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お金・住宅制度

「住宅取得等資金の贈与の特例」は申告が必要!贈与税が非課税になるための手続きを解説

贈与税は、年間110万円を超える贈与に対して課税されます。しかし、住宅取得等資金贈与の特例を利用すると、住宅取得等資金に対する贈与税の一部を非課税とすることが可能です。この特例は、父母や祖父母などの直系尊属から、自己の居住用住宅を新築、取得、または増改築等するための資金の贈与を受けた場合に適用されます。

本記事では、この特例の概要、適用要件、必要書類、申告手順について詳しく解説します。


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住宅取得等資金の贈与の特例の概要

住宅取得等資金の贈与の特例は、直系尊属から受ける住宅取得資金の贈与に対して適用される非課税制度です。
非課税限度額は、取得する住宅によって異なります。省エネ等住宅の場合は1,000万円、それ以外の住宅は500万円です。省エネ等住宅とは、「省エネルギー性能」「耐震性能」「バリアフリー性能」のいずれかの基準に適合する住宅用の家屋を指します。

特例制度を利用するには、一定の要件を満たす必要があります。

概要父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受け、自己居住用の住宅を新築、取得、増改築をした場合は、一定限度額まで非課税となる
非課税となる限度額

【省エネ等住宅の場合】1,000万円

【上記以外の住宅】500万円

受贈者の主な要件
  • 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること
    ただし、取得する住宅の床面積が40~50㎡未満の場合は合計所得金額1,000万円

※その他の要件は受贈者の要件で詳しく解説

取得する住宅の要件
  • 登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であること
  • 家屋の床面積の2分の1以上の部分が、受贈者の居住用の住宅であること

※その他の要件は取得する住宅の要件で詳しく解説

適用期限

令和8年12月31日までに贈与

令和5年12月14日に発表された「令和6年度 税制改正大綱」により、本特例の適用期間が令和8年12月31日まで延長されることが決定しました。

住宅取得等資金の贈与の特例を利用するための要件

住宅取得等資金の贈与の特例を利用するためには、受贈者(贈与を受ける人)および対象物件(取得する住宅)について、こちらの要件を満たす必要があります。

受贈者の要件

受贈者が満たすべき要件は以下の通りです。

  • 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子や孫など)であること
    ※配偶者の父母や祖父母は「直系卑属」に該当しません。(養子縁組をしている場合は除く)
  • 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること
  • 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること
    ただし、取得する住宅の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、贈与を受けた年の合計所得金額が1,000万円以下であること
  • 贈与を受けた時に日本国内に住所があること
  • 平成21年分から令和5年分までにこの特例の適用を受けたことがないこと(一定の場合を除く)
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与を受けた全額を充てて住宅を取得すること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること、または遅滞なく居住することが確実と見込まれること

取得する住宅の要件

新築、中古物件の場合

新築または中古物件に関する主な要件は以下の通りです。

  • 日本国内の住宅用の家屋であること
  • 新築または取得する住宅用家屋の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であること
    ※マンションの場合、登記簿上の床面積はチラシやパンフレットの記載されている床面積よりも小さくなります。40㎡に近い床面積の場合は注意が必要です。
  • 家屋の床面積の2分の1以上の部分が、受贈者の居住用の住宅であること
  • 取得した住宅が以下の1~4のいずれかに該当すること
    1.建築後使用されたことのない住宅用の家屋
    2.昭和57年1月1日以後に建築された中古住宅
    3.地震に対する安全性に係る基準に適合すると証明された中古住宅
    4.取得後に耐震改修を行い、耐震基準に適合することが証明された住宅
増改築の場合

増改築等の場合は、以下の要件を満たすことが必要です。

  • 増改築等後の床面積が40㎡以上240㎡以下であること
  • 工事が自己所有かつ居住している家屋に対して行われたものであること
  • 増改築等に係る工事費用が100万円以上であること
  • 増改築等の工事費用の2分の1以上が居住用部分の工事に使用されていること

これらの要件を満たす住宅用の家屋が、住宅取得等資金の贈与の特例の対象となります。

利用に当たっての注意点

この特例を利用する際には、2つの注意点があります。

1つ目は、贈与を受けた翌年の3月15日までに贈与を受けた全額を充てて住宅を取得しなければならない点です。さらに、翌年の3月15日までにその住宅に居住すること、またはこの日以後に居住することが確実であることも求められています。
建物の完成まで時間がかかる新築住宅では入居までに1年以上かかることもありますので、贈与を受ける時期に注意しましょう。

