「寝る前に、スマホを充電したまま布団のそばに置いている」
「モバイルバッテリーを夏の車内に置き忘れてしまった」
「少し傷んだ充電ケーブルをそのまま使い続けている」
こうした身近な習慣が、充電式機器の発火や火災につながることをご存じでしょうか。スマホやモバイルバッテリーなどの充電式機器に使われているリチウムイオン電池は、強い衝撃や高温、不適切な充電環境などによって異常に発熱し、発火することがあります。発火すると、周囲の布団や家具などに燃え移るおそれもあります。
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)によると、2021~2025年にリチウムイオン電池搭載製品の事故は2,140件報告されました。事故は春から夏に増え、8月にピークを迎える傾向があります。消費者庁の事故情報データバンクでも、2020~2024年度にワイヤレスイヤホンなどの事故が162件登録されており、そのうち84.0%がリチウムイオン電池に起因するとみられています。
この記事では、スマホなどの充電式機器による火災の原因や危険な使い方、今すぐできる予防策をわかりやすく解説します。
出典:
製品評価技術基盤機構(NITE)「『夏バテ(夏のバッテリー)』にご注意を」
消費者庁「リチウムイオン電池使用製品による発火事故に注意しましょう」
・スマホ・タブレット
・モバイルバッテリー
・ハンディファン(携帯用扇風機)
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・ノートパソコン
・電気カミソリ・コードレス掃除機
・ポータブル電源
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スマホなどの充電式機器で火災が起きる主な原因
スマホやモバイルバッテリーの多くには、リチウムイオン電池が使われています。強い衝撃や圧力、水濡れなどで電池内部が損傷すると、電気が一気に流れて急激に熱くなることがあります。この発熱を制御できず、温度が上がり続ける状態が「熱暴走」です。
リチウムイオン電池の内部には燃えやすい電解液が使われているため、熱暴走が起こると発煙や発火につながるおそれがあります。
ここでは、充電式機器の発煙・発火につながる主な原因を解説します。
落下や圧迫、水濡れによるバッテリーの損傷
スマホやモバイルバッテリーを落としたり、強く押しつぶしたりすると、見た目に問題がなくても内部が損傷している場合があります。電池の中でショートが起きると、本体が熱くなったり、発火したりするおそれもあります。
たとえば、モバイルバッテリーを重い本などと一緒にかばんに入れると、移動中に圧迫されたり、硬い物にぶつかったりする場合があります。ズボンの後ろポケットに入れたまま座る行為も、本体に大きな力がかかる原因の一つです。
また、ハンディファンの落下や、ワイヤレスイヤホン、スマートウォッチなどの水濡れによって、内部が損傷する可能性もあります。外見に変化がなくても、内部のショートによって、発熱・発火につながるケースがあるため、注意が必要です。
高温の場所での使用・充電・放置
リチウムイオン電池は、高温の環境では劣化や異常な反応が進み、発火につながるおそれがあります。特に注意したいのが、夏場の車内です。
外の気温がそれほど高くなくても、閉め切った車内は短時間で温度が上がります。スマホやモバイルバッテリー、ハンディファン、ポータブル電源などを車内に置いたままにすると、電池に大きな負担がかかります。
直射日光が当たる窓辺や、ストーブなどの暖房器具の近くでも本体の温度が上がり、電池の劣化や異常発熱が進むことがあります。
布団やソファの上での充電による熱のこもり
スマホなどの充電式機器は、充電している間にも熱を発します。机の上などの平らで硬い場所では放熱できますが、布団やソファ、クッションの上は本体の周りに熱がこもりやすい環境です。
スマホが布団の中に入り込んだり、毛布や衣類が上からかぶさったりすると、さらに放熱が妨げられます。温度が高い状態が続くと、電池の劣化や異常発熱が進み、熱暴走につながるおそれがあります。
機器に合わない、または傷んだ充電器・ケーブルの使用
充電ケーブルは、端子の形が合えばすべての機器に使えるとは限りません。充電器やケーブルごとに、対応する機種や出力、規格が異なるためです。
機器に合っていない製品を使うと、電流や電圧を正常に調整できず、本体や充電器が異常に発熱する場合があります。また、ケーブルの内部が断線していたり、端子や接続部分が損傷していたりすると、電気が流れる部分に熱が生じ、ショートや発火につながるおそれがあります。
バッテリーの劣化や製品の不具合
スマホなどに使われているバッテリーは、使用期間や充電回数が増えるにつれて少しずつ劣化します。充電と使用を繰り返すうちに内部の材料が傷み、通常より熱を持ちやすくなる場合もあります。
また、劣化によって内部にガスが発生すると、バッテリーが膨らみやすくなります。膨張によって内部の部品が圧迫されると、ショートや発火を招くこともあり、注意が必要です。
製品そのものの不具合により、過充電や温度上昇を防ぐ安全機能が正常に働かなくなることも、発熱・発火の原因の一つです。
充電式機器の火災につながる危険な習慣と予防策
充電式機器による火災を防ぐには、異常が出てから対応するだけでなく、日頃の使い方を見直すことが大切です。
ここでは、やってしまいがちな7つの習慣と、それぞれの予防方法を紹介します。
高温になる車内や直射日光の当たる場所に放置・充電する

