素朴な材料を使い、やさしい味わいで心身を満たしてくれる台湾スイーツ「豆花(トウファ)」。豆乳を固めたプリン状のものに、さまざまなトッピング、さらっとしたシロップをかけていただく豆花は、1度食べるとその世界をもっと知りたくなるような魅惑の甘味です。
今回は初めて豆花を知る方への予備知識を交えて、用意しやすい材料で作れる豆花のレシピをご紹介します。
豆花の魅力とは?
台湾へ行くと、実にたくさんの豆花の屋台や専門店を見かけます。観光客だけではなく、地元の方々にも愛され続けている豆花の魅力をまずは探ってみましょう。
大豆原料の体にやさしいヘルシースイーツ
台湾では毎日小籠包や魯肉飯(ルーローハン)を食べている…と思っていたら大間違い。台湾の方々は、肉の代わりに大豆製品や麩を味わい豊かに調理して食したり、菜食専門のレストランやお惣菜店を活用したりと素食を意識した食生活を送っています。
そのような食の習慣に欠かせない食材が植物性タンパク質を摂れる豆乳。スーパーには驚くほど種類豊富な豆乳が並んでおり、朝食では温かい豆乳スープに干しエビや薬味をいれた鹹豆漿(シェンドウジャン)というものがよく食べられます。このような豆乳が根付いた暮らしの中で生まれたのが、豆花というスイーツです。
豆花は大豆が原料、そしてトッピングには小豆、ハトムギ、さつまいも、キクラゲ、こんにゃく…といった体にやさしい素材が使われています。バター、生クリーム、卵など動物性脂肪分をたっぷり使ったスイーツに比べると低カロリーであることは一目瞭然ですね。
ヘルシーでありながらも甘味としてまとまりのある一品に仕上がっているところが、豆花の大きな魅力でしょう。
トッピングで幾通りもの食感・味わいを楽しめる
豆花の醍醐味はなんといっても豊富なトッピングです。豆花のお店にいくと、ショーケースに無数のトッピングが並んでおり、その中から好きなものを好きなだけ載せることができます。トッピングの組み合わせを変えることで食感や味に変化が生まれ、毎度新しい出会いを楽しむことができます。
飲み物不要!さらっとしたシロップで潤いも得られる
トッピングの他に豆花に欠かせないものがシロップです。豆花で使われるシロップはベタつくような蜜ではなく、さらっとした甘さのスープのようなもの。
洋菓子や和菓子といったスイーツであればコーヒーやお茶が欲しくなるところですが、豆花はジュース感覚で飲み干せるシロップのおかげで、甘味と同時に潤いを得ることができます。
ちなみに暑い台湾では、凍らせたシロップをかき氷にしてかけたり、クラッシュアイスを混ぜたシロップをかけるお店などもあります。
豆花を実際に作ってみよう!
魅力たっぷりの豆花を家庭でも食べられたら嬉しいですね。今回は極力用意しやすい材料で、本場の味に近づけるようなレシピをご紹介いたします。
豆花、トッピング、シロップは冷蔵で2〜3日保存できますが、やはり出来立てに優るものはありません。ぜひ早めに召し上がってくださいね。
豆花のレシピ
台湾では昔から食用石膏(硫酸カルシウム)で豆花を固める方法が使われています。食用の石膏があるということが少々驚きですね。
食用石膏だけではザラっとした食感が残ってしまうので、現在ではサツマイモのでん粉をプラスして滑らかさを出すというのが一般的です。食用石膏で固めると、絹ごし豆腐よりもさらに柔らかい仕上がりになり、熱いシロップをかけても溶けません。
家庭で食用石膏を撹拌するのは少々難しいので、今回はゼラチンを使ったレシピをご紹介します。ゼラチンは熱で溶けてしまうので冷たいシロップでい食べることになりますが、寒天やニガリで固めたものよりも口当たりが滑らかです。また、初めて豆花を食べる方にも食べやすいよう、少し甘みのついた調整豆乳を使ったレシピをご案内します。
材料(4〜5杯分)
- 調整豆乳 600ml
- 粉ゼラチン 10g
- 水 大さじ3
作り方
- 粉ゼラチンに水を加えて、固まりを作る。
- 用意した豆乳のうちの200mlを鍋に入れて中火にかける。沸騰する手前で火を止める。
- 1のゼラチンを温めた豆乳に入れ、混ぜながらゆっくり溶かす。
- ゼラチンが完全に溶けたら、残りの豆乳を全て鍋に入れ混ぜ合わせる。
- バットや深皿などの容器に移し、蓋もしくはラップをして冷蔵庫で冷やす。2時間くらい冷やし、固まったらベースとなる豆花の完成。
最大限に柔らかさを出すため、ゼラチンは豆花が固まるギリギリの量にしています。そのため固まるまでに少し時間がかかりますが、おいしい豆花を作るために辛抱して待ちましょう!
