涼を感じる。五感で楽しむ。夏を快適に過ごすアイデアとインテリア

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初夏の風を感じる新緑の季節。
重い冬の服を脱いだら、インテリアもそれに合わせた爽やかなものに替えたくなりますね。インテリアショップでもマリンモチーフや夏の風情を感じるアイテムが増えてきて、本格的な夏の到来が待ち遠しくなってきます。

一方で日本の夏は高温多湿。
特に近年ではヒートアイランドの影響もあって、不快で過ごしにくい日々が続くことも。

そんな夏の暑さをしのぐため、日本人は昔から工夫を重ねてきました。
高気密・高断熱の住宅が増え、常にエアコンでの室温管理が当たり前になった現代では忘れられがちな伝統的な「夏の暮らし方」。今年はそのワザを取り入れて、夏を楽しみながら涼しく過ごしてみませんか。

夏を涼しく過ごす部屋のしつらえ「夏座敷」

「夏座敷」という言葉をご存知でしょうか。
襖や障子を開け放して風通しを良くし、室内や調度類を夏向けに整えた座敷のことです。
近年では、ファブリックやインテリア小物で雰囲気を変える程度で、しつらえそのものを夏向きに変える人はそう多くないかもしれません。でも夏座敷は、湿度の高い日本の夏を涼しく過ごすために考えられた生活の知恵。エッセンスだけでも取り入れてみましょう。

まずは見た目をスッキリと

部屋が乱雑だと暑苦しく感じるものです。
逆に整理整頓されて、物が少なくスッキリした部屋は、それだけで冷涼感を感じるから不思議です。
細々とした物をカゴやケースにまとめたり、部屋の4隅に空間をつくって抜け感を演出したりと、スッキリした印象の部屋に整えてみましょう。

風の通り道をつくって体感温度を下げる工夫を

窓の前にソファや棚を置いて風の通りを遮っていませんか?
風を感じると体感温度はぐっと下がります。
窓から入る風が室内を充分に循環できるように、家具の配置を見直しましょう。

また、風は窓を2箇所以上開放しないと通りません
1箇所しかない場合は、玄関を少し開けたり換気扇を付けたりして、風が通る工夫をしましょう。もっとも風が通るのは、東西や南北など、対面になる窓を開けた時です。

自然のチカラを利用して、熱を遮る&抑える

夏の室温上昇の要因は、約70%が窓から入る熱と言われます。風通しを邪魔しない日よけで夏の日差しを和らげましょう。
昔ながらのヨシズやすだれを利用するのも良いですが、朝顔や苦瓜(ゴーヤ)などのつる性植物でグリーンカーテンを作ったり、背の高い鉢植えを窓の外に置くのがオススメ
植物をつかった日よけは見た目が涼やかになるだけでなく、蒸散作用(植物の地上部から大気中へ水蒸気が放出される現象)によって周囲の温度を下げる効果も期待できると言われています。

また、見落としがちな「照り返しの熱」対策もお忘れなく。
バルコニーの床面やコンクリートで固めた庭などには、熱を吸収してくれるウッドパネルや木製スノコ、背の低い鉢植えを並べて対策を。

五感で楽しむ。夏のインテリアと過ごし方

厳しい暑さが続くと体力が落ちて、気持ちに余裕がなくなることがあります。
そんなときこそ、触れる・視る・聴く・味わう・匂うという五感をフルに意識して、夏を楽しんでみましょう。

1.触覚:肌で感じるひんやり感

夏座敷に模様替えする際には家具の配置だけでなく、調度類も夏向けにするものです。
夏向けの家具といえば、ラタンやバンブー、ウォーターヒヤシンス素材の家具。通気性や肌触りが良いので、高温多湿でも快適に過ごせます。リゾート風の雰囲気があるのも夏向きですね。

家具を取り替えるのが大変なら、リネンのクッションカバーやい草のラグなど、取り入れやすいものから替えると良いでしょう。
この麻とい草は、代表的な夏向き素材。もちろん、これには理由があります。
い草には空気中の水分が多い時は表面の気孔から湿気を吸収し、逆に乾燥時には水分を放出するという、室内の湿気を調節する機能があります。
一方の麻は、繊維は芯が空洞になっているので水分を素早く吸い、また乾くのも早いという特性を持っています。
そのため、どちらも夏のべたつく不快感を軽減させる涼やかな素材として重宝されているわけです。

