「最近、家の中の段差で躓くことがあって危なかった。」「ここに手すりがあれば楽なのになあ…。」など、家の中でのちょっとしたトラブルを感じて、住まいのバリアフリー化を考える方が増えてきています。2011年の国土交通省のデータでも、バリアフリー法による取組みでバリアフリー化が推進されていることがわかります。(参考情報:国土交通省「建築物のバリアフリー化の状況」)
最近の分譲マンションでは、バリアフリー性のある仕様が増えてきていますが、マンションでのバリアフリーとは、どのようなものなのでしょうか。また、マンションで「バリアフリー」を活かした生活には、どのような例があるのでしょうか。
マンションでは、敷地が「専有部分」と「共用部分」にわけられており、いわゆるお部屋の中が「専有部分」、その他の部分を「共用部分」といいます。
この記事では、「共用部分」と「専有部分」によって異なるバリアフリーの注目ポイントを項目ごとにご紹介します。
また、バリアフリーのマンションで生活する方の実例をあげながら、バリアフリー性から見るマンションの選び方についてお伝えしたいと思います。
マンションでのバリアフリーについて理解して、マンション選びや現在お住まいのマンションのリフォームなどに役立てていただければ幸いです。
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1 バリアフリーマンション選びの12個のチェックポイント
1-1 共用部分の6つのポイント
まずは、共用部分でのバリアフリーのポイントをご紹介します。
[ポイント1] エントランス扉は自動ドアが便利
マンションの玄関口であるエントランス扉。バリアフリーのマンションを選ぶ際には、エントランスの正面玄関扉が自動ドアのものを選びましょう。
マンションの顔ともいえる部分なのでデザイン性のあるマンションも多いかと思いますが、手動ドアの場合、きちんと閉まっていないと空調の効果が下がりますし、毎日の生活に手間が増えてしまうからです。
例えば、車椅子やベビーカーがある時、または多くの荷物を持っているときに、正面玄関の出入口が手動ドアだとドアを開けるのに苦労してしまいますね。
エントランス扉が自動ドアか手動ドアかは、築年数に関係なく物件の仕様によるので、バリアフリー仕様を希望の場合は、自動ドアかどうかチェックしておきましょう。
[ポイント2] 段差にはスロープが必要
エントランス前に階段や少しの段差があるマンションでは、スロープが設置されているかを確認しましょう。なぜなら、お部屋の中がバリアフリーでも、部屋に入るまでにバリアがあってはマンション自体に入るのが困難かもしれないからです。例えば、車椅子だけでなく、台車などで荷物を搬入するときも、お部屋の外の段差はない方がいいですよね。
マンションによっては、エントランスが2階部分にある構造で、正面入口が階段となっているかもしれません。そのような場合は、他に1階から出入りのできる勝手口があるかどうかもチェックする必要が出てきます。まずは全体をよくチェックしてみましょう。
[ポイント3] エレベーターは必須
マンションとはいっても、様々な高さの建物があります。まずはマンションのエレベーターの有無、総戸数に対して何基あるのかを確認しましょう。
物件によっては5~6階建てでもエレベーターがなく、階段利用のマンションもあるからです。身体が不自由なとき、荷物が多いとき、車椅子を利用するとき…、エレベーターがあれば負担が軽減されますね。
また、エレベーターと一言でいっても大きさも様々です。例えば、エレベーター前で車椅子を利用したときに方向転換するスペースはあるのか、エレベーターに乗った時に左右にゆとりはあるのか、エレベーターの中や外の広さも見ておきましょう。
[ポイント4] 手すりが設置されていると便利
歩行時にあったら便利なアイテムとして、手すりが設置されているかを見てみましょう。手すりなど掴まるところがないと、壁を直接触っても安定感が得られませんし、ちょっとしたタイミングで少し身体を預けたいときに、手すりがあると便利です。
例えば、共用廊下や階段、スロープにも手すりがあることで、歩行が困難な方だけではなく、少し掴まりたいときにも役立ちます。物件によっては、エントランス内の壁面にも手すりが設置されているマンションもあります。どこに手すりがあるのか、注意して見てみましょう。
[ポイント5] 共用廊下・階段の幅が広く取られていることが大切
マンションの共用廊下や階段では、通路幅が十分に取られているか確認しましょう。
マンションの共用廊下から少しくぼんだ部分で、玄関前スペースのことをアルコーブといいますが、ここにはエアコンの室外機が設置されている場合があります。共用廊下の幅が十分に確保されていなければ、室外機で空間が圧迫され、通行がしにくくなるからです。
例えば、荷物がある時、大人数いる時、車椅子やベビーカー・台車を利用している時、廊下の幅が確保されているとスムーズに方向転換や通行ができますね。人や物が十分に通行できる幅が取られているのかがポイントです。
[ポイント6] 駐車場スペースが確保できるか要確認
車椅子を利用される方にとって必要なのが、車椅子を自動車から昇降するスペースが確保できているかどうかです。