シロップのレシピ
台湾の豆花店では、こだわりのシロップを1種類のみ用意するところが多く、あとは冷たいものか温かいものを選べるというのが基本スタイルです。きび砂糖の透き通るような甘さのシロップ、黒糖で少しコクを出したシロップが定番で、なかには季節限定のレモンシロップなどを出すお店もあります。
今回はゼラチンで作った豆花に合わせて冷たいシロップのレシピを紹介いたしますが、きび砂糖か黒糖のお好きな方を使ってみてください。
材料(豆花4〜5杯分)
- 水 200ml
- きび砂糖(またはは黒糖) 60g
- 生姜のスライス 2枚程度
作り方
- 小鍋に水ときび砂糖(黒糖)と生姜スライスを入れて、中火にかける。
- きび砂糖(黒糖)が溶けたら、火を止めて粗熱を取る。
- 粗熱が取れたら生姜を取り出し、保存容器に入れて冷蔵庫で冷やす。
甘みと水だけでは物足りないところですが、生姜をプラスすることで味に輪郭が出ます。生姜のパンチがもっと欲しい場合は、少し多めに入れてもいいでしょう。ご家庭にかき氷器があれば、シロップを凍らせ、豆花の上に削ったものをかけて食べることもできます。暑い夏にぜひ試してみてください。
食感を楽しむトッピング6種のレシピ
豆花とシロップができたら、最後はトッピング作りですね。日本人にも人気のトッピング6種を選んでみました。各種食べ切りやすい量をご紹介しますが、2回目以降はお気に入りのトッピングは多めに作ってもよいでしょう。
タピオカ
たくさんの粒が口の中で弾むタピオカは、豆花でも人気のトッピングです。タピオカは「キャッサバ」という芋のでん粉でできたもの。元々は白色なのですが、タピオカミルクティーにも使われているブラックタピオカは、粉の段階でカラメル色素を使用して着色しています。
日本でもタピオカはスーパー、100均、輸入食品店などで販売されています。黒糖で煮て、艶の美しいタピオカを作りましょう!
