色鮮やかに朝顔や凌霄花(ノウゼンカズラ)の花が咲き始め、海開きが行われるなど、本格的な夏の到来を感じさせるこの月。そんな7月の暮らしの歳時記を紹介します。
目次
7月の和名「文月」の由来
梶の葉に和歌をしたためてお祀りする「七夕」の行事にちなんだ「文披月(ふみひらきづき)」が転じたものと言われています。
また、稲穂が膨らむ時期であることから「穂含月(ほふみづき)」という意味である、という説もあります。
7月なのに、もう稲穂が膨らむの?と思うかもしれませんが、旧暦7月は現在の8月中旬から9月ごろに該当します。暑いながらも秋の気配を感じるころ。本来の文月はそんな季節なのです。
2019年7月の暦と行事
夏至 | 1日 | 小暑 | 17日 | ||
2日 | 半夏生、うどんの日 | 18日 | |||
3日 | 19日 | ||||
4日 | 20日 | 夏土用入り | |||
5日 | 21日 | ||||
6日 | 22日 | 夏土用の間日 | |||
小暑 | 7日 | 小暑、七夕 | 大暑 | 23日 | 大暑 |
8日 | 24日 | ||||
9日 | 25日 | ||||
10日 | 26日 | ||||
11日 | 27日 | 土用の丑の日 | |||
12日 | 28日 | ||||
13日 | 29日 | 夏土用の間日 | |||
14日 | 30日 | 夏土用の間日 | |||
15日 | 旧盆、海の日 | 31日 | |||
16日 |
7月7日の小暑から立秋(2019年は8月8日)の前日までが「晩夏」。現代の感覚ではまだまだ夏の入り口に立ったばかりだというのに、暦の上の話とはいえ、すでに夏が終わりかけているというのは不思議な気分です。
「土用」は雑節のひとつ。土公神(どくじん)という土を司る神様が支配する期間とされ、土を動かす作業(土いじり、地鎮祭、井戸掘りなど)を忌む習慣です。とはいえ、18日もの間それが続くのは、さすがに実生活に影響が出ますよね。そこで土公神が地上を離れる日=「間日」を設け、その日は作業をOKとしました。
ちなみに土用は年4回あり、立春・立夏・立秋・立冬の直前の約18日間がその期間です。
今月の味覚│夏の「色」を味わう
日射しが強くなってくるこの時期、花や木などの色がより深く、鮮やかに映えるようになります。空は濃いコバルトブルー、そこにかかる真っ白な入道雲。
高コントラストで彩度の高い、色が溢れる季節ならではの味わいを紹介します。
乾いた大地を思わせる、アースカラーの和カクテル
暑くなってくるこの時期にオススメしたいのが、みりんを使った和カクテル。
調味料としてのイメージが強いので「みりんって飲めるの!?」と驚く人も多いですが、みりんは室町の昔から(諸説あり)甘口の高級酒として親しまれてきたもの。特に江戸時代には、暑気払いや夏バテ防止を兼ねた夏の飲み物の代表でした。
丁寧に醸造されたみりんは、とろりとした琥珀色をしています。シェリー酒を思わせる複雑な甘みは、麹菌がもち米のデンプンを糖化したもの。お砂糖のストレートな甘さとは違う、余韻のある味わいが特徴です。
そんなみりんはロックやソーダ割りでストレートに味わうほか、カクテルのように他のお酒やフルーツ、ハーブと合わせても美味しくいただけます。
まずは入手しやすいレモンがオススメ。レシピも、みりんとレモン果汁を合わせてソーダ水で割るだけと、とてもお手軽です。あればミントの葉を飾ると、見た目もグッと涼しげになりますね。甘さが気になる人は焼酎を加えても◎。ちなみにみりんと焼酎を半々に合わせたものは、江戸時代に「本直し」(上方では「柳蔭」)と呼ばれた一般的な飲み方です。
ほかにも、スライスした生姜を数日漬け込んでおいたものをソーダ水で割ったり、ミントシロップとライムを合わせてモヒート風にしたりと、バリエーションは無限。料理に使うだけではもったいない「みりん」を夏の新定番にしてみてはいかが?
