マンションの登記簿謄本(登記事項証明書)は見慣れない言葉が多く、初めて見る方は戸惑うことが多いと思います。
とはいっても、マンションの、不動産の登記簿(登記事項証明書)は重要なものです。
そもそも不動産は、不動産登記法という法律に基づき、『登記』をしたものに所有権を認めています。
登記簿は「この土地は私のものだ!」と証明する大変重要な書類なのです。
そのため登記簿は、不動産の取引において、「この土地は本当にこの人の持ち主なのかどうか」を記す重要なもので、マンションや戸建住宅の住宅ローン控除においては、「この人は本当にここに住宅を購入したのかどうか」の証明として、申請に使用したりします。
また、所有している不動産の売買や、将来的な不動産の相続等の手続きでも必要とされている書類です。
今回は、マンションの登記簿を中心に、登記簿の見方や取得方法について徹底解説いたします!
↓記事の内容を動画で分かりやすく解説しています↓
1 マンションの登記簿の見方を徹底解説
まずは、登記簿を初めて見るという方のために、マンションの実際の登記簿を例に、見方と何が記載されているのかを詳しく解説します。
1-1 登記は【表題部】と【権利部】に分かれている
マンションに関わらず、不動産の登記簿には【表題部】と【権利部】に分かれています。
さらに【権利部】の中には、【甲区】と【乙区】に分かれています。それぞれの内容について、下記をご参照ください。
- 表題部
- 対象不動産の土地についての所在地や構造等の記載がなされています。
- 権利部 甲区
- 所有権について記載されています。
※所有権というのは、法律上、特定の物を直接的かつ全面的に支配しうる権利をいいます。
- 権利部 乙区
- 所有権以外の権利関係について記載されています。
※住宅ローンを組まれている場合は、金融機関が設定する抵当権等
※抵当権とは、たとえば住宅ローンの場合、もし借りている側が返済できない事情が起こった場合、金融機関がその不動産を差し押さえ、競売にかけて、その売却代金から優先的に返済してもらうことのできる権利のことをいいます。
1-2 表題部に注目!マンションと一戸建ての違いはここにあり
マンションが一戸建てで大きく異なる点は、敷地と建物がセットで登記をされているというところです。
つまりマンションの場合は、土地のみを売却するという事は権利上できないという事になっています。
よって登記簿も、一戸建てとマンションとでは土地と建物の情報が記載されている【表題部】の内容に大きな違いがあります。ここではそれぞれの登記簿の【表題部】を見ていきましょう!
<マンション>
<一戸建て>※建物
上記のように、マンションの場合は
- 一棟の建物の表示
- 敷地権の目的である土地の表示
- 専有部分の建物の表示
- 敷地権の表示
と一戸建ての登記簿と比較すると、かなり分割されて表記されていることが分かります。
これは、そもそもマンション全体の情報を記載しなければならいないこと、土地と建物がセットであること示さなければならないこと、さらに自分のお部屋、つまり<専有部分>についても記載しなければならないことで、一戸建てと相違があるのです。
1-3 各項目毎に記載されている内容を見てみよう!