材料
- ブラックタピオカ(乾燥しているもの) 50g
- 黒糖 50g
- 水 100ml
作り方
- 鍋にお湯(分量外)をたっぷりと沸かし、沸騰したらタピオカを一気に入れる。
- タピオカがお湯の中でゆっくり舞う程度の火力(弱火〜弱めの中火)で茹でる。
- 1時間ほど茹でたら、1粒取り出して硬さを確認する。芯が残るようであれば、もう少し茹でる。芯が無くなったらお湯を捨ててザルにあげる。
- 小さめの鍋に黒糖と水を入れて中火にかける。沸騰したら茹でたタピオカを入れ、弱火に落として5分ほど煮る。
- 火を止め、鍋に入れたまま粗熱が取れるまで冷まして出来上がり。
冷蔵保存でタピオカが少し硬くなってしまいまった場合は、レンジで温め直すとまた柔らかさが復活します。ラップをし、約100gにつき600Wで1分~1分半ほどを目安に加熱してください。
あずき
日本人に愛されるトッピングといえば、小豆ですね。シロップに浸して食べるので、少し豆の原型が残るくらいに煮ると溶け出しません。小豆のアクをしっかり取るためにも、2回ゆでこぼしましょう。
材料
- あずき 50g
- きび砂糖 30g
作り方
- 洗った小豆とたっぷりの水を鍋に入れ、強火にかける。
- お湯が沸騰して2〜3分経ったら、小豆をザルに入れ、お湯を捨てる。
- もう一度、小豆と水を鍋に入れて火にかけ、2の工程を繰り返す。
- 2回ゆでこぼした小豆を鍋に入れ、小豆がすべて水に浸かるか浸からないかくらいの水を入れる。中火にかけ、沸騰したら弱火に落とし、50分くらい煮る。水が減ったら足して、水量を一定に保つようにする。
- 指で潰れる程度に柔らかくなったら、きび砂糖を加える。(以降、水は足さない。)
- 弱火で10分ほど煮て火を止める。そのまま鍋ごと冷まして出来上がり。
小豆を茹でるには結構時間がかかります。せっかくですから分量を2〜3倍にし、少し多めに作って冷凍保存してみてはいかがでしょう?小分けしてラップに包み、ジッパー付きのビニール袋入れて冷凍しておくと、1ヶ月ほど保存できます。朝食の小倉トースト、お餅のトッピングとして重宝します。
白玉
ツルンとした豆花に食べ応えを出してくれるトッピングが白玉です。簡単に作れるので、ぜひお子様と一緒に作ってみてくださいね。
材料(15個分くらい)
- 白玉粉 100g
- 水 100cc
作り方
- ボウルに白玉粉を入れ、水を少しずつ足しながら手でこねていく。水は分量の全部を使おうとはせず、耳たぶくらいの硬さになったところでストップする。
- 鍋にお湯(分量外)を沸かす。
- 白玉粉をひと口サイズに丸め、沸騰したお湯の中に入れる。お湯の表面に浮いてきたら取り出して、氷水で冷やす。
- 冷えたらザルにあげ、水を切って出来上がり。
台湾では紅白の白玉にしているお店もあります。余裕があれば、分量の半分には食紅を少し入れてピンクバージョンの白玉にしてみてください。ピンク色の白玉が添えられるだけで、テンションが上がりますよ!
芋圓
芋圓(ユーユェン)はサツマイモやタロイモを使ったお団子のことで、これだけでも主役になる台湾の代表的なおやつです。台湾には芋圓だけを温かいシロップに浸して食べる「芋圓湯(ユーユェンタン)」という絶品スイーツがあります。また芋圓を油でさっくり揚げたスナックは夜市の人気メニューです。
今回は日本でも身近なサツマイモを使って芋圓を作りましょう。
材料(20個分くらい)
- サツマイモ 100g
- 白玉粉 25g
- 片栗粉 10g
- 片栗粉(打ち粉用) 適量
- 水 35cc
- きび砂糖 10g
作り方
- サツマイモの皮を剥き、1cm幅の輪切りにする。
- 鍋に切ったサツマイモと水(分量外)を一緒に入れ、中火で煮る。ほろっと崩れる程度に柔らかくなったら、ザルにあげて水を切る。
- サツマイモをボウルに入れ、熱いうちにきび砂糖を振りかける。
- マッシャーやフォークを使って、きび砂糖をサツマイモに馴染ませながらざっくり潰す。
- 別のボウルに、白玉粉と片栗粉を入れる。水を少しずつ足しながら、耳たぶくらいの固さになるまでこねる。白玉作りと同様に、水は全部使い切らなくて良い。
