2025年に住宅の省エネ基準適合が義務化され、さらに2030年にはZEH水準の性能が義務化される見込みです。こういった背景から、ZEHや低炭素建築物などの高性能マンションが既に注目され始めています。
そこで今回は、2022年に制度が改定された低炭素建築物のマンションについて、認定制度や仕様、税制面のメリットなどをわかりやすく解説します。高い省エネ性能を実現しつつ快適な暮らしを送れる高性能な仕様を備えているため、環境意識が高い方、住みやすいマンションを探している方などにおすすめです。
この記事では、2026年4月現在での法令、制度に基づき解説をしています。低炭素建築物やZEH、ZEH仕様についても見直される可能性がありますのでご注意ください。
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低炭素建築物とは?
まずは、低炭素建築物の概要からみていきましょう。
低炭素建築物の定義と認定制度
低炭素建築物は「エコまち法」(都市の低炭素化の促進に関する法律)に基づく認定制度で、二酸化炭素排出量の基準を満たしている建築物として特定行政庁(都道府県・市・区)が認定しています。住宅ローン控除の区分などでは「低炭素住宅」「認定低炭素住宅」などと表現しているケースもありますが、いずれも同じ認定制度を指しています。
エコまち法は、二酸化炭素排出量を削減するために国が整備を進めている法律です。カーボンニュートラル宣言(2050年)を背景として2022年に改訂され、低炭素建築物の認定基準の水準が引き上げられるなどの変更がありました。低炭素建築物は高い省エネ性能が求められるため、高気密・高断熱の仕様が必須であり、結果的に快適な建築物になります。ローン・税制度の優遇措置もあるので、環境に優しいだけでなく住む人にとってもうれしい認定制度です。
低炭素建築物の認定基準
低炭素建築物(住宅)のイメージを見てみましょう。

外壁・天井・床・開口部といった建物の各部に、高い断熱性能が求められています。さらに、冷暖房・給湯・照明設備といった設備機器にも、高効率な仕様が求められていることがわかるでしょう。また、創エネ設備(エネルギーをつくる設備)として、太陽光発電パネルを設置しているマンションもあります。
これらに関する具体的な認定条件は、以下のとおりです。
- 外皮性能(誘導基準):屋根・外壁・窓などの断熱・日射遮蔽性能
- 一次エネルギー消費性能(誘導基準):建物の省エネ性能
低炭素建築物はこれらの性能・仕様を満たしているため、電気や水を節約しながら暮らすことができます。
認定基準を満たす設備・仕様はマンションごとに異なります。上記のイメージ図に記載された設備・仕様がすべて備わっているとは限りませんので、ご注意ください。
必須項目:ZEH・ZEB水準の省エネ性能
①外皮性能(誘導基準)
住宅においては、地域に応じて天井や外壁の熱の通しやすさや、夏場の日射による熱の入りやすさに制限が設けられています。寒い地域ほど高い性能が求められているため、寒冷地でも一定の快適性が担保されていることが低炭素建築物やZEHマンションのメリットです。
②一次エネルギー消費性能(誘導基準)
住宅においては、省エネ基準からさらに20%以上の一次エネルギー消費を削減する必要があります。一次消費エネルギーは、化石燃料、原子力燃料、水力・太陽光などの自然から得られるエネルギーを指し、電気・灯油・都市ガスといった建物で使用する二次エネルギーを一次エネルギーに換算して、省エネ基準と照らし合わせます。低炭素建築物は高性能な外壁や窓、サッシにより断熱性能が高いため、冷暖房等で必要な一次エネルギーが小さくなるのが特徴です。
ZEHの場合は一次エネルギー消費量を20%削減した上で、残りの80%を創エネでカバーする必要があります。一方、低炭素建築物については創エネ部分の基準値が設けられていません(一戸建て住宅を除く)ので、環境性能という点ではZEHの方が優れているといえるでしょう。
必須項目:再生可能エネルギー利用設備の設置
創エネ部分の基準値は設けられていませんが、再生可能エネルギーの利用設備の設置自体は必須とされています。代表例として以下の設備が挙げられており、いずれかを選択して設置されています。
太陽光発電設備
太陽熱・地中熱を利用する設備
風力・水力・バイオマス等を利用する発電設備
河川水熱等を利用する設備