2つ目は、住宅を取得した翌年の2月1日~3月15日の期間に、贈与税の申告と納税を行う必要があることです。特例によって贈与税がかからない場合でも、申告は必要です。納税と申告は贈与を受けた「受贈者(贈与を受ける人)」が行います。
住宅取得等資金の贈与の特例に関する必要書類や、贈与税申告・確定申告の手順については後述します。

住宅ローン控除を受ける場合
住宅取得時に贈与以外の資金を住宅ローンから借り入れている場合は、住宅ローン控除の手続きも併せて行う必要があります。住宅ローン控除の適用を受けるためには、所得税の確定申告も必要です。
詳しい手続き方法等についてはこちらの記事で解説しています。

住宅取得をするための資金贈与については、こちらで詳しく解説しています。

最大1,000万円までの贈与が非課税に!住宅取得等資金贈与を解説
親から子への資金贈与は本来であれば、税金が発生するもの。しかし住宅購入に関しては「住宅取得等資金贈与の特例」が適用されます。消費税増税後は、最大3,000万円までが非課税の対象に。改正点の解説を交えながら拡充のポイントについてご紹介します。

住宅取得等資金の贈与の特例の申告に必要な書類

住宅取得等資金の贈与の特例を申告する際には、贈与税の申告書に加えて以下の書類が必要です。これらの書類により、特例の適用要件を満たしていることを証明することになります。

書類名取得先説明
受贈者の戸籍謄本または戸籍抄本市区町村役場受贈者の氏名、生年月日、および贈与者が受贈者の直系尊属に該当することを確認するための書類。戸籍謄本が難しい場合、戸籍抄本や住民票など、同等の情報を確認できる書類も可。
贈与を受けた年の合計所得金額の確証された書類(源泉徴収票等)勤務先受贈者の所得を証明する書類。源泉徴収票の他、確定申告書の写しなども可。
登記事項証明書法務局取得した住宅の所有権が受贈者に移転されたことを証明する書類。
新築に係る工事の請負契約書または売買契約書の写し不動産会社など住宅の取得や新築工事の内容、金額を確認するための書類。
耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書(耐震等級に係る評価が1・2・3のもの)の写し建築士
指定確認検査機関登録住宅性能評価機関
住宅瑕疵担保責任保険法人など
取得した住宅が耐震基準を満たしていることを証明する書類。新築の場合は建築確認申請書(確認済証)の写しでも可。

対象物件が省エネ等住宅の場合は、上記の書類に加えて以下のいずれかの書類も必要です。

書類名取得方法
住宅省エネルギー性能証明書建築士
指定確認検査機関
登録住宅性能評価機関
住宅瑕疵担保責任保険法人

以下の①と②の両方

①住宅性能証明書長期優良住宅建築等計画の認定通知書の写し
②住宅用家屋証明書(もしくはその写し)または認定長期優良住宅建築証明書
※ただし長期優良住宅建築等計画等の(変更)認定通知書の区分が「既存」である場合は、②の書類は除く

契約した不動産会社

以下の①と②両方

①低炭素建築物新築等計画の認定通知書の写し
②宅用家屋証明書(もしくはその写し))または認定長期優良住宅建築証明書

所管行政庁

省エネ等住宅の場合、追加で提出が必要な書類は、住宅が省エネ性能や耐久性能などの一定の基準を満たしていることを証明するものです。これらの書類を提出することで、非課税限度額が1,000万円になる要件を満たしていることを証明できます。

書類の準備には時間がかかる場合もあるため、早めに手続きを始めることをおすすめします。特に、省エネ等住宅の証明書類の取得には一定の時間を要することがあるため、注意が必要です。


贈与税の申告方法

贈与税の申告方法には、マイナンバーカードおよびe-Taxを使用する電子申告と、書類を税務署に直接提出する方法があります。e-Taxを利用すれば、インターネット経由で申告できるため、時間と手間を節約できます。

マイナンバーカードとe-Taxを使用した贈与税申告の流れ

マイナンバーカードを活用すると、e-Taxを通じてスマートフォンやパソコンから贈与税の申告が可能です。マイナンバーカード読取対応のスマートフォンとマイナンバーカードがあれば、より簡便に申告手続きを行えます。マイナンバーカードとe-Taxを用いた贈与税申告の手順は以下の通りです。

1.利用者別番号の取得

e-Taxで申告する際は、まず「利用者識別番号」を取得する必要があります。利用者識別番号は、16桁の番号で構成されるe-Tax利用のためのIDです。一度取得すれば、次回からの申告時に新たに情報を入力することなく使用できます。