- サツマイモを潰したボウルに、5で作った生地を入れる。指でサツマイモの粒を潰しながら、生地と馴染ませていく。
- まとまりが出たら、まな板に打ち粉をし、手で転がしながら直径5cmくらいの棒状にする。長いようであれば、数本に分けてもよい。
- ひと口サイズになるように包丁でカットする。
- 鍋にたっぷり水(分量外)を入れて湯を沸かし、カットした生地を入れる。生地が水面に浮いてきたら取り出して、氷水で冷やす。あとはザルに上げ、水を切ったら完成。
もっちりとした食感の中から、ふわっと口に広がるサツマイモのほのかな甘さが芋圓の魅力です。芋圓とシロップが余ったら、ぜひ芋圓湯にして食べてみてください。シロップを少し温めて、芋圓にかけるだけで出来上がります。
ピーナッツ
ピーナッツは台湾でよく使われる食材で、「花生(ファション)」と呼ばれています。落花生から何となく連想できる名前ですね。甘煮したピーナッツをシロップに浸して食べる「花生湯(ファションタン)」という台湾スイーツもあります。柔らかく煮たピーナッツにも、豆花と一緒に食すことにも抵抗がありましたが、本場でその美味しさを知った時は感動しました。
本来なら生のピーナッツで作りますが手に入れにくいので、今回はおつまみ用に販売されているピーナツから作る方法をご紹介します。
材料
- ピーナッツ(おすすめは無塩。塩味でも可。いずれも薄皮の無いもの) 50g
- きび砂糖 40g
- 水 340cc
作り方
- たっぷりの水(分量外)にピーナッツを一晩浸してふやかす。
- ピーナッツをザルにあげ、浸していた水を捨てる。鍋に水とピーナッツを入れ、中火にかける。
- 沸騰したらきび砂糖入れ、少し煮詰める。火加減はピーナッツがゆっくり踊るくらいの弱めの中火くらいが目安。
- 40分ほど経ったら火を止め、鍋のまま冷まして出来上がり。
無塩でも有塩でも作る工程は一緒です。ピーナッツが口の中でほろっと崩れるくらいの硬さまで煮詰めましょう。シンプルな味わいの豆花から広がるピーナッツのコクが絶妙です。食の広がり発見できるようなトッピングなので、ぜひお試しください。
ハトムギ
ハトムギのプチプチとした食感は、豆花とのコントラストを楽しませてくれます。食物繊維が豊富なハトムギを甘味として食べられるのは嬉しいですね。ぜひトッピングとして仲間入りさせちゃいましょう!
材料
- ハトムギ 50g
- 水 500cc
- きび砂糖 15g
作り方
- ハトムギをたっぷりの水(分量外)に一晩浸ける。
- ハトムギをザルに上げ、浸けていた水を捨てる。ハトムギに付いたヌメリを流水でさっと落として、水を切る。
- ハトムギと水を鍋に入れ火にかける。
- 沸騰してきたらきび砂糖を加え、弱火で20分程度加熱する。
- ザルに上げて煮汁を捨て、粗熱を取ったら出来上がり。
ほんのり甘く煮たハトムギはおしるこ、ぜんざい、抹茶のかき氷のトッピングに使っても美味しく食べられます。ぜひいろいろなスイーツとのペアリングをお試しください。
盛り付け方
豆花、シロップ、トッピングが揃ったので、最後に盛り付けていきましょう!シリアルボウルのような少し深さのある容れ物を使うとちょうどよいです。
- 豆花を大きめのスプーンでスライスするように数回に分けてすくい、1番下に盛る。
- 豆花にトッピングを載せていく。1種類のみでも、お好きなものをピックアップして組み合わせても、全種類載せてもOK。複数載せる場合は、見栄えを良くするためにも似た色の食材同士が隣り合わないようにする。
- 豆花がすっぽり隠れるくらいまでシロップをかけて、出来上がり。
まとめ
身近な素材の風味を生かしたまま甘味へと大変身させた豆花は、台湾の方々が長年かけて育んできた愛情たっぷりのスイーツです。ヘルシーさを意識したスイーツの中には正直物足りなさを感じるものもありますが、豆花は無数のトッピングで味わいと食感に幅を効かせた、食のおもしろさを実感させてくれるような名品です。
豆花はこだわるとどこまでも深掘りできるスイーツ。ご紹介したレシピをもとに、砂糖の分量を変えたり、他のトッピングに挑戦して、ご自身の究極の一杯を作ってみてくださいね!
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