2.視覚:目から涼を呼び込む

人は知覚するための情報を五感で得ますが、その中でもかなりの割合を視覚に頼っていると言われています。
そのため、涼し気な見た目を演出するのは、夏のインテリアにおいて重要事項
ブルーやグリーンなどの寒色系を用いたり、オーガンジーや麻のような透ける素材で涼しさを演出するのは定番ワザですね。ガラス製の小物で、透明感やひんやり感を添えても良いでしょう。

さらに、涼を感じるために「風のそよぎを視覚化」してみましょう。
風を感じると体感温度が下がるのは前段で説明したとおりですが、その風を視覚でも捉えることができれば、さらに涼しさを感じられます。
風の通り道に、のれんやストリングスカーテンをかけてみましょう。軽い素材のものなら少しの風でも翻るので、風の通りをより実感できますよ。
ただし注意がひとつ。
視覚から入ってくる情報は、少なければ少ないほど清涼感を感じます。夏座敷にしつらえるときに、物を少なくするのもそのため。
したがって夏向きだからといって多色使いしたり、物をたくさん飾るのは逆効果になります。色を使うなら1色か2色まで、素材感も揃えて、スッキリした印象を優先させるのがポイントです。

3.聴覚:涼やかな音に酔いしれる

風のそよぎは聴覚でも感じることができます。
夏のインテリアの代表格とでも言うべき風鈴がそれ。風鈴の高く澄んだ音色は、それだけで涼を感じるものですが、同時に鈴を鳴らす風そのものもイメージさせます。
風鈴と言えば軒下が定番の設置場所ですが、密集した住宅地やマンションでは、ご近所への音の配慮が必要になることがありますね。そんなときは室内の風の通り道に吊るすと良いですよ。

涼を感じる音は風鈴だけではありません。
水や風といった自然の音には涼を感じる効果があります。サウンドマシーンやスマートフォンの環境音アプリを利用して、BGM代わりに流してみてはいかがでしょう。
ちなみに筆者は、音楽配信サービスが提供するボサ・ノヴァのプレイリスト数種を夏の間中ヘビロテしています。
1950年代後半にブラジル海沿いの街、コパカバーナやイパネマで、若手ミュージシャンたちによって生み出されたボサ・ノヴァ。ジャズのコード進行を取り入れながらも、サンバから派生した音楽なので、クールな中にトロピカルな雰囲気を感じます。
それゆえに夏に聴く音楽としてボサ・ノヴァを選択するのは、とてもベタなことかもしれません。でも、ささやくようなヴォーカルと抑えたパーカッションが織りなす独特の”乾いた気だるさ”が、夏の多湿さを緩和して、暑さがしのぎやすくなる気がするのです。
こんな風に、自分だけの「涼みサウンド」を見つけるのも、夏の楽しみ方のひとつかもしれません。

4.味覚:舌で味わう涼感と季節感

暑さをしのぐ食べ物といえば、かき氷。
シロップで甘く味付けされたフワフワの氷を口に入れたときの至福は、暑さを忘れさせてくれます。

かき氷の歴史は古く、平安時代には貴族が食べていたという記録があるほど。もっとも古いものは、有名な随筆集「枕草子」に登場するんだそうですよ。
短い文章なので全文引用しますね。

あてなるもの
薄色に白襲の汗袗。
かりのこ。
削り氷にあまづら入れて、あたらしき金椀に入れたる。
水晶の珠。
藤の花。
梅の花に雪のふりかかりたる。
いみじううつくしきちごの、いちごなどくひたる。

出典:池田亀鑑(1993)『枕草子』(ワイド版岩波文庫93)岩波書店

あてなるもの=上品なものを列挙した段です。
上品で雅やかなものとして、薄紫の袙(あこめ=アンダーウェア)に白い汗袗(かざみ=薄い上着)を重ね着した様子や、鴨のたまご、水晶でできた珠(ずず=数珠)などを挙げた、いわゆる「ものづくし」。清少納言のするどい観察眼と美意識が余すところなく発揮された章です。

この中の「削り氷(けずりひ)にあまづら入れて、あたらしき金椀(かなまり)に入れたる」のが、かき氷。
あまづら(甘葛)とは、ツタの樹液を煮詰めて作った甘味料のことです。細かく削った氷にそのシロップをかけて「あたらしき金椀」、つまり真新しい金属のお椀に盛った様子が上品だと清少納言は言っているんですね。

当時の金属のお椀といえば、錫(すず)製。
白く輝く錫の椀に透き通った氷を盛った様は、さぞ美しく雅やかだったことでしょう。錫は熱伝導が良いので、手に持つと氷のきりりとした冷たさが伝わって、より涼を楽しめたことと思います。
夏の氷も甘いものも貴重だったこの時代、かき氷はとっても高価な貴族のためのスイーツだったんですよ。そんな古の風情を思いながら、現代のかき氷を楽しむのも一興ですね。