薪・ペレットストーブ等の熱利用のいずれか
選択項目:低炭素化に資する措置
先に挙げた必須項目に加え、低炭素化に資する措置として下記いずれかを講じる必要があります。
- 節水対策:節水型トイレ・水栓の設置など
- エネルギーマネジメント:HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の設置など
- ヒートアイランド対策:緑地・水面の設置など
- 建築物(躯体)の低炭素化:住宅の劣化の軽減に資する措置など
- V2H充放電設備の設置:電気自動車に電気を供給するための設備の設置など
低炭素建築物のマンションが注目される理由
低炭素建築物のマンションが注目を集めている背景にあるのは、2025年に施行された省エネ基準への適合義務化です。さらに、2030年にはZEH水準が標準とされる見通しであり、国の動きと相まって環境問題への社会的関心が高まっています。
現状では、まだ低炭素建築物に認定されたマンションは希少です。しかし、快適な暮らし、ローン・税制度の優遇措置といったメリットから人気が高まり、将来的な資産価値を維持しやすくなる可能性があります。
低炭素建築物のマンションのメリット
ここでは、お金・快適性・環境の観点から低炭素建築物のメリットをご紹介します。
経済的メリット
住宅ローン控除、登録免許税、フラット35Sなどに関する優遇措置を見てみましょう。
住宅ローン控除の優遇
低炭素建築物の場合、住宅ローン控除の借入限度額は以下のとおりです。
【住宅ローン控除の借入限度額(2026~2030年入居の場合)】
- 新築住宅:4,500万円(子育て世帯等※の場合は5,000万円)
- 既存住宅:3,500万円(子育て世帯等※の場合は4,500万円)
※子育て世帯等:居住した年の12月31日時点で、「19歳未満の扶養親族を有する世帯」または「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯)
新築マンションの省エネ基準適合住宅は借入限度額が子育て世帯等で3,000万円であり、低炭素建築物はそれだけ控除額が大きくなります。なお、2024年以降に建築確認され、省エネ基準に適合していない住宅は、住宅ローン控除を利用できなくなりました。
登録免許税の軽減
新築・未入居のマンションの所有権保存登記などを行う際に係る税率が、一般住宅特例より引き下げられます。
| 本則 | 一般住宅 特例 | 低炭素住宅 特例 | |
|---|---|---|---|
| 所有権保存登記 | 0.4% | 0.15% | 0.1% |
| 所有権移転登記 | 2.0% | 0.3% | 0.1% |
※令和9年3月31日までの取得が対象。その他、床面積などの要件あり。
フラット35Sの金利優遇
全期間固定型の住宅ローン「フラット35」では省エネルギーなど質の高い住宅を取得する場合に金利を一定期間引き下げる制度(フラット35S)があります。住宅の技術基準に応じて金利プランが三段階あり、低炭素住宅の場合は金利Aプランが適用されるようになります。金利Aプランでは当初5年間の金利が0.5%引き下げられます。
快適性のメリット
前述のとおり、低炭素建築物は高い省エネ性能が求められるため、結果的に快適な住環境が整います。
低炭素建築物には高い気密・断熱・遮熱性能が求められる、室内と室外の間を行き来する熱や空気が少なくなるのが特徴です。そのため、例えば夏は室外の熱気を取り込みにくくなり、冷房による冷気が外に出にくくなります。夏は涼しく、冬は暖かくなるため、年間を通して暮らしやすいのがメリットです。部屋間の温度差が小さくなるので身体への負担が減り、ヒートショックの心配も減るなど健康面にもよい影響があります。
また、冷暖房による快適な空気や熱を無駄にしないため、エアコンなどが消費するエネルギーが減り、光熱費の削減効果を期待できるでしょう。結露の可能性も小さくなるため、床や内壁の修繕費も抑えられる可能性があります。
環境・社会的メリット
地球温暖化などの環境問題は世界的な課題であり、そのなかで日本は大きな役割を期待されています。そのためには、一人ひとりの環境意識を高めることが重要です。二酸化炭素排出量の削減などに貢献することは、社会的責任を果たすことに繋がります。