購入時はラベルに書かれた原材料に注目
飲んで美味しい「本みりん」を選ぼう
和カクテルを楽しむためのみりんは、必ず「本みりん」で。
実はスーパーなどの店頭に並んでいるみりんには2種類あって、アルコール分1%未満の「みりん風調味料」とアルコール分14%前後の「本みりん」があります。前者はお酒ではなく、水あめなどの糖分や塩・化学調味料等で味を調えた、歴とした調味料。売り場が違う(調味料コーナーとお酒コーナー)ことが多いので間違う心配は少なそうではありますが、念のために注意を。
では「本みりん」ならどれを選んでも美味しく飲めるかというと、そこも注意が必要です。見分けるには、ラベルに書かれた原材料に注目。
飲んで美味しいみりんは もち米・米麹・米焼酎 だけで作られたもの。もしここに続けて醸造アルコールや糖分・塩の名前が並んでいたら、お酒として楽しむためのみりんではありません。
- お酒は20歳になってから
- 車を運転する予定の人には、絶対にお酒をすすめない・飲ませない
目にもジューシーな、トロピックカラーのスイーツ
ホテルのパティシエがつくる7月限定のドルチェは「ヨーグルトのスムージーと 夏のフルーツポンチ」。
こっくりしたヨーグルトスムージーと、マンゴーを中心とした季節のフルーツをシロップに浸したフルーツポンチの両方を、一気に楽しめるドルチェです。
フルーツの酸味を活かして、甘さをごく控えめに仕上げたフルーツポンチには、マンゴー・パッションフルーツ・メロンのゼリーが入っていて、キラキラ華やか。
果汁感のあるフルーツと、フルフルむっちりしたゼリーの食感の違いも楽しい一品です。
甘めに仕上げたヨーグルトスムージーと別々に食べるのはもちろん、スムージーにフルーツポンチを混ぜてしまっても、ディップしながら食べてもOKと、好みに合わせた自由なスタイルを楽しめるのも楽しいポイントです。
さらに今月は、瀬戸内の太陽と潮風に育まれたレモン果汁を使った、瀬戸内レモンスカッシュもオススメ。
爽やかな香りと柔らかな酸味は、気分を晴れやかにしてくれます。シュワシュワはじける炭酸の泡と、淡いレモンイエローの組み合わせも可愛い、夏にぴったりのビバレッジですね。
撮影協力:リーガホテルゼスト高松 ARGO
香川県高松市の中心市街地に位置し、地元の人にも愛されるシティホテル「リーガホテルゼスト高松」。その1階にあるARGO(アルゴ)は、ゆったり落ち着いたインテリアの中で、豊かな香りが自慢のコーヒーを愉しむ空間です。
今月のオススメ│夏の暑さに負けない「養生」
梅雨も明け、いよいよ炎暑の時期を迎える今月は、夏の暑さに負けない工夫をしたいところ。
住まいを夏向けに整えたり、エアコンのお手入れをしたりするのも大切なことですが、まずは夏を元気に乗り切るための体力を養いましょう。
古来から7月には、養生のための習慣が根付いています。
半夏生(2019年は7月2日)と、うどんの日(7月2日)
半夏生は夏至から数えて11日目ごろ。あるいはその日からの5日間のことを指します。
ドクダミ科の植物「ハンゲショウ」の葉が白くなり、農家では田植えや畑仕事が一段落する時期です。
この時期は天から毒気が降るとされ、井戸に蓋をしたり農作業をお休みする風習がありました。つまり、農繁期後の休息の時期でもあったわけですね。
湿度も温度もぐっと上がる季節の変わり目のこの時期は、身体がまだ慣れていないことから体調を崩しがち。仕事が一段落したと思ったら、無理をせず休もうという意識が昔からあったわけです。
ちなみに、半夏生までに田植えを終えた農家は、この日の天気で農作物の出来を占ったそうですが、同時に豊作を願って神様に食べ物を捧げる日でもあったようです。そのため、関西地方では蛸を、福井県(一部)では鯖を食べる習慣がうまれました。
なお、アルファジャーナル編集部のある香川県では「うどん」を食べる風習があります。
小麦の収穫時期は6月。この小麦を使って打ったうどんで収穫を祝ったのが、この風習の始まりです。
さらに、そのうどんを農作業を手伝ってくれた人たちにも振る舞ったことから、田植えを終える半夏生の頃にうどんを食べる習慣が定着したそう。1980年には、本場さぬきうどん協同組合が7月2日を「うどんの日」と定めていますよ。
暑くてなんだか食欲がわかない……そんな時には、さっと用意できてツルッと食べられるおうどんがオススメ。しっかり食べることも養生の基本です。
土用の丑の日(2019年は7月27日)
夏の土用は暑さの厳しい時期であることから、特に十二支の丑の日に当たる日を「土用の丑の日」と呼んで、養生する日にあてられました。
土用の丑の日といえば誰もが鰻を思い浮かべますが、実際は「う」のつく食べ物(瓜・うどん等)ならなんでもよい様です。
ほかにも、お灸を据えたり(土用灸)、薬草を入れた湯につかったり(丑湯)するのも有効なのだとか。先人の知恵に倣って、この日はゆったりと自分の身体をメンテナンスする日にしてみましょう。
実は夏こそ湯船にゆっくり浸かるべき。
気付かないうちに冷房で冷えてしまった身体を温め、汗をかいた肌の汚れをしっかり落としてトラブルを防ぐには、湯船に浸かることが効果的なのです。夏はシャワーだけで済ませているという人も、たまにはゆったりお湯にたゆたってみませんか。
どうしても面倒くさい、という人には足湯がオススメ。
足湯ならリビングなどで本を読んだりテレビを観ながらできるので、手軽なリラックスタイムにぴったり。深めのバケツやフットバスさえあればすぐにできるのもハードルが低くてよいですね。
それに足湯なら、湯船のように給湯器の傷みを気にすることなく、好きな入浴剤がつかえます。せっかくなので、庭やバルコニーで育てたフレッシュハーブ、エッセンシャルオイルで香り付けしたバスソルト(大さじ1〜2にオイル5滴程度を馴染ませたもの)を薬草に見立てて、丑湯と決めこんでみませんか。
次回の「くらしの歳時記」は8月葉月編。
お楽しみに!