豊かな香りと味わいで、家の中に居ながらも気分をリフレッシュさせてくれるコーヒー。粉をお湯で溶くだけで飲めるインスタントコーヒーの手軽さもいいですが、一歩上を目指して「自分でコーヒーを淹れる」という生活を試みてはいかがでしょう?いつもの朝食、休憩、週末がさらに深みのある時間になります。
今回は初心者でも無理なく始められるハンドドリップコーヒーの淹れ方をご紹介します。
自宅でコーヒーを淹れる魅力とは?
コーヒー豆を選び、ミルで挽いて、ドリップする…忙しい毎日の中では、少し面倒に感じる作業かもしれません。しかし、手間をかけてこそ得られるものがあります。まずはコーヒーを手淹れする魅力を探ってみましょう。
本格的なコーヒーが気軽に飲める
根本的な魅力は、やはり「自宅で挽きたて、淹れたてのコーヒーを楽しめる」ということに尽きます。挽きたての豆から立ち上るフレッシュな香りと、じっくりとドリップされた奥深い味わいは、まさに格別です。
もちろん、カフェに行けばプロが淹れてくれたコーヒーをその場で楽しむことができますが、近くにお店がない、一杯の料金が高い、店内が混雑していてゆっくりできない、といった状況もあります。リモートワークや家事の合間に、自宅で本格的なコーヒーを手軽に楽しむことができれば、日常生活が一層豊かなものになるでしょう。
飲めるコーヒーの種類が広がる
スーパーに並ぶインスタントコーヒーは、種類に限りがあります。そのため、同じものを繰り返し購入するだけというご家庭もいらっしゃるでしょう。しかし、コーヒー豆という枠で選ぶとなると、専門店やカフェなど購入できる場が広がり、さらにさまざまな産地、焙煎方法が違うなど多彩な豆と出会うことができます。
淹れる時間がちょうどよい休憩になる
ハンドドリップに慣れてくると、コーヒーを淹れるのにかかる時間はだいたい10〜15分。休憩にはちょうど良い時間ですね。特に同じ姿勢でPC作業をしていた時には、ミルを回して、ケトルで注ぎながらドリップするという工程が意外と新鮮にも感じられることも。デスクワークや掃除とは違う所作、そして室内の空気を切り替えるようなコーヒーの香りで、ちょうどよいリフレッシュになるでしょう。
来客時に特別感を出せる
お友達が遊びに来る、近所に住む両親が孫を見に来る…というような形式張らない突然の来客。そんな時、立派なお菓子は用意できなくても、豆を挽いてじっくり抽出したコーヒーを出せたら素敵ですね。インスタントのコーヒーを出すよりも丁寧で、相手に気を遣わせない程度のおもてなしができます。
またゲストを招いてランチやディナーをする際は、ゲスト好みの豆を用意して食後に淹れれば、話の輪も広がります。
シチュエーションに合わせた特別感を出せるところも、手淹れコーヒーの魅力です。
ドリップコーヒーに必要な道具を解説
フレンチプレス、サイフォンなどコーヒーを淹れる器具は数種類あります。初めてであれば、最もスタンダードな方法のハンドドリップがおすすめ。ビギナーでも安定して抽出しやすく、「コーヒーを淹れている」という感覚を体感することができます。ここでは、ハンドドリップコーヒーに必要な道具を解説いたします。
ケトル
注ぎ口が湾曲し、細くなっているコーヒー用のケトルを用意しましょう。この独特な形状により、お湯を一定量でゆっくりと注ぐことができます。コンロの直火でお湯を沸かすケトルのアナログ感もいいですが、電子ケトルも便利。お湯が沸くスピードが早く、温度設定もできるという機能性を持ち合わせています。ただ電源が必要で据え置きするのが一般的なので、キッチンのコンセント口周辺にスペースを必要とします。
ドリッパー
ドリッパーは主に台形タイプと円錐タイプの2種類があります。素早くドリップされる円錐タイプはコーヒーの豆の特徴を引き出し、ある程度お湯を溜めてからゆっくりドリップする台形タイプはまとまりのあるバランスの取れた抽出ができると言われています。まず手初めに用意するなら、台形タイプがおすすめです。
なおドリッパーの素材による味の違いはほとんどありません。主に保温性や価格、耐久性などに違いがあります。
素材 | メリット | デメリット |
プラスチック |
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陶器(セラミック) |
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金属 |
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フィルター
