街の空気が少しずつ冷たさを増し、どこか急ぎ足で過ぎていくように感じられる12月。
クリスマスの華やぎと、年の瀬の静かな緊張感。そのふたつが折り重なって、季節の深まりを教えてくれます。
和名では「師走」。
僧侶が東西を駆け巡ったほど忙しい月、という説や、古く宮中での行事に由来する説もあり、いずれにしても“節目の月”として大切にされてきました。
マンションに暮らしていると、外の季節が少し遠く感じられる瞬間があります。
けれど、光の角度、窓の外の風の音、冷たい空気が生む匂い——そんな小さな手がかりを拾い上げるだけで、季節はひっそりと顔を見せます。
12月の自然、文化、空気の移ろいを、静かに味わってみませんか。
12月のこよみ
12月7日「大雪」(二十四節気)
山間部だけでなく平地にも雪の便りが届きはじめ、空は冬の色をまといはじめる頃。窓から見える街路樹の枝々も、冷たく澄んだ空気の中で輪郭を際立たせます。

二十四節気をさらに細かく分けた七十二候は
閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)
空が厚い雲に覆われ、冬の気配が一段と強まる様子熊蟄穴(くまあなにこもる)
熊が冬ごもりの時期に入り、穴にこもる様子鱖魚群(さけのうおむらがる)
鮭が産卵のために川を遡上する様子で、北国の冬を代表する風景
自然界が冬のリズムに確かに乗りはじめる様子が静かに映し出されています。
冬晴れの日が多い地域では、冷たい空気の中で太陽がいっそう輝き、空の青さがどこまでも透き通っていくように感じられるでしょう。
お正月飾りに使われる南天の実が赤く色づき始めるのもこの頃。南天の赤い実は「難を転じて福となす」とも言われ、古くから魔除けの象徴とされてきました。

12月22日「冬至」(二十四節気)
冬至は太陽が軌道上の最も南に来るときで、北半球では夜が最も長く、昼が最も短くなる日です。
暦(二十四節気)における冬至は「冬半ば」という意味。「冬至冬なか冬始め」という諺にもあるように、この日を境にいよいよ寒さが本格化していきます。

太陽がよみがえる日
冬至は太陽の南中高度が最も低くなるため、古くから太陽の力が最も弱まる日と考えられてきました。
しかし冬至を境に再び力を取り戻すことから「太陽がよみがえる日」「太陽の死と復活」として、世界各地で冬至祭が行われます。
易の考え方でも、この日は陰が極まる日であり、翌日から再び陽に転じる「一陽来復」の日。上昇気運に転じる日とされています。
寒さで気分が沈みがちなこの時期、「明日からは良いことがやってくる」と前向きに気持ちを切り替えるきっかけになる日といえるでしょう。
冬至とクリスマスの穏やかな連なり
クリスマスはイエス・キリストの降誕祭として知られますが、12月25日という日付そのものは、太陽の力が戻る“冬至”の祝祭と深く結びついています。
北欧では今もクリスマスを「ユール(Yule)」と呼び、キャンドルの灯りや木の装飾など、太陽の復活を象徴する風習が息づいています。
クリスマスのご馳走として丸太を模したブッシュ・ド・ノエルを食べるのも、ユールで大きな木の幹(ユール・ログ)を燃やして魔除けにしていた名残りなのだとか。

ちなみにクリスマス・イブの「イブ」は「Evening」、夜のこと。これはキリスト教会の暦において、日が沈んだときから新しい一日が始まることに由来します。
つまりクリスマスは「24日の夜から25日の日没まで」を指すというわけですね。
12月の年中行事とイベント
12月13日「正月事始め」「煤払い」(年中行事)
鬼宿日とされ、婚礼以外は万事に吉の日。
この日から煤払いや餅つきなど本格的な正月準備が始まります。
別名「煤払い」とも呼ばれ、一年の煤や埃を払い清めることで、新年を迎える準備を整えました。