スマホやモバイルバッテリーは、夏の車内や直射日光が当たる場所に置いたままにしないでください。充電していない状態でも、高温によってバッテリーの損傷や異常発熱につながるおそれがあります。車から離れるときは、スマホだけでなく、モバイルバッテリーやハンディファン、ポータブル電源なども持ち出しましょう。
自宅では、窓辺や暖房器具の近くを避け、風通しのよい場所で充電します。充電中に本体が普段より熱くなった場合は充電を中止し、取扱説明書やメーカーの案内を確認してください。
落下や圧迫で衝撃を受けた機器をそのまま使い続ける
スマホを落とした後、画面が割れていなければ問題ないと思う人もいるかもしれません。しかし、衝撃によって内部のバッテリーが損傷している可能性があります。
落下させたり、強い圧力がかかったりした後は、本体が異常に熱くなっていないか、変形していないかを確認しましょう。異臭がする、充電が安定しないなどの異常が出た場合は、いったん使用や充電を中止してください。
持ち歩くときは、重い荷物の下に入れないようにし、かばんの中で圧迫されにくい場所に収納すると安心です。衣服のポケットに入れたまま座る行為も、本体に強い圧力がかかるため避けましょう。
寝ている間や外出中に充電したままにする
寝ている間や外出中に充電すると、本体の異常に気づくまで時間がかかります。発熱や焦げたにおい、煙などが出ても、すぐに対応できません。できるだけ起きている時間帯に、目の届く場所で充電しましょう。
寝る前に充電する場合は、本体に異常がないことを確認し、就寝前にケーブルを外します。外出するときも充電したままにせず、機器を充電器から外しておきましょう。
布団・ソファ・書類などの上で充電する

布団やソファの上は、スマホから出た熱が逃げにくい場所です。さらに、紙や衣類などの燃えやすい物が近くにあると、発火した際に周囲に燃え広がるおそれがあります。充電するときは、机や棚など、平らで硬い場所を選びましょう。周りに書類、ティッシュ、衣類などを置かず、スマホの上に布をかぶせないことも大切です。
平らで硬く、周りに燃えやすい物がない場所をあらかじめ決めておくと、発火や火災のリスクを抑えやすくなります。
機器への適合を確認せず、充電器やケーブルを使い回す
家の中にある充電器を、どの機器にも使い回している家庭は少なくありません。しかし、差し込み口が合っていても、充電器の出力や規格が適合しているとは限りません。
充電器やケーブルを使う前に、取扱説明書やメーカーの公式サイトで対応機種・充電規格・出力を確認しましょう。判断が難しい場合は、純正品やメーカーが推奨している製品を選ぶと安心です。
ケーブルが破れている、端子が曲がっている、接続が緩いなどの異常がある場合は交換してください。手で押さえたり、角度を変えたりしながら充電を続けるのは危険です。
テーブルタップの定格容量を超えて使用する