利用者識別番号の取得方法には、マイナンバーカードを使用する方法のほか、税務署で発行されるID・パスワードを利用する方法があります。

2.電子証明書の取得

電子証明書はオンラインでの本人確認に使用され、e-Taxでの贈与税申告に必要です。電子証明書はデジタル空間での本人確認に利用されます。マイナンバーカードには電子証明書が組み込まれており、マイナンバーカードの取得時に暗証番号を設定すれば電子証明書が有効化され、各種手続きで利用可能になります。なお、暗証番号を忘れてしまうと電子証明書が利用できないので注意してください。

3. 電子証明書の登録

取得した電子証明書をe-Taxに登録します。具体的な登録方法は以下のとおりです。

  • e-Taxサイトにアクセスし、画面に表示される指示に従って操作を進める
  • スマホアプリを使う、もしくはパソコンにICカードリーダーを繋いでマイナンバーカードを読み取る

ただし、すでに暗証番号を利用してマイナンバーカード方式の登録をカード受取時に完了している方は、電子証明書の登録が不要です。

4.申告・申請データの作成

申告書の作成では、贈与者の情報や取得した財産の詳細を入力します。現金や預貯金、不動産など、財産の種類によって入力方法が異なるので注意してください。「住宅取得等資金の非課税の適用を受ける財産」を選択した後、新築あるいは増改築を選択して適用要件を確認します。

次に、非課税要件(省エネ等住宅かそれ以外か)を選択しますが、このとき、その年の所得税の確定申告を行っている場合は「確定申告書を提出した」にチェックを入れます。住宅取得等資金の贈与の特例を適用する場合は、追加の情報入力が必要です。住宅取得資金の金額が非課税適用を受ける金額を上回る場合は、「暦年課税」か「相続時精算課税」のいずれかを選択する画面が表示されます。

入力が完了すると、自動的に贈与税額が計算されます。計算結果を確認し、必要に応じて過去の申告状況も入力してください。最後に、申告内容を最終確認してからe-Taxで送信します。

申告書の提出後は、表示された納付金額と納付期限を確認し、選択した方法で納付手続きを行いましょう。なお、申告書の提出後に税務署から納付書や通知が送付されることはないため、自身で納付手続きを行う必要があります。

5.申告・申請データへの電子署名

申告・申請データが作成できたら、電子署名を付与する必要があります。電子署名はデータの改ざんがないことを証明するためのもので、付与により提出データの信頼性と正確性が担保されます。マイナンバーカードの署名用電子証明書に設定した暗証番号(半角の6文字から16文字の英数字)を入力することで付与されますが、後からデータ内容は変更できません。そのため、署名前にデータに誤りがないか十分に確認してください。

6.申告・申請データの送信と送信結果の確認

贈与税のe-Taxソフトの手順に従って、作成した申告・申請データを送信します。送信後はデータが税務署で正常に受理されているかどうか、送信結果を確認してください。送信後に誤りが見つかった場合は速やかに税務署に連絡し、必要な修正手続きを行います。

書類による贈与税申告の流れ

e-Taxを利用しない場合は、以下の手順に従って書類で申告を行います。

1.申告書の入手と記入

贈与税申告書を入手し、必要事項を記入します。申告書は税務署で入手するか、国税庁のホームページからダウンロードできます。

2.金額の記入

贈与を受けた金額を正確に申告書へ記入します。住宅取得等資金の贈与の特例を適用する場合は、特例適用額の計算に注意が必要です。

3.必要書類の準備、提出

申告書と必要書類の準備ができたら、管轄の税務署に提出します。直接持参して提出するほか、郵送での提出も可能です。不明点があれば、税務署や自治体の相談窓口に問い合わせましょう。

郵便で提出する場合
贈与税の申告書は郵送での提出も可能です。この場合、e-Taxで入力した申告書をダウンロードできます。郵送方法は簡易書留などを利用し、封筒に「贈与税の申告書在中」と明記して郵送してましょう。なお、申告期限内か否かの判断基準は郵便局の消印です。必ず確認すると同時に、紛失のリスクに備えて控えを保管しておくことをおすすめします。

まとめ

住宅取得等資金の贈与の特例は、一定の条件下で贈与税を非課税にできる制度です。適用には受贈者と購入物件の要件を満たす必要があります。申告には贈与税申告書のほか、戸籍謄本や登記事項証明書など複数の書類が必要です。申告方法には書類提出とe-Tax利用の2種類があり、e-Taxを使用すればオンラインで手続きが可能です。要件や手続きが複雑なため、不安な場合は専門家への相談も検討するとよいでしょう。

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