でも残念ながら、かき氷が盛れるほど大きな錫の器を入手するのはなかなか困難なことです。柔らかな金属である錫は、すべての工程が職人さんの手作業に委ねられるため、サイズが大きくなるほど値が張ります。それに一般に流通する製品も、酒器や茶器サイズの器が主流。
ですから現代に生きる私たちは、錫の代わりにガラスの器を使いましょう。
氷のように透き通って涼やかな見た目のガラスは、夏のテーブルウェアの主役。清少納言の時代に比べて、はるかに製造技術の進んだ現代のガラスは、かたちも色も多種多様です。かき氷に限らず、サラダやマリネ、冷製料理を供する際にもピッタリですよ。

また昔から「初物七十五日」という言葉があるように、旬の食材を食べて体調を整える考え方があります。旬の食材は栄養価が高く、その時期特有の不調をカバーする効能が期待できるものが多くあることから生まれた考え方です。

夏なら瓜がその代表格ではないでしょうか。
西瓜(スイカ)や胡瓜(キュウリ)・冬瓜(トウガン)には、体の熱を下げ、利尿作用で余分な水分を出す作用があります。暑いと冷たい飲み物をたくさん摂取しがちですが、水分の摂り過ぎは体に負担がかかるもの。余分な水分を排出するためにも、積極的に摂取したい食材です。
また、苦瓜(ゴーヤ)はビタミンCが豊富なので、夏バテ対策にも、日差し対策にもピッタリ。熱を加えても壊れにくいタイプのビタミンCなので、調理後でもあまり減らないのも好ポイントです。これなら美味しくビタミン補給ができますね。

冷たいもので暑さをしのぐだけでなく、季節の食材をうまく食事に取り込んで、健康的に夏を乗り切る工夫も大切です。

5.嗅覚:香りで涼む

香りは人の心理に深く関わってくるものです。
旅先で、街角で、ふと漂ってきた香りで懐かしい記憶が蘇る、いわゆる「プルースト効果」は、誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

それほどまでに強く感覚に作用する香りを、暑気払いに利用しない手はありません。
ミントやユーカリ、レモンマートルのような、爽やかな香りのエッセンシャルオイルを使うのも良いですが、今回は「お香」をオススメしたいと思います。
湿度の高い夏は香り立ちも良くなりますし、なにより、香を焚くことによって部屋にこもりがちなジメジメとした空気をリフレッシュすることができますよ。
オススメの香りは白檀
「白檀」と言われてピンとこなくても、英名の「サンダルウッド」と聞けば分かる方が多いくらい、和洋ともにポピュラーな香りです。ふくよかに甘く、それでいて涼し気な香りは鎮静効果を持つとされるので、暑さにイライラした気持ちもゆったりリセットしてくれそう。

また白檀は、その香りから扇子の素材として使われることがあります。扇ぐと白檀の風がふんわり吹いて、とても雅やかな気分にさせてくれるんですよ。これなら外出先や、火を使うことができない場所でも涼やかにいられます。
でも、本物の香木を透かし彫りにした扇子はとても高価。ですので、普通の布張りの扇子を文香や匂袋と一緒に収納し、香りを移すという手もありますよ。

お香メーカーが現代風にアレンジしたお香もオススメです。
夏を感じさせる季節の香りが各社から販売されているので、気に入ったものを見つけるのも楽しいでしょう。
涼しげな白や青の磁器、またはガラス製の香皿・香炉と組み合わせると、さらに涼感が増しますよ。香りと道具の組み合わせを考えるのも、楽しみのひとつです。

お香は、遠くからほのかに漂ってくる香りを楽しむのが粋。
窓を開けて自然の風を入れながら、少し離れたところで焚くと良いでしょう。
そんな風に窓を開けて香を焚くと、風が入ってきたときに煙がたなびいたり、部屋の中を香りが動くのが分かります。そういったことで風を「視る」ことができるのも、お香ならではです。

さいごに

近年は猛暑日が何日も続くことが常態化しています。そのため、熱中症の危険があるような時は、エアコンで室温や湿度をコントロールすることが必須事項。

とはいえ、涼しげに部屋をしつらえ、涼を五感で楽しむ日本の夏の過ごし方には、高温多湿な季節を乗り切るための知恵がたくさん詰まっています。
ときには、エアコンに頼りすぎない、昔ながらの夏の風情を愉しんでみてくださいね。

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