1-3-1 表題部編
この表題部では、主に建物・土地の情報が記されています。
例えば対象不動産の所在地や、建物の構造、面積等の情報が記されています。
この表題部を見れば、どこの、どんな不動産を所有しているのかが、一目瞭然となります。
- 専有部分の家屋番号 一棟全体の専有部分の一覧
【一棟の建物の表示】
- 所在・建物の名称 建物の所在地・建物の名称(マンション名)
- 構造・床面積 建物の構造・階数・階数事の床面積
【敷地権の目的である土地の表示】
- 所在及び地番・地目・地積 土地の所在地や、地目、面積
【専有部分の建物の表示】
- 家屋番号 建物を特定する為の番号。マンションの場合はそれぞれに家屋番号がつきます。
- 建物の名称 マンションの場合は部屋番号が入ることが一般的です。
- 構造・床面積 階数に関しては、専有部分についての階数表示となるため、大半のマンションが1階建となります。床面積は、一般的に不動産業者がパンフレットで記載している面積よりも減少します。これは、パンフレット上の面積は「壁芯」で床面積を算出しているのに対し、登記上は「内法」で床面積を算出している為です。
【敷地権の表示】
- 敷地権の種類 専有部分が一体化した土地の権利の種類。所有権の他に、賃借権、地上権があります。
- 敷地権の割合 全体の敷地に対して、自分がいくら持分をもっているかを示しています。
- 所有者 登記の申請人が記載されます。一般的にはマンションの分譲業者の名前が入ります。
1-3-2 権利部編
この権利部では、対象不動産がどんな権利となっているのかが確認できます。
例えば、所有者が誰になっているのか、また、他にどんな権利が付随しているのかが把握できる部分です。
【甲区】所有権に関する事項
- 順位番号
登記の順番を記しています。 - 登記の目的
所有権保存や、転売した場合は所有権移転といった表記となります。 - 権利者その他の事項
取得者の情報と、取得したきっかけ(売買等)の記載がされます。
【乙区】所有権以外の権利に関する事項
- 登記の目的
ここでは抵当権設定の記載が多いです。金融機関で住宅ローンを組んで購入するケースであれば、必ず抵当権設定の登記がなされます。
完済した場合は、抵当権抹消登記もされます。 - 権利者その他の事項
抵当権設定の場合は、金銭消費貸借契約日・住宅ローンの金額・利息・金融機関名の記載がなされます。
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2 登記簿の取得方法を確認しよう!
続いては、売却や相続などのタイミングで登記簿を取得したい方のために、登記簿の取得方法を解説します。
2-1 登記簿の取得方法は3種類
まず、登記簿は不動産の所在地に関わらず、全国どこでも取得が可能です。
ここでは、登記簿を取得する方法を3種類ご紹介します。
[1]即日交付希望の方にオススメ!法務局で取得する方法
筆者も仕事柄登記簿を取得する機会がありますが、法務局の窓口で申請をすれば15分程度(混雑具合による)で交付されるため、早く手元に欲しい方は、この窓口に行く方法がオススメです。
法務局は全国8ヵ所にある(法務局)と、全国42ヶ所にある(地方法務局)があります。
詳しくは法務省ウェブサイトでご確認ください。
- まず窓口に行き、下記申請書類を取得する。※記入方法は1-2でご紹介します。
- 申請用紙を窓口に提出する。
- 申請用紙に1枚あたり600円の収入印紙を貼り付け再度窓口に提出
※収入印紙は窓口で購入可能
- 登記簿受領
[2]遠方で法務局まで行けない方にオススメ!郵送にて取得する方法
- 申請書を取得する(法務局窓口・法務局ウェブサイト「各種証明書請求手続」 から「登記事項証明書等の交付請求書の様式・請求書様式1」のPDFファイルをダウンロード)
- 申請書に記入
- 手数料として1枚あたり600円の収入印紙を購入(郵便局で購入可)
- 返信用封筒を作成(切手貼付済のもの)
- 法務局へ郵送
- 2日くらいで郵送にて受領
[3]手間をかけたくない方にオススメ!インターネットによるオンラインで取得する方法
法務省が運営する、「登記・供託オンライン申請システム」というwebサイトから、インターネットを利用して登記簿を取得することができます。
このサイトからの取得方法には、登記の申請まで行える専門家向けの「申請用総合ソフト」を使う方法と、webラウザからデータを入力するだけで各種証明書の発行を申請できる「かんたん証明書請求」を使う方法の2つがあります。
今回は登記簿の取得することが目的なので「かんたん証明書請求」を使う方法をご紹介します。
- 「登記・供託オンライン申請システム」にアクセス
- (初めての利用の場合)申請書情報登録を行う
- ログインし、請求する証明書ではを不動産の登記事項証明書を選択
- オンライン物件検索か物件情報を直接入力するを選択し、物件情報の指定を行う
- 交付情報画面を確認し、受け取り方法を「郵送」か「窓口受け取り」を選択する。
- 再度情報を確認し、納付情報入力に進む。
- インターネットバンキング等の支払い方法を選択し、確認。
- 申請完了
- 申請後2日後程度で受領
上記の通り、登記簿の取得方法は、窓口にて申請する方法・郵送にて申請する方法・インターネットから申請する方法の3種類。ご自身の状況に合わせて、取得方法を選んでください。
2-2 申請書の書き方をマスターしよう!
