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マンションの鳥対策。季節ごとに気をつけておきたいポイント

山里の減少や都市の緑化などによって、近年では街中でも野鳥の姿を多く見かけるようになりました。静寂の中に聞く鳥のさえずりは心癒されるものですが、都市環境に順応した野鳥による生活被害も散見されます。特に外敵からの影響が少なく空から直に飛び込めるマンションは、鳥にとっては格好の“街の止まり木”。一度安全と認識した場所に住み着く習性の鳥もいるため、対策が必要です。

今回は、主要な鳥の特性をもとに、マンションの暮らしで日ごろから気をつけておきたい対処法や季節別の野鳥との対策をご紹介します。


住宅街に住む代表的な野鳥とその生態

「鳥」とひとくちに言っても、その種類や生態はさまざま。日常で見慣れた鳥も、名前こそわかっていても、その暮らしぶりまで知っている人はあまり多くないのではないでしょうか?
都市部でよく目にする鳥の中でも、マンションへ頻繁に飛来する鳥を改めて見てみましょう。

スズメ

昔から人との関わりの深いスズメは、田畑の害虫を捕る益鳥として親しまれてきました。繁殖期は3〜9月で、人家の屋根、壁などの隙間、街路樹のくぼみなどに、わらくず等を敷いて巣を作り、年に1〜3回繁殖します。夏から秋には竹林やヨシ原などに集まって眠りますが、冬にかけて分散しコロニー(自らを守るために同種が多数集まって生活している状態)は小規模になります。
農業においては秋に種の食害がありますが、都心においては群がりによるフン害や鳴き声による騒音被害が出ています。

ムクドリ

茶色の体に、橙色のくちばしと脚が際立つムクドリは、全長24cm前後の小さな鳥。数百から数万羽が集まって街路樹などをねぐらにします。繁殖期は3月下旬〜7月。人家の戸袋など建物の隙間や木の“うろ”に巣を作り、年に1〜2回繁殖します。
近年では街中の緑地や街路樹をねぐらにするようになったことから、住宅街への被害も出てきました。夕刻に大群で空を旋回する様子が不穏であったり、バルコニーへのフン害であったり、鳴き声が群れによって騒音となったりと、住宅街での害が各地で問題になっています。

ハト

野生のハトのうち、都市部に多く生息するのはドバトです。ドバトは飼い鳩が野生化したもの。繁殖期は、北日本では4〜10月、西日本や都市部では1年中繁殖し、もともと崖などを好む習性があり、建造物や橋げたなどの高所に小枝を組んで巣を作ります。
特に都市部では、マンションのバルコニーでの営巣によるフン害や鳴き声の騒音といったトラブルが発生しています。

カラス

日本には数種のカラスが生息していますが、都心の暮らしに順応しているのは主にハシブトガラスです。秋から冬には背の高い樹木の林地などをねぐらにし、繁殖期となる3〜7月には樹上や高圧鉄塔などの見晴らしのいい高所に、枯枝や針金などを使って巣を作ります。肉食の傾向が強い雑食のため、生ゴミを荒らす害が多く見受けられますが、自然界においては森の生態系を陰で支える「スカベンジャー(腐肉食動物)」の役割を果たしています。

ヒヨドリ

ヒヨドリは、日本全国で1年中見ることができる全長約28cmの灰色の鳥。繁殖期は5〜9月。巣は地上1〜5mの葉のよく茂った樹木の枝に作ります。繁殖期にはつがいごとに分散して暮らしますが、冬期には数羽から100羽以上が集まりコロニーを形成して過ごしています。小柄な体に反して大きな甲高い声のため、都心部では騒音となっている場合もあります。


通年気をつける鳥対策

人間の暮らしに身近な鳥たちですが、元来警戒心の強い生き物です。そのため、外敵から襲われる可能性が少ない場所を選んで飛来します。
諸説ありますが、人里で人間と共生してきた野鳥は、天敵であるヘビや大型の猛禽類が嫌う人間のそばにいることで安全を確保してきました。その名残もあるのか、人の暮らしの変容とともに鳥たちもまた都市の構造に順応し、高層マンションやビル群にも飛び交っています。野鳥を近寄らせないようにするには、日ごろからの対策が欠かせません。