フィルターはドリッパーの形にあったものを選ぶのが鉄則。台形のドリッパーを使うなら、台形のフィルターを用意します。一般的に使用されるのが紙のフィルター(ペーパーフィルター)です。紙のフィルターには、茶色のものと、漂白された白いものがあります。茶色のフィルターを使用した場合はわずかに紙のにおいも抽出されるので、気になる方は白いフィルターを使ってみましょう。
サーバー
ドリッパーの下で抽出されたコーヒーを受け取るのがサーバーです。ガラスのサーバーはコーヒーが落ちていく様子を見ることができ、そのまま食卓へ置いても様になりますね。実用性を重視するなら、保温ポット型のサーバーにしてもよいでしょう。キャンプなどで持ち出すようであれば、保温型で丈夫な素材のものは活躍します。
電子スケール
豆やお湯の量を測るために必要なのが電子スケール(はかり)です。豆とお湯の微妙な量の違いで、コーヒーの濃さは大きく左右されます。コーヒー豆用の計量スプーンを使ってもいいのですが、メーカーによって1匙の量にばらつきがあり、豆を掬った際に隙間ができてしまうという欠点があります。またサーバーに落ちてきたお湯とドリッパーに残っているお湯の合計量を測るには、やはり電子スケールを使うのが確実です。
抽出時間やドリップのスピードが計測できるコーヒー専用の電子スケールもありますが、ご自宅にあるキッチン用の電子スケールでも十分です。その場合は、ドリッパーやサーバーを乗せても安定しているかを確認しましょう。
コーヒーミル
コーヒーミルは手動と電動のタイプがあります。
手動は「挽く」という手作業の醍醐味をしっかりあじわうことができ、自分でコーヒーを淹れていることを強く実感できます。木製のコーヒーミルであれば、キッチンに置くとちょっとしたインテリアにもなるでしょう。
電動ミルは多めの量を短時間で挽くことができます。ただし挽くときにかなり大きな音が出るものもあり、家族が寝ている朝にコーヒーを一杯…というシーンではかなり気を遣うことも。購入時には音の大きさなどもチェックした方がよいでしょう。
ミルを用意する、自分でコーヒー豆を挽くということにハードルの高さを感じるようであれば、お店で挽いてもらうこともできます。
コーヒー豆の保存容器
コーヒー豆は水分やにおいを吸収する性質があります。また酸化によって風味も大きく変化していきます。焙煎直後の鮮度を極力保つためにも密閉できる容器で保存しましょう。蓋にシリコンのパッキンなどが付いているものがおすすめです。
コーヒー豆の選び方
コーヒー豆専門店へ行くと、実にたくさんの種類の豆が並んでいますね。特に初めてコーヒー豆を購入する際は、数ある種類の中からどれ選べばよいか迷ってしまうことでしょう。コーヒー豆の産地や焙煎方法による特徴をある程度知っておくと選びやすくなります。
産地(銘柄)による特徴
ほとんどのコーヒー豆が、産地=銘柄となっています。栽培された土地によって、コーヒーの風味に違いが生まれます。紹介しきれないほどたくさんある銘柄の中で、代表的なものとその特徴をあげてみましょう。
産地・銘柄 | 特徴 |
ブラジル、コロンビア | 香り・コク・苦味のバランスがよい。ミルクを入れて飲む場合におすすめ。 |
ブルーマウンテン(ジャマイカ) | 深いコクがあるが、口当たりがまろやかで、ほどよい酸味を持つ「コーヒーの王様」。栽培される場所が限定されており高級品。 |
マンデリン、トラジャ(インドネシア) | 酸味が少なく、深みのある苦味やコクの印象が強い。 |
モカ(エチオピア、イエメン) | かつてコーヒーを出荷していた「モカ港」が銘柄の由来。良質な酸味と甘みを持ち「コーヒーの貴婦人」と称されている。 |
グアテマラ、エチオピア | 花のような香りを放ち、酸味のあるフルーティーな味わい。 |
ブレンドとストレートの違い
コーヒー豆のパッケージに「ブレンド」と書かれたものが多いと思います。ブレンドとは、いろいろな産地の豆を混ぜ合わせて、安定した味を作り出したもの。スーパーに並んでいるコーヒー豆のほとんどがブレンドです。
一方、ブレンドしていないものを「ストレート」と言います。1種類のコーヒー豆だけで構成されており、「シングル」「ピュア」とも呼ばれます。その豆の個性を強く味わうことができますが、ブレンドよりも価格が高め。ストレートのコーヒーは、特別な時に淹れるような存在です。
焙煎の度合いによる違い
焙煎の度合い(長さ)によって変わるのが、主に酸味と苦味。生豆から焙煎していくと、最初の段階で酸味が形成され、さらにしっかり火を通していくと苦味が強くなります。
焙煎の度合い | 特徴 |