テーブルタップには、一度に使える電気の量が決められています。スマホやパソコンなど複数の充電器をつなぐときは、合計の消費電力が定格容量を超えていないか確認しましょう。
テーブルタップ本体やパッケージには、「合計1,500Wまで」などの表示があります。容量を超えて使用すると、コードや差し込み口が熱くなり、火災につながるおそれがあります。
また、テーブルタップに別のテーブルタップをつなぐ使い方も避けてください。プラグや差し込み口にほこりがたまっている場合は、乾いた布などで取り除きます。電源コードを束ねたまま使わないようにし、コードに折れや破れがないかも確認しましょう。
充電コードを安全な状態に保ちながら、スッキリ収納する方法を解説しています。

リコール情報を確認せずに使い続ける
充電式機器の中には、製品の不具合が見つかり、回収や交換の対象になるものがあります。見た目に異常がなくても、使い続けることで発熱や発火につながる可能性があります。
長く使っているスマホやモバイルバッテリー、中古で購入した機器、家族や知人から譲り受けた製品は、一度リコール情報を確認しておきましょう。
メーカーの公式サイトのほか、消費者庁のリコール情報サイトやNITEの製品事故情報からも確認できます。対象製品だった場合は、使用や充電をやめ、メーカーが案内する回収や交換の手続きに従ってください。
充電式機器に現れる危険な3つのサインと対処法

充電式機器に異常が見られたときは、「まだ使える」と判断せず、早めに使用と充電を中止してください。見た目や音、におい、動作の変化を確認し、異常がある状態で使用を続けないようにしましょう。
本体やバッテリーがふくらむ・変形する
スマホの画面や背面が浮いていたり、モバイルバッテリーの外側がふくらんでいたりする場合は、バッテリーに異常が生じている兆候です。膨張した状態で使い続けたり、充電したりすると、内部でショートして発火するおそれがあります。
変形に気づいたら使用を中止し、メーカーや販売店へ相談しましょう。押して元に戻す、穴を開ける、分解する、試しにもう一度充電するといった行為は危険です。
充電中に異常に熱い・異音・異臭がする
充電中に本体が少し温かくなることはありますが、以前より明らかに熱い、触れ続けるのが難しいほど熱い場合は要注意です。焦げたようなにおいや変色がある場合や、ハンディファンの回転音が急に変わった場合も異常のサインです。
安全に操作できる状態であれば、使用と充電をやめ、直射日光を避けた場所で自然に温度が下がるのを待ちます。保冷剤や氷を当てたり、冷蔵庫へ入れたりすると、結露によって故障やショートを招くおそれがあるため避けましょう。急いで冷やそうとせず、そのまま様子を確認します。
充電できない・電源が突然切れるなどの不具合がある
以前は問題なく使えていたのに、充電できない、充電が途中で止まる、電源が何度も切れる、電池の減りが極端に早いといった変化が続く場合は、バッテリーや機器に異常が起きている可能性があります。
使用と充電を中止し、取扱説明書に記載された対処方法を確認しましょう。原因がわからないまま充電器やケーブルを次々に替え、何度も通電するのは避けてください。
充電式機器が発熱・発火したときの対応とNG行為
充電式機器から煙や炎、火花が激しく出ているときは、近づいて消火しようとせず、周囲の人に知らせて安全な場所へ避難してください。そのうえで、119番通報を行います。煙を吸い込まないようにし、燃えている機器を素手で触ったり、別の場所へ運んだりしてはいけません。
モバイルバッテリーなどの小型機器で、火花や煙の勢いが収まり、安全を確保できる場合に限り、消火器や大量の水をかける、水をためたバケツに投入するなどの方法で消火します。ただし、無理にプラグを抜いたり、自力での消火にこだわったりする必要はありません。中型・大型のバッテリーから出火した場合や、少しでも危険を感じた場合は、すぐにその場を離れてください。
火が消えたように見えても、バッテリーの内部に熱が残り、再び発火することがあります。消火後も機器に触れず、消防機関へ連絡して指示に従いましょう。
参考:消防庁「火災事故について」
マンションで守るべき防火ルールについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