法務局窓口での申請や、郵送での申請は、必ず申請書の記入が必要です。
どこにどのような情報を記載する必要があるのかを、ここで解説いたします。
記載する内容は主に3点。
- 請求者の住所・氏名
- 対象不動産の所在地※ここで注意点
不動産の所在地は、住居表示ではなく、地番や家屋番号となります。
対象不動産の住居表示しか知らない場合は、法務局にいけば『ブルーマップ』が保管されておりますので、確認しましょう。またマンションの場合は、必ずしも実際の部屋番号と、家屋番号が一致しているとは限りません。念の為窓口で確認しておきましょう。 - 必要な登記簿の選択
マンションの一室部分の登記簿を請求する場合は、『専有部分の登記事項証明書・抄本』を選択し、マンション名を記載しましょう。
※どの登記簿を取得すればいいのかは、次の項目で説明いたします。
2-3 不動産登記簿の種類は4種類
不動産の登記簿にも大きく分けて4つ種類があります。それぞれどのような内容が記載されているのか、またどういった時に必要なのか確認してみましょう!
[1]全部事項証明書
- 記載している内容
- 文字通り、その不動産に纏わる過去の履歴等全ての情報が記載されている登記簿です。
例えば、過去にどういう人が所有していて、どういう地目であったかを確認することができます。
- 主な用途
- 基本的にはどういう目的であっても、使用することができる登記簿です。
住宅ローンを利用する際に登記簿の提出を求められることがありますが、その際もこの『全部事項証明書』を使うことが多いです。
参考:【決定版】これさえ見れば大丈夫!マンションの住宅ローン必要書類
[2]現在事項証明書
- 記載している内容
- 現時点で効力のある事項のみ記載されています。
よって、過去の所有者や、過去の権利関係はこの登記簿には記載されないようになります。
- 主な用途
- 全部事項証明書よりも、簡略化した分かりやすい登記簿となっております。
現在の権利関係のみ把握しておけば大丈夫な証明であれば、この現在事項証明書がご利用いただけます。
[3]一部事項証明書(=何区何番事項証明書)
- 記載している内容
- 登記簿申請の際に、あらかじめ「共有者○○○○に関する部分」と指定すると、その共有者に関連する部分のみ切り取ることができる登記簿となっております。
- 主な用途
- 例えば敷地権化されていないマンションの敷地のように、たくさんの方で共有されているケースがあります。そこで[1]の全部事項証明書を取得すると、膨大な数の登記簿が発行される事となり、必要な箇所を探すのに苦労することがあります。その場合、この一部事項証明書を使用することが多いです。
ちなみに、全部事項証明書は1通あたり50枚を超える場合は、手数料が加算されます。余分な費用もかかる可能性もありますので、簡略化した一部事項証明書を取得するケースがあります。
[4]閉鎖登記事項証明書
- 記載している内容
- 閉鎖登記事項証明書は、建物が滅失した場合、いつ滅失登記をしたか確認することができます。
- 主な用途
- 全部事項証明書では抹消されて確認できない、過去の情報を知ることができる登記簿です。
つまり、既に存在していない不動産の登記簿を取得する際に、使用することができます。
上記の通り、不動産登記簿は主に4種類ありますが、基本的に困ったら「全部事項証明書」を取得しておけば問題ないといえます。
あとは、用途に応じて使い分けることができるようになっております。
2-4 登記簿取得には手数料が必要
どのような登記簿をどのような方法で取得しても、必ず手数料がかかります。
そこで、取得方法別の手数料を下記にまとめました。
取得方法 | 手数料 |
---|---|
書面で請求(郵送、窓口) | 600円 |
オンラインで請求(郵送受取) | 500円 |
オンラインで請求(窓口受取) | 480円 |
※参考:法務省ウェブサイト「登記手数料について」
このように、手数料だけを考えれば、前述のオンライン請求をし、窓口で受取る方法が最も安く発行できます。
