超高齢社会となった今、現在介護が必要な家族のため、また将来を見据えて自身やその家族が要介護になったときに備えて、バリアフリーを前提とした住まい設計、住宅選びが増えています。
住まいのバリアフリー化はどんどん進歩していますが、昨今供給される分譲マンションにおいても、もちろん例外ではありません。お部屋内はもちろんのこと、玄関外の廊下・階段・エレベータなどのいわゆる共用部分も含め、ご高齢の方や要介護の方、またお子様にも配慮したバリアフリー設計になっています。
またバリアフリーの概念がなかった時代に建てられた昔のマンションでは、お部屋の中に段差があったり、共用階段や共用廊下に手すりが設置されていなかったりする物件も多いため、状況の変化に応じて新築のマンションへ住み替えをする方や、リフォームでお部屋内だけでもバリアフリー化をする方が徐々に増加傾向にあるようです。
そこで今回は、最新マンションのバリアフリー事情についてご案内したいと思います。
最近の分譲マンションはどのようなバリアフリー仕様になっている?
お部屋内のバリアフリー仕様
床の段差をなくす
部屋内のすべての床の段差をなくした「フルフラットフロア」設計が主流となります。
洋室・廊下
開き戸を取り付ける開口部の枠で、床に接して戸を受ける「沓摺(くつずり)」と言われる部分の段差をなくして、つまずき防止に配慮しています。
バスルーム
沓摺(くつずり)に水返しを備え、段差を最小限に抑えた専用設計になっています。
和室
敷居部分も段差を最小限に抑えて、つまずき防止に配慮しています。
角にはカーブをつけて、けがを抑止
角や出っ張りでけがをしないよう、ユニバーサルデザインになっている箇所も多く見られます。
キッチン袖壁
キッチン天板
車いすにも対応した廊下幅
廊下幅は内寸でも800~900mmほどは確保されていて、JIS(日本工業規格)で決められている手動の車いすの幅630mm以下に対応しているなど、車いすを利用される方にも配慮された設計が多くなっています。
引き戸を採用し出入りを簡単に
通常は開き戸が多いですが、引き戸を採用することでお部屋の出入りをしやすくしています。また扉の開閉のデッドスペースをなくすこともできます。
ヒートショックに配慮した浴室暖房システム
暖かいところから寒いところに瞬間的に変わる、その代表的な場所が浴室と洗面所です。急な温度差によりヒートショックが多発する場所でもあります。
浴室内に暖房システムを設置して、お部屋間の温度変化を抑えます。冬のお風呂も快適になるでしょう。
共用部分のバリアフリー仕様
エントランスアプローチ
エントランスに入るときは、手すり付きの階段(右)とスロープ(左)が備わっています。
エントランス内
至るところに手すりが設置されていて、中には腰掛けイスやソファが設置されているマンションもあります。
エントランス内
エレベータやメールボックス(郵便受け)に行く途中も配慮されています。
共用廊下
エレベータから降りて、お部屋に行くまでの共用廊下にも手すりが設置されています。
筆者おすすめ、バリアフリーアイテム
下地補強(手すり設置用)
足腰が悪くなり、手すりを必要としている自身や家族のため、また将来必要になったときに備え、お部屋の玄関や廊下に手すりの設置を希望される方が増えています。
ただ実際に必要となったときに、右左のどちら側に必要となるのかが不明ですし、かといって左右ともに手すりを設置をすると廊下幅の有効スペースが極端に狭まります。
手すりが必要となる場所や使いやすい位置・向き・形状などは、その人の利き腕や目的などによっても異なりますので、将来必要になった時に備えて下地補強だけ施工しておくことをお勧めします。
施工範囲は、車いすを使う・縦に取り付ける可能性も考慮して、床下500mmから天井付近2,000mmぐらいまでを補強しておいたほうが良いでしょう。
玄関の壁掛け収納イス
玄関で靴を履きかえるときに便利です。室内の壁厚を利用した収納タイプになっていますので、場所も取らずスペースを有効活用できます。
メーカーごとにたくさんの種類がありますが、私の経験上約50,000円~100,000円前後が相場かと思います。
浴槽内握りバー