使わなくなった充電式機器の安全な処分方法
不要になったスマホやモバイルバッテリーを、可燃ごみや不燃ごみにそのまま混ぜて出すのは危険です。ごみ収集車や処理施設で押しつぶされたり、強い衝撃が加わったりした際に発火し、大規模な火災につながるおそれがあります。
処分する際は、まず製品の表示や取扱説明書を確認し、リチウムイオン電池が使われているか確認しましょう。処分方法は、製品の種類や住んでいる地域によって異なります。異常のない製品は、可能な範囲で電池を使い切ってから、自治体のホームページやごみ分別冊子、メーカーの案内を確認し、指定された回収方法に従ってください。製品によっては、メーカーや家電量販店などに回収窓口が設けられている場合もあります。
電池を取り外せない機器は、無理に分解してはいけません。膨張、変形、破損している製品や異常な発熱が見られる製品は、電池を使い切るために使用を続けず、通常の回収ボックスにも入れないようにしましょう。自治体の担当窓口や購入店などへ事前に相談のうえ、処分してください。
可燃ごみや不燃ごみに混ぜず、自治体やメーカーなどが案内する回収方法を利用し、リサイクルにつながる方法を選びましょう。
参考:環境省「リチウムイオン電池等に関する特設サイト」
スマホの充電と火災に関するよくある質問
スマホなどの充電式機器の充電方法について、日常生活で疑問を持ちやすい点をまとめました。普段と違う熱やにおい、動作の異常がある場合は、ここで紹介する内容にかかわらず使用を中止してください。
Q.充電しながらスマホやハンディファンを使うと火災につながる?

充電しながら使っただけで、すぐに火災が起きるわけではありません。ただし、充電による発熱と機器の動作による発熱が重なるため、通常より温度が上がりやすくなります。
動画の視聴やゲームなどでスマホが熱くなった場合や、ハンディファンの本体や充電器が普段より熱い場合は、いったん使用と充電を中止しましょう。布団の上や直射日光が当たる場所など、放熱しにくい環境での使用も避けてください。
Q.充電器をコンセントに差したままでも大丈夫?
破損や異常のない充電器であれば、コンセントに差したままにしただけで、直ちに火災につながるとは限りません。ただし、長期間使わないときや外出が続くときは、コンセントから抜いてくおと安心です。
差したまま使う場合は、プラグ周辺のほこりや差し込みの緩み、変色、異常な発熱、コードの傷みがないか定期的に確認しましょう。ほこりは乾いた布で取り除き、異常が見つかった場合は使用を中止して、メーカーや販売店へ相談するか、新しい充電器に交換してください。
Q.使っていない古いスマホも発火することがある?
使っていないスマホでも、保管中にバッテリーの劣化が進むことがあります。高温になる場所へ長期間置いていると、膨張や変形が起こる可能性もあります。
古いスマホは、直射日光や暖房器具を避けた場所で保管し、ときどき画面や背面が浮いていないか、本体の変形などがないか確認しましょう。今後使う予定がない端末は、そのまま引き出しへ放置せず、自治体のルールに従って処分してください。
Q.急速充電は火災のリスクが高い?
急速充電に対応したスマホと、適合する充電器やケーブルを正しく組み合わせていれば、急速充電だから直ちに危険というわけではありません。使用する前に、スマホ・充電器・ケーブルがそれぞれ急速充電に対応しているか確認してください。
通常の充電より端末が温かくなることはありますが、触れ続けるのが難しいほど熱い、警告が表示される、充電が何度も止まる場合は、使用と充電を中止してください。対応する充電規格や出力は、取扱説明書や製品の公式サイトで確認できます。
充電場所と機器の状態を見直して火災を防ごう
スマホなどの充電式機器による火災は、日頃の使い方や充電場所を見直すことで予防しやすくなります。高温になる場所や燃えやすい物の近くを避け、機器に合った充電器やケーブルを使いましょう。
膨張、異常な熱、におい、充電不良などに気づいたら、すぐに使用と充電を中止してください。発火したときは無理に近づかず、避難と119番通報を優先します。不要になった機器も一般ごみに混ぜず、自治体のルールや回収先の案内に従って適切に処分することが大切です。
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