さでも月額利用料が高くかかる場合があります。
しかし、この利用料により、住まいの提供のほか、必須とされる「安否確認サービス」と「生活相談サービス」が受けられるのです。費用はかかりますが、安心した生活を送ることができる点が心強いポイントともいえますね。
施設によってサービスの内容・質に差がある
必須とされている「安否確認サービス」と「生活相談サービス」の他のサービスは、施設によって受けられる内容が異なります。
たとえば食事サービスでは、食事提供があり利用分だけ費用が発生する施設や、自炊のみ可能な施設などさまざまです。将来的に食事提供を受けることになった際、サービスが実施されておらず、移動が必要となるといったケースもあるので、どこまでのサービスを提供しているかは事前に確認しましょう。
5 まとめ
誰もが必ず年をとりますし、身体能力への影響は避けられないところです。時代とともに、現在は高齢者の一人暮らしも増えてきております。人の目がないところでの生活は、いざ何かあったときを考えると不安になりますね。
今はまだ本格的な介護は必要ないけれど、いずれは介護がないと生活できなくなる可能性があります。まずは、人目がありながら、比較的自由度が高く自立した生活が送れる「サービス付き高齢者向け住宅」への入居をし、今必要なサービスを選択しましょう。年齢とともに、少しずつ介助が必要となった時には、受けたいサービスを増やすこともできますね。
ただし、本格的な介護が必要となったときのことを考えると、入居を考えている施設が介護サービスや緊急時にどれだけ対応できるかを事前に調べておくことは大切です。施設を移らなければければならないのか、そのままでも対応できるのか、施設により様々です。
まずは、契約内容などをきっちりと確認し、好みやライフスタイルに合っているのかを判断する必要があります。今の状態に合うサービスが何なのか、また将来はどのような動きが可能なのかどうかについては、調べたり施設に相談したりして、ニーズに合った「サービス付き高齢者向け住宅」を探してみましょう。
「サービス付き高齢者向け住宅」を探すなら、あなぶきグループの有料老人ホーム・介護施設・高齢者向け住宅情報サイト「あなぶきの介護」をぜひご覧ください。
住まいのプロに聞いてみよう!
その他の記事はこちらをCHECK
https://journal.anabuki-style.com/
編集・発行
<著作権・免責事項等>
【本紙について】
・メディアサイト「アルファジャーナル」に掲載された記事を印刷用に加工して作成しております。
・アルファジャーナルにはあなぶきグループ社員および外部ライターによって作成される記事を掲載しています。
【著作権について】
・アルファジャーナルが提供する情報・画像等を、権利者の許可なく複製、転用、販売など二次利用することを固く禁じます。
・アルファジャーナルに登録される著作物に係わる著作権は特別の断りがない限り、穴吹興産株式会社に帰属します。
・「あなぶき興産」及び「α」(ロゴマーク)は、穴吹興産株式会社の登録商標です。
【免責事項】
・アルファジャーナルに公開された情報につきましては、穴吹興産株式会社およびあなぶきグループの公式見解ではないことをご理解ください。
・アルファジャーナルに掲載している内容は、記事公開時点のものです。記事の情報につきまして、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、必ずしも正確性・信頼性等を保証するものではありません。
・アルファジャーナルでご紹介している商品やサービスは、当社が管理していないものも含まれております。他社製品である場合、取り扱いを終了している場合や、商品の仕様が変わっている場合がありますので、あらかじめご了承ください。
・アルファジャーナルにてご紹介しているリンクにつきましては、リンク先の情報の正確性を保証するものではありません。
・掲載された記事を参照した結果、またサービスの停止、欠陥及びそれらが原因となり発生した損失や損害について、当社は一切責任を負いかねますのでご了承ください。
・メディアサイトは予告なく、運営の終了・本サイトの削除が行われる場合があります。
・アルファジャーナルを通じて提供する情報について、いかなる保証も行うものではなく、またいかなる責任も負わないものとします。