クリスマスもまだ先なのに、もうお正月の準備を始めるなんて気が早いように思えるかもしれません。
しかし「備えあれば憂いなし」という言葉の通り、今の時期から予定を立てておくだけでも、年末になって慌てることなく余裕を持って過ごせるもの。新年を気持ちよく迎えるための、昔ながらの知恵といえるでしょう。

12月24日「クリスマスイブ」25日「クリスマス」
待ちに待ったクリスマス!クリスマスカラーで彩られた街並みや、きらめくイルミネーションに心が躍る季節です。自宅にクリスマスツリーやリースを飾る方も多いでしょう。

クリスマス飾りはショップで選ぶ楽しみもありますが、手作りすれば愛着もひとしお。大人も子どもも一緒に楽しめる、素敵なDIYアイデアを紹介します。
クリスマス気分を盛り上げるデコレーション
アドベントカレンダー
アドベントカレンダーはクリスマスまでをカウントダウンするカレンダーです。
本来は12月1日から始めるものですが、手作りなら好きな日からスタートできるのが魅力。子どもと一緒に工作できる簡単なものから、少し凝った作りのものまで、型紙付きで5つのレシピを紹介しています。

クリスマスオーナメント
身近な材料で、子どもと一緒に楽しめるクラフトアイデア。作ったオーナメントが映えるツリーの飾り方もあわせて紹介します。

生花で作るスワッグやリース
クリスマスらしさが際立ち、お部屋をぐっと華やかにしてくれるスワッグやリース。生花で作ればさらに存在感が増し、豊かな香りも楽しめます。


12月31日「大晦日」「大祓」
旧暦では毎月の最終日を「晦日(みそか)」と呼びました。一年の最後の晦日だから「大晦日」というわけです。

年神様をお迎えする夜
かつては各家々にやってくる年神様をお迎えするために、一晩中起きて待つ習わしがありました。うっかり眠ってしまうと白髪やシワが増えるという、なんとも恐ろしい俗信まであったそうです。
大晦日の行事の移り変わり
大晦日の歴史は古く、平安時代の頃から様々な行事が行われてきました。
もとは神事が中心で、6月の夏越の祓のように一年の間に受けた罪や穢れを祓う「大祓」の儀式を行ったり、年神様をお迎えして食事をともにするために「年籠り」として家で過ごしたりしていました。
やがて仏教の浸透とともに、寺院で除夜の鐘をつく風習も生まれます。年越しそばを食べる習慣はさらに新しく、江戸時代の頃に始まったとされています。
時代とともに形を変えながらも、一年を無事に過ごせたことへの感謝と、新しい年への祈りを込めて過ごす——大晦日の本質は、今も昔も変わらないのかもしれません。
12月を表す、冬のことばたち
冬の光・空気・静けさを感じる語たち

上旬:冬の入り口
冬晴れ│ふゆばれ

太平洋側の地域の冬は、日差しが眩しく、晴れが続くことが多いもの。その晴れの日の中でも特に、木枯らしが吹かず、日中は少し暖かいくらいの穏やかな日を「冬晴れ」と呼びます。
「冬晴れ」は「冬日和」と言われることもあります。
暖かく穏やかな晴れの日を、晩秋から初冬にかけては「小春日和」と呼びましたが、12月も上旬を過ぎた仲冬の頃からは「冬日和」と呼ぶようになるのです。
冬木立│ふゆこだち

葉を落とした木々が、空に細い線を描く冬木立。街路樹も12月になるとすっかり枝だけの姿になり、冬の空気に溶け込むような静けさをまといます。
枝の一本一本が冬の光を受けて影をつくるシルエットは、どこか詩的です。葉を茂らせていた頃とは違う、凛とした美しさがあります。
冬日向│ふゆひなた

冬の弱い陽光がつくる、やわらかな日だまり。冷たい空気の中で、窓際だけがほんのり暖かくなる冬日向は、季節の小さなご褒美のようです。
リビングに差し込む午後の光は、夏とは違い、色が淡く柔らかで、家具や床に長い影を落とします。ひと息つきたくなる、やさしい温度がそこにあります。
中旬:冷たさと透明感の季節
風花│かざはな