なぜなら十分なスペースが確保できていない場合、自動車に傷がつく恐れがあったり、車椅子利用の方自身、身動きが取れなくなったりする可能性があるからです。
確認したいポイントとしては、敷地内で乗降する場所はあるのか、また、車椅子の出入ができる幅をとった駐車区画があるのか、の2点。隣の区画の自動車を傷つけないことはもちろんですが、車椅子の方自身が安全に乗降できるスペースの確保が大切です。
区画の横に立ち上がりの壁やフェンスがある際には、その高さも確認しておくと、乗降時をイメージしやすくなりますね。
1-2 専有部分の6つのポイント
先ほどの共用部分篇に続いて、専有部分でのバリアフリーのポイントをご紹介します。
毎日の生活を送る専有部分。何気ないところが、実は生活のしやすさのキーポイントかもしれないので、チェックしてみましょう。
[ポイント7] 玄関扉の使い勝手は直接確認が必要
マンションの玄関扉は、スペースや構造の関係上、開き戸が一般的です。誰でも簡単に開閉できるかどうかを確認しましょう。
小さな子どもやお年寄りなど誰でも簡単に開閉できないと、住戸の玄関口として、バリアフリーな状態とはいえないからです。
玄関扉には比較的重量感のある扉が採用されているので、風や勢いで閉まるときに安全かどうか、力を入れなくても開けられるかどうかをチェックしましょう。取っ手の形状や位置がつかみやすいものかどうかもポイントですね。
安全のため、ドアクローザーによってゆっくり閉まるようになっているかも気にしておきたいポイントですが、これによってドアを開けるのが重くなっていることもあります。誰でも開けられる重さになっているか、安全な速度で閉まるようになっているか、実際に開閉してバランスをチェックしておきましょう。
[ポイント8] 住戸内玄関のスペースをチェック
住戸内に入ってすぐの玄関。家の顔ともいえる大事な空間です。ここでは、靴を履く・脱ぐ空間が十分かどうか、まずはチェックしてみましょう。マンションはスペースの関係上、玄関にあまり広く空間が取られていない場合がありますが、最低限の脱ぎ履きがしやすいかポイントです。
そして、マンションでは一戸建てに比べ、玄関の上がりかまちやバルコニーへの段差が小さいのが特徴です。玄関の上がりかまちの段差は、雨水が住戸へ進入することを防ぐだけではなく、日本が履物の脱ぎ履きをする習慣があることも関係しているといえます。砂や雨水、外で付着した汚れを居室部分に持ち込まないために、マンションでも少しの段差を設け、玄関の空間をわける役割を果たしているのです。
少しはあった方が良い段差ですが、バリアフリーの観点からは、一つの障壁となります。段差の大きさについてはマンションの構造によって異なりますが、段差の高さはどれくらいか、車椅子などを使用する場合、スムーズにあがれる高さかどうかもチェックしてみましょう。
[ポイント9] 居室の扉は引戸が便利
お家の中のバリアフリーでは、洋室など居室の扉が引戸であることがポイントです。
なぜなら、引戸では扉の開閉が省スペースで行え、出入りがしやすくなるからです。通常、居室への出入口には開き戸が採用されているケースが多いですが、開き戸では扉の開閉時にデッドスペースがうまれ、有効可動域が狭まってしまうのです。
引き戸であれば、車椅子での出入りがしやすい他、扉を開けた時に使えなくなる空間がないのでスムーズに通行できるようになりますね。
現状が開き戸であっても、戸袋のスペースが確保できれば引戸に変更することも可能かもしれないので、壁のスペースにも注目してみましょう。
[ポイント10] 水回りの段差がない部屋を選ぼう
バリアフリーのマンション生活ではお家の中がすべてフラットになっていることが重要なので、キッチンや脱衣所などの水回りに段差がないかを確認しましょう。
家の中のちょっとした段差でも、誰しもが大きな怪我をする危険があるからです。脱衣所などの限られたスペースでは特に、つまずいて転倒したときに何かにぶつかると危険が大きいものです。
最近のマンションでは、水回り部分も廊下に対してフラットである場合が多いですが、物件によっては水回りが一段高くなっているものもあります。これは、床下に配管を通す空間を確保するためですが、最近では、床をフラットにするために構造も変化しつつあるようです。
玄関以外のお部屋の中がフラットな状態かどうか、改めて確認してみましょう。
[ポイント11] 住戸内手すりが設置できるかチェックしよう
専有部分でも、ちょっとしたところに手すりがあると安心です。手すりがどれだけ設置されているのか、また追加で設置できそうな場所はあるのかをチェックしましょう。
なぜなら、既存の位置以外でも取り付けができれば、個人の生活により適したバリアフリーが実現するからです。
バリアフリー性をもつマンションであれば、浴室内やトイレ内に元から手すりが設置されている場合もあります。浴室やトイレの他では、玄関や廊下、脱衣所などに手すりがあるのか、または設置できそうなスペースはあるのかをチェックしてみましょう。
[ポイント12] スイッチの形状・位置は使いやすいものを選ぼう
最近では主流になってきていますが、大型スイッチが適用されているか、押しやすい高さに設置されているかどうかもチェックしましょう。
スイッチの高さが子どもから大人まで誰もが使いやすい高さでないとバリアフリーとはいえません。また、スイッチは大型であれば誰でも簡単にプッシュ操作できますね。もちろん、スイッチは後から操作盤の変更もできますが、はじめから大型だと負担がありません。