浴槽内から立ち上がる際に、あると便利です。壁設置型の縦のスライドバーは握力が足らないと上から下に手が滑り落ちることも考えられますので、体重をそのまま手に乗せられるような横型の握りバーがお勧めです。
また、下の写真のように浴槽そのものが。手や肘を置けるユニバーサルデザインになっているものも多くなっています。
フロアコーティング加工「ミラーコート」
ミラーコートは床面がピカピカして見た目が豪華になるのはもちろんですが、床材表面を守る保護膜としても有名です。通常のフローリングより随分と滑りにくいため、転倒事故防止になり高齢者の方にも安心です。
使用状況やお手入れ状況によっても異なりますが、耐久年数は10年程度と言われています。
知って安心!バリアフリーリフォームの必要・不要ポイント
新築分譲マンションへ住み替えをするのではなく、現在お住まいのリフォームを検討される方も多いかと思います。
バリアフリーリフォームをする際の必要・不要ポイントをご紹介したいと思います。
段差をなくす
車椅子を利用するためだけでなく、つまずいて転倒しないためにも段差の解消は必要です。段差のない生活はストレスも軽減し、日々の生活をとても豊かにしてくれます。
ただし、段差の解消はフルフラットフロアのように徹底的にしないと、かえって危険になります。
妥協して一部でも残してしまうと、段差の無いいつもの動線が当たり前になった場合、違う行動を取った際に警戒心が薄れてつまずいてしまうかもしれません。
高齢者はわずか数mmの段差でもつまずいてしまうことがありますが、逆にむしろ段差が残っているほうが、足腰の良い運動になり、足元にも目配りをする良い刺激になるという考え方もあります。
手すりをつける
手すりの取り付け位置は、身体の状態や目的によって・向き・左右・高さなどが異なります。また今が右利きだからと言って、将来にわたって右手の自由がきくとは限りません。
実際に手すりを使う状態になったときに、利き手が不自由になり反対側に手すりを付け直さざるを得なかったケースや、廊下の両側に手すりを取り付けた結果有効スペースが少なくなり、車椅子が通れなくなったケースもあります。
安易に手すりを取り付けるのではなく、目的に合わせた取り付け位置や、取り付け後の有効スペースなども考慮して施工してもらうようにしましょう。
また、あとで取り付けをしやすいように下地補強だけ施工しておくのも良いでしょう。
浴槽を取り替える
浴槽のまたぎやすい高さは、床から40cm前後と言われています。高すぎても低すぎても転倒や転落の危険がありますので、必ず確認をするようにしましょう。
また、せっかく新しいものに取り替えるなら「足を伸ばせる広い浴槽に」と広い浴槽を希望される方は多いかと思いますが、逆にその広さが仇となって浴槽内でひっくり返る事故が心配されます。浴槽内に市販のバスタブマットを敷く対応策もありますが、そもそも足を伸ばしたときに足裏がつく程度の広さにするのが良いでしょう。
最近では浴槽内の腰掛けや握りバーなど、バリアフリー対策が施されたシステムバスがたくさん出ています。そういった商品選びに併せて、床の段差解消やヒートショック対策、浴槽への入り方、手すりの取り付けなども忘れずに確認するようにしましょう。
開き戸を引き戸に変更
室内ドアは引き戸にリフォームしておくと、車いすや杖をつきながらでも扉の開閉がしやすくなります。
引き戸には3枚引込・引き違い戸・引き分け戸など色々な種類がありますが、いずれも開口スペースが広く取れるので、車いすでもスムーズに出入りが可能となります。
また取っ手も、ハンドル・引き手・つまみ・レバーなどさまざまありますが、引き戸に取り付けるものは力を入れずに開閉できる「ハンドル」タイプがお勧めです。
まとめ
バリアフリーにするためには、床の段差の解消、手すりの取り付け、ドアを引き戸にするなどの比較的小規模なものから、玄関先の階段をスロープに変更、水周りの取り替え、廊下を広げる、ホームエレベーターを付けるなどの大規模なものまで、費用も数千円から数百万円まで幅広くありますので、状況や予算に合わせてじっくりと計画を立て、予測もある程度しながら必要なものをしっかりと見極めるようにしましょう。
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