ただ前述のように、オンライン請求では当初の登録をする必要があること、対象不動産の地番等が不明な場合に確認する手間がかかるということがありますので、どの手段がいいのか、それぞれ検討する必要があるようです。
3 ケース別で異なる、不動産の登記名義変更の手続き
筆者がお客様とお話する中で、よく「登記名義は後から変更できるのですか?」と聞かれることがあります。
もちろん答えは「可能」です。これを所有権移転登記といいます。
ここでは主な事例、売買・生前贈与・相続・離婚、この4点の事例での名義変更に関しての手続きをご紹介します。現時点では登記は必ずしも「しなければならない」のではなく、任意となります。
ただし、売買などによって土地や建物の所有権や抵当権など不動産に関する権利を取得した場合は,その旨の登記をしなければ,法律上,売買の当事者以外の第三者に対してその権利を取得したことを主張することができません。また、2024年4月1日からは、相続登記が義務化されます。
※登記には建物の構造・床面積等の物理的状況を明らかにする『表題登記』と所有権の移転状況を明らかにする『所有権移転登記』がありますが、表題登記は必須です。ここでは所有権移転登記についてご説明しています。
3-1 売買の場合
土地や建物を売買すると、所有権が売主から買主に移転します。
たとえば中古マンションを購入する場合、仲介業者指定の司法書士が管轄のもと、新たな買主へ所有権移転登記の手続きを行ったり、住宅ローンを組まれる場合は抵当権の設定登記も必要です。
(必要書類)
売主 | ●登記識別情報通知(登記済権利証) ●印鑑証明書 |
---|---|
買主 | ●住民票 |
その他 | ●固定資産評価証明書 ●売買契約書 |
3-2 生前贈与の場合
生前贈与とは、所有者が生前に自分の財産を贈与することです。
この場合、贈与する側から贈与される側へ登記の名義変更をする必要があります。
(必要書類)
贈与者 | ●対象不動産の登記識別情報通知(登記済権利証) ●印鑑証明書 |
---|---|
受贈者 | ●住民票 |
その他 | ●固定資産評価証明書 ●贈与契約書 |
3-3 相続の場合
不動産の所有者が亡くなると、相続人に名義変更をする必要があります。
その場合、新しい名義人をどういう風に決定をするかによって、必要な書類も変わってきます。
(必要書類)
被相続人 | ●戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍 ●住民票の除票(または戸籍の附票) |
---|---|
相続人 | ●戸籍謄本 ●住民票 |
その他 | ●固定資産評価証明書 ●相続関係説明図 |
3-4 離婚の場合
離婚の場合、夫婦の財産をそれぞれに分配する(財産分与)します。たとえば夫名義の住宅を、妻名義に変更するといったことです。
この場合、住宅ローンを利用している場合に、金融機関との調整も必要となってくるので、注意が必要です。
(必要書類)
譲り渡す人 | ●登記識別情報通知(登記済権利証) ●印鑑証明書 |
---|---|
譲り受ける人 | ●住民票 |
その他 | ●固定資産評価証明書 ●離婚協議書、財産分与契約書 ●戸籍謄本 |
名義変更をするためには登録免許税を納めますが、手続きが終わった後に別途税金が課税されることもあります。
主に考えられるのは、贈与税・不動産取得税・所得税(譲渡所得)などで、また相続の際には他の財産にもよりますが、相続税の可能性もあります。
まとめ
普段なかなか目にすることのないマンションの登記簿。
実際見てみると、過去の所有者や権利関係の記載があって、不動産によっては歴史や重みも感じますよね。
そもそも「登記」は第三者に自分が所有者であることを示す大切なものです。
これをきっかけに、自分が所有しているマンションや、親族のマンション、マンションに限らずとも不動産を所有している方は、登記簿を取得してみてはいかがでしょうか。
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