近寄らせないための対処法

野鳥には行動パターンがあり、個体や群れによってよく留まる場所、飛来する時間帯などが決まっていることが多いそうです。そして一度安全だと認識すると、同じ場所へ何度も訪れます。
特にマンションの場合、最も鳥が飛来するのが、バルコニーです。壁に囲まれているバルコニーは、外敵から身を守るには最適な環境。逆にいえば、バルコニーを鳥にとって“居心地の悪い”空間づくりをすることで、鳥が近寄る因子を減らすことができます。

清潔にしておく

こまめにバルコニーを掃除しましょう。
人に慣れているとはいえ、人の出入りが頻繁にあると鳥は警戒してあまり近寄りません。バルコニーに出ていることはもちろんですが、手入れがされている状態でも気配は伝わります。埃がたまっていたり、汚れたまま放っておいたりせず、定期的な掃き掃除やゴミ捨てを心がけてください。エアコンの室外機の間や、排水溝の周辺など鳥が身を潜めやすい隙間は、とりわけ入念にきれいにしておきます。

物を放置しない

バルコニーが物置になっていませんか?

ちょっとした隙間にも身を隠して営巣してしまう場合があるので、不用品を置いて放って置かないようにしましょう。ガーデニングで使わなくなった鉢は、そのままにしておくと格好の砂浴び場になってバルコニーが砂だらけに……。排水管の詰まりの原因にもなりかねないので、カバーをかけるなど飛来対策をお忘れなく。

忌避剤を設置する

鳥が嫌う臭いや感触の忌避剤を使って、バルコニーへの飛来を防ぎます。
防鳥ネットや鳥除けスパイクといった物理的な防鳥も効果的ですが、マンションでの設置は外壁に傷をつけかねないことから、管理規約によって制限されている場合があります。規約を確認してから、設置を検討しましょう。

フンで汚れたときの対処法

フンが落ちている空間は鳥がいた証拠。鳥がいたということは、鳥にとっては安全な場所という認知になり、ほかの鳥まで留まるようになってしまいます。被害が小さいうちに早めに取り除かなければいけません。乾燥したフンを削り落とすと、細かくなって飛び散ったフンを吸い込む事によって、感染症やアレルギーから間質性肺炎を引き起こすおそれも。飛散しないよう安全に除去しましょう。
雨上がりに作業をすると、落としやすいですよ。

<用意するもの>

  • ビニール製手袋
  • スポンジ
  • マイクロファイバークロス
  • バケツ

<手順>

  1. ビニール製手袋は装着しておく。バケツに水を汲む。
  2. スポンジにしっかりと水分を含ませる。
  3. スポンジをフンの上に乗せ、10~30秒ほど置いてから軽くこする。落ちない場合は2~3を繰り返す。
  4. マイクロファイバークロスで残った水分を拭き取る。
  5. 汚れた水は屋外の排水溝で少しずつ流す。

季節別の鳥対策

鳥の種類の紹介でも触れたように、鳥の多くは繁殖期には産卵・子育てのために営巣し、それ以外のときは“ねぐら”で生活します。そのため、すべての鳥が一度作った巣に年中住み続けているわけではありません。また、季節によってねぐらを変えたり渡りをしたりする鳥もいるため、鳥対策は闇雲に行うよりも、鳥の生態に合わせるのが効果的です。活動が活発な春夏秋でそれぞれ対策を講じていきましょう。

晩冬~春 バルコニーでの巣作りに注意!

マンションの鳥にまつわる最大のトラブルは「巣」。営巣対策は繁殖期初頭の晩冬~春先にかけて対策しましょう。
営巣による害は、飛来やヒナによる騒音、フン等の汚れのほか、鳥が媒介する病原菌やノミ・ダニといった寄生虫によってヒトの健康にまで及ぶことも。さらに一度巣ができると、産卵場所として長く住み着いたり、帰巣したりといったことが起こり、鳥害が続くおそれがあります。そのため、巣を作らせないことが重要です。
住宅街に住む野鳥の繁殖期は3月〜7月に集中しています。巣作りの場所を探し始める2月末~3月から、注意するようにしてください。

注目する場所

鳥は飛来しやすく、かつ姿を隠しやすいスペースに巣を作ります。
マンションでは、バルコニーの隅壁とエアコンの室外機の隙間高所のウォールライトの上電気やガスのメーターボックスの中、が好まれるようです。庭がある場合は、2m以上の植木の高所植木の高所にできたくぼみ、といった場所にも目を配りましょう。

ハンガー泥棒に注意!