浅煎り (シナモンのような色) | 苦味が出る前に焙煎をやめるので、酸味が引き立つ。爽やかさがあり、フルーツを使ったスイーツなどに合う。 |
中煎り (少し明るめの茶色) | 苦味、酸味のバランスが取れており、豆本来の特徴を味わえる。市販の豆のほとんどが中煎り。ハンドドリップを初めたばかりの方が淹れるにもおすすめ。 |
深煎り (ツヤのある茶〜黒褐色) | 苦味のあるしっかりした味わい。酸味の強い豆は、深煎りすることで酸味を和らげることができる。ミルクを入れてカフェオレにするにもぴったりで、目覚めや食後の一杯に最適。 |
ハンドドリップコーヒーの淹れ方
道具、コーヒー豆が揃ったら、ハンドドリップでコーヒーを淹れてみましょう。今回は、初心者にも始めやすい台形ドリッパーとペーパーフィルターを使用した淹れ方をご案内します。
ケトルでお湯を沸かす
器具の湯通しにも使用するのでたっぷりとお湯を沸かす。コーヒーの成分を抽出しやすい温度は92〜96度くらい。温度設定ができないケトルを使用する場合、沸騰して火を止めてから1分くらいたったものが95度前後なので、そのタイミングを目安にする。
フィルターをドリッパーに乗せる
ペーパーフィルターの端(繋ぎ目)を折る。底側を折り上げたら、裏返して横側を折る。折った状態でフィルターを開いて、ドリッパーに乗せる。(折ることでドリッパーにフィットする形になる)
フィルターとドリッパーを湯通しする
フィルターを乗せたドリッパーをサーバーにセットし、お湯をかける。全体を湿らせる程度にかけ、サーバーにポタポタと少しお湯が落ちるくらいでOK。サーバーに落ちたお湯は捨てる。(湯通しすることで、コーヒーの温度を保ち、フィルターに微かに残る紙のにおいを除去する)
コーヒー豆を計量する
コーヒー豆はお湯100ml当たり8g。使うマグやカップ、飲む量、人数に合わせて計量する。
コーヒー豆を挽く
ミルの挽き目の調整をし、豆をセットする。ペーパーフィルターでドリップするなら、中細挽き(グラニュー糖ぐらいの粒)が最適。(ペーパーフィルターで粗挽きのコーヒーをドリップすると成分が十分に抽出されず、細挽きだと雑味が出てしまうことがある)
手動のミルを回す際は、粒の大きさを均一にするためにも一定の速度で最後まで回す。またミルの内部の隙間に豆が残ってしまうことがよくあるので、軽くミルを揺すって、計量した豆すべてを挽くようにする。
電動ミルの場合はスイッチを入れるだけのもの、本体を振りながら挽くものなどがあるので、メーカーや機種の使用方法に合わせて挽く。
コーヒーの粉をフィルターに入れる
湯通ししたフィルターの上にコーヒーの粉を全て入れる。ドリッパーごと左右に2、3回揺すり、粉の表面を平らする。(平らにすることで、お湯が粉全体に行き渡る)
お湯を3回に分けて注ぐ
電子スケールにサーバーを置き、その上にドリッパー(フィルターと粉をセットしたもの)を重ねる。重量ゼロにリセットして、お湯を3回に分けて注ぐ。(各回、目的や注ぎ方が違う)
1回目:蒸らし
電子スケールで確認しながら、ドリップしたい量の2割分のお湯を注ぐ。コーヒーの上に “の”の字を書くようにゆっくりと回しながら注ぐ。注いでいるお湯が直接フィルターにかからないよう注意する。注ぎ終わったら、そのまま約20秒蒸らす。(蒸らすことで、コーヒーの成分がスムーズに出るようになる)
2回目:抽出
蒸らしと同じ湯量を注ぐ。コーヒーの中心部に500円玉くらいの円を描くように蒸らしよりも少しスピードを上げて回し入れる。
3回目:抽出
2回目と同じ要領で残りのお湯を注ぐ。湯量が多いので、スピードを上げすぎてお湯がフィルターの上部から溢れ出ないよう気を付ける。スケールを確認して注湯をストップし、ドリッパー内のお湯が落ち切ったら完了。
以上が基本的なハンドドリップの一例です。ハンドドリップについては、コーヒー専門店やコーヒー機器メーカー、さらには個人によってこだわり抜かれた幾通りもの淹れ方があります。今回ご紹介した方法をベースに、いろいろな淹れ方を試して味の違いを楽しんでみてくださいね。
まとめ
コーヒーを自宅で淹れることは、美味しい一杯を楽しむ以上の価値があります。ミルを回すリズミカルな手仕事、注湯する際の集中力を通じて、慌ただしい日常に心地よい休息をもたらしてくれるでしょう。
自分でコーヒーを淹れるようになると、コーヒーショップを巡ったり、焙煎所を訪れる旅をしたりと、新しい探究心が芽生えることも。ハンドドリップの習慣が導いてくれる豊かな時間もじっくり味わってくださいね。
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