冬の晴天時、雪が風に舞うようにチラチラと降る様子を表す言葉です。
冬型の気圧配置が強まり日本海側で雪が降っているとき、その雪雲の一部が山を越えて太平洋側に流れ込むことで発生します。しんしんと降り積もることのない、はかなげな雪の様子を表した美しい冬の季語です。
寒昴│かんすばる

冬の澄んだ夜空に、ひときわ鋭い光を放つ昴(プレアデス星団)。空気が乾き、透明度が増す12月は、この星団が最も美しく見える季節です。
夜空を見上げると、都会の明かりの中でも、小さな青白い光がきらりと瞬くことがあります。寒い季節の星は、どこか凛としていて、思わず背筋が伸びるような静けさをまとっています。
下旬:冬の深まり
冬霞│ふゆがすみ

冷えた空気や煙、湿り気によって遠くの景色がほのかにかすむ冬霞。春の霞とは違い、冬の霞はどこか硬質で、色も淡く、静かな表情をしています。
高い場所から見える山並みが灰色のヴェールをまとっている朝は、季節が深まっている証です。
山眠る│やまねむる

冬の山が、眠ったように静まりかえった様子を表す言葉。中国宋代の画家・郭熙が、画論著書で「冬山惨淡として眠るが如し」と記したのが出典です。
「惨淡(さんたん)」とは、ぼんやり薄暗く、もの寂しい風情のこと。冬枯れの野山、雪深い冬山、どちらの山の様子にも当てはまる冬の季語です。
雪風巻│ゆきしまき

雪風巻とは、雪交じりの強い風のこと。
いわゆる吹雪です。
風に乗って雪が渦巻く様子は、その美しい字面も相まって風情があるように思えます。しかし実際は視界が奪われるほどの荒天となることもあり、その美しさの裏に潜む“冬の厳しさ”には注意が必要です。
光の季節・暮らしの光
寒月│かんげつ

澄み切った空気の中で、輪郭をくっきりと浮かび上がらせる冬の月。寒月は、春や夏の月とは違い、青白く、どこか静謐で研ぎ澄まされた光を放ちます。
ベランダから見上げる冬の月は、夜景の灯りよりも高い場所で、淡く凍ったような光を落としています。
冬灯│ふゆともし

冬の夕暮れは早く、街も家々も灯りがひときわ温かく感じられます。
帰宅時にエントランスで迎えてくれる光、部屋に戻ったときにふっと心を和らげてくれる照明。冬灯は、冬の日常に寄り添う小さなぬくもりそのものです。
今月のアンケート

わざわざ聞くほどでもない。でも聞きにくい。そんな日常生活のちょっとした疑問——「そういえば、みんなどうしてるんだろう?」。
気になっているけど誰にも聞けなかったアレコレを、リサーチしてお届けします!
今月のお題は「年末年始の過ごし方」

年末年始は、暮らしの形が人それぞれに表れる季節。
静かに過ごす時間も、賑やかに集う日も、どれもその家の物語です。
みなさんの“わが家らしい過ごし方”を、ぜひ教えてください。
回答期限:2025年12月22日(月)
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前回の「音楽の愉しみ方」の集計結果をみる

音楽の愉しみ方は、この数年で静かに形を変えてきました。
配信やSNSで新しい音に触れる機会が増える一方、ライブやフェスで“生の響き”を求める人も少なくありません。
耳元でそっと寄り添う一曲も、誰かと分かち合う高揚も、それぞれにその人らしい時間を育ててくれるもの。今回お寄せいただいた“今の音楽とのつき合い方”、ここで静かに紹介します。
アルファあなぶきStyleのサイトに移動します
※集計結果の公開日が変更になり、今回から「回答締切日の翌月10日頃」となりました。先月実施した「ソファに関するアンケート」の結果は、2025年12月10日頃にアルファあなぶきStyle内で公開予定です。
次回は1月・睦月編。
静かに始まる新しい一年の、凛とした空気と光をお届けします。
どうぞお楽しみに。
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