洗濯物を干す際、ハンガーは上からもしっかりと固定しましょう。繁殖期のカラスは、ハンガーを巣作りの素材として集めます。針金ハンガーだけでなく、プラスチック製のハンガーも標的となるので、要注意。知能の高いカラスは、洗濯物を落としてハンガーだけを取って行ってしまうこともあります。風に飛ばされにくい穴にハンガーを通すタイプの物干し竿でも、スルリと穴からハンガーを抜いていくので、洗濯バサミで固定するのが得策です。

もし巣を作られてしまったら、ヒナが巣立ってから撤去を

期せずして巣が作られてしまった場合は、ヒナが巣立ってから巣を撤去します。というのも、ヒナがいる状態で巣を取り壊すと、鳥獣保護法に抵触してしまうから。鳥害があるとはいえ、野鳥を駆除するには自治体に必要書類を提出して許可を得る必要があり、申請なく駆除することはできません。

巣を発見した折には、巣立ちを終えたタイミングで、感染症や呼吸疾患対策として、ゴム手袋とマスクを装着して作業をします。撤去した巣は埃やウィルスが飛び散らないよう、ビニール袋に入れて封をし、自治体の指定に則って処分をしてください。

初夏 飛来するツバメの巣対策

住宅に巣をつくる鳥といえば、ツバメです。日本に渡来する種は東南アジアから繁殖のために毎年3月下旬から4月上旬ごろにやってきて、9月中旬から10月下旬になると再び東南アジアへと渡ります。代表的な夏鳥のひとつです。地域にもよりますが、5月末頃から巣作りを始めるため、巣が作られそうな軒先の壁と天井付近梁の周辺に巣を作らせない事前対策をしましょう。

忌避剤を塗布するほか、マスカー(養生シートとマスキングテープが一体となった養生資材)を貼って巣の素である泥が付着しづらくする方法もあります。

前年に作られてしまった巣を掃除する

もし前年に巣を作られてしまっていたら、巣を撤去した後に跡が残らないよう、入念に掃除をしましょう。
ツバメの巣は、唾液の混じった泥に藁などを混ぜたもので作られています。この泥だんごはいったん乾燥すると耐久性が増し、雨が当たらないと何十年も付着して離れません。古巣が残っていると、新たなつがいが再利用したり、跡から安全な場所と認知して新しく作ったり……と、また次の世代のサイクルにつながる可能性があります。
巣を撤去したら、水でしっかり痕跡を落とすこともセットで覚えておいてください。

秋 人気のバルコニー菜園での防鳥

バルコニーでのガーデニングを楽しむ方が増えていますが、果樹や野菜など、プランター菜園を手掛けている方は、鳥に食べられないよう対策が必要です。

種を植えるときは浅くならないよう注意

種をまく際は、鳥に食べられないよう、十分に土をかぶせます。程よい温度でバルコニーや庭を暖かく保ち、日照時間が長い秋はバルコニー菜園には絶好の季節です。葉物野菜や、春収穫の作物の種まきをしても、深さが浅かったり土がきちんと被っていなかったりすると、目ざとい鳥が掘り起こして食べてしまいます。特に、マメ科のソラマメやエンドウマメは鳥の好物なので気をつけましょう。

葉や実を守るためにネットを

プランターには、防虫・防鳥ネットを張って食べられないようひと手間加えるのがおすすめです。せっかく手塩にかけた収穫物が、鳥に横取りされては残念ですよね。甘い果実や新芽、葉物野菜はヒヨドリに、採種を待つ実はスズメに特に狙われやすい傾向にあります。ネットやカバーを適宜取り入れて、鳥による食害を防ぎましょう。


まとめ

スズメ、ムクドリ、ハト、カラス、ヒヨドリの住宅街に住む代表的な鳥の紹介と、通年行うマンションのバルコニーでの鳥対策、季節に合わせた鳥対策を解説しました。
バルコニーを常に清潔に保つこと、鳥のフンの除去方法、巣の撤去は巣立ちの後にすること、といった要点を押さえた対策で、野鳥との共存を図りつつ快適な生活環境を維持していきましょう。行き交う鳥たちと四季を感じながら、マンションライフを楽しんでくださいね。

【参考サイト】

環境省自然環境局野生生物課鳥獣保護管理室『野生鳥獣の保護及び管理』

農林水産省『鳥類の具体的な対策について』

東京都環境局 鳥獣保護管理対策

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