低炭素建築物は、二酸化炭素排出量を削減する上で重要な役割を担っています。2030年以降もスタンダードとして通用する性能を持っているため、将来的な資産価値の維持・向上を期待できるでしょう。環境・社会に配慮して事業を行い適切な企業統治がなされている会社に投資する「ESG投資」の観点でも評価されており、投資家からの関心も資産価値の将来性を支えています。
他の省エネ性能との違い
建築物の省エネ性能に関しては、いくつかの認定制度があります。ただし、税制制度は併用できないケースがあるほか、条件や優遇措置が年度によって変動するので注意しましょう。そのため、マンションを購入する際はファイナンシャルプランナーなどに相談しながら、もっとも効果的な活用方法を計画するのがおすすめです。
ZEH(ゼッチ)マンションとの違い
ZEHマンションは省エネと創エネを組み合わせ、年間の一次消費エネルギーの収支を実質ゼロにしているマンションです。低炭素建築物との共通点として、以下の2点が挙げられます。
- 省エネ適合基準から20%の一次エネルギー消費量削減
- 同等の断熱性能
一方、低炭素建築物との違いは以下のとおりです。
- 残りの一次エネルギー消費量を創エネでカバーし、エネルギー収支を実質ゼロにする
- 創エネ設備を導入するため、初期コストが高い傾向がある
- 【住宅ローン控除】低炭素住宅のほうが借入限度額が大きい
<借入限度額(新築・買取再販住宅の場合)> 低炭素建築物 子育て世帯等 5,000万円
その他の世帯 4,500万円ZEH水準省エネ住宅 子育て世帯等 4,500万円
その他の世帯 3,500万円 - 【フラット35Sの金利】ZEHマンションのほうが優遇幅が大きい
<フラット35Sの金利> 低炭素住宅 金利Aプランが適用。
金利引き下げ幅0.5%(当初5年間)ZEHマンション フラット35S(ZEH)が適用
金利引き下げ幅0.75%(当初5年間)
断熱性能は同等なので、暮らしやすさに大きな差はありません。イニシャルコストを抑えるなら低炭素建築物、ランニングコストを抑えるならZEHマンションといった判断基準でマンションを選んでみてください。
ZEHマンションについては、こちらで詳しく解説しています。
長期優良住宅との違い
長期優良住宅は二酸化炭素排出量の削減や省エネ性能に加え、長期にわたる居住・耐久性を評価する認定制度です。耐震性・劣化対策・維持管理・バリアフリーなどの要件が指定されているため、地震に対する安全性や維持管理のしやすさ、子育て・介護への対応力も考慮してマンションを選びたい場合によい選択肢といえます。
長期優良住宅の税制優遇措置は、以下のとおりです。
- 【住宅ローン控除】低炭素建築物と同じ
- 【フラット35Sの金利】低炭素建築物と同じ。金利Aプランが適用、金利引き下げ幅年0.5%(当初5年)
ただし、長期優良住宅とZEHの両方の認定を受けている場合、金利引き下げ幅が年1.0%(当初5年)となる
なお、国の補助金制度との併用はできません。例えば、ZEH補助金を受け取ると、子育てグリーン住宅支援事業の長期優良住宅補助金は受け取れませんので留意しておきましょう。
省エネ基準適合住宅との違い
省エネ基準適合住宅は、2025年以降の一般水準とされる住宅です。低炭素建築物、ZEHマンション、長期優良住宅などは、省エネ基準適合住宅よりも高性能な住宅として位置づけられています。そのため、住宅ローン控除では借入限度額が他の住宅に食えて少なく設定されており、さらに2028年以降に入居する場合はローン控除の対象外となります。(ただし、2027年末までに建築確認を受けた住宅に2028年以降入居する場合は、借入限度額2,000万円、控除期間10年となります)
以下の表は、2026年~2030年に入居する場合の住宅ローン控除の内容です。ご参考にしてください。
低炭素住宅・省エネ基準適合住宅の住宅ローン控除(2026~2030年入居分)
| 住宅の区分 | 子育て世帯 若者夫婦世帯 | 左記以外の世帯 | 控除期間 | |
|---|---|---|---|---|
| 新築住宅・ 買取再販住宅 | 長期優良住宅・ 低炭素住宅 | 5,000万円 | 4,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 2,000万円 | ※の場合 10年 | |
| 2028年以降入居分はローン控除対象外 ※2027年末までに建築確認を受けた住宅は、2,000万円 | ||||