スイッチがどのような形状で、どこに・どのくらい高さに位置しているのか、チェックしておきましょう。
2 実録!バリアフリーなマンションでの生活から学ぶ、こだわりポイント
2-1 車椅子での生活をするAさんのこだわりポイント
車椅子での生活をするご主人と奥様のAさん夫妻。ご主人は常に車椅子を利用するため、マンションで段差のないフラットな生活を希望し、新築マンションを購入しました。ご主人が車椅子で生活をしやすいように、ご主人の主寝室は玄関から近い洋室を選択。マンションは、まだ建設途中であった為、主寝室への入口扉は予め標準仕様の開き戸から引き戸に変更ができました。
また、Aさんは奥様の運転で外出をする機会もあるので、担当営業と一緒に、入居前に実際の駐車場区画サイズを測り、車への乗降を確認しました。車を止める位置はもちろんですが、止める方向や開口幅がポイントでした。Aさんは販売早期に購入契約いただいたので、乗降のスペースが確保でき、建物までスムーズに移動できる駐車区画を選ぶことができました。
ご入居から約半年が経ち、マンションでのバリアフリーについて尋ねてみましたが、駐車場のスペース確保はもちろん、エレベーターも比較的ゆとりある空間に乗れること、部屋の扉を引き戸に換えたことで、毎日の生活を不自由なく送れているとのことでした。
2-2 老後を考えてマンションに住替えをしたBさんのこだわりポイント
少し小高い団地に住む60歳代のBさん夫妻。今は健康で、毎日の生活にも何の支障もないが、将来いつか車に乗れなくなった時、坂や段差のない生活を希望してマンションへ住替えをしました。
今まで住んでいた一戸建てのように2階部分もなく、ほとんど段差もない生活はこれから年齢を重ねたときのことを考えると安心できます。そこでBさんがこだわったのは、住戸内での手すりの設置です。今は良くてもいつかは・・・と考え、玄関・廊下・脱衣所に手すりを設置、また、浴室内にも既存のものに加えて手すりを設置しました。
また、長年一戸建てで生活をしてきたBさんは、玄関の上がりかまちに腰掛けて靴を履く習慣があったため、マンションの少しの段差では靴の脱ぎ履きがとてもしづらく感じ、玄関に壁掛けの収納イスを設置しました。利用しない時は壁面に収納できるため場所もとらず省スペースで、これまでと同じように座った状態で靴の脱ぎ履きができることが何より嬉しいとおっしゃっていました。
3 マンションをバリアフリー化することはできるの?
3-1 中古マンションを購入!チェックポイントはココ!
中古マンションをバリアフリーにしようと考えている場合、気をつけなければならないのが共用部分です。専有部分をいくらバリアフリー化できたとしても、室内に入るまでがバリアフリーでないと、外出も大変です。共用部分では、エントランスや入口までに階段や段差があることも…。自身の要望だけで簡単に変えられるわけではないので、まずはチェックしましょう。
また、専有部分については配管の関係上、水回りの位置を動かすことが難しいので、生活動線を考えたバリアフリー計画をしている場合は、事前に管理会社に確認して、マンションの設備・構造を熟知している設計者に相談しましょう。
既存のマンションのリフォーム、中古マンションのリフォーム・リノベーションについては、こちらの記事も参考にしてください。
→リフォームで対応!老後も今のマンションで快適に過ごそう
→リノベーション目的でのマンション購入、注意点と知って得するポイント
3-2 新築マンションを購入!バリアフリー設備を紹介!
時代とともにマンションの仕様設備はどんどん進化しています。
最近の分譲マンションのバリアフリー設備については、こちらをご覧ください。
→必見!最近の分譲マンションのバリアフリー事情
3-3 バリアフリーによる補助金制度
バリアフリー化の工事にかかる費用には、介護保険の補助制度が利用できます。
これは、バリアフリーに関する内容で、段差の解消・手すりの設置など、要支援・要介護認定者が必要とするリフォーム工事に適用されます。他には、トイレを和式から洋式に変更して使いやすくしたり、開き戸を引き戸に変更したりと、幅広く利用できます。(参考情報:厚生労働省「介護保険における住宅改修」)
住宅改修費用の支給限度基準額は、2018年9月現在で一世帯当たり税込で20万円ですが、実際の給付額は状況によって異なる場合があります。まずは補助金が受けられるのかどうか、申請手続はどのタイミングで行うのか。希望のリフォーム内容は補助金に適用されるのかを含め、ケアマネージャーに相談するところから始めましょう。
申請については、各自治体のホームページで案内を確認するほか、分からない場合は、市役所の担当窓口に尋ねるのが良いですね。
4 まとめ
マンションでバリアフリーな生活を送るためのポイントや実例をご紹介しましたが、毎日の生活に必要なバリアフリーポイントは何なのか、イメージしながらマンション選びをしてみてください。
マンションだからこそのバリアフリー性を知ることで、チェックポイントをおさえたマンション選びができればと思います。
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