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マンションライフ

<新提案!>周囲30cmでフンワリ香る、自分だけで楽しむお香 ─ マンションライフの楽しみ方

何気ない日常や、旅先、あるいは街角で、ふと漂ってきた香りで懐かしい記憶が蘇った。そんな経験はないでしょうか。
そんな風に、香りは人の心理に深く関わってくるものと言われます。香りによってリラックス効果が得られたり、また作業効率がアップしたりするという研究結果もあるほどです。

一方で、香りの好みはとても個人的なもので、自分にとっては良い香りでも、周囲にいる人にとっては苦手な香りであることも。特にお香のように、お部屋全体に香りを漂わせるタイプのものは、「同居の家族が香りを嫌がるから」と使うのをためらう方も多いのではないでしょうか。
また、お香は火をつけてくゆらすので、煙による壁紙の汚れが気になることもありますね。小さいお子さんやペットのいるご家庭では、火の始末も心配です。

そこで、火を使わずに、自分の周囲30cmだけを香らせて楽しむ、そんな新しいお香の使い方を香想師・岩佐喜雲さんに伺いました。

香想師・岩佐喜雲(いわさ・きうん)プロフィール

株式会社岩佐佛喜堂(1872年創業)
代表取締役副社長

大学卒業後、香問屋に入社、その後、株式会社岩佐仏喜堂に入社し、お香の研究を始める
2014年 お香ブランド「流川香」設立
2017年 徳川宗家19代目家広氏より「岩佐喜雲」の称号を受ける

 

大学との共同研究・論文など多数
近年では国内外のイベントへの出展、有名アーティストや著名人とコラボレーションしたお香の制作など、活動のジャンルを広げている

 


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文香を使いこなす

文香(ふみこう)とは匂い袋の一種で、少量の香料を和紙に包んだものです。
一般的にお香は加熱することによって香りが立ちますが、文香は白檀や丁字のような、加熱をしなくても芳香を放つ原料を用います。

かつて平安時代の貴族は、文をしたためる紙に香を焚きしめて、自分のセンスや個性をアピールしました。それをより手軽にしたものが文香です。匂い袋よりも薄く小さな文香は、封書に入れて香りを相手に届けます。

また「ほのかに香る」「一緒に入れたものに香りを移すことができる」特性を活かして、名刺入れに入れたり、バッグやチェストの引き出しに入れたりと、場所を選ばずに使えるのも魅力です。使用状況や保管場所にもよりますが、だいたい数ヶ月〜半年程度は香りが持続するので、ひとつ買えば長く楽しめるのも良いですね。

ピローケースにセットして、パーソナルなリラックス空間を作る

リラックス効果があると言われるお香。ベッドタイムに使わない手はありません。
しかし一般的なお香は火を使うことから、就寝時に使うのは心配ですね。また同じ部屋で眠る人にとって好きではない香りの場合、寝室全体を香らせるのも難しいでしょう。

そんなときにオススメなのが文香。
火を使わずに香るので、就寝時にも安心。また周囲に香りを満たすタイプのものではないので、同室の人が香りが苦手でも使いやすいでしょう。
使い方は簡単。ピローケースの中に入れるだけです。香りが強すぎるようなら、顔が当たる部分から離れたところに入れたり、上にタオルを重ねるなどして強さを調整しましょう。

オススメの香りは白檀が前面に出てきているもの。
古くから寺院で瞑想に用いられてきた白檀は、リラックス効果のある香りとされています。まろやかに甘く、ウッディで落ち着いた香りは、まさにベッドタイムにピッタリです。

ハンカチに忍ばせて、外出先でもリフレッシュ!

香水を使いたいけれど、強く香らせたくないときに、ハンカチにスプレーする方法があります。ハンカチを入れたバッグの中や、取り出して使う時に香らせる方法ですが、文香でも同じ使い方ができます。

使い方は、ハンカチに文香を包んでおくだけ。仕事中に根を詰めすぎてしまったあとの休憩時や、出先のカフェでひと息つくとき、文香の香りが移ったハンカチを取り出せば、ほのかな香りでリフレッシュできます。

香りが周囲に拡散しないので、場所を気にすることなく使えるのが魅力です。また香水の場合はハンカチに色が付いてしまうことがありますが、文香は包んでおくだけなので、お気に入りのハンカチにも安心して使えますね。


塗香を使いこなす

塗香(ずこう)は、字のとおり「塗る」お香です。といってもジェルやクリーム状になっているわけではなく、粉末状のサラサラしたもの。成分は文香と同じ、加熱をしなくても芳香を放つ香料です。それらを粉末に砕き、調香したのちに篩にかけて滑らかにしています。これはもっとも古い形のお香だと考えられていて、なんと2000年以上前から使われているんだとか。

茶色い粉末のそれは、一見すると仏事に使う抹香のようですが、塗香は身体に直接塗るお香。ですので、普段馴染みのある「お香」とは違った使い方をします。

塗香の基本の使い方

  1. 手のひらに適量を出し、両手を擦り合わせて馴染ませる
  2. 馴染んだら、首筋などに刷り込むかハンドプレスする

自分にだけ香る「香水」として

塗香の本来の用途は、寺院において修行者が自身の身を清めるためのもの。あるいは写経をされる方は、始める前のお清めに使われたことがあるかもしれませんね。
したがって香りも、白檀や丁字、桂皮などをメインに用いた伝統的な調香がメインのアイテムです。

しかし実は今、従来の香りとはまったく違う、花や果物をイメージした塗香が登場しています。お香というとイメージされる「お寺さんの匂い」や「仏間のような匂い」。そういったものとはまったく違う、甘かったり瑞々しかったりといった現代風の香りで、日常使いを想定しています。

そんな塗香を、香水の代わりとして使ってみてはいかがでしょう
塗ると体温で暖まって、自分にだけ香る程度の仄かさなので、「香りは纏いたいけれど、強い香りは苦手」という方でも使いやすいでしょう。また香水と違って香りが周囲にほとんど拡散しないので、安心して普段使いできますね。

ボディケアアイテムとしても

塗香の原料は香木と、漢方薬に使われる「生薬」と呼ばれるもの(丁子や桂皮など)。その中には防虫・防臭効果があるものが含まれています。
それらを混ぜ合わせてつくる塗香は、気になる体臭を抑える効果が期待できます。実際に2世紀ごろのインドの仏教書「大智度論」にも、塗香をつかって体臭を抑えた後に仏様や僧侶をおもてなしすべし、と書かれているほどです。
だから香りを楽しむだけでなく、体臭予防を目的としたボディケアアイテムとしても使えます

また、仏教の経典「華厳経」に書かれた塗香の効能のひとつに「三調適温涼(身体の温冷を調節する)」というものがあります。実際に使ったところ「身体が温まった感じがした」という人もいるようです。

こういった効果やアロマセラピー効果を期待して、塗香を使ったメニューを提供するエステティックサロンも出てきました。自宅では、塗香を塗ったあとにボディ用オイルでマッサージをするなど、ケアアイテムとして取り入れるのもおオススメです。


おわりに

今回は火を使わずに、自分の周囲30cmだけで楽しめるお香を2種、紹介しました。
文香と塗香という、お香の中でもかなり馴染みのないものですが、意外と日常使いしやすいことがお分かりいただけたかと思います。
香りを活用して、より日常生活を豊かなものにしてみてはいかがでしょうか。

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