| 中古住宅 | 長期優良住宅・ 低炭素住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 2,000万円 | ||
住宅ローン控除は住宅性能以外にも要件が設けられています。詳しくはこちらをご覧ください。
低炭素建築物のマンションの選び方と留意点
まだ、低炭素建築物に認定されているマンションは多くありません。低炭素建築物を検討するなら、以下のような選び方や留意点を考慮してください。
物件選びのポイント
まず、販売元のデベロッパーに問い合わせるなどして、認定証明書を確認することが大切です。税制優遇措置を利用する場合は申請に認定証明書が必要なので、事前に確認しておくことをおすすめします。
低炭素建築物とZEHの両方の認証を取得しているマンションや、風通しがよい川沿いに立っているといった地域特性による快適性を享受できるマンションもあります。仕様や地域性を細かく確認しながら、どういった暮らしになるのかをイメージすることが大切です。
コストの考え方
低炭素建築物のマンションは高い仕様でつくられているため、一般マンションと比べると販売価格が高いかもしれません。一方、光熱費などのランニングコストは抑えられる傾向があり、将来的に売却することも考えると、低炭素建築物の方がコストメリットを期待できる可能性があります。
税制優遇措置も含めて総合的なシミュレーションを行った方が、経済的な計画性を高められます。そのため、ファイナンシャルプランナー等の専門家に相談してみるとよいでしょう。
注意すべきポイント
特に中古マンションの場合は、認定状況や認定証明書の有無を確認することが大切です。税制措置の申請時に認定証明書が認められないと予算に影響を及ぼすため、優遇措置が確実に利用できることを確認しておきましょう。また、省エネ設備の更新など、マンションの維持管理で想定される費用負担も販売元に確認しておけると安心です。
よくある質問
最後に、低炭素建築物のマンションについて、よく抱かれがちな質問を回答とともにまとめました。
Q.低炭素建築物のマンションは本当にお得なの?
低炭素建築物のマンションは、税制面の優遇措置や光熱費などのランニングコスト削減効果を期待できます。ただし、一方でイニシャルコストが高くなる傾向がある点に注意しましょう。長期的な目線で見ればランニングコストの削減効果によりお得に暮らせるかもしれませんが、金銭面の負担は慎重に判断する必要があります。ファイナンシャルプランナーをはじめとした専門家に相談しながら検討してみてください。
Q.ZEHと低炭素建築物、どちらを選ぶべき?
ZEHマンションと低炭素建築物マンションで、快適性は大きく変わりません。金銭面の負担も大きく変わらないと想定されるため、立地や空間構成といったマンションの魅力で物件を選ぶことをおすすめします。ZEHマンションは一次消費エネルギーを実質ゼロにしていることから、より環境配慮型の建築物といえます。環境への貢献を意識する場合は、ZEHマンションの方がより効果的です。
Q.中古マンションでも低炭素建築物のマンションはある?
低炭素建築物の認定は新築時のステータスが引き継がれるため、中古マンションでも低炭素建築物である可能性はあります。中古物件の場合は、売主に認定証明書を確認させてもらうことで認定の有無を知ることができます。現状の物件数は多くありませんが、今後は増えていくことでしょう。
Q.将来的な資産価値への影響は?
2030年にはZEH水準の性能が義務化されることから、低炭素建築物の認定を受けたマンションの需要は高まる可能性があります。認定条件に見合った高性能なマンションのため、快適な暮らしがイメージしやすく、購買検討者の関心を引くことができるでしょう。そのため、将来的にも高い資産価値を期待できます。
まとめ
低炭素建築物のマンションは環境に優しく、経済的なメリットも期待できます。2030年にZEH水準の性能が義務化されると、創エネ設備を搭載させるためにマンション価格がさらに高騰する可能性があるでしょう。しかし、今ならリーズナブルにマンションを購入できるとも考えられます。低炭素建築物を購入する際は、高性能な設備仕様を確認し、快適性や暮らしやすさが価格に見合っているか考えながら検討してみてください。
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